最低賃金法とは? 【全5パターン】最低賃金の計算方法を徹底解説
2019年8月に「地域別最低賃金」が改定され、10月以降全国的に最低賃金が引き上げられる見通しです。企業は、最低賃金を下回っていることに気付かず、不当な金額で賃金を支払っていないか、定期的に確認する必要があります。ここでは、企業が知っておくべき最低賃金法の概要と、最低賃金の具体的な計算方法などを解説します。
- 「最低賃金法」とは? 種類、適用労働者の範囲、除外される賃金を解説
- 東京都、大阪府の最低賃金はいくら? 「地域別最低賃金」一覧表
- 最低賃金の計算方法 全5パターンを解説
- 自社の賃金の定期的なチェックが重要
「最低賃金法」とは? 種類、適用労働者の範囲、除外される賃金を解説
企業が労働者に支払うべき最低賃金の金額は、「最低賃金法」によって定められています。ここでは、企業が押さえるべき最低賃金法の概要や最低賃金から除外される賃金の種類、最低賃金の適用外となる労働者の条件について解説します。
最低賃金法の概要
最低賃金法とは、労働者の賃金の最低額を保証するものです。労働条件の改善や労働者の生活の安定、労働力の質的向上などを目的に制定されました。
企業は労働者に、最低賃金以上の賃金を支払わなくてはなりません。もし最低賃金を下回った場合は、最低賃金額との差額を支払う必要があります。
地域別最低賃金額を下回った場合場合には50万円以下の罰金、特定(産業別)最低賃金額下回った場合には30万円以下の罰金が発生します。
【参照】厚生労働省「最低賃金制度とは」
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類がある
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。それぞれの違いを見ていきましょう。
地域別最低賃金
地域別最低賃金とは、産業や職種に関係なく、都道府県内の企業で働く全ての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金のことです。47都道府県ごとに最低賃金が定められています。
【参照】厚生労働省「最低賃金の種類」
特定最低賃金
特定最低賃金とは、特定の産業で設定されている最低賃金のことです。地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を定めることが必要だと認められた産業に対して設定されます。
【参照】厚生労働省「最低賃金の種類」
最低賃金から除外される6つの賃金
最低賃金の対象となる賃金は「基本給」と「諸手当」の2つです。以下の6つの賃金は、最低賃金の対象から除外されます。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当、退職金など)
- 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与、勤続手当など)
- 所定労働時間を超える時間外労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時~午前5時までの労働への賃金で、通常の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当および家族手当
最低賃金を正確に算出するには、除外される賃金の種類を把握する必要があります。
最低賃金の適用外となる労働者の5つの条件
現在「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2軸で、最低賃金が定められています。
しかし、最低賃金を一律にすることで雇用機会を狭めてしまう可能性があります。以下のいずれかの条件に該当する労働者は、最低賃金の適用外になる(最低賃金を減額できる)特例が設けられています。
● 精神または身体の障害によって著しく労働能力が低い方
● 試用期間中の方
● 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受ける方で厚生労働省令で定めている方
● 軽易な業務に従事している方
● 断続的労働に従事している方
最低賃金の減額を行う場合、使用者は、「特例許可申請書」を2通作成し都道府県労働局長に提出、許可を得る必要があります。
東京都、大阪府の最低賃金はいくら? 「地域別最低賃金」一覧表
これまで、最低賃金の概要について解説しました。次に、自社に該当する地域の最低賃金は具体的にいくらなのか、地域別最低賃金の一覧表で確認してみましょう。
【最新】2019年10月以降の地域別最低賃金
2019年8月に地域別最低賃金の改定額が答申されました。この改定額は10月1日~10月上旬の間で順次発行される予定です。改定後の地域別最低賃金は以下の通りです。
最低賃金の計算方法 全5パターンを解説
最後に、最低賃金の計算方法について解説します。自社の賃金が最低賃金を下回っているかどうかを確認するには、給与体系ごとに以下の1~5のいずれかの方法で計算し、比較する必要があります。
1.時間給制
2.日給制
3.月給制
4.出来高払制その他の請負制
5.1~4の組み合わせ
それぞれのパターン別最低賃金の計算方法を具体的に解説します。
【参照】厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」
1.時間給制の場合
時間給制の場合は以下の式に当てはめて確認します。
時間給≧最低賃金額(時間額)
2.日給制の場合
日給制の場合は以下の式に当てはめて確認します。
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金の場合、計算式は以下のようになります。
日給≧最低賃金額(日額)
3.月給制の場合
月給制の場合は以下の式に当てはめて確認します。
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
月給制の場合の計算例
大阪府で働く月給制のAさんの計算例を見ていきましょう。Aさんの雇用条件や勤務状況は以下の通りです。
基本給 125,000円
職務手当 30,000円
通勤手当 7,000円
時間外手当 33,000円
合計 195,000円
● 労働時間/日 8時間
● 年間労働日数 250日
※大阪府の最低賃金:964円
まずは、最低賃金から除外される賃金(通勤手当・時間外手当)を引きます。
195,000円ー(7,000円+33,000円)=155,000円
次に、この金額を時給に換算します。
(155,000円×12ヵ月)÷(8時間×250日)=930円
月給を時給換算すると、Aさんの時給は930円となり、大阪府の最低賃金964円を下回っていることが分かります。
4.出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
賃金の総額÷総労働時間≧最低賃金額(時間額)
まずは、出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間で除します。その後、時間あたりの金額に換算してから最低賃金額(時間額)と比較します。
出来高払の場合の計算例
東京都で働く出来高払のBさんの計算例を見ていきましょう。Bさんの雇用条件と勤務状況は以下の通りです。
基本給 196,000円
通勤手当 7,000円
深夜割増賃金 4,900円
時間外割増賃金 9,800円
合計 217,700円
● 所定労働時間/年 170時間
● ○月の時間外労働 40時間
● うち深夜労働 20時間
※東京都の最低賃金:1,013円
まずは、最低賃金から除外される賃金(時間外割増賃金・深夜割増賃金・通勤手当)を引きます。
217,700円-(9,800円+4,900円+7,000)=196,000円
次に、この金額を時給に換算します。
196,000円÷200時間=980円
出来高払を時給換算すると、Bさんの時給は980円となり、東京都の最低賃金の1,013円を下回っていることが分かります。
5.上記1~5の組み合わせの場合
基本給の時給換算額+手当の時給換算額≧最低賃金額(時間額)
基本給と諸手当をそれぞれ時給換算し、両者の合計と最低賃金額(時間額)を比較します。
基本給が日給制で、各手当が月給制の場合の計算例
山形県で働くCさんの計算例です。Cさんの雇用条件と勤務状況は以下の通りです。
基本給(日給) 5,000円
職務手当 25,000円
通勤手当 3,000円
合計 141,000円
● 労働時間/日 8時間
● ○月の労働日数 20日
● 年間所定労働日数 250日
※山形県の最低賃金:790円
まずは諸手当の合計金額のうち、最低賃金から除外される賃金(通勤手当)を引きます。
(25,000円+3,000円)ー3,000円=25,000円
次に、日給制の基本給と月給制の手当をそれぞれ時給に換算します。
基本給の時給換算額:5,500円÷8時間=650円
手当の時給換算額:(25,000円×12カ月)÷(250日×8時間)=150円
最後に、基本給と手当の合計時給換算額を算出します。
650円+150円=800円
すると、Cさんの時給換算額は800円となり、山形県の最低賃金の790円を上回っていることが分かります。
自社の賃金の定期的なチェックが重要
2019年8月に最低賃金法が改正され、10月から順次全国的に最低賃金が引き上げられます。自社の賃金が最低賃金を下回ることのないよう、最低賃金の正しい計算方法を把握し、定期的なチェックを行うことが重要です。
また、最低賃金法の遵守はもちろんのこと、優秀な人材を定着させるためにも、社員の賃金を見直す機会を定期的に設けることをおすすめします。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
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