【記入例付き】36協定とは? 新様式や罰則、上限についても解説

労務

掲載日時:2018.12.19

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時間外・休日労働について定めた36協定。2018年6月には働き方改革関連法案が成立し、36協定の内容が一部見直されました。そこで今回は、36協定の基礎知識や、協定届の作成方法について解説します。

※2018年12月19日時点での情報です。最新の情報については厚生労働省のホームページを確認してください。

36協定の基礎知識

ここでは、36協定における残業時間の上限や特別条項、36協定に違反した場合の罰則などについて解説していきます。

36協定とは

36協定とは、時間外・休日労働の取り決めに関する労使協定のことです。法定の労働時間外または、法定の休日に労働を課す場合は、あらかじめ労使で書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出なければならないと労働基準法第36条で定められています。

36協定における残業時間(時間外労働時間)の上限

36協定を締結していれば、いくらでも残業させられるわけではなく、残業時間をしてよい時間には上限があります。これは労働基準法で定められており、1カ月の場合は45時間、1年の場合は360時間です。36協定では通常、1日、1カ月、1年という期間ごとに限度時間を定める必要があります。

ただし、以下の表のように一般労働者と変形労働時間制(特定の条件の下で、1カ月もしくは1年単位で労働時間を調整することができる制度)の対象となっている労働者とでは、残業時間の上限が異なるため注意が必要です。

延長時間の限度

期間 一般労働者の場合 1年単位の変形労働時間制の場合
1週間 15時間 14時間
2週間 27時間 25時間
4週間 43時間 40時間
1カ月 45時間 42時間
2カ月 81時間 75時間
3カ月 120時間 110時間
1年 360時間 320時間
期間:1週間
一般労働者の場合 15時間
1年単位の変形労働時間制の場合 14時間
期間:2週間
一般労働者の場合 27時間
1年単位の変形労働時間制の場合 25時間
期間:4週間
一般労働者の場合 43時間
1年単位の変形労働時間制の場合 40時間
期間:1カ月
一般労働者の場合 45時間
1年単位の変形労働時間制の場合 42時間
期間:2カ月
一般労働者の場合 81時間
1年単位の変形労働時間制の場合 75時間
期間:3カ月
一般労働者の場合 120時間
1年単位の変形労働時間制の場合 110時間
期間:1年
一般労働者の場合 360時間
1年単位の変形労働時間制の場合 320時間

また、例外として、特定の期間に集中して業務にあたる必要がある以下の4事業に関しては、時間外労働の上限が適応されません。

時間外労働の上限の例外となる4業種

①土木や建築、工作物など建設関連の事業
②自動車の運転業務
③新技術、新商品などの研究開発業務
④季節的要因による業務量変動の大きい業務や、公益上集中的な作業が必要な業務

特別条項付きの協定締結

時間外労働の上限時間に収まらない場合には、特別な事情があるときに限り、「特別条項」を付与すれば限度時間を延長できます。延長の上限回数は最大で年6回までです。特別な事情とは、例えばボーナス商戦に伴う業務の繁忙や大規模なクレームへの対応、機械トラブルへの対応など、一時的もしくは突発的な理由がある場合に限られます。特に理由を限定せず、「上司が必要と認めたとき」「業務が繁忙なとき」などとするのは特別な事情として認められません。

現行の法律では、特別条項は事実上、上限のない労働を可能にするものであり、過重労働を促すとして問題視されてきました。しかし、2018年6月に成立した働き方改革関連法案に「残業時間の上限規制」が盛り込まれ、以下のように見直しが図られました。

現行

①時間外労働の原則は月45時間・年360時間(行政指導のみ)
②特別条項を締結した際の延長時間の上限なし


改正案

①月45時間・年360時間という時間外労働の原則を法定化(罰則あり)
②特別条項がある場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできない。また、月45時間を上回る回数は年間6カ月まで

残業時間の上限規制は、2019年4月に施行、中小企業は2020年4月から適用となります。

関連記事:社労士が解説「人事が必ずおさえておきたい 労働時間の上限規制と時間管理方法」

36協定違反/罰則

「上限時間を無視した残業を課している」「労使協定は結んでいても労働基準監督署に届け出ていない」など、36協定を適切に締結しなかった場合は、労働基準法違反として事業主または事業の経営担当者に「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられることがあります。対象者は、労働基準法で定められた使用者(※)と、会社そのものです。

36協定届は通常、有効期限が1年間に定められていることが多く、ほとんどの会社において年に1度、再度締結の必要が生じます。この際、人事担当者が期限の確認を忘れて協定届の期限が失効したままになってしまうケースが少なくありません。36協定の締結と労働基準監督署への届け出を行う日をあらかじめ年間のスケジュールに組み込んでおき、締結の漏れが起きないようにしましょう。また、労働時間を適切に管理するため、勤怠管理ツールを導入する、残業時間のリマインドメールを送るなどして、労働者本人と上司が残業や休日労働の状況をいつでも確認できるようにすることが大切です。

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※労働基準法の使用者
事業主または事業の経営担当者、その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。(労働基準法第10条)

36協定届の書式や記入例

ここでは、実際の協定届を参考にしながら、36協定届の記入項目と記入の仕方について解説していきます。

厚生労働省による記載例

※2018年12月19日時点の情報です。実際に作成するときは最新の情報をご確認ください。

記入すべき項目

「時間外労働の上限規制」導入に伴い、2019年4月以降は36協定届の様式が変更となります。従来の様式では、36協定の様式の余白部分などに任意の様式で特別条項の内容を記載することが一般的でした。しかし、36協定届新様式案では、「一般条項」と「特別条項付き」の2種類に分類されるようになります。そこで、厚生労働省「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)様式(案)」をもとに、一般条項の協定届・特別条項付き協定届の記入方法について順に解説していきます。

36協定届(一般条項)の記入方法

記載すべき項目は以下の通りです。

  • 「事業の名称」
  • 「時間外、休日労働をさせる必要のある具体的事由」
  • 「業務の種類」
  • 「延長することができる時間」
  • 「1日を超える一定の期間(起算日)」
  • 「期間」
  • 「1年単位の変形労働時間制により労働する労働者」
  • 「所定休日」
  • 「労働させることができる休日並びに始業及び終業の時刻」
  • 「協定の成立年月日」
  • 「協定の当事者である労働組合の名称又は労働者の過半数を代表する者の職氏名」
  • 「職、氏名」
  • 「協定の当事者の選出方法」
  • 「使用者職氏名」
  • 「延長することができる時間」

以下、記載の際の注意事項について解説します。

36協定届(一般条項)記載の注意点

一般条項(表面)。厚生労働省「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)様式(案)」をもとに作成

A 労働保険番号・法人番号を記載します。
B 事業場(工場、支店、営業所 等)ごとに協定を結びます。
C この協定が有効となる期間を定めます(1年間とすることが望ましい)。
D 1年間の上限時間を計算する際の起算日を記載します。その1年間においては協定の有効期間にかかわらず、起算日は同一の日である必要があります。
E 対象期間が3カ月を超える1年単位の変形労働時間制が適用される労働者については、②の欄に記載します。
F 事由を具体的に記載します。
G 業務の範囲を細分化し、 明確に定めます。
H 1日の法定労働時間を超える時間数を定めます。
I 1カ月の法定労働時間を超える時間数を定めます。①は45時間以内、②は42時間以内です。
J 1年の法定労働時間を超える時間数を定めます。①は360時間以内、②は320時間以内です。

厚生労働省による記入例はこちらです。
36協定記載例(一般条項)

36協定届(特別条項)の記入方法

特別条項付きの36協定届は様式が2枚にわたり、「限度時間内の時間外労働についての届出書」と「限度時間を超える時間外労働についての届出書」を届け出る必要があります。ここでは、記載方法と記載時の注意事項について解説します。

36協定届(特別条項)記載の注意点

特別条項1枚目(表面)。厚生労働省「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)様式(案)」をもとに作成 特別条項2枚目(表面)。厚生労働省「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)様式(案)」をもとに作成

A 1年間の上限時間を計算する際の起算日を記載します。その1年間においては協定の有効期間にかかわらず、起算日は同一の日である必要があります。
B 事由は一時的または突発的に時間外労働を行わせる必要のあるものに限り、できる限り具体的に定めなければなりません。「業務の都合上必要なとき」「業務上やむを得ないとき」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められません。
C 業務の範囲を細分化し、明確に定めます。
D 月の時間外労働の限度時間(月45時間または42時間)を超えて労働させる回数を定めます(年6回以内に限る)。
E 限度時間(月45時間または42時間)を超えて労働させる場合の、1カ月の時間外労働と休日労働の合計の時間数を定めます(月100時間未満に限る)。なお、この時間数を満たしていても、2~6カ月平均で月80時間を超えてはいけません。
F 限度時間を超えて時間外労働をさせる場合の割増賃金率を定めます。この場合、法定の割増率(25%)を超える割増率となるよう努めてください。
G 限度時間(年360時間または320時間)を超えて労働させる1年の時間外労働(休日労働は含まない)の時間数を定めます。年720時間以内に限ります。
H 限度時間を超えて時間外労働をさせる場合の割増賃金率を定めます。この場合、法定の割増率(25%)を超える割増率となるよう努めてください。
I 限度時間を超えて労働させる場合にとる手続きについて定めます。
J 限度時間を超えた労働者に対し、裏面の記載心得 1(9)①~⑩ の健康確保措置のいずれかの措置を講ずることを定めます。
K 労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、36協定の締結をする者を選ぶことを明確にした上で、投票・挙手などの方法で労働者の過半数代表者を選出し、選出方法を記載します。使用者による指名や、使用者の意向に基づく選出は認められません。
L 管理監督者は労働者代表にはなれません。
M 協定書を兼ねる場合には、労働者代表の署名または記名・押印が必要です。
N 時間外労働と法定休日労働を合計した時間数は、月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内でなければいけません。これを労使で確認の上、必ずチェックを入れます。チェックボックスにチェックがない場合には、有効な協定届とはなりません。
O 押印も必要です。

厚生労働省による記入例はこちらです。
36協定記載例(特別条項)

働きやすい職場づくりのために労務知識の理解は不可欠

労使関係を良好に保ち、働きやすい労働環境づくりを推進するためには、人事・労務担当者が労働時間管理についてしっかり理解する必要があります。「36協定の知識が乏しく、うっかり労働基準法違反をしていた」として罰せられないためにも、36協定についての知識を深めて、正しい労務管理を行いましょう。

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36協定を締結していても、「特別条項」を悪用し社員に長時間労働を強いる企業も存在します。「36協定を守って入ればブラック企業ではない」とは言い切れません。

そこで@人事では、弁護士監修の基、自社の「ブラック度」を診断できるチェックリストを作成しました。チェックリストの項目が一つでも当てはまれば労働環境を改善する必要があります。チェックリストを活用し、自社の状況を見つめ直すきっかけにしてください。

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