勤怠管理とは、企業が従業員の勤怠情報を把握し、労働基準法や会社の就業規則を守った働き方ができるよう管理することです。勤怠情報を管理することで従業員の健康状態を考慮して業務を調整したり、給与計算や人事評価への正確な反映ができるようになります。
このページでは、勤怠管理の目的や必要性、また主な方法について具体的に解説します。加えて、勤怠管理システムを導入する目的についても説明します。
目次
労働基準法には、従業員の勤務時間や休日数など、企業が遵守すべき基準が定められています。これらの基準を守るため、従業員の勤務日数や残業時間などの勤怠情報を正確に把握することが不可欠です。この観点から、勤怠管理は企業の法的義務と言えるでしょう。
働き方改革や新型コロナウイルスの影響により、人々の働き方が多様化しています。この変化に対応するため、労務管理がより複雑となり、企業には適切な勤怠管理の実施が求められています。
勤怠管理を行う目的は、大きく以下の3つに整理できます。
経営者は従業員の雇用に際し、労働基準法やその他の法令に従う必要があります。例えば、労働時間の記録は、労働基準法により5年間保存が義務づけられています。また、法定労働時間を超えて働かせる場合、企業は労働組合との間で書面による協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
また労働時間を管理する方法については厚生労働省の通達で「使用者が、自ら現認することにより確認し、記録する」か「タイムカード、ICカードなどの客観的な記録を基礎として確認し、記録する」方法で労働時間を管理することが求められています。従業員の自己申告ではなく、客観的な方法で把握するためです。
法令に違反すると、労働基準監督署から是正勧告指導を受けたり、従業員から未払い残業代を請求する訴訟を起こされるリスクが増えたりします。適切な勤怠管理ができていないと、社会的にブラック企業と評価され、会社のイメージを損ねてしまう可能性もあります。
加えて、多くの企業でテレワークの導入が進んだ昨今、従業員の働く様子が直接見えないことで、時間外労働時間の管理が難しくなるなど法令違反が起きやすい状況になっているため、さまざまな勤務形態に合わせて勤怠管理を行わなければなりません。
勤怠管理には従業員が健康に働ける職場を作る目的もあります。時間外労働や休日出勤による疲労が蓄積するとさまざまな疾病やメンタル不調を発症するリスクが高まり、長期欠勤や離職、最悪の場合は過労死に至ることもあります。企業が損害賠償の責任を負うこともあるでしょう。
こうした事態を防ぐためにも、勤怠管理によって従業員の勤務時間や勤務日数を把握し、必要な対応を取ることが大切です。
給与の計算や人事評価の際にも、勤怠情報は必要です。正確な情報がないと、トラブルの原因となり得ます。従業員が安心して働くためにも、厳格な勤怠管理が求められます。
勤怠管理を行う方法はいくつかあります。以下に主要な4つの方法を紹介します。
紙のフォーマットを使用し、各勤怠情報を記入して管理する方法です。インターネット環境が不要でコストもほとんどかからない利点がありますが、手作業による記録や集計は計算ミスが発生しやすく、また従業員が手書きで記録するための客観性に欠け、不正申告のリスクが高まります。
Excelシートに勤怠情報を記録する方法です。関数を駆使すれば自動計算が可能で、紙の出勤簿よりも集計が簡単です。ただし、従業員が自ら記録するため、不正申告を防ぐのが難しく、入力ミスから生じるエラーが給与計算に影響を及ぼすリスクがあります。
タイムカードと打刻機を組み合わせ、月ごとに出退勤の時刻を記録する方法です。コストを抑えつつ導入できる点や打刻の容易さは魅力ですが、出勤時間や退勤時間のみの記録が主となり、その他の勤怠情報を取り込むのが難しい、リモートワーク導入企業においてリアルタイムでの打刻が難しいといった課題があります。
勤怠管理のために開発されたWebサービスやソフトウエアを活用して勤務情報を記録する方法です。打刻から集計、分析までを一元的に行えるのはもちろん、不正申告や法令違反を予防する機能も備えています。ただし、導入および運営にはコストがかかり、また企業の規模や勤務形態に応じたシステム選定が必要となり、即時導入が難しい点などは考慮しなければなりません。
さまざまな勤怠管理の方法がある中、専用システムの導入を検討する企業が増えています。導入する主要な目的は以下の通りです。
勤怠管理システムを活用すれば、人事・労務担当者の手間を大幅に削減できます。従業員の打刻から勤怠情報の集計、加えて給与計算まで、これまで手作業で行われてきたさまざまな業務が効率化されるため、コア業務に注力できるようになり生産性も上がります。
特に給与計算は従業員数が増えるほどヒューマンエラーが起きやすく、計算ミスによって遅延損害金を支払わねばならなかったり、場合によっては労働基準監督署から是正勧告や罰則を受けるリスクもあります。
多くの勤怠管理システムでは、勤怠情報をCSVファイルとしてダウンロードして給与計算ソフトと容易に連携できます。中にはAPI※連携によって勤怠情報をそのまま給与計算ソフトへ取り込めるシステムもあります。
※API:アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programming Interface)。ソフトウエアやプログラム、webサービスの間をつなぎ、OSやアプリケーションの一部を他のアプリケーションから利用できるようにする
勤怠管理システムには従業員の打刻忘れや不正申告を防ぐ役割もあります。生体認証(指紋認証、静脈認証、指ハイブリッド認証など)を利用すれば、他の従業員が代わりに打刻するといった不正を防ぐことができます。
勤怠管理システムを導入していて、パソコン以外にスマートフォンによる打刻も許可している会社では、出勤していないのに打刻をして、出勤したように見せかける不正が行われることがあります。これを防ぐには、スマートフォンのGPS機能を利用して、打刻時の位置情報を記録するのが効果的です。管理者は不正が疑われる従業員の位置情報をチェックできるようになり、従業員も発覚を恐れて不正な打刻をしづらくなります。
また、勤怠管理システムでは時間外労働時間や有給取得日数も一目で分かるため、法令遵守の意識づけにもつながります。
勤怠管理システムでは従業員の勤務時間をリアルタイムに把握できます。集計したデータを分析すれば課題の発見につながるでしょう。作業効率を見比べて、業務が集中しているスタッフの作業量を調整したり、採算性の高いプロジェクトにリソースを充てるなど、プロジェクトの生産性向上にも活用できます。
勤怠管理システムでスケジュールを管理していれば、ノー残業デーやプレミアムフライデー、特別休暇などの制度を設ける際、システムを通して従業員への周知が簡単に行えます。従業員のワークライフバランスを実現し、エンゲージメント向上も期待できるのです。
スマートフォンのGPS機能が災害時の安否確認に役立つこともあります。電話やメールのやりとりができない状況でも、従業員の居場所を確認することが可能です。近年は日本全国で災害が毎年のように起こっており、各企業が災害・緊急時の就業規則や勤怠ルールの整備を進める中で、安否確認機能が備わった勤怠管理システムも注目されはじめています。
勤怠管理は、労働の最適化とともに、企業の法令遵守や信頼性にも直結するものです。これらは企業運営の基盤であり、軽視できるものではありません。労働基準監督署からの是正勧告や従業員からの未払い残業代請求といったリスクを避けるためにも、自社に適した勤怠管理の手法を選び、適切に運用することが求められます。※こちらのページに掲載している情報は2023年8⽉時点のものです。
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