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従業員の健康管理とは?
企業が実施する目的と業務内容を解説

企業が従業員の健康管理を行う際、人事・総務担当や労務担当者は具体的には何をすれば良いのでしょうか。このページでは、企業が健康管理を実施する目的とその背景、実際の業務内容について解説します。さらに、「意味のある健康管理」を行うためのポイントや健康経営との関連性も紹介します。

目次

企業における健康管理とは?

企業における健康管理とは、従業員の健康を維持・向上させるための取り組み全般を指します。これらは単に推奨されているというわけではなく、法律によって明確に義務付けられています。健康管理に関連する法律は以下です。

労働安全衛生法

労働安全衛生法では、労働者の安全と健康を確保するための基本的なルールが定められています。この法律に基づき、企業は以下のような義務を果たす必要があります。

事業場における安全衛生管理体制の確立

事業場は、労働安全衛生法が適用される単位です。原則として一つの拠点を一つの事業場として判断します。例えば、それぞれ別の場所に本社、支社、工場がある際、いずれも個々の事業場として扱うことになります。そして法律に基づき、事業場ごとに以下の対応が義務付けられています。

  • 総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医等の選任
  • 安全委員会、衛生委員会等の設置

参考:
厚生労働省東京労働局「よくあるご質問>労働安全衛生関係」
厚生労働省「労働安全衛生法の概要」

事業場における労働災害防止のための具体的措置

企業はほかにも、労働災害から従業員を守るための具体的な措置を取らなければならないとされています。

  • 危害防止基準:機械、作業、環境等による危険に対する措置の実施
  • 安全衛生教育:雇入れ時、危険有害業務就業時に実施
  • 就業制限 :クレーンの運転等特定の危険業務は有資格者の配置が必要
  • 作業環境測定:有害業務を行う屋内作業場等において実施
  • 健康診断 :一般健康診断、有害業務従事者に対する特殊健康診断等を定期的に実施

参考:厚生労働省「労働安全衛生法の概要」

労働契約法第5条

労働契約法第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」との記述があります。これを安全配慮義務といいます。

ここでいう労働者は、正規の従業員だけでなく非正規の労働者も含まれます。さらに生命、身体等の安全には「心身の健康も含まれる」とされています。したがって企業は、従業員が健康を害さず安全に働けるよう対策を講じ、適切な環境を整える必要があります。

参考:厚生労働省「労働契約法のあらまし」【第1章 総則】労働者の安全への配慮(第5条)

健康管理にまつわる業務

企業における健康管理で行うべき業務として、主に次の5つがあります。

健康診断

健康診断は従業員の健康状態を定期的に確認するためのもので、労働安全衛生法によって実施が義務付けられています。一般健康診断は年に1回、「常時使用する労働者」を対象に行います。「常時使用する労働者」とは、正規の従業員に加え、1年以上使用される予定で、1週間の労働時間数が正規職の4分の3以上である従業員のことを指すため、パートやアルバイトの従業員もこれに含まれます。

一般健康診断では身体測定のほか、視力、聴力、血圧、血液、尿、心電図検査などが行われます。一方で、特定の業務に従事する従業員、例えば化学工場での作業や放射線作業者などは別途、特殊健康診断を受ける必要があります。

この特殊健康診断では、業務特有の健康リスクに対する詳細な検査が行われ、例えば化学物質の影響による肺機能の検査や放射線の影響を調べるための特別な血液検査などが実施されます。結果によっては、従業員の就業場所の変更や労働環境・時間の改善など、企業側が適切な措置を講じなければなりません。

参考:
厚生労働省 東京労働局「よくあるご質問>労働安全衛生関係」
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

ストレスチェック

ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調のもととなるストレスレベルやストレス要因を特定するためのアンケート調査です。高ストレス者を早期に発見しカウンセリングや休養の提案といったサポートにつなげられるだけでなく、結果を集団的に分析することで、職場環境の改善にも役立ちます。

ストレスチェックは、メンタルヘルス不調によって仕事が続けられなくなる労働者が年々増加していることを受け、2015年に実施が義務付けられました。従業員50人以上の事業場は年に1回、必ずストレスチェックを実施しましょう。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

産業医の配置

ストレスチェックと同様、労働安全衛生法では50人以上の事業場ごとに産業医の配置が義務付けられています。産業医は従業員の健康相談に応じるだけでなく、職場の健康リスクを評価し、改善提案を行う役割も担っています。従業員の規模や特定の業務に当たっている従業員の数によって、配置する産業医の人数が異なるため注意が必要です。

産業医は少なくとも毎月1回、作業場を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは直ちに必要な措置を講じなければならないとされています。しかし昨今、十分なサポート機能を果たしていない「名ばかり産業医」の問題が取り沙汰されています。企業に寄り添った対応をしてくれる産業医であるかどうかを事前に見極めることも大切でしょう。

関連ページ:健康管理の方法と産業医の活用

長時間労働の改善

過度な長時間労働は、従業員の健康を害する原因です。企業は、労働時間の適切な管理や、休憩時間の確保、必要に応じてのシフト制の導入など、さまざまな方法で長時間労働を改善する取り組みを進める必要があります。

また労働基準法で、法定労働時間は「1日8時間、週40時間」と定められており、36協定を締結しても「月45時間、年間360時間」の上限があります。長時間労働が慢性化してしまっている場合、コンプライアンスの面でも、健康の観点からも、是正が必須です。

労働災害防止の取り組み

労働災害も、従業員の健康を損ねる原因の一つです。従業員への聞き取りなどを通してリスクの種を事前に把握し、 安全衛生管理体制を整備したり、危険防止措置を講じることが求められます。

参考:厚生労働省「第14次労働災害防止計画の概要」

従業員の健康管理を実施する意義とメリット

従業員の健康管理は、単に法的義務を果たすためだけのものではありません。実施することで、企業にとっても多くのメリットがあるものです。

生産性が向上する

心身のコンディションが良いと仕事にも前向きに取り組めるようになり、集中力が持続します。これにより、安定した労働力の供給につながります。健康に配慮した職場環境を整えることで、企業は従業員からの信頼を得られます。人間関係の向上や活気ある職場の実現も期待できるでしょう。

休職・離職率の低下につながる

従業員の健康を維持することで、病気やけがによる休職を減少させることができます。さらに欠勤率や離職率が高まるメンタルヘルス不調に対しても、適切なサポートやケアを提供することで予防や早期対応が可能です。結果的に、新たな人材の採用や教育にかかるコストの削減にもつながります。

労災を防ぎ、経営コストを下げる

健康管理の取り組みは、労働災害のリスクを低減させる効果があります。労働災害が発生すると、企業は従業員に対して治療費や損害賠償を支払わなければなりません。さらに関連業務も遅延するため、大きな経済的損失となるでしょう。事前に対策することで、こうした経営コストを下げられます。

企業のイメージアップになる

従業員の健康を大切にしている企業は、社会的な評価が高まります。長時間労働や激務、職場環境によって健康を損ねる労働者が急増し、社会問題化していることが背景にあります。優れた健康管理の取り組みが認知されることで消費者や取引先、投資家からの信頼が増し、ビジネスチャンスが広がる可能性もあるでしょう。さらに採用競争における強みとして、優秀な人材を引き寄せる武器にもなります。

意味のある健康管理を行うためのポイント

健康管理は、ただ形式的に実施するだけでは効果を発揮しません。心身の健康度合いは人によってさまざまで、中には持病を抱えている人もいます。企業ごとに、自社の現状に沿って従業員の変化にも注意しながら取り組みを継続する必要があります。

ポイント1.働きやすい環境の整備

従業員がストレスなく働ける環境を整えることは、健康管理の基盤です。物理的・精神的なストレスを減少させられる環境作りを心がけましょう。例えば、適切な照明や通気性の確保、不便のないオフィス機器の導入、テレワークやハイブリッドワークなどの新しい働き方の導入、各種制度や福利厚生の拡充、人間関係への気配りなどが挙げられます。

ポイント2.従業員のヘルスリテラシーを上げる

ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を理解し、それを基に適切な判断や行動をする能力を指します。健康管理は、企業が取り組むだけでは完全ではありません。従業員一人ひとりがその重要性を自覚して行動につなげるよう促すことが重要です。セミナーや勉強会、コミュニケーションの場などを通じて、日常的に意識付けしましょう。

ポイント3.健康管理システムの導入検討

近年、健康管理をサポートするためのソフトウエアやアプリが数多く登場しています。これらを導入することで、健康診断やストレスチェックの結果の管理、従業員の食事の記録、健康に関する情報の提供など、健康増進に関する幅広い業務に役立てられます。

特に、健康診断ひとつとっても実際の業務は煩雑になりがちです。従業員ごとに検診を受ける病院が違う場合は把握をしたり、きちんと検診を受けない従業員には通知して行動を促すなど、検診結果の管理以前の負担も少なくありません。健康管理システムはこうした業務の簡略化・自動化が可能です。

また従業員の健康データを一元管理できるため、変化を測定したり原因を分析することもでき、適切なアドバイスにつなげられます。産業医との連携もスムーズになるでしょう。

健康管理と健康経営の関係性

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを指す言葉です。こうした考え方に基づいた具体的な取り組みは健康投資と呼ばれ、注目されています。

参考:経済産業省「健康経営の推進について」(令和4年6月)

健康経営とは

個々の企業だけでなく、日本社会全体の労働力や生産性向上につながるとの考え方から、日本政府は健康経営の推進に取り組んできました。まずは優良な健康経営に取り組む法人を可視化して社会的な評価を受けることができる環境を整備しようと、 2014年度から上場企業を対象に「健康経営銘柄」を選定。以降、要件を満たした健康経営を実施している企業に対して、「健康経営優良法人」や「ホワイト500」「ブライト500」といった認定を付加しています。

従業員の健康を向上させるためのフィットネスジムの提供や健康食品のサポート、メンタルヘルスのカウンセリングサービスなど、独自の健康経営を展開する企業のほか、関連サービスを提供するベンダーも増えています。

関連ページ:健康経営と認定されるには? 事例と健康経営優良法人認定制度を解説

健康管理システム導入による効果

健康経営を実施する上で、健康管理システムの導入は大きな助けになります。法律で定められている健康管理をスムーズに行えるだけでなく、+αとして健康経営の推進に貢献する機能を備えたサービスもあります。
例えば、ヘルスリテラシーを向上させるための学習機能や交流機能がついているものや、睡眠の質を記録しサポートするもの、専門家にチャットで相談ができる「健康相談窓口」がついているものなどもあります。

関連ページ:健康管理システムの種類とは?導入にかかる費用も解説

従業員が安心して働けるよう、適切な健康管理を

適切な健康管理は、従業員の生産性やモチベーションの向上、離職率の低下、そして企業の社会的評価の向上など、多岐にわたるメリットをもたらします。特に現代は、テレワークやフレックスタイム制度など多様な働き方が増えている中で、従業員の健康管理の方法も変わりつつあります。

健康管理は一時的な取り組みではなく、柔軟性と継続性が必要です。従業員が安心して健やかに働ける環境を実現するため、企業全体の努力と一人ひとりの意識の醸成を心がけましょう。※こちらのページに掲載している情報は2023年10⽉時点のものです。

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