【記入例付き】就業規則変更の際に必要な対応、注意すべき点とは?
<目次>
就業規則とは
就業規則の変更の届出について
変更届出の対象企業
Point
● 逆に一時的に10人未満になる場合は含む
● 非正規社員(パートや契約社員)も含む
● 受け入れている派遣社員は含まない
人数のカウントは、企業全体ではなく事業場単位で行います。そのため、企業全体が10人以上でも、事業場が10人未満であれば事業場での届出は必要ありません。また、このような場合には、変更の届出も不要なので覚えておきましょう。
変更届出の手順
就業規則変更の届出をスムーズに行うには、事前に手順を理解しておくことが重要です。就業規則変更の届出の具体的な手順について解説します。
①現状分析/変更案の策定
まずは社内の現状を分析します。現状を分析しながら、どのような変更が必要なのか慎重に判断して決定します。変更案を作成する際は、しっかりと明文化された案を作成することを心掛けましょう。
②従業員側の意見を聴取する
就業規則を変更する際は、その変更案の内容について従業員側の意見を聴取する必要があります。従業員の過半数で構成されている労働組合があれば労働組合に対し、労働組合がなければ過半数を代表する従業員に対して意見聴取を行います。代表する従業員を選ぶ際には、使用者が指名すると中立性を欠く可能性があるので、選挙や投票などで決めるのが一般的です。また、管理職に就いている従業員は、原則代表者にはなれません。労働組合や代表する従業員に聴取を行った後は、それらの意見を「意見書」にまとめます。
Point
● 労働組合や代表する従業員から同意を得る必要はない
● 労働組合や代表する従業員に聴取を行ったかどうかが重要
● 反対意見があっても、書類の効力には影響を及ぼさない
● 反対して意見書を出していない場合でも、意見を聴いたという事実を証明できれば受理される
③所轄労働基準監督署へ届出
従業員側の意見の聴取が終わった後は、所轄の労働基準監督署に届出を行います。届出を行う際には、「就業規則変更届」、「意見書」、「就業規則」の3つが必要です。就業規則変更届は、形式が決まっていませんが、厚生労働省や各労働局のホームページにモデル書があります。
就業規則変更届の新旧対照法例
届出を行う際に提出する就業規則は、全文提出する必要はありません。どの部分が変更になったのか新旧が比較できるような対照表を作成すれば十分です。また、就業規則変更届、意見書、就業規則の3つは、各2部ずつ作成します。1部は提出し、もう1部は労働基準監督署から印をもらって、控えとして会社で保管します。
新設する場合
就業規則を新設する場合の記入の例は以下の通りです。
参考:厚生労働省 職場のパワーハラスメント対策ハンドブック
参考:厚生労働省 モデル就業規則
変更または追記する場合
就業規則を変更または追記する場合の記入例は以下の通りです。
参考:厚生労働省 モデル就業規則
④従業員への周知
労働基準監督署への届出が完了した後は、事業所ごとに従業員に変更後の就業規則を周知させます。就業規則の変更は従業員に周知させて初めて効力が生じるため、従業員への周知は必須です。周知させる方法として各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける、従業員に書面を交付する、パソコンで常時確認できる状況にするなどが認められています。
就業規則変更の際に注意しておきたいこと
就業規則を変更する際には、手順に則って労働基準監督署に届出を行いますが、労使間でトラブルに発展することを防ぐため、変更時の注意点を把握しておく必要があります。就業規則を変更する際の注意点を説明します。
作業は事業所ごと
就業規則の変更の手続きは、企業全体ではなく、事業所ごとに行います。本社以外にも他の事業所や店舗などがあれば、各事業所や店舗で就業規則を作成します。就業規則を作成した後は、各事業所や店舗の住所地を管轄する労働基準監督署に就業規則を提出。本社の住所地を管轄する労働基準監督署に提出するわけではないので注意が必要です。
「就業規則の本社一括届出」が可能なケース
就業規則を作成する際には、企業全体ではなく事業所ごとに作成しますが、本社の就業規則の内容と各事業所の就業規則の内容が同じ場合があります。そのような場合には、「就業規則の本社一括」を行うことが可能です。一般的な手続きでは、各事業所で住所地を管轄する労働基準監督署に届出を行う必要がありますが、就業規則の本社一括届出では、本社の住所地を管轄する労働基準監督署に、まとめて届出を行うだけで済みます。就業規則を変更する際の聴取は事業所ごとに行う(複数事業者が1つの労働組合に所属する場合はその旨を記載)、全事業所の就業規則が同じ内容であることを明記していれば、就業規則の本社一括届出が認められます。
「周知」までが義務
就業規則を変更する際には、就業規則を労働基準監督署に提出するまでではなく、社内に周知させることまでが義務とされています(労働契約法第10条)。
提出をしても非合理な変更はNG
就業規則を変更する際は、労働組合や過半数を代表する従業員に聴取を行います。聴取で反対意見が出ていて、意見書が変更後の就業規則に添えられていても、住所地を管轄する労働基準監督署への提出は可能です。しかし、労働基準監督署への提出は可能でも、一方的に非合理で労働者に不利益であると判断される就業規則の変更については、労働契約法第9条と第10条で禁止されています。
就業規則の変更が非合理と判断された例
一方的に非合理な就業規則の変更を行ったことによって訴訟に発展し、企業側が敗訴した事例として「みちのく銀行事件」があります。
裁判所の判断:就業規則の変更は無効(労働者側の勝訴)。
理由:高齢の従業員に対して大きな不利益のみが与えられる内容であったため
Point
● 労働組合や過半数を代表する従業員の同意を得ても認められるとは限らない
● 変更の影響を受ける従業員が少数でも、非合理な変更内容であれば認められない
従業員にとっての影響を考えることが大事
上記の判例のように、従業員にとって著しく不利益となる就業規則の変更であれば、その度合いによっては非合理な変更に該当して訴訟に発展し、敗訴となる可能性があるので注意が必要です。逆に、従業員にとって利益となる就業規則の変更でも、一度変更すれば業績が悪化した場合に就業規則をすぐに戻せなくなってしまうため、それらをよく考慮した上で就業規則を変更しましょう。
労基法と矛盾する変更内容は無効
労働基準法第92条に、「就業規則は、法令又は等外事務所について適用される労働協約に反してはならない」また「行政官庁は、法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができる」と定められています。
(労働協約とは、使用者と労働組合で話し合いを行って、賃金や退職金、労働条件や団体交渉などの労働条件についてまとめた書面です。労働協約を交わした場合は、労働組合のみ労働協定の内容が適用されます。労使協定は、必ずしも労働組合と話し合いを行う必要はありません。過半数を代表する従業員と話し合って決めるという点で大きな違いがあります。)
就業規則の変更を行う際に、その変更内容が労働基準法(およびその関連法)や社内の労働協約に反している場合は認められません。これらの法律や規則には優劣が決まっており、強い方から順に労働基準法、労働協約、就業規則という並びになっています。就業規則は一番下位になるため、変更を検討する際は、労働基準法や労働協約に反した内容でないか、しっかり確認してから変更しましょう。
変更の届出をしない場合に罰則はある?
常時10人以上の労働者を雇用する使用者は、就業規則を変更する際に必ず住所地を管轄する労働基準監督署に届出を行う必要がありますが、届出を行わなければ、30万円以下の罰金に処されます(労働基準法第120条)。変更の届出を行っていない状況で労使間トラブルが発生した場合には、訴訟によって損害が生じる可能性もあります。不要なリスクを避けるため、就業規則を変更した場合はしっかり明文化と届出を行うように心掛けましょう。
合理的な内容と届出・周知を心掛けることが重要
常時10人以上の労働者を雇用する使用者が就業規則を変更する際は、この記事で説明した手順に従い、必ず届出を行いましょう。また、労働組合や過半数を代表する従業員に聴取して同意を得てから届出を行っていても、変更内容が不合理である場合は、民事訴訟や個別労使紛争といったトラブルに発展する可能性があります。就業規則を変更する際は、これらの労使間トラブルが起こらないように、合理的な変更を行う他、しっかりと届出や周知を行いましょう。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
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