中途採用とは、職務経験のある人材を採用することです。中途採用にはさまざまなメリットがあり、とくに中小企業では、優秀な人材を採用することが大幅な業績の向上につながることもあります。中途採用を成功させるポイントは、採用担当者が会社に必要な人材をよく理解し、条件に合った候補者を集めるのに適切な手段を用いることです。社内の要望をもとに「求める人物像」を整理し、目的や予算に合った採用手法を選ぶことが、採用活動の成功につながります。
このページでは、企業が中途採用を成功させるために、まず理解しておきたい基礎知識を解説します。
中途採用とは、職務経験のある人材をキャリアの途中で採用することです。企業が行う採用活動には、この他に、職務経験のない新規学卒者を採用する新卒採用、短時間の勤務を前提に従業員を雇用するアルバイト・パート採用、派遣事業会社と契約した従業員を受け入れる派遣採用などがあります。中途採用の主な特徴として、以下の点を挙げることができます。
これまでの職務経験でスキルを身に付けた人材を採用することができます。新規学卒者のようにマナーや専門知識の教育を行わず、入社後すぐに能力を発揮してもらうことも可能です。管理職を雇用することもできるため、中途採用をきっかけに会社の業績が大きく向上することもあります。
中途採用には決まったスケジュールがありません。原則として1年に1回の定期採用が行われる新卒採用とは異なり、いつでも求人を出すことができます。会社が必要と判断した時点で、柔軟に採用活動を進めることが可能です。
会社や職種により差があるものの、中途採用の選考は、1人あたり1カ月で行われることが一般的です。候補者の数が多く、数カ月かけて選考を行う新卒採用と比べ、スピーディーに結果を出すことができます。また、内定から入社までの期間を柔軟に決められるのも特徴です。
中途採用では、新卒採用よりも多様な手法が用いられます。転職サイトなどの媒体を利用するだけでなく、人材紹介会社の転職エージェントによる仲介も一般的に行われています。また、SNSの登録者にアプローチしたり、リファラルリクルーティング(縁故採用)を行ったり、ハローワークに求人を出したりと、採用したい人材や会社の特徴に合わせ、さまざまな手法が利用されています。
中途採用を成功させるには、選考前の準備と、内定後のフォローが欠かせません。採用を計画してから候補者に内定を出すまでに、以下の段取りを踏むことが一般的です。
採用活動を始めるにあたり、まず採用計画を策定し、目的やスケジュールを整理します。以下の内容をまとめておきましょう。
採用活動を戦略的に行うには、採用の目的を明らかにし、「求める人物像」を担当者の間で共有しておくことが欠かせません。従業員の退職や事業拡大などにより人材が不足しているときは、現職の従業員と同じスキルを持った人材に入社してもらうことが目的になります。ビジネス領域の拡大や新規事業の立ち上げを行うときは、現職の従業員が持たないスキルを持った人材に入社してもらうことが目的になります。関係者からの要望をヒアリングし、どんな人材が、いつまでに、何人必要なのかを整理しておきましょう。
採用の目的が明確になったら、候補者にアプローチするための手段を決めます。採用手法には、転職サイトやフリーペーパーに求人広告を出して応募を待つ方法と、SNSや人材紹介サービスを利用して企業から候補者に接触する方法に分けられます。採用活動にかけられる予算や「求める人物像」を踏まえ、候補者に効率よくアプローチできる手法を選ぶことが大切です。具体的な手法については、中途採用の方法をご覧ください。
採用活動を終了するまでの全体スケジュールと、候補者を選考する際の個別スケジュールを策定します。全体スケジュールについては、会社の事業計画をもとに、採用を完了しなければならない時期を決め、そこから逆算して日程を組むとよいでしょう。個別スケジュールについては、書類選考から面接、内定、入社までの段取りを決めておく必要があります。優秀な人材を取り逃すことがないよう、候補者を1週間以上待機させず、内定まで1~2カ月に収まるようなスケジュールを組むとよいでしょう。
採用計画が完成したら、採用条件を満たす人材にアプローチし、選考を行います。中途採用では、書類選考や技能審査のあとに複数回の面接を行い、候補者の資質を審査することが一般的です。
候補者にエントリーシートや履歴書、職務経歴書などを提出してもらい、会社が求める人物像とマッチしているかを審査します。学歴や職歴、業務実績、資格、志望動機、自己アピールなどが判断の材料になります。デザイナーやエンジニアなどの専門職を採用するときは、作品例を提出してもらい、スキルを審査することもあります。
専門技能を持った人材を選考するときは、候補者のスキルを判定する技能審査を行うことがあります。採用後と同じ環境でスキルを見極めるため、インターンシップや職場体験を実施することも効果的です。
候補者と面接し、志望意欲や積極性、協調性、コミュニケーション力などを審査します。志望動機やこれまでの経験を掘り下げながら、候補者の性格や仕事への取り組み方を見極めます。どのような資質を重視するかは、会社が必要とする人材の特徴により異なるため、事前に「求める人物像」をきちんと整理しておくことが大切です。
候補者を採用したいと判断したときは、候補者に内定を出します。口頭で内定を伝えたうえで、「採用通知書」と「入社承諾書」を送付することが一般的です。「入社承諾書」に記入して返送してもらうことで、入社の意思を確認します。
内定を出した後も、丁寧なフォローが必要です。複数の会社を受けている転職者の場合、面接官や担当者の印象が悪いと、内定を辞退してしまうこともあります。入社までの流れを丁寧に説明し、きめ細かいコミュニケーションを通じて不安を取り除くように心掛けましょう。
中途採用を進めるには、会社の採用条件に合う人材に、選考に応募してもらう必要があります。採用の目的や予算などを踏まえ、適切な方法で候補者にアプローチしなければなりません。
中途採用の代表的な手法には、以下のものがあります。
中途採用メディアとは、中途採用の求人情報を掲載するメディアのことです。代表的なものに、転職サイト、フリーペーパー、有料求人誌、折込広告などがあります。求人を見た求職者からの応募を受け付け、書類選考や面接を行い、採用したい人材かどうかを判断します。
中途採用メディアを利用すると、媒体を通じて、多くの読者に情報を届けることができます。ただし多くの求人が同時に掲載されるため、中小企業では、他の情報に埋もれてしまうこともあります。媒体に関する情報を集め、慎重に効果を検討する必要があります。
人材紹介サービスとは、企業から紹介依頼を受け、サービスに登録している人材の中から、条件に合う候補者を紹介するビジネスのことです。エージェントが企業と求職者からそれぞれの要望をヒアリングし、条件に合う人材を紹介、採用に至るまでのサポートを行います。採用が成立した場合のみ、企業が年収の一定割合を支払う、成果報酬型のモデルが一般的です。採用の段階で大きなコストが生じますが、採用活動の手間を削減することができ、さまざまな条件に合った人材を紹介してもらえるのが魅力です。
ソーシャルリクルーティングとは、ソーシャルメディアを活用した採用活動のことです。
Twitter、Facebook、Instagram、YouTubeなどのメディアでユーザーへ情報を発信したり、メッセージ機能を使って登録者とコミュニケーションを取ったりすることが行われています。また、採用や人材交流などの目的に特化したサービスも登場しており、IT業界を中心に登録者を増やしています。採用を成功させるまでには継続的な情報発信が必要になりますが、ソーシャルメディアでの活動からユーザーの素顔を知ることができたり、気軽にコミュニケーションを取れたりするメリットがあります。
ダイレクトリクルーティングとは、企業が採用したい人材に直接アプローチする手法のことです。条件に合う人材を調べてスカウトしたり、求職者のデータベースを使って人材にアプローチしたりする方法があります。求人広告で応募を集めることにより生じるミスマッチを防ぐことができ、転職活動をしていない人も含めた豊富な人材にアプローチできるのが魅力です。
リファラルリクルーティングとは、社員が持つつながりを使って人材にアプローチする採用手法です。社員が知人などに声をかけて候補者を集め、条件に合う人材を採用します。社員の協力が不可欠ですが、コストを最低限に抑えることができます。また、社員とのプライベートなつながりがあるため、候補者の資質を深く理解したうえで採用できるメリットもあります。
ハローワーク(公共職業安定所)とは、職業安定法にもとづき、国が所管して職業紹介事業を行う機関のことです。無料で求人票を出すことができ、さまざまな助成金の制度も用意されています。
中途採用は、短い期間で大きな成果を上げることができる採用手法です。入社後のミスマッチを防ぐためにも、必要な人物像を明確にし、計画に沿って採用を進めましょう。とくに候補者へアプローチする手法については、目的や予算に合った方法を選ぶことが大切です。※こちらのページに掲載している情報は2017年8月時点のものです。
中途採用メディアの基礎知識
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