改正入管法を分かりやすく解説!特定技能と技能実習制度の違い、留意点
2019年4月に施行された改正出入国管理法(以下、改正入管法)。これまでの外国人雇用と比べて何がどのように変わったのか気になった人も多いと思います。新しい在留資格「特定技能」と外国人技能実習制度の違いや、特定技能を持つ外国人人材を雇用する企業側が知っておきたいポイントなどについて分かりやすく解説します。
改正入管法の概要、成立の背景
2018年11月に閣議決定され、2019年4月に施行された改正入管法。改正入管法で新設された在留資格や改正入管法が成立した背景について見ていきましょう。
新たな在留資格が新設された
外国人労働者の受け入れを拡大する目的で、特定技能と呼ばれる新たな在留資格が新設されました。政府は2019年度からの5年間で最大34万人の受け入れを見込んでおり、特定の14分野で就労を認めています。
成立背景は深刻な人材不足を解消するため
改正入管法が成立した背景には、国内の深刻な人手不足が挙げられます。特に中小・小規模事業者の人手不足は深刻で、国内の経済・社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が生じています。それらの人手不足を解消するために、外国人の就労を従来の専門的・技術的分野における人材に限定せず、これまでは就労が認められていなかった単純労働の外国人人材に門戸を開く必要がありました。
改正入管法では、現行の外国人人材の受け入れ制度を拡充し、一定の専門性・技術を有する外国人人材を幅広く受け入れるための仕組みを構築するための内容が盛り込まれています。
新在留資格「特定技能」とは
これまで外国人の単純労働を担ってきたのは外国人技能実習制度でした。新しく設けられた特定技能とは何が違うのでしょうか? 特定技能の特徴、技能実習との違いについて詳しく見ていきましょう。
「特定技能1号」と「特定技能2号」の違い
特定技能は、特定技能1号と特定技能2号の2つに分けられます。それぞれの在留資格の違いは以下の通りです。
● 特定技能1号:不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識または経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
● 特定技能2号:同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
また、新たな在留資格を取得するステップを分かりやすくまとめると以下のようになります。多くの場合、日本ですでに経験を積んでいる技能実習生が試験を経て特定技能1号へ移行し、将来的にはさらに習熟した技能が必要とされる特定技能2号の取得を目指すことになるでしょう。
続いて、在留期間や家族の滞納などの違いについて見ていきましょう。
在留期間
特定技能1号の在留期間は1年で、6ヵ月または4ヵ月ごとの更新、通算で上限5年まで在留することが可能です。特定技能2号は3年で、1年または6ヵ月ごとの更新となっています。1号と違って上限設定がなく、条件がそろえば永住申請も可能となります。
技能水準・日本語水準
特定技能1号の技能水準は、各業種の分野所轄行政機関が定める試験等で確認します。日本語能力水準は生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認します。どちらの水準も技能実習2号を修了した外国人は試験等が免除されます。特定技能2号の技能水準は試験等で確認が必要ですが、日本語能力水準は試験等が免除されます。
家族の帯同
特定技能1号の家族の帯同は基本的に認められていません。特定技能2号は要件を満たしていれば可能(配偶者、子)です。
受け入れ機関・登録支援機関の支援
特定技能1号は受け入れ機関〈企業など)・登録支援機関による支援(母国語でのサポート、生活オリエンテーションなど)の対象ですが、特定技能2号は支援の対象外です。
「特定技能1号」の対象となる14業種
特定技能1号の在留資格に「不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」と記載されていますが、対象となる業種はどのような業種があるのでしょうか。特定技能1号の対象となるのは以下の14業種です。
特定技能2号は「建設」「造船・船用工業」のみが受け入れ可能となっています。(19年4月現在)
「特定技能」と「技能実習」との違い
特定技能と技能実習との違いについてまとめると以下の通りです。雇用側の大きな違いは、まず制度が違うため雇用する目的が違うこと。労働者側の大きな違いは、賃金や転職といった待遇面です。
「特定技能」創設によるメリット
外国人労働者にとっては日本での就業機会が増えるというメリットがあります。企業側にとっては特定技能を取得した外国人を雇用すると、どんなメリットがあるのでしょうか? 企業側のメリットは主に2つです。
(1)人材難の業種で労働力不足が補われる
企業の業種が対象業種内の場合には、これまでは高度人材(学歴要件あり、在留期間制限なし)の条件に満たなかった日本の専門学校卒の留学生を採用することも可能になるなど、雇用対象の幅が広がります。
対象業種には農業や漁業もあり、地方の人材不足解消も期待されています。
(2)人権侵害のリスクを減らすことができる
技能実習制度では、転職の自由が認められていなかったため、安い賃金で過酷な労働環境に閉じ込められるケースがありました。しかし、改正入管法では、これらの問題視されてきた部分が見直されており、同一の業務区分内であれば転職可能となっています。
外国人労働者への人権侵害問題が国際的に厳しく批判されている現状を考慮すると、技能実習制度よりも特定技能を活用した方が人権侵害のリスクを減らせるでしょう。
「特定技能」の外国人人材を雇用するために留意すること
特定技能の外国人人材を雇用することによって、人材難の業種で労働力不足が補われる、人権侵害のリスクを減らすことができるなどのメリットがありますが、受け入れる企業は多くの手続きや準備が必要になります。雇用する際の留意点について解説します。
(1)登録支援機関との連携
特定技能の外国人人材を雇用する際は、省令で定められた内容で計画し、就労ビザの管理を含めて複雑な手続きが求められます。そのため、自社でできない場合は仲介機関である登録支援機関と連携しながら雇用を進めていく必要があります。
(2)労働者の生活面でのサポート
企業は特定技能の外国人人材を雇用した場合に、外国人に対する日常生活・職業生活・社会生活上の支援も求められます。住居探しや行政手続きのサポートといった、仕事以外の支援が必要になる手間や時間がかかることを考慮しておく必要があります。
(3)社内研修、社内風土の醸成
特定技能の外国人人材といっても、すぐに即戦力になるとは限りません。言葉や文化の壁も伴うため、語学研修や日本の商習慣を学ぶ研修といった社内研修が必要です。外国人労働者の研修だけでなく、外国人労働者を受け入れる社内体制を築き上げていくことも重要です。
社内制度の整備と外国人雇用のあり方を見直すことが重要
改正入管法の成立を巡ってはさまざまな問題点が指摘されていますが、現状は特定技能の供給源として従来の技能実習制度と共存する形になっています。今後も法の整備が進められていくことが予想されます。特定技能の外国人人材を受け入れる企業側は外国人雇用のあり方を見直し、「一緒に働く仲間」を受け入れる社内体制をつくっていくことが重要です。
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