健康管理システムを導入するメリットはさまざまです。健康管理の効率化をサポートする点は共通していますが、特定の業務に特化したサービスなどもあり、自社のニーズに沿った選定が必要です。このページでは、健康管理システムの種類と具体的な機能、導入検討のタイミング、4つのメリットについて解説します。
目次
健康管理システムは、企業の健康管理業務を効率的にサポートするためのツールです。従業員の健康状態の把握から健康診断のスケジュール管理、産業医との面談設定や記録管理に至るまで、多岐にわたる機能を持ち合わせています。データ収集、分析、対策の提供といった一連のプロセスを補助してくれるため、人事・労務担当者の負担軽減にも寄与します。
従業員の健康管理は法律によって義務付けられているため、健康管理システムには法令順守のための機能がベースとして備わっています。しかし、サービスを提供するベンダーの設立背景や得意分野などによって、独自の機能付加や同じ機能でも差異が見られます。
また導入を検討している企業の規模や業態によって、必要となる機能も変わってきます。例えば、大企業では個々の従業員の健康状態を詳細に把握・管理することが難しくなるため、健康管理システムによるサポートが不可欠です。
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健康管理と一口に言っても実に多様なニーズがあり、それに応じたサービスが存在します。基本的な機能は備えつつも、特定の業務に強く、詳細な管理や運用が可能なサービスもあります。
企業には年に1回の健康診断が義務付けられていますが、これを実施する人事・労務担当者の負担は小さくありません。
まず、従業員の入社時期や勤務地、勤務形態に応じて健康診断のスケジュールや病院の調整を行い、一人ひとりに通知する必要があります。多国籍の従業員が在籍する企業では、言語や文化の違いから受診率が低下する傾向も見られるため、別途対策も求められます。
これに加えて、健診データを効率的に収集・管理し、健康リスクのある従業員に対してフォローアップもしなければなりません。
健康診断系のサービスを利用すれば、健康診断のスケジューリングや結果の一元管理ができ、データを生かせば連続的な分析と運用にもつなげられるため、形式的になりがちな健康診断関連業務の改善が期待できます。
ストレスチェックは、従業員のストレスレベルの把握やストレス要因の特定を目的としたアンケート調査です。厚生労働省が推奨する57項目のチェックシートに基づいてアンケートを実施し、結果を集計します。従業員50人以上の企業・事業場に対して、2015年12月から実施が義務付けられました。
こうした背景のもと、主にサーベイ系のサービスを提供しているベンダーが、ストレスチェックに特化した健康管理システムを開発しています。
基本的にはストレスチェックの実施、結果の管理・分析、高ストレス者の抽出などがシステム上で行なえるほか、独自の調査項目を追加できるサービスや、従業員の性格診断やパルスサーベイといった組織診断の手法と組み合わせた機能を提供するサービスもあります。
労働安全衛生法では50人以上の企業・事業場に産業医の配置を義務付けていますが、多くの企業では産業医の配置や活用について十分な理解がなく、形骸化してしまっているのが現状です。しかし、従業員の健康状態や労働環境を改善する上で産業医の役割は非常に重要です。
健康管理システムの中には、日常的に産業医や保健師との連携が強い健康保険組合が開発に携わり、産業医による効果的な支援を促進するものもあります。産業医管理系のサービスでは、実績のある産業医による面談、スケジュール管理、記録の取り扱いなどが行えたり、健康管理システムを提供しているベンダーが産業医を紹介するケースもあります。
サービスの方向性は実際の使い勝手とも関連します。何に特化したサービスであるかを知ると同時に、どのような特徴を備えているか把握することで、より自社の運用に適したサービスを選択しやすくなります。
データ分析型とは、健康診断などの情報を収集した後、データを分析するサービスです。従業員一人ひとりの健康状態や健康リスクの分析に加えて、収集したデータから組織全体や事業所ごと、職種ごとなど、集団の傾向を分析することも可能です。
健康経営施策の分析、効果測定に活用できます。
例)WELSA、HoPEヘルスケアなど
業務効率型とは、書類作成の自動化や、健康診断未受診者へのアラート通知など、管理者の業務の自動化・効率化を目的とするサービスです。こうした自動化やアラートについては、基礎機能として搭載しているシステムも多くあります。
例)Growbase、Carelyなど
ハイエンド型とは、オプションの検査や産業医によるアフターフォローなど、付加価値を手厚くするサービスです。連携サービスによる遺伝子検査を提供していたり、ストレスチェックのカスタムに対応していたりと、幅広いサポートが受けられます。
例)HealthCare iris、メディクラ健康管理など
健康増進型とは、運動量や食事など、日常の健康意識に関するサポートが受けられるサービスです。健康診断結果のフォローだけでなく、従業員が自ら日常的に健康管理を行うことや、継続的な健康意識の向上が期待できます。
例)タニタ健康プログラム、FiNC for BUSINESSなど
サーベイ型とは、パルスサーベイ、つまり社員の満足度や健康度の継続的な調査を提供するサービスです。従業員の健康課題や変調を早期に把握できるため、事態が深刻化する前に対応することが可能になります。
例)HealthDataBank、アドバンテッジヘルスケアなど
業種特化型とは、特定の業種や職種に特化した機能を持つサービスです。たとえば業務で自動車を運転するドライバーのためにアルコールチェックとの連携機能を付加できたり、屋外や危険な現場で作業する作業員のために心拍や転倒情報、位置情報の収集・管理ができたりするものです。特定の条件や作業環境での健康管理の課題を解決できます。
例)ヘルス✕ライフ(アルコールチェック連携)、Worker Connect(現場作業員の転倒検知)など
その他、安否確認や、一定の有害な業務に従事する労働者を対象とする特殊健康診断への対応、また、業務環境により紙で情報収集をせざるを得ない職場向けに紙からの入力・出力に対応、あるいは多言語対応など、さまざまな機能や分野に対応するサービスがあります。
例)Biz安否確認/一斉通報、WELL ROOM(多言語サポート)など
健康管理システムの導入を検討するタイミングは、企業の規模や業務内容、従業員の健康状態など、要因によって異なります。導入を検討するべき代表的なタイミングを紹介します。
事業規模が拡大し、従業員数が50人を超えると、ストレスチェックの実施、産業医の配置が義務付けられます。健康管理にまつわる業務が急増し、それぞれの手続きや管理も煩雑になるため、データの一元管理やアラート機能を備えた健康管理システムを導入するのがおすすめです。
せっかく報酬を支払うのであれば、従業員に寄り添って適切なサポートをしてくれる産業医と契約したいと思うのは当然でしょう。新たに産業医の配置が必要となったり、産業医を選定し直したりする際に、産業医との連携が強い健康管理システムを導入するのも一つの手です。利用するサービスへの理解もあるため、面談やフィードバックがスムーズになるという利点もあります。
関連ページ:健康管理の方法と産業医の活用
支店や工場など複数の事業場を開設すると、健康診断を受けるための病院を周辺で新たに探さなければならないなど、事業場ごとの健康管理が必要になってきます。異なる拠点での健診結果やストレスチェックのデータを集約し、経営判断の材料として有効活用するなら、健康管理システムが効果的でしょう。
もしすでにオンプレミス型の健康管理システムを利用しているケースで、より効率化を目指したり新たな機能が必要になったりした場合、クラウド型の健康管理システムが新たな選択肢になるかもしれません。クラウド型のサービスの中には毎日の体調について従業員に入力してもらうことでリアルタイムでのデータ収集が可能なものもあり、早い段階でのケアに役立てられます。また、昨今は細かなニーズに沿った豊富な機能が搭載されているため、効率化だけでなく、従業員のヘルスリテラシーの向上や健康状態の改善など、さまざまな効果が期待できます。
テレワークやハイブリッドワークの導入に伴い、健康管理の方法も柔軟にする必要があります。長時間労働や慣れない作業環境からくる心身の健康リスクを早期に察知し、対策を講じることが求められますが、簡単なことではありません。サーベイ機能や健康増進をサポートする機能がついている健康管理システムを導入することで、テレワーク下でも効果的な健康管理が期待できます。
健康管理システムの導入によってどのようなメリットがあるのでしょうか。4点のメリットについて紹介します。
健康管理システムを導入することで得られる最も大きなメリットは、健康データを一元化できることです。健康診断やストレスチェックの結果など、紙での管理には限界があります。システム上で全従業員の健康データを蓄積しておけば収集、管理、活用に余計な手間がかかりません。
健康診断の結果用紙は病院によってフォーマットが異なることが多いため、形式をそろえようとするとそれだけで膨大な時間がかかってしまいます。あらゆるフォーマットの健診データを簡単に統一して取り込めるサービスを活用すれば、これまでの手間を大幅に削減できます。
労働基準監督署に提出する報告書の作成も容易です。管理している健診データから必要な内容を抽出し、報告書のフォーマットに沿って自動的にレポートを作成してくれるため、作業のスピードアップに効果があります。
従業員の健康状態や労働環境が可視化され、適切なフォローアップや職場改善につなげられます。
従業員の健康データを可視化することで、健康リスクを早期に発見し、必要な対策を講じることができます。例えば、ダッシュボード機能を活用することで、従業員のストレスレベルを一目で確認でき、迅速な対応やケア、産業医への連携が可能です。
健康状態の改善やストレスの低減は、従業員の離職や休職のリスクも減らします。特に、健康状態に不安がある従業員をアラートで教えてくれる機能は健康管理システムならでは。健診データやストレスチェックと対応しているため、システム上で原因の掘り下げや対策の検討を行えます。リスクの察知に長けている点が健康管理システムの特徴だと言えます。
従業員が自身の健康状態をいつでも参照できるだけでなく、健康増進をサポートする機能があるサービスを活用することで、企業内における健康意識向上が期待できます。
従業員の健康状態が良好であれば仕事のパフォーマンスも向上します。健康管理システム内での目標設定や健康スコアの表示などを利用することで、従業員の健康への取り組みが活性化し、企業の生産性アップにもつながります。
運動・睡眠不足や食事の偏り、数値の悪化などに対するアドバイス機能を備えたサービスもあります。ヘルスリテラシーを向上させるための取り組みとかけ合わせれば、従業員の意識変革につなげられるでしょう。生活習慣の改善による健康障害のリスク軽減が実現できます。
健康管理システムは単に健康管理を効率化するだけでなく、法改正への対応や、健康経営の取り組み強化にも成果を発揮し、企業価値の向上に貢献します。
健康管理に関する法律はこれまでに何度も改正されています。2015年12月からストレスチェックが義務付けられたように、いつの間にかしなければならないことが増えていた、ということもあるでしょう。業務領域が多岐にわたる人事・労務担当者がこうした情報を随時把握するのは困難です。
健康管理システムは基本的に関連する法律を遵守するために開発されているため、導入しておくだけで義務の履行につながると言えるでしょう。専門的な知識がなくても必要な健康管理を行える点は大きなメリットです。ただし、法改正に応じて定期的にサービス内容がアップデートされるかどうか、事前によく確認しましょう。
健康管理システムを導入することで、従業員の健康を促進する取り組みが具体的かつ体系的に行えるようになります。これは、健康経営優良法人の認定基準を満たす重要なステップとなるため、システムの導入は認定取得の大きな後押しとなります。認定を受けることで、企業の社会的信頼性が向上し、採用やビジネスチャンスの拡大にも寄与します。
健康経営優良法人認定の取得を目指したくとも、何から始めたらいいのか分からない企業も少なくないでしょう。サービスの導入と合わせて認定取得を支援してくれるベンダーもあります。どんなサポートを受けられるか聞いてみるのもいいでしょう。
関連ページ: 健康経営と認定されるには?事例と健康経営優良法人認定制度を解説
健康経営は、企業の持続的な発展や社会的評価の向上を目指す戦略的な取り組みです。健康管理システムは、こうした実践を後押ししてくれるツールです。自社の規模やニーズに沿ったサービスを選定し、効果的に活用しましょう。※こちらのページに掲載している情報は2023年10⽉時点のものです。
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