給与計算システムは、従業員の給与計算を自動化できる便利なツールです。しかし、種類や機能が豊富で、どれを選べばいいか迷う方も多いのではないでしょうか。
このページでは、給与計算システムの種類と費用を比較し、自社に最適なシステムを選ぶためのポイントを解説します。
給与計算システムを導入することで、給与計算業務の効率化やミスの防止、法改正への対応などが期待できます。このページを参考に、ぜひ給与計算システムの導入を検討してみてください。
目次
給与計算システムは、システムの形態や機能によって、さまざまな種類が存在しています。組織のニーズに合わせて最適なシステムを選択することが重要です。
ここでは、システムの形態や業務範囲・機能による分類と、それぞれの特徴について解説します。
給与管理システムは、システムの形態によって大きく3つに分類できます。
それぞれの種類の比較表は以下のとおりです。
クラウド型 | オンプレミス型 | インストール型(パッケージ型) | |
---|---|---|---|
利用環境 | インターネット上 | 自社のサーバー | 自社パソコンにインストール |
主な特徴 |
・現代の主流 ・自動でアップデートできる |
・独自システムを構築できる |
・買い切りのソフト ・DVDなどで提供 |
メリット |
・導入が簡単 ・データ共有がしやすい |
・カスタマイズ性が高い ・セキュリティが高い |
・費用が安い ・インターネットが必要ない |
デメリット |
・セキュリティが低い ・カスタマイズ性が低い |
・初期費用が高い ・運用までに時間がかかる |
・機能が少ない ・保守やアップデートには知識が必要 |
費用 | 利用者数に応じて変動 | 初期投資が高い(数万円から数百万円) | 一般的に3~5万円 |
対象規模 | 一般的な企業 | 大規模な企業や複雑な給与計算を行う企業 | 小規模な企業や個人事業主 |
クラウド型は、インターネット上で利用できるシステムです。現代の給与計算システムの中で、クラウド型は主流となっており、利用者数に応じた料金設定や短期間での導入が可能なのが特徴です。
このタイプの給与計算システムは、導入や運用の手間を減らしつつ、業務の効率化を実現します。さらに、法改正や税率の変更にも自動で対応するので、計算ミスを防ぐことができます。
オンプレミス型は、自社のサーバーにシステムを構築して運用します。カスタマイズ性に優れており、自社独自のシステムの構築が可能です。
システムを自社サーバーで管理・運用するため、セキュリティの面での信頼性が高まります。そのため、システムのカスタマイズやセキュリティを重視する大規模企業や複雑な給与計算が必要な企業に特に適しています。
インストール型は、パソコンに直接インストールして使用するソフトウエアで、DVDなどのメディアで提供されることが多いです。
かつてはこのタイプが主流でしたが、現在でも一定の需要があります。価格は一般的に3万円から5万円程度で、オンプレミス型に比べて導入コストが低く、小規模企業や個人事業主に適しています。
給与計算システムは業務範囲や機能面でさまざまな種類があります。
システムを選択する際には、企業の規模や業務内容、必要な機能などを考慮して、最適なシステムを選ぶことが重要です。
給与計算システムには、大きく分けて以下の3つのタイプがあります。
比較表は以下のとおりです。
給与計算特化タイプ | 人事システムタイプ | ERPタイプ | |
---|---|---|---|
対象人数 | ~50名 | 50~100名 | 100名~ |
主な機能 | 給与計算に特化 | 給与計算に加えて人事管理機能も搭載 | 基幹業務と連携 |
メリット |
・シンプルで使いやすい ・コストが低い |
・連携機能が豊富 ・自動化機能が多い |
・各部門を越えた業務が一元管理できる |
デメリット |
・機能が少ない ・連携困難 |
・従業員が増えると高価になりやすい |
・コストが高い ・複雑で使いにくい |
導入コスト | 低〜中 | 中〜高 | 高 |
カスタマイズ性 | 低〜中 | 中 | 高 |
給与計算特化タイプは、給与計算に特化したシステムです。給与の基本的な計算から年末調整などの準備まで対応可能です。勤怠管理や人事・労務管理機能は含まれていませんが、そのため低コストで導入できる利点があります。また、税務処理や法令改正に対応したアップデート機能を持つ製品も存在します。
給与計算特化タイプは、以下のような企業に特に適しています。
主に50人以下のスタートアップや小企業を対象としており、10人以下の企業には無料プランが提供されることもあります。
人事システムタイプは、給与計算だけでなく、人事業務全般をサポートするシステムです。勤怠管理、人事評価、教育研修の管理など、多岐にわたる人事業務を一元的に管理できます。
具体的な機能としては以下のようなものがあります。
このタイプは、人事業務の効率化や人材マネジメントの強化を目指す企業に適しており、50〜100人規模の中小企業が主な対象となっています。
ERP(Enterprise Resource Planning)タイプは、会計や販売、購買などの基幹業務を統合的に管理するシステムです。給与計算もこのシステムの機能の一部として組み込まれています。全ての基幹業務を一つのシステムで統合的に管理することで、業務効率の向上が期待できます。
ERPタイプの給与計算システムは、以下のような企業におすすめです。
ERPタイプの給与計算システムは、導入コストが高額になる場合もありますが、業務の効率化やミスの削減によるコスト削減効果が期待できます。また、多様な機能を搭載していることから、自社の業務に合わせてシステムのカスタマイズが可能です。
給与計算システムを導入する際には、機能、料金体系、サポート体制などを十分に確認することが重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。
給与計算システムは、給与明細や源泉徴収票などの帳票を作成する機能が備わっています。自社で必要とする帳票の種類を確認し、それに対応するシステムを選定することが重要です。
一般的に、給与計算システムで作成可能な帳票は以下のとおりです。
上記以外にも、年末調整申告書や社会保険提出書類、法定調書合計表などの帳簿を作成できるシステムもあります。
給与計算システムを選択する際、サポート体制の充実度は重要な選定ポイントです。万が一トラブルが発生した場合でも、迅速かつ適切なサポートを受けられる体制が整っているかどうかを確認しましょう。
給与計算システムには、有償のものと無償のものがあります。有償のシステムは機能が豊富でサポートも充実していますが、初期費用や月額費用がかかります。一方、無償のシステムは、多くが人数上限を設けており、上限を超えると有料となることが多いです。また、初期費用や月額費用は発生しないものの、機能やサポートには制限があることが一般的です。
給与計算システムは、法改正や制度改正などに対応するために、定期的なアップデートが必要です。また、トラブルが発生した際、迅速な対応が求められます。そのため、しっかりとしたサポート体制を持つシステムの選定が重要です。
サポート体制を評価する際、以下の点を注意深くチェックしましょう。
特に給与計算の繁忙期や確定申告時期などは、サポートの需要が高まる時期です。このような時期においても迅速にサポートを受けられるか、事前に確認しておきましょう。
給与計算システムを導入する前に、実際に使用感を確認することは大切です。そのため、無料トライアルの有無を確認しておきましょう。
無料トライアルに関する具体的なチェックポイントは以下のとおりです。
また、無料トライアルを利用することで、以下の点を具体的に確認できます。
給与計算システムは、勤怠管理や人事管理といった他のシステムと連携することで、業務の効率化を図ることができます。
他システムとの連携を考慮する際のチェックポイントは以下のとおりです。
データの自動連携を利用すると、勤怠情報や従業員の情報などを他のシステムから自動的に取り込むことができます。しかし、全てのデータが自動で連携されるわけではなく、一部はインポート・エクスポートの手間が伴うことがあり、その際は手動で取り込む必要があります。そのため、導入を検討しているシステムが、既存のシステムとの連携をサポートしているかを確認することが大切です。
給与計算システムは、日常的に使用されるツールであるため、使いやすさは重要なポイントです。
使いやすさを評価するためのチェックポイントは以下のとおりです。
また、システムが自社のパソコンのOSに対応しているかの確認も必要です。マルチデバイス対応の場合、さまざまなOSやデバイスで利用ができます。
使いやすさは、実際に手を動かして試さないと分からない部分も多いです。デモ版やトライアルを利用して、操作感を実際に体験することをおすすめします。
給与計算システムには、さまざまな機能が搭載されています。特に以下の機能は、選定時に確認しておくと良いでしょう。
自社の給与計算業務に必要な機能がすべて搭載されているかどうかを確認しましょう。また、福利厚生の加入状況をシステムで統合的に管理できると、従業員情報の一元管理が可能となり、給与計算業務の効率が向上します。
給与計算システムを導入することで、社労士や税理士との連携が効率的に行えます。以下の機能が搭載されていると、データの共有や対応がスムーズになります。
これらの機能を活用することで、給与計算業務の負担を削減し、効率化を実現できます。
給与計算システムには、さまざまな課金体系があります。自社の予算やニーズに応じて、最適な課金体系を選定しましょう。
課金体系の主なタイプは以下のとおりです。
例えば、初期費用はかかるものの、月額費用が低い、または機能が充実しているシステムも考えられます。また、従業員数に基づく課金の場合、従業員数が少なければ月額が割安になることもあるでしょう。
給与計算システムの費用は、選択するシステムの種類、機能、従業員数などにより異なります。導入を検討する際は、費用の側面も考慮し、自社に適したシステムを選定することが大切です。
給与計算システムの費用は、大きく分けて以下の2つのタイプがあります。
近年、クラウド型の従量課金タイプが主流となっています。このタイプは月額制や年額制の料金設定が一般的で、初期費用やサポート費用が別途必要な場合もあります。一方、インストール型やオンプレミス型は、買い切りが主流で、初期費用や保守費用が高額になることがあります。
以下は、タイプ別の比較表です。
クラウド型 | オンプレミス型 | インストール型(パッケージ型) | |
---|---|---|---|
費用タイプ | 従量課金タイプ | 買い切りタイプ/従量課金タイプ | 買い切りタイプ |
価格相場 | 月額500円~/1ユーザー | 数万~数百万円 +保守運用費がかかる |
一般的に3~5万円 |
近年、多くの給与計算システム(ソフト)が市場に登場しており、それぞれに独自の特徴や料金体系があります。ここでは、現在主流となっているクラウド型の給与計算ソフトの料金を比較します。
業務形態 | 初期費用 | 利用料 | 無料お試し | |
---|---|---|---|---|
A社 | 給与計算特化タイプ ※人数制限あり(~10名) |
0円 | 1年間0円または特別価格 | ◯ |
B社 | 人事システムタイプ | 330,000円(税込) ~ | 月額500円/名~ | ◯ |
C社 | 人事給与タイプ |
・0円(50名以下) ・見積もり必要(51名以上) |
年額プラン 2,980円/月~ |
◯ |
D社 | 人事給与タイプ | 0円 | 月額400円/名~ | ◯ |
E社 | ERPタイプ | 見積もり必要 | 見積もり必要 | 一 |
料金は、従業員数や必要な機能に応じて変動します。そのため、自社に合ったシステムを選ぶ際には、複数のシステムの料金を比較し検討することが重要です。各システムの料金体系や提供する機能、初期費用の有無などを総合的に比較することで、自社のニーズに合ったシステムを選ぶ手助けとなるでしょう。
また、無料で体験できるサービスも多く存在します。実際に利用して、その使い勝手や機能を確かめることをおすすめします。
このページでは、主要な給与計算システムの種類と費用を比較し、自社に最適なシステムを選ぶためのポイントを解説しました。市場には多様な給与計算システムがあり、それぞれに独自の機能が搭載されています。自社の要件や予算に応じて、最適な給与計算システムを選び、給与計算の効率を向上させましょう。※こちらのページに掲載している情報は2023年10⽉時点のものです。
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