「新入社員研修を始めたいが、カリキュラムや期間の決め方が分からない」「新入社員研修を見直したいが、どこから手を付けていいか分からない」このような悩みはありませんか? 研修が失敗する原因の40%は、研修前の準備、すなわち設計プロセスにあるともいわれています。適切に新入社員研修を設計することが、効果を上げるためには欠かせません。
このページでは、新入社員研修の設計について、よくある質問と答えをまとめてご紹介します。
目次
新入社員研修の準備を始める時期は、各企業の事情によってさまざまです。一般的には、前年度の12月ごろに始めるケースが多いようです。
新入社員研修の準備では、以下のプロセスを踏む必要があります。
新入社員のスキルや知識の現状を、入社試験などの結果から把握します。新入社員に事前課題(アンケート)を提出させ、現状を把握するのも効果的です。このプロセスには、1カ月~1カ月半程度かかります。
新入社員研修の目的をトップと確認するとともに、身に付けてほしいスキルや知識の程度を整理します。目標は、現場の声をくみ取りながら検討することで、実践性の高いものになるでしょう。このプロセスには、半月~1カ月程度かかります。目標設定の仕方については、「新入社員研修の到達目標はどう設定するのがよいですか?」で詳述します。
目的・目標に合わせて、カリキュラムを企画し、設定します。カリキュラム設定の仕方については「新入社員研修のカリキュラムはどのように決めればよいですか?」で詳述します。このプロセスには1カ月程度かかると考えましょう。
以上の作業を逆算してみると、前年度の12月ごろから準備をスタートするのが適切だと分かります。
新入社員研修の期間は企業や業界によってさまざまですが、1~3カ月程度が一般的です。また、部署や専門によって期間が異なることもあります。
株式会社メイテックが実施した調査によると、研修期間が1カ月以内と回答した割合は、一般職種で59.0%、技術系職種で48.6%、1~3カ月と回答した割合は、一般職種で16.7%、技術系職種で29.2%となっており、技術系職種のほうが1カ月以上の長期にわたる研修が多いことが分かりました。研修期間が3カ月以上という回答も23%あり、各企業が時間をかけて新入社員研修に取り組んでいることがわかります。
企業の規模や採用人数などによって、新入社員研修にかける予算は異なります。株式会社インソースが行った新人教育担当者アンケートによると、受講者1人当たり10万~50万円の予算を確保することが一般的という結果でした。また産労総合研究所が行った調査によると、新入社員1人当たりにかける研修の予算は、10万~15万円がもっとも多く、平均は16万5,191円でした。
まずは、新入社員のマインド・知識・行動について、現状を把握します。入社試験の結果を検証するほか、事前課題(アンケート)の実施も効果的です。
その上で、現状を踏まえた到達目標を設定します。この際、目標行動と合格基準を定めると、目標が具体的になります。「何をどの程度できるようにするか」という形で目標を設定するのがよいといえるでしょう。また、各目標に対し「いつまでに」というタイムリミットを設定することも重要です。
例えば、「入社3カ月目までに、独りで顧客対応ができるようになる」ことを目標とします。すると、基本的なビジネスマナー、電話応対、メールを含めたビジネスライティングを習得する必要があると分かり、具体的なカリキュラムを設定できます。
業務に必要なスキル・知識について、「いつごろまでに、何を、どの程度できるようにするか」という目標に沿って、必要なカリキュラムを検討するのが合理的です。
業務に必要なスキル・知識については、前年度に新入社員研修を受けた社員や、新入社員の指導をしてきた先輩社員に、アンケートやヒアリングを行うのが効果的です。例えば、前年度の新入社員には、「新入社員研修で役立ったこと」「新入社員研修で学んでおきたかったこと」「学べなかったために困ったこと」を尋ねます。また先輩社員には、「現場に配属される前に知っておいてほしいこと、身に付けてほしいこと」「前年度の新入社員を教育した上の課題」を聞きましょう。そこから、必要なカリキュラムが見えてきます。
新入社員研修の講師は、以下のような条件を持っている人を選ぶのが理想的です。
新入社員のロールモデルとなれる人です。例えば、営業成績で常にトップを維持していた人、企画を成功させた経験のある人、接客に苦労し工夫が認められた人などが挙げられます。自社の業界に精通している人であれば、なお理想的です。
ビジネスの経験がない人だと、研修内容が実践性に欠ける恐れがあります。例えば、名刺の渡し方について、ビジネス経験のない講師だと「落ち着いて、ゆっくりと、心を込めて名刺を渡しましょう」と教えることがあります。一方、ビジネスシーンの名刺交換では、ビジネスライクな姿勢とスピード感が求められます。このようなミスマッチが生まれないよう、ビジネスの場で実際に活躍していた人を選ぶことが重要です。
なお、社内講師・社外講師それぞれのメリット・デメリットは「外部研修は役に立つ?新入社員研修を外部委託するメリット・デメリット」で解説します。
本来であれば、講師側の示す規定に従うのが理想です。ただし、予算が限られている場合は、最初に謝礼額を提示した上で交渉する必要があります。自社で講師謝礼の規定があれば、その内容を提示するのが分かりやすい方法です。
新入社員を社外セミナーに派遣する方法があります。詳しくは「外部研修は役に立つ? 新入社員研修を外部委託するメリット・デメリット」をご参照ください。
厚生労働省が実施している人材開発支援助成金が利用できます。従業員の職業能力開発についての計画に基づいて、研修などの訓練を行った事業主に対し、訓練の経費と、訓練担当者の賃金の一部を助成する制度です。
新入社員研修は、助成メニューのうち、特定訓練コースの「若年人材育成訓練」が該当します。助成額は以下の通りとなっています。
なお、限度時間や限度額があるため、詳細はこちらの資料をご覧いただくか、各都道府県の労働局にお問い合わせください。申請書類の提出なども、労働局が窓口になります。
ユニークな新入社員研修には、以下のようなものがあります。
規則・規律を守ることの重要性や、忍耐力を身に付ける研修です。
伊藤忠商事株式会社が行っている研修です。チームワークを学び、達成感を得ることができます。
株式会社イカイが行っている研修です。体力や交渉力が身に付けられます。
株式会社アップガレージが行っている研修です。人前で話す度胸が付くとともに、プレゼンテーション力、コミュニケーション力が身に付けられます。
竹トンボ(TDK株式会社)や投石機(株式会社東芝)を作る研修です。業務改善や品質向上の手法として知られるDMAIC手法や、コスト・品質・期限の考え方など、メーカにおいて欠かせない知識を身に付けられます。
これらの研修は、受講者に刺激を与え、主体的に取り組ませられるメリットがあります。ただし、日常業務と大きくかけ離れてしまう点には注意が必要です。「いい経験になった」だけで終わってしまい、実務に役立てられない可能性もあります。費用や手間がかかるのも難点です。
【参考】
眞崎大輔監修、トーマツイノベーション編著『人材育成ハンドブック いま知っておくべき100のテーマ』(ダイヤモンド社、2017年)
坂川山輝夫『新入社員研修に成功する100のツボ』(太陽出版、2006年)
R.Brinkerhoff『Association for Talent Development』(2007年)
新人教育担当者アンケート『新人研修の内容についてはいつ頃から検討を始めますか?』『一人当たりどのくらいの予算で計画していますか?』『新人研修の実施期間はどの程度が適当と思いますか?』『研修プログラムはどのように組み立てればよいと思いますか?』(株式会社インソース)
fabcross for エンジニア『新社会人・若手社会人の意識調査』(株式会社メイテック)
産労総合研究所『2014年度 大卒・大学院卒新入社員教育の実態調査』(2015年1月末~3月上旬調査)
リクルートマネジメントスクール『新人教育は計画的に!新入社員教育に欠かせない研修マニュアルの作り方』(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)
※こちらのページに掲載している情報は2017年12⽉時点のものです。
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