労働基準法上の休憩の与え方|5、6時間勤務で休憩は発生する? 残業中の休憩は

労務

掲載日時:2023.11.16

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労働基準法における休憩時間の定義

休憩とは、使用者が従業員に付与すべき疲労回復のための時間で、労働基準法第34条によって定められています。休憩時間の長さは労働時間によって異なります。

労働時間が6時間超なら45分以上、8時間超なら60分以上の休憩を

労働基準法において、従業員の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えなければならないと定められています。

使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。(労働基準法第34条)

労働時間 休憩
労働時間が6時間以内 なし
労働時間が6~8時間 45分以上
労働時間が8時間以上 60分以上
労働時間が6時間以内
休憩時間 なし
労働時間が6~8時間
休憩時間 45分以上
労働時間が8時間以上
休憩時間 60分以上

労働時間が6時間以内、あるいは6時間ぴったりだった場合は休憩時間を付与せずとも構いません。ただし、1分でも超過してしまった場合は、45分以上の休憩を与える必要があります。

休憩時間は分割付与も可能

また、休憩時間は分割して与えることが可能です。例えば、8時間労働の場合は45分+15分と分割することもできます。ただし、あまりにも細切れな休憩だと十分な休息を取れているとは言えないため、違法とみなされる可能性もあります。

休憩時間の与え方例

労働基準法に定められている休憩時間を遵守しなければ法令違反となり、使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。

就業規則上の休憩時間との違い

労働基準法で定められた休憩時間は、あくまでも最低限の基準です。そのため、使用者は就業規則を通じて、法律で定められた基準以上の休憩時間を設定しても構いません。

例えば、6時間勤務で1時間の休憩を与える、4時間ごとに15分の休憩を設けるなど、よりよい労働環境を提供し、従業員の健康や生産性を考慮した休憩時間の付与も可能です。これらは業種や職種、使用者の方針によってさまざまです。

休憩時間の3原則と例外

休憩時間を与えるときは、以下の3つの原則を守らなければなりません。

途中付与の原則:休憩は労働時間の途中で与えなければならない

休憩時間を与えるタイミングは「労働時間の途中」に限られます(労働基準法第34条1項)。例えば、8時間労働の場合、7時間の連続労働後、1時間を休憩時間として与えて早退させるといった方法は禁じられています。

自由利用の原則:休憩中は労働から完全に解放されていなければならない

休憩中は、労働者が労働から完全に解放されていなければなりません。休憩時間の利用方法について、使用者(事業主)が制限することは原則として禁止されています(労働基準法第34条3項)。

ただし、以下の例外があります(労働基準法施行規則第33条より)。

1.警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員および、児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居を共にする者
2.乳児院、児童養護施設および障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居を共にする者(このような職員を雇う場合は、人数と収容する児童および勤務の態様についてあらかじめ所轄する労働基準監督署長の許可が必要)
3.居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者(同一の居宅において、一人の児童に対して複数の家庭的保育者が同時に保育を行う場合を除く)

一斉付与の原則:休憩は一斉に付与されなければならない

休憩時間は原則として一斉に与えなければなりません(労働基準法第34条2項)。ただし、例外が2つあります。

(1)業種による例外

以下の業種は、例外的に休憩時間を一斉付与しなくてもよいとされています(労働基準法施行規則第31条、労働基準法第41条)。

・運輸交通業 ・商業 ・金融広告業 ・映画・演劇業 ・通信業 ・保健衛生業 ・接客娯楽業 ・官公署
・農・水産業 ・監督・管理者 ・機密の事務を取扱う者 ・所轄労働基準監督署長の許可を得て行う監視・継続労働

また、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」の改正によって、2024年4月1日からトラックやバス、タクシーといったドライバーの拘束時間と休息時間には変更があるため注意しましょう。

参考:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」

(2)労働組合の協定による例外

労使協定を結んでいれば一斉休憩の例外が適用されます。

当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。(労働基準法第34条2項)

一斉に休憩時間を付与することが難しい場合は、労使協定において一斉休憩を付与しない労働者の範囲、該当する労働者に対する取り決めをしておくことで、休憩時間を別々に与えることが可能になります。

休憩時間に関するよくある疑問

パートやアルバイト社員は休憩の与え方が異なるのか、残業中に休憩を与えるべきかなど、休憩時間にまつわるよくある疑問について解説します。

パート・アルバイトの休憩は?

休憩の定めは雇用形態を問わず適用されるため、パート、アルバイト社員と正社員の休憩時間が異なることはありません。そのため、例えば「パート社員・5時間勤務」の方の休憩が0時間でも法律上問題はなく、逆に6時間を超えると45分以上の休憩を与える必要があります。

残業中にも休憩を与える?

基本的には、残業中に休憩を与える必要はありません。しかし、就業規則の定め方には注意が必要です。例えば、労働時間を6時間ぴったりに定めていた場合、休憩時間は法律で定められている通り0分となります。しかし、1分でも残業が発生すれば労働時間が6時間を超えるため、45分以上の休憩時間を追加で与えなければなりません。この残業が発生した際の運用ルールについては、会社それぞれで就業規則に定めておく必要があります。

また、前提として過度な残業は従業員の体調不良につながりやすいため、長時間労働にならない工夫も必要です。

休憩中に電話番や来客対応をさせてもいい?

休憩中に電話番や来客対応をしなければならず、会社に拘束されているような状況であれば、休憩時間の自由利用の原則(労働基準法第34条3項)に反するため、違法とみなされる可能性があります。電話番や来客対応で休憩時間が削られてしまう場合、会社は別途休憩を与えなければなりません。

参考:厚生労働省「労働基準情報:FAQ(よくある質問)ー労働基準法に関するQ&A 」

「休憩時間を短縮して早帰り」はOKか?

「休憩はいらないので、その分早く帰りたい」と従業員が申し出たとしても、会社は基本的にその要望を受け入れることはできません。6時間を超えて働かせた場合に休憩がなければ労基法違反となります。また、「休憩後に会議があるので必ず5分前に着席すること」のような会社側からの休憩時間短縮要請も、原則として法律では認められていませんので注意が必要です。

タバコ・トイレ休憩が多い社員にどう対処する?

非喫煙者に不公平感が生まれている状況であれば、対処が必要になってきます。例えば、喫煙の有無に関わらず1~3時間に5分程度の一斉休憩を取るという方法です。ただし、健康増進法の改正によって、現在は「基準を満たした喫煙室」以外では原則禁煙となっているためそちらも注意しましょう。

参考:厚生労働省「なくそう! 望まない受動喫煙。 事業者のみなさん」

また、トイレ休憩の多さを理由に減給することはできませんが、確たる証拠があれば人事評価を下げる理由、賞与を減額する理由にすることは可能だといいます。詳しくは、人事コンサルタントの田中顕さんによる以下の記事をご覧下さい。
タバコ休憩、トイレ休憩…◯◯休憩が多い社員への対処法

【関連記事】「困った社員」への対処法に関する記事はこちら
仕事の能率が悪く、かつ時間外労働ばかり多くなっている社員への対処法
休職と復職を繰り返す社員の解雇で注意すべきこと

会社側は労働基準法の正しい理解を。従業員は「違法かも」と思ったら相談を

従業員に休憩時間を与えることは会社の義務です。従業員が健康かつ快適に働くことができる環境を整えるために、人事・総務担当者は法律を正しく理解し、適切な休憩時間を与えましょう。

また、従業員として「自分の会社は違法かもしれない」と感じたら、会社の人事・総務担当者などに相談し、改善を求めましょう。会社側が法律を理解していない、改善の要求を聞き入れてくれないといった場合は、労働基準監督署に相談してみてください。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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