多くの企業で一般的に行われている新入社員研修。その名の通り、新入社員を対象とし、これから企業で働くための知識やスキル、心構えを身に付ける研修です。とはいえ、新入社員研修を行ってきていない企業にとっても、また、これまで慣習的に新入社員研修を行ってきた企業にとっても、その目的や意義を整理し、目的に沿った研修を設計することは簡単ではありません。
このページでは、新入社員研修の必要性や目的をまとめて解説します。
目次
新入社員研修は、新入社員に対し、企業で働く社会人としての心構えやスキル、知識を身に付けさせる研修です。新卒一括採用を行う、日本企業独特の慣習と言えます。
2013年にHR総研が行った「新入社員研修に関するアンケート調査」によると、社員数301名以上の企業では7割が新入社員研修を実施しています。300名以下の企業でも62%という数字です。
時期としては、新入社員が一斉に入社する4月前後に行われることが一般的です。期間は、1日だけで終わるものから、1カ月程度かけて行うものまでさまざまです。
内容は、会社の業務に関する知識や実務の基本、ビジネスマナーや言葉遣い、接客、電話応対、工場・研究所・ショールームの見学などがあります。詳しくは次の項目でご紹介しましょう。
方法としては、集合研修や、課題・レポートの提出のほか、通信教育やe-ラーニングを使っている企業もあります。形式については、入社する企業に通いながら行う形のほか、合宿を行うケース、外部の公開講座や研修を利用するケースなどが見られます。
まず、新入社員のポテンシャルや適性を計る意味があります。そもそも新入社員研修は、企業内で社員が参加する長期にわたる研修の入り口としての意味付けが強い研修です。日本の企業では、新入社員が即戦力にならない場合でも、ポテンシャルを見込んで採用することが一般的です。そのため、新入社員研修によって、入社後の能力開発を効果的に行うことがより重要になります。
加えて最近では、新入社員に即戦力としての能力を身に付けさせる意味でも、新入社員研修が行われています。少子高齢化による人材不足、デジタル技術の発展による働き方の流動化など、企業をめぐる環境の変化が激しいなか、新入社員を早期に戦力化するニーズが高まっています。こうした背景もあり、新入社員研修の意義はさらに大きくなっています。
新入社員研修には、主に以下の5つの目的があります。なお、各項目の詳しい内容は「これで完璧!新入社員研修の主なカリキュラムと成功のポイント」のページをご参照ください。
新入社員研修の対象となる新入社員は、入社前まで学生だった人たちがほとんどです。したがって、学生から社会人への意識変革が必要になります。
近年では「ゆとり世代」と呼ばれる新入社員が、自分のことを優先しがちで、企業や他の社員のことをなかなか考えられない傾向にあることに、頭を悩ませている企業が多くあります。社会人とは、自分中心ではなく、相手中心の考え方をするものであることを、新入社員研修で学ぶことが必要です。
仕事を滞りなく行うために必要な知識や考え方を身に付けます。たとえば、商品の輸入にかかわる企業に勤めているにも関わらず、円安・円高といった経済知識がなければ、円安になった際、自社の経営に悪影響が及んでいるといったことが分からず、適切に業務を進められないでしょう。また、新入社員に情報の取り扱いやコンプライアンスに関する考え方が身に付いていないと、SNSなどの利用で情報漏洩を起こしてしまうといった険性も考えられます。このように、業務の遂行だけでなく、企業の安定的な運営のためにも、知識や考え方の研修は不可欠です。
企業に所属する組織人として、共通の目的を持って仕事を進めるために必要です。企業の成り立ちや企業理念のほか、商品ルールや事務処理ルールといった企業独自のルールについても学びます。また、会社の部門とそれぞれの活動についても、職場見学や工場での体験実習などを交えて学習します。
実際に仕事をするうえで必要となる技術面での学習です。ビジネスマナーやビジネスライティング、PCスキルをはじめとした、仕事に必要なスキルを身に付けます。
部門ごとに必要となる専門的知識やスキルを身に付けます。たとえば、営業部門であれば、商談の進め方を学ぶことが必要です。経理や財務の部門であれば、貸借対象表や損益計算書の読み方を知っていなければ、仕事ができないでしょう。
こうした専門性の高い研修は、配属後にフォローアップ研修として行われることも多くなっています。
新入社員研修には、入社したばかりの社員が、社会人として必要な知識やスキルを身に付けたり、企業への理解を深めたりする意義があります。人材育成は、企業の健全な運営と成長に欠かせない要素であり、新入社員研修はそのスタートに当たると言えるでしょう。これまで新入社員研修を行ってこなかった企業は、その意義を鑑み、今後、新入社員研修を実施することを検討してみてはいかがでしょうか。また、新入社員研修をすでに行っている企業も、その目的を再確認し、研修の在り方を見直す機会を設けてみてください。
【参考】
坂川山輝夫『新入社員研修に成功する100のツボ』(太陽出版、2006年)
眞崎大輔監修、トーマツイノベーション編著『人材育成ハンドブック いま知っておくべき100のテーマ』(ダイヤモンド社、2017年)
HR総合調査研究所『「新入社員研修に関するアンケート調査」結果報告』(2013年6月28日~7月10日調査)
日本の人事部『新入社員教育(研修)とは何か?』(株式会社アイ・キュー、2016年3月30日掲載)
※こちらのページに掲載している情報は2017年12⽉時点のものです。
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