効率的な文書管理方法とは。保管方法、運用ルール作りの3ステップを紹介
総務としての日常業務をするにあたって、文書管理は切っても切れない関係です。しかし、社内に統一された文書管理のルールが存在しないと、文書の検索や管理をするたびに無駄な時間がかかってしまいます。ここでは、基礎知識や、業務効率化に役立つ文書管理のルールの作り方について解説していきます。
文書管理の基礎知識
文書のライフサイクルや保存期間年数など、文書管理の基礎知識について説明します。
文書のライフサイクル
文書のライフサイクルは「作成・発生」「処理」「保管」「保存」「廃棄」という流れになっています。文書は段階によって「活用期」と「低活用期」に分かれ、それぞれに合った管理方法が必要となります。
ここで注目したいのが「保管」と「保存」の違いです。これらの言葉は同意義だと思われがちですが、文書のライフサイクル上では明確な違いがあります。
- | 保管場所 | 該当文書 |
---|---|---|
保管 | 事務室 | 今年度~前年度の文書・常用文書 |
保存 | 文書庫 | 前々年度以前に発生・3年以上保存の必要性あり |
保管 | |
---|---|
保管場所 | 事務室 |
該当文書 | 今年度~前年度の文書・常用文書 |
保存 | |
保管場所 | 文書庫 |
該当文書 | 前々年度以前に発生・3年以上保存の必要性あり |
つまり、「保管」はよく使う文書であり、「保存」はあまり使わない文書ということになります。
会社で扱う文書の保存期間
会社で「保存」している書類の中には法令で保存を義務付けられている「法定保存文書」があります。これらの文書は所定の期間中、適切な管理下で保存する必要があります。今回は、その文書の中から人事・総務の業務に関わりが深い文書をピックアップしてご紹介します。
保存期間 | 文書名 | 概要 | 起算日 |
---|---|---|---|
永久保存(※) | 定款 | 会社の目的、商号などを記載する | - |
株主名簿 | 株主の氏名や所有する株式の数などを記載する | - | |
10年 | 株主総会議事録 | 日時・場所や議事の経過の要領などを記載する | 株主総会の日 |
取締役会議事録 | 日時・場所や議事の経過の要領などを記載する | 取締役会の日 | |
7年 | 取引に関する帳簿・書類 | 仕訳帳、現金出納帳など | 帳簿閉鎖日や事業年度終了日の翌日から2カ月経過した日 |
給与所得者の扶養控除等申告書など源泉徴収関係書類 | 所得控除を受けるために提出する書類 | 法定申告期限 | |
5年 | 従業員の身元保証書 | 従業員が会社に損害を与えた場合、身元保証人が代わりに賠償するという書面 | 作成日 |
4年 | 雇用保険の被保険者に関する書類 | 資格取得等確認通知書、同転勤届受理通知書など | 完結の日(退職など) |
3年 | 労働者名簿 | 氏名、生年月日、住所などを記載する | 死亡、退職、解雇の日 |
雇入れ・解雇・退職に関する書類 | 関係書類は、労働条件通知書や退職届など | 死亡、退職の日 | |
災害補償に関する書類 | 業務災害などの災害に関する書類 | 災害補償が終わった日 | |
2年 | 健康保険・厚生年金保険に関する書類 | 被保険者資格取得確認や標準報酬決定通知書など | 完結の日(退職など) |
保存期間:永久保存(※) | |
---|---|
文書名 | 定款 |
概要 | 会社の目的、商号などを記載する |
起算日 | - |
保存期間:永久保存(※) | |
文書名 | 株主名簿 |
概要 | 株主の氏名や所有する株式の数などを記載する |
起算日 | - |
保存期間:10年 | |
文書名 | 株主総会議事録 |
概要 | 日時・場所や議事の経過の要領などを記載する |
起算日 | 株主総会の日 |
保存期間:10年 | |
文書名 | 取締役会議事録 |
概要 | 日時・場所や議事の経過の要領などを記載する |
起算日 | 取締役会の日 |
保存期間:7年 | |
文書名 | 取引に関する帳簿・書類 |
概要 | 仕訳帳、現金出納帳など |
起算日 | 帳簿閉鎖日や事業年度終了日の翌日から2カ月経過した日 |
保存期間:7年 | |
文書名 | 給与所得者の扶養控除等申告書など源泉徴収関係書類 |
概要 | 所得控除を受けるために提出する書類 |
起算日 | 法定申告期限 |
保存期間:5年 | |
文書名 | 従業員の身元保証書 |
概要 | 従業員が会社に損害を与えた場合、身元保証人が代わりに賠償するという書面 |
起算日 | 作成日 |
保存期間:4年 | |
文書名 | 雇用保険の被保険者に関する書類 |
概要 | 資格取得等確認通知書、同転勤届受理通知書など |
起算日 | 完結の日(退職など) |
保存期間:3年 | |
文書名 | 労働者名簿 |
概要 | 氏名、生年月日、住所などを記載する |
起算日 | 死亡、退職、解雇の日 |
保存期間:3年 | |
文書名 | 雇入れ・解雇・退職に関する書類 |
概要 | 関係書類は、労働条件通知書や退職届など |
起算日 | 死亡、退職の日 |
保存期間:3年 | |
文書名 | 災害補償に関する書類 |
概要 | 業務災害などの災害に関する書類 |
起算日 | 災害補償が終わった日 |
保存期間:2年 | |
文書名 | 健康保険・厚生年金保険に関する書類 |
概要 | 被保険者資格取得確認や標準報酬決定通知書など |
起算日 | 完結の日(退職など) |
※法令により永久保存を義務付けられたものではないが、文書の性質上、永久保存が望ましいとされている書類
文書管理のルールの作り方
次は、具体的な文書管理のルールの作り方について説明していきます。
(1)文書の分類方法を決める
文書管理のルールを作る際は、文書の分類方法を決め、その分類方法に則った文書管理の仕組みを作ったあと、実際に文書を収納していきます。
文書の分類方法としてよく使われているものには、ワリツケ・ツミアゲ方式があります。
ワリツケ式
文書を管理する人が職務分析をしながら、大分け→中分け→小分けというように上から下へ仕事を分類していき、管理番号を付けて文書管理表を作ります。さらにこの表から各個別文書にも番号を付け、その番号の付いたファイルに収納していく方式です。
ツミアゲ式
各々の職員が、現物の書類を確認しながら小分け→中分け→大分けというように下から上へ仕事を分類して収納し、ガイドを立ててまとめ上げたうえで保管単位別に規制する方式です。
ワリツケ方式は理論的である一方で実務的ではない面も多く、公文書管理の研究開発と改善を行うNPO団体の「行政文書管理改善機構」は、ツミアゲ式を推奨しています。
(2)文書管理の仕組みを作る
文書管理を効率的に行う方法の1つとして、管理台帳の作成が挙げられます。
管理台帳の項目の例としては以下のものがあります。
- 文書分類
- 文書名
- 文書保管場所
- 作成者
- 作成日
- 保管期間
- 保管期間満了日
ここで重要となるのは、必要な文書を迅速に取り出せるようにすることです。「文書分類」や「文書保管場所」を明記することで、誰でもすぐに文書が保管されている場所を把握できるようにしておきましょう。
(3)文書を収納する
紙文書を収納する際には「文書活用のしやすさ」を目的として収納しましょう。収納する際に使用する用具の代表としてはフォルダ、厚型ファイル、ボックスが挙げられます。収納する文書の性質にあった用具を選びましょう。また、収納する際はラベリングによる表示作業のあと、所定の場所に収納する配列作業を行います。
表示作業
表示作業では、ファイルの背表紙に統一されたラベルを貼っていきます。ラベルに文書名だけでなく、作成日、保管期間、保管期限を記載しておくことで廃棄する際の判断基準の1つになります。
配列作業
保管場所を階層化して配列することで、必要な文書を見つけやすくなります。また、キャビネットに番号を振り、その上段から「A-1、A-2、A-3……」と決めたロケーションを文書管理台帳に書いておくと、検索作業の効率化につながります。
文書の電子化
文書保存の負担軽減の観点から、政府によって書類の電子化が推進されています。以下の項目では、文書の電子化に関連する法律である「e-文書法」と「電子帳簿保存法」について解説していきます。
e-文書法と電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は1998年に施行された法律、e-文書法は2005年に施行された法律です。この法律の施行によって、これまで認められなかったスキャンによる電子化保存が認められるようになりました。e-文書法と電子帳簿保存法の違いは、主に「対象文書」「承認の必要性」「要件」です。違いを簡単にまとめた表が以下のものとなります。
略称法令名 | 対象文書 | 承認の必要性 | 要件 |
---|---|---|---|
e-文書法 | 保存が義務付けられているすべての文書 | 必要なし | 「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」 |
電子帳簿保存法 | 国税関係の書類 | 税務署長などの承認が必要 | 「真実性」「可視性」 |
e-文書法 | |
---|---|
対象文書 | 保存が義務付けられているすべての文書 |
承認の必要性 | 必要なし |
要件 | 「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」 |
電子帳簿保存法 | |
対象文書 | 国税関係の書類 |
承認の必要性 | 税務署長などの承認が必要 |
要件 | 「真実性」「可視性」 |
2015年と2016年には税制改正による要件緩和があり、2015年は金額や電子署名などの要件が撤廃され、適正事務処理条件が追加されています。2016年には、スキャン要件が緩和され、スマートフォンからでも領収書などをスキャンできるようになりました。
電子帳簿保存法についての詳細はこちら
→国税庁「電子帳簿保存法について」
文書をデータ化することは、業務の効率化につながります。しかし、紙文書の量が多いとスキャンするのも一苦労なため、書類の量が多いときは専門の業者に依頼するのも1つの手です。また、古い体質の会社だと「紙でないと不安」という理由でペーパーレス化が進まないこともあります。そういった場合は、注文書や領収書など一部の書類だけ、できるところから電子化を進めていきましょう。
文書管理の見直しは業務効率化につながる
法律の制定によって、紙文書だけでなく電子文書の管理必要性もさらに高まってきています。文書管理を見直すことは、全従業員の日々の業務量削減につながります。それぞれの会社に合った管理システムを作り、文書の電子化を利用することで、時間を有効活用していきましょう。
【編集部より】
書類の管理、業務効率化に関する記事はこちら。
→書類整理の基本は書類をためないこと! 「『超』整理術」を簡単解説
→ズボラでもできる!仕事が効率化するデスクの整理整頓術
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