【第13回】研修マスターの6つ星“指南術”
職場の若返り効果が期待できる新入社員育成術
毎年新入社員が入社するタイミングは、彼らのフレッシュなエネルギーが職場に伝わり、上司や先輩社員も初心を思い出し、リフレッシュした気持ちになります。しかし最近は、「新入社員のフレッシュさが長続きしない」、「あっという間に職場に染まる」、「気配が消える」という声をよくお聞きします。
なぜ多くの職場で、このようなことが起きやすくなっているのでしょうか? 今回は、新入社員が職場に染まりやすい理由と、フレッシュさを長続きさせるための「セルフマネジメント」の方法を紹介します。
あっという間に職場に染まる新入社員
今から約8年前、新入社員研修を担当したときのこと。今までの新入社員とは少し変わってきたと感じたことがありました。それは新入社員に次のような質問をされたことがきっかけです。
「いろいろと教えていただいてありがとうございます。1つ質問があるのですが。原田さんご自身は、日々、どのようなことに取り組まれていますか? それを教えていただけないでしょうか」
この何気ない質問に「いろいろといいこと言ってるけど、あなたはどうなの?」と、問われたように感じました。そして、そう問われるのも無理はないな、とも思いました。というのも、新人社員研修を行っていた職場の環境は、新入社員のみなさんが今まさに「こうあるべき」と指導されていた理想の状況と、明らかに異なっていたからです。
例えば、「挨拶は大事。上司や先輩には積極的に挨拶しましょう」と伝えた後、彼らは恥ずかしさを乗り越えつつ、すれ違う上司や先輩に「おはようございます!」と元気に声をかけます。しかし返事はなし。先輩社員は、チラリと新人の顔を見て、会釈のようなそうでないような様子で顔を下に向けて通り過ぎます。その後、先輩社員のほとんどにそのような対応をされるため、彼らは「先輩社員は挨拶をしない」→「職場では挨拶の必要なし」と学習します。
こうした学習は過去からありますが、その学習速度は年々速まり、とても合理的になってきています。その結果「職場に染まる」のも早いわけです。一方で、上司や先輩が基本を大事にしている職場では、悪い意味で職場に染まらず、より早く成長できる素養があるとも言えます。
上司や先輩が実践できていることなら、新人も納得して学ぶ
以上のような背景があるので、新人研修では、上司や先輩が実践できていることを学ばせることが一番効果的です。しかし、上司や先輩の教育が進まない事情があり、だからこそ、新入社員から風土を変えていってほしい、という思いをもって取り組まれるケースもあることでしょう。その場合は、新入社員に対する次のようなアプローチが効果的です。それは「自分の成長に意識を向けさせる」方法です。
「日々自分が成長している実感を得られる仕組み」を作る
「自分の成長に意識を向けさせる」とはどういうことか。それは、日々自分が成長している実感を得られる仕組みを講じることです。これを私は「セルフマネジメント」として紹介しています。
進め方はとてもシンプルです。
- 始業時
「今日期待する成果(目標)」を書き出してもらう - 終業時
「今日得られた成果」、「思いがけない成果」、「明日以降にもう少し取り組んでみたいこと」を書き出してもらう
この2点を忘れず実践するだけです。この方法の源流は、マネジメントの父、P.F.ドラッカーが「フィードバック」という手法で伝えています。類似した手法は現在、組織運営やスポーツの分野などで紹介されているので多くの方がご存知でしょう。しかし、取り組みが長く続かないケースも多いようです。
大切なのは「わずかな変化を大事にすること」
そこで私は、この取り組みを続けるために、ある工夫をしています。それは「わずかな変化を大事にすること」です。
特に「気持ちを大事に」します。例えば始業時に「昨日より作業時間を5分短くする」という目標を立てた場合。終業時に振り返り、作業時間を5分短くできないと、通常は「未達」と捉えます。しかし、この場合はそう捉えずに、たとえば、それが1分だったとしても「短くできた時間」を記録してもらい、そこで工夫したことも書いてもらいます。
また、自分が目標としたこと以外で良い出来事もあるはずです。例えば「挨拶をしたら、先輩が返事をしてくれて嬉しかった」といった、一見ささいとも思えることです。そういったことも、「得られた成果」としてこまめに記載することを勧めています。特に、入社後2~3週間は、教えてもらうことのほとんどがうまくできず落ち込むことが多いので、上司や先輩が微細な点でも成長したことを見つけ、伝えることがポイントです。
日々を肯定的に振り返ることで、フレッシュな感覚が持続する
次の日の目標を立てる際には「作業時間を4分短くする」という目標を前提としながら、それに近づきやすいプロセスを考えてもらいます。
目標をプロセスに落とし込んで考えられるようになると、自分が学んだことや努力したことは、何かしら自分にとってよい効果や経験をもたらすことが徐々に理解できるようになります。また、ちょっとした変化に気づく目が養われるので、上司や先輩の仕事を観察して学べるようになります。さらに、日々を肯定的に振り返るので「やればできる」といった自己効力感(セルフ・エフィカシー)が増し、メンタルを良好に保つ効果も期待できます。そうなれば、新入社員は日々学ぶことが全て自分にとっての糧となることを自ら理解できるので、前向きかつ積極的に取り組むことにつながり、新入社員らしいフレッシュなエネルギーが持続しやすくなります。
微差は大差
ちなみに、私が新入社員で入社した組織では、日々の活動を振り返る手帳があり、始業時と就業時に記録し、それをトレーナーが確認する仕組みがありました。今思うと、グローバルでトップクラスの業績を維持し続けられるその要因は、誰でも当たり前にできることに着目し、それを仕組み化し徹底できるかどうかにあったと痛感させられます。
微差は大差。小さな成長や変化に、育てる側も育つ側も気づく目の有無が、組織の鮮度に大きな差をつけます。
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