元ライブドア幹部が語る
職場の“関係性の質”を高めるには◯◯をやめるだけ!
ベンチャー企業が成長するときに直面するのは、従業員の増加に伴う“人の問題”です。中途採用の幹部を登用したら現場との軋轢が生まれたり、評価制度が必要となって外部のコンサルタントを入れても社員の納得感を得られなかったり、ずっと一緒だと思っていた創業期のメンバーが離れて行くなど、組織の成長過程では様々なドラマに遭遇します。そんなとき人事や経営者は、どう対応すれば良いのでしょうか?ライブドアのメディア事業をゼロから立ち上げ、わずか3年半で従業員6名→600名、売上高0円→300億円、ユーザー0人→1,500万人の事業に成長させた経験から、“成長する企業組織のつくり方”を解説します。【執筆:石山喜章】
伸びる会社と潰れる会社の違いは何なのか?
これは経営者にとって永遠のテーマです。
この課題に真正面から取り組み、研究した人物が米国にいます。MIT(マサチューセッツ工科大学)のダニエル・キム教授です。彼は700社以上の企業を徹底的に調査し「リーマンショックがあっても成長し続ける会社は、倒産した企業と何が違うのか?」を発見しました。それが“組織の成功(失敗)循環モデル”として世に知られている因果関係のループ図【図1】であり、その図を基に私が新たに考えた失敗循環モデルが【図2】です。
潰れる会社は、数字や業績など「結果の話」から入り「行動を強要」するので「モチベーション(思考の質)」が下がります。やがて従業員は『上司はどうせ話を聞いてくれないしな~』と本音を言わないようになり、職場の「関係性が悪化」して成果も上がらない…という悪循環を続け、倒産します。
伸びる会社ではお互いを認め合い、本音で話し合える文化があるので、社員が否定されることを恐れずに意見を言うようになります。その結果、組織全体で気付きやアイデアが共有され、思考の質が高まります。そんな関係性ができているから、リスクを恐れずにチャレンジしますし、お互いを助け合う行動も生まれます。そして成果が上がることで絆が深まる…という好循環を続け、成長します。
「数字や結果だけに囚われた組織は潰れ、関係性の質を高めた会社は成長している」ということが統計的な事実として見出されました。
「関係性の質」3段階
では「関係性の質」とは一体何なのでしょうか?
この質問を投げかけると、多くの企業の幹部は「えっ…?」という顔をされます。やがて「信頼し合える関係が質の高い関係なのでは?」と答えられる方が多いのですが、「では、あなたが他者を信頼できるかどうかの基準って何ですか?」と尋ねると、しばらく考え込まれます。
人間関係を定義することは難しく、参考になる文献も数少なかったので、私が顧問を務める会社では、次のように定めています。関係性のLv1)そもそも仲間の成長に関心がない。Lv2)仲間の成長に関心はあるが、見てみぬふりをしている。Lv3)仲間の成長の為に、本人に直接、愛をもって厳しい指摘をしている。
建前をやめれば関係性の質が高まる
あなたは最近、まわりの人から耳の痛いフィードバックを貰ったことはありますか?
私がライブドアでメディア事業を立ち上げていた当時、人数が増えて立場が上がるほどに、注意してくれる人の数は減っていきました。経営者や人事部長ともなれば、注意してくれるのは株主とお客様ぐらいになっているのではないでしょうか。
お互いの為を想って、厳しい指摘であっても愛を込めたフィードバックをすることのできる関係性となれば、個々人の成長と会社全体の業績アップへとつながります。
3年前、顧問先の某社(従業員数200名、管理職23名)では、管理職の8割がLv2の関係性でした。「鈴木さん、こうしたらいいのに…」と感じながらも、本人には言わずに見てみぬ振りをする。人間誰しも嫌われるのはイヤなので、自分の部下以外の同僚に苦言を呈する人は多くありません。そこから研修等を通じて1年後には8割の管理職がLv3に移行したのですが、結局「関係性の質」を高めたのは建前をやめたことでした。
「建前」はなぜ問題なのか
日本の文化ともいえる「建前」がなぜ問題なのか? それは“ウソの情報”になるからです。
例えば戦国時代に「殿! 右前方より敵軍が攻めて参ります」と報告を受け「なにぃ? 右翼に戦力を集中させよ!」と指示した場合、仮に「右前方から敵軍が攻めてきている」という情報が嘘だったら、無駄な場所にリソースを割いたこの軍は戦に敗れます。
意思決定の品質を決める3大要素は、情報、判断基準、会議体の3つですが、偽りの情報を基に会議をして決めた(意思決定した)プランを実行しても、成果が上がるはずがありません。あなたが経営者なら、偽の情報と本物の情報のどちらを必要とされるでしょうか?――それこそが、建前をやめる理由なのです。
建前をやめて本音で語り合う…「理解はできるけど、実際に社内で実現するのは難しいよ」そう感じられる方もいらっしゃるかも知れません。頭で分かっているけど、実行できないときの原因は、それが“腹落ちしてない”からです。
地獄と天国を見せ、未来を決めてもらう
では、どうすれば社員が納得して本音で話すようになるのでしょうか?
人間は動物です。本能を司る爬虫類脳を中心に、運動感覚を司る小脳、言語や関係性を司る大脳、思考や理性を司る大脳新皮質という順に脳は形成されています。その脳の仕組みから見ると、人の行動が変化する要因は「快適な環境に接近する」と「不快な状況を回避する」の2つに集約されます。
短期的なモチベーションを上げるには、危機・恐怖に端を発した不快回避型に訴えかけるのが早く、中長期でモチベーションを維持するには快接近型が適切です(前者はアドレナリンが、後者はドーパミンやセロトニンが脳内で分泌されています)。すなわち、地獄と天国を見せて比較し、どちらの未来に進みたいか?を決断してもらえば良いのです。
わざわざ外部の研修講師に頼む必要はありません。あなたが主催して全従業員を集め、しっかりと対話しながら「皆が建前しか言わない表面的な付き合いを続けたら、会社の未来はどうなるのか?」を議論するのです。次に「皆が本音で対話するようになったら、自分個人はどう成長し、我々の関係はどう変わるのか?」を議論してください。
2つの議論が落ち着いたところで「私はどちらの未来に行きたいのか?」を投票して決めて貰うのです。ここで決断したことを3日坊主で忘れないようにするために、人事評価制度とリンクさせることも必要です。ちゃんと同僚の成長のことを考えて、愛をもって厳しい指摘やフィードバックをしている人を評価する仕組みに変えて頂ければ幸いです。
行動を続けるには仕組みの担保が必要
人事評価制度とリンクさせて「Lv3.仲間の成長の為に、本人に直接、愛をもって厳しい指摘をしている」人がちゃんと認められ、評価される風土ができれば、関係性の質は次第に高まり、業績も上向いていくことでしょう。
人は忘れやすい生き物なので、行動を続けるには仕組みの担保が必要です。評価制度以外に、半年に一度優秀者を表彰し感動的な事例を共有する、1on1の時間の使い方を変える、会議のやり方を見直すなど、社風を変える為にできることは沢山あります。
グーグルやトヨタなど、伸びている会社は「関係性の質」を高めることに時間と費用を投資しています。その関係性の質を上げるには“建前”をやめるだけでいいのです。是非あなたも今日から建前をやめて、本音で同僚の方と向かい合ってあげてください。
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