健康管理システムの導入を検討する前に、どのようなシステムがあるのか、自社の状況や目的に合うシステムを把握する必要があります。また、費用が予算に合うかも重要なポイントです。
ここでは、健康管理システムの種類と、導入費用の目安を解説します。
目次
健康管理システムは、従業員に健康診断を受けてもらえれば良い、という観点で見ると一見必要性の低いものに見えます。しかし、従業員の健康管理には、法令遵守、生産性・エンゲージメントの向上、そして健康経営の推進といった発展的な意義もあります。
企業は、「職場における労働者の安全と健康を確保」しなければなりません(労働安全衛生法第三条)。それに伴い、従業員の健康診断やストレスチェックを行うことが義務付けられています。
こうした法令に違反すると、罰則を被ったり企業イメージが下がってしまったりと、大きな不利益につながります。また、企業が安全や健康への配慮を怠って労働災害が起こった場合、損害賠償請求を受けるなど損失を被る恐れがあります。
法令にのっとり、適切な健康管理施策を行うことが重要です。
従業員が心身に不調を抱えていると、生産性や業務効率が下がる恐れがあります。実際に、プレゼンティーズム※による損失コストは健康関連総コストの大半を占めるとされています。
一方、従業員の安全と心身の健康管理が適切に行われていると、従業員が働きやすくなり、エンゲージメントが向上します。生産性やエンゲージメントを上げるためにも、健康管理は重要です。
※プレゼンティーズム:出勤はしているものの、心身の健康上の問題により生産性が低下している状態。
少子高齢化による労働人口の減少や社会保険料の増加を背景に、従業員の健康を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する健康経営が注目を集めています。健康経営には、適切かつ詳細な健康管理が欠かせません。
健康経営を推進することで、健康経営優良法人認定制度などによってブランドイメージの向上を図れるだけでなく、離職リスクや保険料負担を軽減することも可能です。
健康管理システムには、最終的な目標やサービス提供者の事業範囲、方向性などにより、さまざまな種類があります。ここでは、システムの特徴に着目した分類を紹介します。
関連ページ:健康管理システムを導入するメリットは? 主な種類や機能も解説
データ分析型とは、健康診断などの情報を収集した後、データを分析するサービスです。従業員一人ひとりの健康状態や健康リスクの分析に加えて、収集したデータから組織全体や事業所ごと、職種ごとなど、集団の傾向を分析することも可能です。
健康経営施策の分析、効果測定に活用できます。
例)WELSA、HoPEヘルスケアなど
業務効率型とは、書類作成の自動化や、健康診断未受診者へのアラート通知など、管理者の業務の自動化・効率化を目的とするサービスです。こうした自動化やアラートについては、基礎機能として搭載しているシステムも多くあります。
例)Growbase、Carelyなど
ハイエンド型とは、オプションの検査や産業医によるアフターフォローなど、付加価値を手厚くするサービスです。連携サービスによる遺伝子検査を提供していたり、ストレスチェックのカスタムに対応していたりと、幅広いサポートが受けられます。
例)HealthCare iris、メディクラ健康管理など
健康増進型とは、運動量や食事など、日常の健康意識に関するサポートが受けられるサービスです。健康診断結果のフォローだけでなく、従業員が自ら日常的に健康管理を行うことや、継続的な健康意識の向上が期待できます。
例)タニタ健康プログラム、FiNC for BUSINESSなど
サーベイ型とは、パルスサーベイ、つまり社員の満足度や健康度の継続的な調査を提供するサービスです。従業員の健康課題や変調を早期に把握できるため、事態が深刻化する前に対応することが可能になります。
例)HealthDataBank、アドバンテッジヘルスケアなど
業種特化型とは、特定の業種や職種に特化した機能を持つサービスです。たとえば業務で自動車を運転するドライバーのためにアルコールチェックとの連携機能を付加できたり、屋外や危険な現場で作業する作業員のために心拍や転倒情報、位置情報の収集・管理ができたりするものです。
特定の条件や作業環境での健康管理の課題を解決できます。
例)ヘルス✕ライフ(アルコールチェック連携)、Worker Connect(現場作業員の転倒検知)など
その他、安否確認や、一定の有害な業務に従事する労働者を対象とする特殊健康診断への対応、また、業務環境により紙で情報収集をせざるを得ない職場向けに紙からの入力・出力に対応、あるいは多言語対応など、さまざまな機能や分野に対応するサービスがあります。
例)Biz安否確認/一斉通報、WELL ROOM(多言語サポート)など
健康管理システムの種類としてさまざまな特徴があることを見てきましたが、導入に当たっては費用の検討も重要になります。
健康管理システムの費用を左右するのが、クラウド型かオンプレミス型かという、サービスの提供方式の違いです。
クラウド型とは、クラウド上のソフトをインターネットを通じて利用するもので、インターネット環境があればどこからでも使用できるため、初期費用を抑えられる傾向にあります。初期費用の目安は6〜60万円と言われています。ただし、従業員の数によって変動する場合もありますので、従業員数によってはこの範囲内に収まるとは限りません。それに加えて、従業員の人数に応じたランニングコストがかかります。
初期費用の目安 | 6~60万円 |
---|---|
ランニングコストの目安 | 従業員1人あたり200~500円/月 |
費用は目安であり、オプションによっても変動しますので、導入の前に見積もりで確認しましょう。
オンプレミス(パッケージ)型とは、サーバーなどを自社内に設置し、自社で管理・運用するもので、導入の初期費用が大きい代わりに自社に合わせたカスタマイズなどができやすいという特徴があります。初期費用の目安は100〜300万円とされています。また、ランニングコストとして、サポートやアップデートのための固定料金がかかる場合が多く、さらに自社で保守・メンテナンスが必要であるため、エンジニアの人件費がかかります。
初期費用の目安 | 100~300万円/月 | |
---|---|---|
ランニングコストの目安 | サービスの固定料金 | 0円~5万円/月 |
サーバー費用 | 1万円/月 | |
エンジニア人件費 | 30万円/月 |
上記のような料金体系から、一般に従業員数が少ない場合はクラウド型、従業員数が多い場合はオンプレミス型が良いとされます。ただし、長期運用すると結果的にオンプレミス型の方が安くなる場合もありますので、実際の費用は長期的な視野を持って検討しましょう。
たとえば、仮にクラウド型で初期費用60万円、ランニングコスト月額500円/1従業員のサービスAと、オンプレミス型で初期費用300万円、月額料金3万円のサービスBがあった場合、従業員1,000人の企業で1年間、5年間利用したときの料金は下記のようになります。
例) | 初期費用 | 月額費用の目安 | 1年後の支払総額 | 5年後の支払総額 |
---|---|---|---|---|
サービスA(クラウド型) | 60万円 | 50万円 | 660万円 | 3,060万円 |
サービスB(オンプレミス型) | 300万円 | 34万円 | 708万円 | 2,340万円 |
参考として、健康管理システムの料金の例を紹介します。
タイプ | 初期費用 | 月額費用 | |
---|---|---|---|
A社 | クラウド型 | 500円~/1従業員(1,000人以上の場合は一律50万円または100万円) | 50円〜/1従業員 |
B社 | クラウド型(中小企業向け) | 20万円 | 300円/1従業員 |
C社 | パッケージ型 | 302万円(従業員1,000人の場合) 402万円(従業員5,000人の場合) |
3万1,250円(従業員1,000人の場合) 4万3,750円(従業員5,000人の場合) |
健康管理システムにはさまざまな種類があり、機能も料金も異なります。また、健康管理システムは長期的に利用するものですので、導入の初期費用だけでなく、何を実現・解決したいかによって最適なサービスを選ぶことが重要です。このページを参考に、どのような種類があるのかを把握し、自社の状況や目的に合ったサービスを導入しましょう。
※こちらのページに掲載している情報は2023年10⽉時点のものです。
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