働き方を選べる社会に

労働力も「所有」から「利用」の時代へ

今後の社会では「人材・労働力のAWS化」が進む

私は株式会社キャスターとその子会社である株式会社働き方ファームという2社を経営しています。

2社とも、社員全員がオンライン上(リモート)で働き、オンライン上で中小企業のバックオフィス系の業務や採用業務自体をアウトソーシングする(請負)事業をやっているのですが、人材業界の中でもアウトソーシング、なかでも中小企業・ベンチャーから依頼を受けることをメインとしてやっている中で、今後「人材・労働力のAWS化」が一気に進みそう、労働力を「所有」から「利用」する時代に変化していくのだと感じています。

※AWS…Amazon Web Servicesの略称で、Amazon.comにより提供されているクラウドコンピューティングサービス。

空前の売り手市場は続き、特に中小企業の採用活動は困難に

現在の日本は、バブル以来の有効求人倍率になっています。リクルートワークス研究所のデータによると、2018年3月の大卒者の有効求人倍率1.78倍、ただこれはあくまで平均で中小企業(300名以下)になると、なんと6.45倍。求職者1人に対して6〜7社の求人がある状態です。これは中小企業、ベンチャー企業において採用したくても人を採用するという行為自体が難しい状態です。

経営している会社で中小企業、ベンチャーに特化した採用業務のアウトソーシングをやっていますが、積極的に営業や広告宣伝を行わなくても受注をセーブしないといけないくらい依頼が増えています。それくらい「採用する」という行為自体が非常に難しくなっているということかと思います。

今の人手不足は、単に景気が良いから起きているわけではない

中小企業だけに限った話ではないですが、企業は業績拡大していくと「採用」をし、社員を増やすことで業績や事業規模拡大に対応してきました。正社員、派遣社員、アルバイトなど雇用形態はさまざまですが、基本は働く個人を「雇用」し、その個人の労働力を「所有」することで会社は拡大をしてきました。

今でも経営者や人事部門を始め、忙しい、人が足らないという状況になると採用で解決しよう、という思考が一般的には多いかと思います。

ただ、今後「人を採用する」「人を雇用する」といったことはどんどん難しくなります。なぜなら今回の採用難、人手不足は景気が良いから人が採用できない、人手不足になる、という今までの状況とは構造が違うからです。

現在起きている人手不足の「2つの要因」

現在の人手不足は、景気の良さや中小企業やベンチャーを中心として資金調達環境の良さとは反対に、人口減少(特に労働人口の減少)働く個人の選択肢の広がり、の2つが絡み合って起きています。

労働人口不足により、採用難は加速する

労働人口減少はいうまでもありませんが、想像以上にこれからの企業活動に影響を与えてきます。総務省統計局の「人口・世帯」データ「人口推計」データを改めて見てみましょう。

これらのデータによると、日本では、

  • 〜2025年で約600万人
  • 〜2035年で約1500万人
  • 〜2045年で約2500万人

という単位で人口自体がどんどん減っていきます。

これは労働人口ではなく総人口ですが、少子高齢化の流れの中で労働人口はダイレクトに影響を受け、減り続けていくことは間違いありません。

これくらい人口が減る、特に労働人口が減ることは確定してしまっているので、当たり前ですが、同じくらいのペースで企業が減っていかない限り、企業にとっては採用難の時代が続くことになります。むしろ今よりもっと採用難が加速することになります。

雇用されない、自由な働き方が広がっていく

一方、求職者個人で見ると、今までにないくらい働く場所や働き方、時間などが選べる時代に突入してきます。2018年現在でもフリーランスや副業など、いわゆる雇用されない働き方を選んでいる人たちは1000万人以上いると言われています。

参考)ランサーズ株式会社「フリーランス実態調査2017年版」

今後、正社員、週5日会社に行く、という働き方しか選ばないという人が増えていくということは考えにくく、むしろ今よりもさらに自由な働き方を選択する人が増えて行くはずです。

UberEatsで配達員として働いている人などを見ても、自分が働きたいときだけアプリ上でステータスをアクティブにすると仕事が入ってきて、お店に注文の品を取りに行って届ける、今日はもういいや、となったら仕事終わり、というような働き方を選んでいる人がすでにたくさんいます。

仕事をいつして、いつ終わるのかということすら自分で選べるようになっているのです。

今までと同じ「採用」では、本当に誰も入ってこない

今後、こういった求職者側の力がどんどん強くなっていくでしょうし、それにより求人側(企業)は働き方を自由にせざるを得なくなり、いままでと同じような「採用」を考えているだけでは、本当に誰も入ってこない、そんな企業が増えていくのではないか、と思います。

しかし、ベンチャー企業など成長をしていくために誰かが仕事をしてくれないといけません。そこでAIの活用などが積極的に言われているわけですが、それよりも先に企業として社員を雇用するといった「所有」ではなく、その仕事ができる会社や個人を「利用」することによって解決を図る、という企業が増えていくのではないかと思っています。

特に中小企業においては、オペレーションが決まっている業務よりもコミュニケーションとオペレーションが紐づいて業務が成立していることも多く、「人」が介在してし、意味や意図を解釈することで運用できていることも少なくありません。

そういった環境においてはまだまだ「人であること」の価値が高く、AIなどのテクノロジーではなく、「人」に依頼する、「人」にアストソーシングするということが増えていくと思います。

「ソフトウェア」で起きたことが、「人材」にも起きる

かつてWebサービスを作る際には、自分でPCを買ってきてつなぎ合わせサーバやデータセンターを作り「所有」することが必要でした。

そこにAmazonの「AWS」と呼ばれるクラウドのサーバが出たことにより、Webサービス運営者はサーバを「所有」する必要がなくなり、機能を「利用」するだけでよくなりました。サービスの利用者が増えてサーバの増強が必要になってもAWSであれば設定してあれば自動で増強し、対応してくれます。もはやサーバを「所有」することのコストが高く、所有するメリットがなくなってきています。

それと同じことが「人材」の領域にもやってくると思っています。

これから人手不足の時代が続き、雇用する、要は個人の労働力を「所有」するためのコストが高騰してくると、個人の労働力を「所有」するのではなく、必要な時に必要な分だけ「利用」すればいい、そう考える企業が増えてくるでしょう。

むしろそうしないと成り立たないといった方がいいかもしれません。

また、働く個人としても、労働力をどこか1つに「所有される」よりも、自分で提供したい時に提供する、といった働き方の方が楽でいい、そっちの方が楽しいという人もどんどん増えてくると思います。

あと数年のうちに、社長とリソースを調達してくる担当者、あとは外部のアウトソーサーで運営している、そんなサービスや会社が出てくると思いますし、そこまででなくても、「事業のコアな部分以外は、アウトソーシングで」という会社はどんどん増えるのではないでしょうか。

※情報は記事公開時点

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