継続雇用制度とは? 高齢者雇用安定法との関係、制度のポイント

労務

掲載日時:2019.11.25

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継続雇用制度とは、「高齢者雇用安定法第9条」の取り決めで、従業員の希望に応じて定年後も引き続き雇用する制度です。従来は60歳で定年退職が一般的でしたが、年金の受給開始年齢が65歳以降になり、60歳以上の高齢者が収入のない空白期間が生まれるため継続雇用制度が導入されました。今回は継続雇用の導入を検討している人事担当者に向けて、高齢者雇用に係る継続雇用の目的と制度内容について詳しく解説します。

高齢者雇用安定法の改正と継続雇用制度

「継続雇用制度」を理解するために、まずは2013年(平成25年)に施行された「高齢者雇用安定法」の改定ポイントについて説明します。

高齢者雇用安定法の概要と改定内容

高齢者雇用安定法の主な改定ポイントは以下の3つです。

①「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止
②継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大
③義務違反の企業に対する公表規定の導入

「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止

改正以前の高齢者雇用安定法では、定年以降も引き続き雇用する継続雇用制度の対象者を労使協定で限定できました。改正後は、対象者を限定することが禁止されました。企業は原則として希望者全員を年金受給開始年齢まで雇用することになりました。

ただし、改正前に設けられていた基準はすぐ廃止されるのではなく、12年間の経過措置が設けられています。また、心身の健康状態や勤務状況などが優れない従業員は雇用継続の対象外にできるといった企業側に負担がかからないようにする対策も設定されました。

継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大

高齢者雇用安定法の改正後は自社に限らず、子会社・関連会社などのグループ内の会社にまで範囲が拡大されました。

Point

子会社とは議決権の過半数を有している企業で、関連会社とは議決権の20%以上を有している企業を指します。グループ内の会社で従業員の継続雇用を行う際は、継続雇用の事前契約が必要です。

義務違反の企業に対する公表規定の導入

改正後は高年齢者雇用に対して何らかの措置を実施していない企業に対して、労働局やハローワークが指導を実施します。

指導が行われたにもかかわらず改善が見られない企業には、高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告が行われます。その勧告に対しても義務違反の現状が是正されない場合は、企業名が公表される可能性があります。

継続雇用制度の目的

継続雇用制度が導入された目的は、高齢化に対応するために引き上げられた年金支給開始年齢まで企業が従業員の雇用を継続することで、年金が支給されない空白期間を埋めるためです。空白期間を埋めることで、年金受給までの収入を確保できるため、生活の安定を図ることができます。

継続雇用制度の対象

継続雇用制度の対象者は、継続雇用の希望者全員です。定年が60歳で、65歳まで希望者の雇用を継続するという制度を導入している場合には、継続雇用を希望しない従業員は60歳で退職することが可能です。必ずしも65歳までの雇用を企業に対して義務付けるものではありません。

継続雇用制度の限定基準

高年齢者雇用安定法の改正前は労使協定で継続雇用制度の対象者を限定できましたが、改正後は原則として対象者を限定できなくなりました。しかし、改正される前(平成25年3月31日以前)に労使協定を結んでいた場合には、その労使協定の内容が以下のような場合に限り、一定の範囲で利用することが認められています。

Point

2016年(平成28年)4月1日から2019年(平成31)年3月31日まで:62歳
2019年(平成31)4月1日から2022年(令和4)3月31日まで:63歳
2022年(令和4)年4月1日から2025年(令和7)年3月31日まで:64歳

継続雇用制度の2つのタイプ「再雇用制度」と「勤務延長制度」の違い

継続雇用制度には、「再雇用制度」「勤務延長制度」の2種類があります。それぞれの制度の内容を解説します。

再雇用制度とは

再雇用制度とは、一度雇用していた従業員を退職扱いにしてから、再度雇い入れる制度です。再雇用制度は、「退職金は退職時に支払われる」「再度雇い入れる際に雇用形態を変更できる」というものです。

企業側は、再雇用時の雇用形態を嘱託社員や契約社員に変える、勤務時間や勤務日数など労働条件を変えることができ、そのまま雇用を続けるよりも賃金水準が抑えられるというメリットがあります。ただし、従業員の不満やモチベーション低下につながる可能性が高いため、必ず本人の希望を踏まえながら雇用形態や労働条件を決めるようにしましょう。

また、再雇用時における給与を極端に下げることは労働契約法第20条に抵触する可能性があるので注意が必要です。

第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

出典:電子政府の総合窓口e-Gov労働契約法

勤務延長制度とは

勤務延長制度とは、定年に達した場合でも、従業員を退職させずにそのまま雇用を続ける制度です。再雇用制度との違いは、雇用形態や労働条件の変更がない、延長期間が終了して従業員の退職時に退職金が支払われるという点です。

【再雇用制度と勤務延長制度の特徴】

継続雇用制度
再雇用制度 勤務延長制度

労働条件の変更は難しい

退職金の支払いは延長期間終了後

一旦退職扱いになるため、再雇用時に労働条件の変更が可能

労働条件を引き下げることにより、賃金水準を低く設定でき、会社の負担を軽減できる

退職金は再雇用前に支払う

継続雇用制度を導入する際の注意点

継続雇用制度を導入する際の注意点について解説します。

従業員から継続を拒否されたら

再雇用制度の場合は、再雇用時の雇用形態や労働条件が従業員本人の希望に沿わないことを理由に、継続を拒否されることも考えられます。

労働契約法第20条に抵触するような、雇用形態や労働条件を不当に悪化させる対応は認められませんが、雇用の延長によって雇用形態や労働条件、給与水準が下がる事自体は問題はありません。従業員が継続雇用を求めていなかったり条件を拒否されたりした場合は、退職扱いとなり得ますが、雇用者の条件が合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば高年齢者雇用安定法違反にはなりません。

参考:高年齢者雇用安定法Q&A│(高年齢者雇用確保措置関係)厚生労働省Web

パートや派遣社員には適用されない可能性も

パートや派遣社員には雇用継続制度が適用されない可能性があります。派遣社員とは、その企業の従業員ではなく、派遣元の従業員であるため、派遣先の企業の就業規則は適用されません。

また、パートは契約期間が定まっている雇用形態であるため、雇用継続制度が適用されないのが原則です。しかし、同一企業で、5年以上連続で雇用されている無期契約社員の場合には、雇用継続制度が適用される可能性があります。期間の定めのない正社員が雇用継続制度の対象ですが、一部上記のような例外もあるので注意が必要です。

社会保険や税金の扱いに注意

勤務延長制度は社会保険や税金の扱いは変わりません。しかし、再雇用制度では一度退職するため、社会保険や税金の扱いが変わる可能性があります。

空白期間なく再雇用する場合には、同日得喪と呼ばれる手続きが認められています。再雇用によって給料が下がった場合には下がった金額に合わせて社会保険料が計算されますが、下がらない場合や増えた場合には手続きの必要はありません。

所得税は所得の変動に応じて変わるため、再雇用で所得が減っても特に大きな問題にはなりませんが、住民税は前年の所得に応じて算出されます。再雇用で所得が減っていても住民税は下がらないため、所得に対して住民税が高くなることを従業員に事前に伝えておきましょう。

高齢者雇用をめぐる法改正に注目

少子高齢化が進行している昨今では、新入社員の確保が難しくなる他、高齢者の労働環境の変化が進むことが予想されます。それに伴い、今後も高齢者雇用に関する法律や制度の改正が行われる可能性が高いです。行政の布告に注意しながら、働く意欲のある高齢者がモチベーション高く働けるような環境を整えることを心がけましょう。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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