新入社員研修では、多様なカリキュラムを組み込んだスケジュールを、数日間から数カ月にわたって組むことになります。研修担当者は、念入りなスケジュール調整が必要になります。
このページでは、新入社員研修のスケジュールの作り方を、具体的な例を交えて解説します。
新入社員スケジュールは、以下の手順で作成しましょう。
カリキュラムを以下のように決定します。なお「新入社員研修についてよくある質問【設計編】」の「新入社員研修のカリキュラムはどのように決めればよいですか?」もご参照ください。
まず、経営者に人材育成方針を確認し、その内容を具体的なスキルや知識にブレイクダウンします。その後、社員にもヒアリングし、新入社員に身に付けさせたいスキル・知識の程度を把握しましょう。例えば前年度の新入社員には、「新入社員研修で役立ったこと」「新入社員研修で学んでおきたかったこと」「学べなかったために困ったこと」を尋ねます。また先輩社員には、「現場に配属される前に知っておいてほしいこと、身に付けてほしいこと」「前年度の新入社員を育てる中で感じた課題」を聞くとよいでしょう。
事前課題(アンケート)を行い、受講者の現状を把握します。ビジネスマナーなどは基礎から教える必要がありますが、PCスキルや語学力については、事前課題や入社試験の結果をもとに把握しておく必要があります。そのうえで、新入社員のレベルに合った研修を設計しましょう。
研修の目的・目標は、目標行動と合格基準を設けて具体的に設定します。また各目標に対し、期限を設定することも重要です。「いつごろまでに、何を、どの程度までできるようになるか」という形で目標設定を行いましょう。例えば、「入社後3カ月までに、独りで顧客対応ができるようになる」という形です。
なお目標設定の際は、解釈が多様になる言葉を避け、明確な行動状態を設定しましょう。以下はその一例です。
解釈が多様になる言葉 | 解釈が限定的になる言葉 |
---|---|
~を知っている | ~について書ける |
~について理解している | ~を暗唱できる |
~に対する理解を深めている | ~の差異が認識できている |
~を分かっている | ~を作れる |
~が十分に分かっている | ~について列挙できる |
メイジャー『教育目標と最終行動―行動の変化はどのようにして確認されるか』(1970年)をもとに作成
目標は、努力すれば達成が見込める程度にレベル設定することで、受講者が前向きに取り組めるようになります。詳しくは「『時間の無駄』とは言わせない! 身に付く研修を行うためのポイント」をご覧ください。
目的・目標をスキル・知識のレベルまでブレイクダウンし、必要なカリキュラムを選択します。例えば、先述の「入社後3カ月までに、独りで顧客対応ができるようになる」という目標であれば、必要なカリキュラムは、「ビジネスマナー」「ビジネスライティング」「電話応対」などと細分化できるでしょう。カリキュラムの種類については「これで完璧! 新入社員研修の主なカリキュラムと成功のポイント」をご覧ください。
研修の外部委託と内製化には、それぞれメリット・デメリットがあります。カリキュラムの内容によって、外部委託するものと内製化するものを整理しましょう。
例えば、自社の状況や業界の課題などについての研修は、その内容に精通した内部講師が行うのが適切です。一方、ビジネスマナーやビジネスライティングなど、業種や職種に縛られない研修で、かつ社内では専門的に教えられないものは、外部委託したほうが質を担保できます。
なお外部委託のメリット・デメリットについて、詳しくは「外部研修は役に立つ? 新入社員研修を外部委託するメリット・デメリット」をご覧ください。
外部講師の予定、社外セミナーの開催予定、内部講師の予定、他の社内行事の日程、関係部署における業務の繁忙期・閑散期などを踏まえて、スケジュールを策定します。特に実地研修を行う場合は、現場との早めの予定調整が不可欠です。また、日程が合わず集団研修を行えない場合は、E-ラーニング(動画配信)や通信教育などの方法で補うことも考えましょう。
具体的なスケジュールの組み方については、後述する「新入社員研修スケジュールを作成するポイント」で解説します。
新入社員研修スケジュールを作る際のポイントと、新入社員研修スケジュールの具体例をご紹介します。
新入社員研修のスケジュールを作る際には、以下のポイントを押さえましょう。
「1日目は内部講師が研修をする日」「2日目は外部セミナーに参加させる日」など、内製化する部分と外部委託する部分で日程を分けましょう。「午前中のうちに内部講師が社内で研修を行い、午後は社外セミナーに参加させる」といった予定の立て方では、研修の進行が慌ただしくなってしまいます。
自社や業界についての知識をあらかじめ身に付けたあと、実践的な内容に入ったほうが、仕事のイメージを持ちやすく、知識やスキルが身に付きやすくなります。また、就業規則や社内施設など、会社で働くうえで不可欠な内容の説明も、早いうちに行うのが適切です。ビジネスマナーやビジネスライティングなど実践的な内容は、後半以降に持ってきましょう。
受講者の集中力を保つため、休憩時間は1時間~1時間半ごとに20分前後を確保しましょう。
新入社員の知識・スキルの定着や、今後のフォローアップのため、必ず振り返りの時間を設けましょう。アンケートも併せて行い、次年度以降の新入社員研修の改善に活用します。1日の終わりや研修期間中の毎週末など、定期的に行うことが重要です。また振り返りは、研修時間内の、受講者のモチベーションが高いうちに行いましょう。
会場設営をスムーズに行うため、スケジュールには研修の形式も記入しておきましょう。
新入社員研修スケジュールの一例をご紹介します。
【1日目】会場:社内セミナー室
時間 | 内容 | 担当 | 形式 |
---|---|---|---|
9:00~9:30 | 研修オリエンテーション | 研修運営事務局 | 講義 |
9:30~12:00 | 自社と業界に関する説明 | 役員 | 講義 |
(12:00~13:00) | (昼休み) | ||
13:00~14:00 | 就業規則に関する説明 | 人事担当 | 講義 |
14:20~15:20 | 社内設備に関する説明 | 総務担当 | 講義 |
15:40~17:00 | 仕事の進め方 (スケジュールの立て方、ホウレンソウなど) |
内部講師 | 講義 |
【2日目】会場:社外会議室
時間 | 内容 | 担当 | 形式 | 9:00~12:00 (適宜休憩) |
ビジネスマナー (身だしなみ、挨拶、お辞儀、名刺、席次、訪問マナーなど) |
外部セミナー | 実演・ロールプレイング | (12:00~13:00) | (昼休み) | 13:00~15:00 | 電話応対 | 外部セミナー | 実演・ロールプレイング | 15:20~17:00 | ビジネスライティング (文書、メール) |
外部セミナー | 講義・課題提出 |
---|
【3日目】会場:社内セミナー室
時間 | 内容 | 担当 | 形式 | 9:00~12:00 (適宜休憩) |
チームワーク・リーダーシップ研修 | 外部講師 | グループワーク | (12:00~13:00) | (昼休み) | 13:00~15:40 (適宜休憩) |
プレゼンテーション研修 | 外部講師 | グループワーク | 16:00~17:00 | 振り返り | 内部講師 | グループワーク、 課題提出 |
---|
新入社員スケジュールには、以下の内容を必ず記載するようにしましょう。
他の社員研修と比べて、まとまった期間で盛りだくさんの内容を行うのが、新入社員研修の特徴です。効果を上げるためには、受講者や研修担当者、講師にとって無理のないスケジュールを立てることがカギとなります。ご紹介したスケジュール例をヒントに、自社に合った形でスケジュールを作りましょう。
【参考】
坂川山輝夫『新入社員研修に成功する100のツボ』(太陽出版、2006年)
眞崎大輔監修、トーマツイノベーション編著『人材育成ハンドブック いま知っておくべき100のテーマ』(ダイヤモンド社、2017年)
メイジャー『教育目標と最終行動―行動の変化はどのようにして確認されるか』(1970年)
bizocean『研修計画書・日程スケジュール等の書き方・作り方』(2016年2月8日)
PHP人材開発『新入社員研修のプログラムの作り方【事例】』(株式会社 PHP研究所、2017年11月16日)
※こちらのページに掲載している情報は2017年12⽉時点のものです。
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