「減給」処分の同意の必要性や期間、認められる理由を解説

人事

掲載日時:2021.02.04

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「従業員を減給処分にしたい」という際、減給の原因や各ケースによって法的に必要とされる対応が変わってきます。トラブル発展を未然に防ぐには、減給に関連する法的な対応を理解しておく必要があります。この記事では、人事担当者や経営者が社員に対して減給処分を行う際、不要なトラブル生まないためのポイントについて解説します。

<目次>

「減給」とは

減給とはどのような対応のことを指すのか、賃金カットとの違いや代表的なパターンについて解説します。

減給の意味とは?

減給とは、労働者が職場の秩序を乱した、規律違反をしたことなどを理由に、制裁として賃金の一部を減額することです。しかし、上限なく減給が実施されると労働者の生活が困難になるため、減給には一定の上限が設けられています。

賃金カットの違い

遅刻や早退は、就業規則通りの勤務時間を満たしていないため、その時間分の給料が減額されます。このような減額は賃金カットと呼ばれており、労務に従事していない時間分の給料は支払わないというノーワーク・ノーペイの原則に基づいています。減給は、長期間に渡って秩序を乱す、規律違反をするといった行為に対する処分のことを指し、賃金カットとは全くの別物です。 一般的に減給と呼ばれている対応は、理由や方法によって大きく4つのパターンに分類されます。それぞれのパターンの概要を解説します。

懲戒処分としての減給

労働者の遅刻や欠勤などに対する懲戒処分として減給の対応を行うパターンです。公務員には、一律された懲戒処分の要項がありますが、民間企業にはそのような要項が原則存在しません。そのため、それぞれの企業ごとに懲戒処分にあたる事由が何かを就業規則に定めておく必要があります。就業規則に定めている事由に該当する処分の場合は、減給が適用される社員の同意は必要ありません。

労基法91条が最優先

懲戒処分として減給を行う際は、労働基準法第91条を超える減給を行うことはできません。

労働基準法
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
出典:電子政府の総合窓口e-Gov労働基準法

懲戒処分としての減給には、大きく分けて以下の3つのポイントがあります。

Point

  • 就業規則に減給の理由や内容が明記されている必要がある。
  • 懲戒処分による減給の場合、1回の減給額は、平均賃金の1日分の半額より少ないものとする。
  • 複数回の減給処分を重ねたとしても、減給総額は月額賃金の10分の1を超えてはならない。

降格人事による減給

会社から降格処分を受け、その身分に連動して減給となるパターンです。このパターンの減給では、人事権の濫用とならない範囲で適用している限り、減給が適用される社員の同意は必要ありません。ただし、正しい人事評価であることを納得させるために、給料テーブルや評価テーブルを事前に用意し、降格理由を明確に社員に伝えられるように準備しておくべきでしょう。

経営悪化

企業の経営状態悪化に伴い、人件費削減の必要から減給を行うパターンです。このパターンの減給では、労働契約の変更が必要ですが、社員にとって不利益な契約変更の場合は、社員の同意が求められます(労働契約法第9条)。しかし、明らかに合理的な判断だと認められる限り、社員の同意は必須ではないとされています。 (労働契約法第10条)
経営の悪化で企業に倒産の恐れがある場合は、「減給によって労働者の雇用を守れる」ということを証明する必要があります。労働組合との交渉の状況も、減給を実施する合理性判断の基準の一つになるため、少なくとも減給の実施前に従業員に対する相談の呼び掛けを行わなくてはなりません。

労働条件の改定

上記以外の理由で労働条件を改定し、給与の引き下げを行うパターンです。このパターンの減給では、労働者の同意が必須です。労働者の意に反して強制的に同意を結んだ場合には、減給は無効となります。

なお、労働者が同意の意思を示さずに、特に意義なく一定期間引き下げ後の給料で働き続けていた場合は、黙示の同意があったと見なすこともあります。個別に同意を取る場合は、賃金改定同意書を使用します。

減給可能な期間

労働者の遅刻や欠勤といった理由で行われる減給は、処罰の対象となる行動1つにつき、1度だけと決まっています。また、減給処分が可能な期間も1カ月だけと決まっており、1つの行動を問題視して「3カ月の減給」といったように、1カ月より長い期間を定めて処分を行うことはできません。

Point

ニュースでよく耳にする「不祥事の責任を取って役員が〇カ月間〇%減給」といったケースは、主に公務員や役員といった労働基準法が適用されない人が報酬を返上する場合の処分です。懲戒減給にあたるものではなく、全くの別物であることを理解しておきましょう。

減給処分を行う上での注意点

減給処分を行う際は、従業員とのトラブルを防ぐために、細心の注意が必要です。実際に減給処分を行う上での注意点を詳しく解説します。

解雇をちらつかせて減給させることはできない

経営不振に対して行われる解雇による人員整理を整理解雇と呼びます。減給との二択を迫る場合は、整理解雇を提示することになります。しかし、整理解雇は、「人員削減の必要性、解雇回避努力義務、人選の合理性、説明義務」という整理解雇の4要件を満たしていなければ、有効になりません。

つまり、解雇をちらつかせながら減給を迫る行為は解雇回避努力義務を怠っていると見なされます。この場合解雇権の濫用として無効になる可能性が高く、減給の交渉材料にはできません。

減給の先送りも可能

懲戒処分による減給額を算出する際、その月の減給額が労働基準法第91条で定めている上限額を超えている場合は、繰り越し分を翌月に回して減給を行うことが可能です。なお、賃金の支払期に賃金カットがある場合は、それらを反映した賃金総額を基礎として10分の1を計算します。

こんな理由で減給処分はできる?

続いて、減給の理由として適切なのかどうかが疑問に上がりやすい事項をまとめました。企業が減給処分を実施できるのは、就業規則に記載されている事項を理由とする場合に限られます。そのため、想定される減給の理由事項を前もって就業規則に記載しておきましょう。

遅刻

事前に就業規則に遅刻に関する懲罰事項を定めておけば、懲罰処分としての減給が認められます。ただし、賃金カットではなく、減給という厳しい処分を下すからには、社員が労働意欲を失わないよう合理的な線引きを行うことが重要です。全ての遅刻を減給処分とするのではなく、電車遅延といったやむを得ない事情については追求せず、個人の怠惰に責任がある場合のみ処罰すると設定すれば、社員のモチベーションを損なうことなく、社内を引き締めることができるでしょう。

無断欠勤

無断欠勤は遅刻と同様の迷惑行為であり、懲罰処分として減給を実施することが可能です。ただし遅刻と同様に、就業規則に書かれていない場合には認められません。就業規則にしっかりと明記しておくと良いでしょう。

能力が低い

能力が低いという理由だけで、懲戒処分としての減給を行うことはできません。人事降格を行いそれに基づく実質的な減給を行うことは可能ですが、能力が低いという曖昧な理由を根拠に懲戒処分としての減給の合理性を認めさせることは容易ではありません。
能力が低いことを理由に減給を行いたい場合は、就業規則にその旨を示しておくか、能力不足が会社の規律を乱している、といったことを証明できる客観的な説明材料を事前に用意しておく必要があります。

コロナによる業績不振

新型コロナウイルス拡大による業績不振によって従業員の減給を行う場合は、感染症を理由としない経営悪化による減給と同じ手続き、根拠によって減給が可能になります。実際に減給を行うには以下の手順を経た上で従業員に「減給によって雇用を守れる」と説明を尽くすことが必要です。

  • 労働契約の変更行う
  • 従業員に十分な説明を求める
  • 役員の給与カットを含め、従業員の減給以外の手段を模索する

客観的な理由を用意して慎重に対応することが重要

「減給」と一言で言ってもさまざまな方法や理由がありますが、どの場合でも、事前に就業規則をしっかりと定めておく必要があります。減給パターンの中には社員の同意が必要ではない減給方法もありますが、強引な減給は不要な労務トラブルを引き起こしかねません。減給を実施する際は、いずれのパターンでも客観的な理由を用意し、慎重な対応を心掛けましょう。

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