インターンシップの給料の考え方・受入時に注意すべき4つのリスク
「就業体験」の意味を持つインターンシップ。インターンシップは、優秀な人材に早期から接触できる、ミスマッチのリスクを減らせるといった企業側のメリットがあります。今回は、インターンシップを実施する際に人事担当者が気になる賃金(交通費や給料)の扱いや、考慮すべきリスクについて解説します。
インターン生に給料を払う?
インターンシップで給料を支払うケースや、受入企業に発生する責任について説明します。
「労働者」に該当する場合は給与を払う
インターン生が、労働基準法第9条の「労働者」と見なされるケースでは給料を払わなければなりません。インターン生を労働者と見なす場合は、最低賃金法や労働基準法などの労働関係法規が適用されます。そのため、最低賃金以下や無給で働かせることは労働基準法違反に当たります。
旧労働省の行政通達(平成9年9月18日基第636号)によれば、「労働者」に該当するかを判断する基準は、(1)企業とインターン生の間に実質的な指揮命令関係があったか、(2)企業がインターン生の作業によって利益や効果を得たか、の2点です。つまり、「見学」や「体験」の域を超えてアルバイト同様の働き方をさせておきながら、いわゆる「タダ働き」をさせたり、インターン生に制作させた資料や成果物を企業の利益のために利用したりすることは認められていません。
また、受入企業は安全配慮義務を負っており、インターンシップ中に事故やけが、ハラスメントなどが起きないように配慮する必要があります。ちなみに、「労働者」と見なされるケースでは労災保険が適用されます。しかし、労災保険対象でない場合でも、企業側は学生・企業ともに安心してインターンを実施できるように受け入れ準備を整えるべきです。
給与や交通費を払っている企業の割合は?
就職みらい研究所(リクルートキャリア)が「就職白書2018」で学生1,825人に行った調査によると、インターンシップ参加者のうち「交通費」が支給された割合は44.1%、「宿泊費または宿泊施設の無償提供」は16.8%、「報酬(交通費、宿泊費を除く)」が支給された割合は11.1%でした。調査結果からは、報酬(給与)を支給している企業は1割程度と少なく、交通費は半数近くの企業で支給されていることが分かります。
インターンシップにおける企業のリスクと予防策
インターンシップで企業に生じるリスクと予防策を説明します。
インターンシップで企業に生じるリスクと予防策
リスク | 予防策 |
---|---|
(1)学生の事故やけが | ・事前研修を行う ・保険に加入する |
(2)学生の行為による損害 | ・事前研修を行う ・保険に加入する |
(3)学生による機密漏えい | ・事前研修を行う ・守秘義務に関する誓約書を交わす |
(4)セクハラ・パワハラ | ・事前研修を行う |
(1)学生の事故やけが | |
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予防策 | ・事前研修を行う ・保険に加入する |
(2)学生の行為による損害 | |
予防策 | ・事前研修を行う ・保険に加入する |
(3)学生による機密漏えい | |
予防策 | ・事前研修を行う ・守秘義務に関する誓約書を交わす |
(4)セクハラ・パワハラ | |
予防策 | ・事前研修を行う |
(1)学生の事故やけが
インターン中、学生が通勤・作業中に事故に遭ったり、オフィス内でけがをしたりする可能性があります。偶然の事故や学生の故意・重大な過失によるけがは、基本的に学生個人の責任となりますが、企業の過失が認められれば損害賠償責任が企業に発生します。人事担当者は、大学と十分な確認調整を行った上で、事前研修を行う、保険に加入するなどの対策をしましょう。
(2)学生の行為による損害
学生がインターン中に企業の設備や備品を壊したり、従業員や顧客にけがを負わせたりするかもしれません。基本的に学生の過失によって損害が生じた場合は保険で対応することになりますが、企業にも安全配慮の義務があります。人事担当者は、大学と十分な確認調整を行った上で、事前研修を行う、保険に加入するなどの対策をしましょう。
(3)学生による機密漏えい
新製品の情報やファイナンス情報など、企業の機密情報が学生によって企業内外に漏れ出るリスクもあります。情報漏えいは、最悪、企業を倒産に追い込む可能性があり、対策すべき重大な問題です。予防のために、事前に守秘義務に関する誓約書を学生と受入企業の間で結ぶ、研修で守秘義務に関する注意指導を行うなどしましょう。
引用:経済産業省「成長する企業のためのインターンシップ活用ガイド 活用編」より
(4)セクハラ・パワハラ
従業員もしくは学生からのセクハラ・パワハラが起きる可能性があります。人事担当者の対策としては、インターン生への接し方や言動について事前にインターンシップ担当者へ注意喚起を促す、書面上でハラスメントに関する取り決めを定めておくなどがあります。セクハラやパワハラが生じれば世間的な信頼を失い、企業の存続にも関わる恐れがあるため、事前の予防が求められます。
インターンシップの保険加入について
万が一の事故やけが、損害のリスクを避けるために、事前に学生に保険に加入してもらいましょう。学校を通して案内される学生は、学校側の配慮で保険に加入していることがありますが、学校を介さず直接応募してきた学生は保険に加入していないケースがあります。インターン生を受け入れる際は、インターン生と企業、学校(もしくはコーディネート機関)の3者間で保険の加入状況について確認しましょう。以下の経済産業省の例のように書類に確認事項欄を設け、保険加入状況を文書に残しておくと安心です。
引用:経済産業省「成長する企業のためのインターンシップ活用ガイド 活用編」より
仮に事故やけがが発生した場合、インターン生が労働者と見なされる場合は労災保険が適用されます。しかし、労働者と見なされない場合は適用される保険が異なり、企業や学生は一般の保険で対応しなければなりません。以下は適用される保険の例です。
引用:文部科学省高等教育局専門教育課「インターンシップの導入と運用のための手引き~インターンシップ・リファレンス~」より
リスクに備えた上でインターンシップの実施を
事前に対策を講じることで、学生の事故やけが、情報漏えいといったリスクを抑えることができます。インターンシップを行う企業の人事担当者は、インターンシップ実施の体制が整っているか見直してみてはいかがでしょうか。
【編集部より】
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※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
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