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イノベーションを生み出す組織開発

人材開発が行うべきことは、理想を持ち、夢中に仕事に取り組める人・組織をつくること

イノベーションを生み出さなければ、企業はやがて存在価値を失ってしまいます。その一方で、グローバル化、デジタル化、人生100年時代・・・によって生まれる、これまで経験したことのない組織・人事課題にも対応が必要です。
しかしこれらすべてに共通する、組織・人材開発が本来果たすべき役割があります。【執筆:株式会社セルム・加島禎二】

いよいよ人材開発からイノベーションに切り込んでいくべき

2000年代に入ってから、企業は「イノベーションの創出」に向けた取り組みをスタートさせました。

まずよく見られたのは、大部屋・フリースペース化などのオフィス改革です。組織の間の物理的な壁を取り払うことで心理的にも風通しをよくしようとしたり、カジュアルな雰囲気のオープンスペースをつくったりして、違う部署の社員が気楽に会話を交わせることから何かが生まれることを期待した動きです。
企業の研究開発業務を行うR&Dセンター部門には、産学連携専用のルームなどが作られ、大学や公的研究機関などの研究者と、企業の社員が入り混じって研究をする動きが生まれました。

「新事業提案制度」も多くの企業で行われるようになりました。経営トップの一声でスタートはしたものの、「数こそ集まるが、質は低下傾向」「ここから事業化に結びつくことはほとんどない。続ける意味があるのか」といった声もあがり、粘り強く続けて定着させていくために、今、本気度が問われている段階です。

ここ数年期待されているのは「オープンイノベーション」の取り組みでしょう。「出島」のような組織をつくり、外部と連携しながら、新価値、新事業の創造をリードする動きです。コラボレーションを求める他企業とハッカソンやワークショップを開くという動きも活発になりました。それに加え、最近ではベンチャー投資や、デジタル・AI人材の獲得と育成も急がれています。

これらは、イノベーションのための「仕組み、仕掛け」といえます。どれかが正解で、どれかが不正解ということではないでしょう。それより今後大切なのは、これらの「仕組み、仕掛け」の裏側で、社員の意識や組織のカルチャーを育んでいくことだと思います。
すなわち、いよいよ人、組織、カルチャーの視点から、本気でイノベーションに切り込んでいかなければならないのです。

企業内起業家精神(イントラプレナーシップ)を育てる

ではどんな人材、組織、カルチャーをつくらなければならないのか。それには、「企業内起業家精神(イントラプレナーシップ)」が鍵を握ると思います。社会や人間を深く洞察し、持てる自社の資源を再定義し、まだ満たされていない潜在的な欲求を解決するために、試行錯誤する…そうした「創造のDNA」を組織の中に覚醒させることを、全てに優先させなければなりません。
そのための第一歩として、これまでのイノベーションに向けたさまざまな打ち手を統合する、新たな組織やチームの創設を提案したいと思います。そしてそこに集うメンバーは、イントラプレナー(企業内起業家)の意識を持ち、行動し続ける習慣を持った人材です。

以前、大企業のオープンイノベーションイベントで、「我々はこんな経営資源をもっています。それを活用するアイディアを提案してほしい」といったプレゼンを見たことがあります。もちろん、提案を歓迎します、という意図での発言ではあるのですが、参加者であるベンチャー企業の方からは「上から目線を感じてしまう」という声を聞きました。
そもそも他人のアイディアの良し悪しを評価する、という姿勢からはイノベーションは生まれません。「自分がやりたいからやる」がすべての創造活動のスタートです。ですから、イントラプレナーチームのメンバーは「任命されたからこの部署に来た」というマインドの人材ではなく、「何が発見できるのかと考えるとワクワクする」という人材でなければなりません。

もう一つ重要なのは、専門性と多様性です。SF映画でよく目にするチームは、例えば、物理学者、生物学者、脳科学者、心理学者など、さまざまな専門家のチームです。創作の中の話ではありますが、そんなチームでないと未曾有の問題に対処できないのです。そのビジネス版をイメージして、自社とは異なる業界で事業を立ち上げたような人材や、AI&データのサイエンティスト、キャピタリスト、デザイナー等などを、柔軟で自由度の高い契約形態を認めて、集めるのです。

このチームに、社内やグループ企業から中堅・若手層を受け入れ、イントラプレナーシップを育てながら、各事業のトップと一緒になって、それぞれの事業のイノベーションの方向性や新たな市場創造の可能性を徹底して探り、試行錯誤するプロジェクトをリードするのです。
大企業の持つ豊富な経営資源と、長年に渡って積み上げてきた社会的信頼をバックに、社内外のタレント達が縦横無尽に動き、力を振るっている状態を想像すると、私はとてもワクワクしてきます。

仕事に夢中になれる状態をつくることが、イノベーション創出の近道

イノベーションに本気で切り込む、もう一つの方向性は、「現場」だと思います。「我が社に必要なのはイノベーションだ」。このこと自体に反対する人はいないでしょう。今の組織や事業のあり様が10年後も同じように続くとは思えない、と皆頭では理解しています。しかし、頭では分かっていても、慢性的な人手不足や残業規制の中、現実に目の前で起きていることへの対応で手一杯なのが実態だと思います。

そんな現状の中で、「イノベーションが必要だ。イノベーションを起こさねばならない」と言い過ぎてしまうと、今の業務にプラスアルファで何か新しいことをやらなければいけないようなプレッシャーを感じてしまいがちです。また、毎日のオペレーションへの努力があるからこそ、この会社は維持できているはずなのに…と社員の多くが感じてしまい、現場で日々の仕事、そしてイノベーションへの当事者意識が薄くなっていく方向に気持ちが向いてしまったら本末転倒です。

イノベーションを次々に生み出す企業として有名な、米国3Mで米国研究所のトップを2009年まで務めた新村嘉朗氏は、3Mのイノベーションを次のように述べています。
「主役はあくまで市場とお客さま。企業が勝手に作り上げるものではありません。それなのに多くの企業はいきなりイノベーションを生み出そう、といってしまうのです」「3Mでは誰もイノベーションを生み出そうなどと口にしません」(※1)。

また、ファーストリテイリングの柳井正氏は、このような言い方をしています。
「いいモノとは何かを決めるのは、あくまで世間であって、自社のエンジニアやマーケターではない」(※2)。
この2人の話の共通点は、イノベーションをことさらに特別なものと扱わず、仕事本来の目的のために、絶えず努力し、試行錯誤した結果が、ある確率でイノベーションを生んだということだと思います。
つまり、イノベーションは狙えばできるというものではないのかもしません。むしろ、絶えず見直し、努力し、試行錯誤する人と組織をつくることがイノベーションの創出につながる近道だ、とこの課題を捉えなおした方が、人事・人材開発としては、地に足がついた取り組みが進むように思います。

※1 「115年間イノベーションを生み出し続けた3M社の哲学とは」(日経×TECH、2017.6.8)
※2 『現実を視よ』(柳井 正、PHP研究所、2012.9.21)

そして、その起点となるのは、人の好奇心です。特に現場の要であるミドルマネジメントが最も強く好奇心を持っていなければいけません。

夢中になって仕事にとりくんでいると、ぼやっと理想とすべきものが見えてきます。現状と理想とのギャップも見えてきて、それは何だろうと好奇心が湧いてきます。そんな一人の好奇心が伝播して、職場の一人ひとりのやり甲斐につながっていく。そして、やればやるほど、もっとやりたいことが見つかる。それに取り組むのが楽しい。本来仕事とはそういうものです。

現場の要であるミドルマネジメントに好奇心があるからこそ、メンバーも幅広く情報を収集し、そこから新しいものを見つけ、既存の業務や課題に縛られ過ぎずに、自ら新たな課題や仕事を設定することができるようになるのです。
こうした組織は、これまでもすべての企業が目指してきた職場の姿のはずですが、イノベーションが求められる今だからこそ、さらに仕事に夢中なれる現場づくりに力を注ぐべきなのです。

戦略からのブレイクダウンではなく、人を起点として人材開発を組み立てる

こうした職場やミドルマネジメントをつくっていくための最も重要な思想は、経営資源があり、戦略があって、それをタスクに分解し、それを実行できる人材を育てる、という順番ではなく、人が起点ということです。
個人が起点でそこに人が集まり、戦略が生まれてきます。これは昨今、企業価値を大きく伸ばしているグローバル企業に共通する考え方だと思います。このことを肝に銘じながら、皆さまと共に、私たちセルムも進んでいこうと思っています。

株式会社セルム
http://www.celm.co.jp/

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