新卒採用に経営情報・IR情報を!
就活に、IR情報は有益か?
差別化が難しい現在の採用情報
現在、企業から提供される就活生向けの採用情報は、理念やビジョン、そこで働く人の魅力や社風・風土といった定性的かつ主観的な情報が中心になっていることは、以前のコラムでお伝えしました。
繰り返しにはなりますが、こういった定性的かつ主観的な企業情報・採用情報が、学生が企業を評価する上で大切な情報であることは確かです。しかし、こうした主観的な情報を提供するだけでは、学生から「自分に合う会社だ」、「将来性がありそうな会社だ」、「やりがいを持って長く働けそうな会社だ」といった評価を受けることは困難です。
オリジナリティの高い理念やビジョンを持つ企業もありますが、これだけ多くの企業が存在する現代社会においては、似通った理念やビジョンも増えてきています。
そうした類似したものが多い事柄だけで企業を評価したりジャッジしたりするのは、私たち社会人にとってもハードルが高く、ましてや就活生には至難の業だと言えます。
また、「当社の社員は人柄が悪い」とか「当社の社風はギスギスしています」といったことを、採用情報で伝える企業はまず存在しません。エッヂを利かせる目的で、意図的にそのような採用広報を行っている企業が皆無とは言いませんが、大半の企業はそうではありません。多くの企業はウソをついているのではなく、あくまでも「主観」で情報を学生に提供しているからこそ、こうしたことが起きるのです。
このような状況では、就活生は何を信用していいのか困惑するばかりで、企業同士の比較が極めて困難になってきています。そこで今回は、こうした状況を打開するために当社が一昨年試験的に行った、採用広報のテストマーケティングについてお話したいと思います。
学生を対象にした個人投資家向け説明会!?
一昨年春、前述のような問題意識を持っていた当社は、あるイベントにチャレンジしてみました。
それは、IR担当の役員が、就活生を相手に、個人投資家向けの説明資料を使って約1時間のプレゼンテーションを行うというモノ。ちなみにこの試みは、現在当社が事業化を進めている「SR(Student Relations)支援事業」の構想が産声を上げたことをキッカケに、一度就活生にIR情報をぶつけてみようという発想からスタートしました。
ちなみに「SR(Student Relations)」とは「IR(Investor Relations)」を基にした造語で、Investor(投資家)をStudent(学生)に差し替えたものです。つまり「SR」とは、前回コラムでご紹介した「個人投資家」≒「就活生」という観点に立ったコミュニケーションのことです。当社は現在、こうしたコミュニケーションを支援する事業に取り組んでいます。
話をイベントに戻しましょう。イベントは「就活生に、IRは有益か?」というタイトルで、就活支援セミナーという建付けで実施し、大学3年生約30名を集めました。また上場企業の採用担当者10名にも参加いただき、前述した「個人投資家向け説明資料を使ったプレゼン」と「複数の有識者によるシンポジウム」の2部構成で行われました。
進行役は私が務めたのですが、就活生を大人扱い、もっと言うと個人投資家扱いするというスタンスで進行させたので、事前にIRに関するレクチャーや予備知識は与えていません。第1部はいきなり「BS/PL/CF」を基にした業績説明からスタートしました。これは、IR担当役員の個人投資家向け説明とほぼ同様のプレゼンテーションです。参加学生の顔つきがどんどんこわばっていったのを今も鮮明に覚えています(笑)。更に「減価償却」や「EBITDA」や「PER」「PBR」にまでプレゼンの内容は進みます。私はイベントの進行を担いながら、「このあたりで戦意喪失か」と思っていたのですが、そこから意外な現象が起こり始めました。明らかに参加学生が前のめりになり、メモの量とスピードが格段に上がってきたのです。
参加した就活生30名はMARCH及び日東駒専の学生が大半で、商学部の学生はほぼ皆無でした。そんな彼ら、彼女らがなぜそこまで個人投資家向けのプレゼンテーションに反応したのか? 正直、私も大変驚きましたが、その後行われた質疑応答やシンポジウムを聞いて納得することになりました。
ワンランク上の企業情報を欲する就活生の存在
事前レクチャー等のない中で就活生たちが前のめりになった理由、それは「今まで参加したどの会社説明会よりもリアルに、企業経営の考え方や実態を感じられたから」というモノでした。これは終了後のアンケートの集計結果から判明したことで、アンケートには「全てを理解できたわけではないけれど、一般的な会社説明会で発信される採用情報と明らかにレベルが違い、話を聞いていてワクワクしました」といった意見が多く見受けられました。
また質疑応答では、「同業他社との違いを、営業利益率で説明して欲しい」「前期より営業利益が下がった理由をもう少し詳しく知りたい」「先行投資の成果はいつくらいにどの程度上がってくるのか?」といった、まさに投資家から経営陣が受ける質問と同等、或いはそれ以上のレベルの高い質問も多く出ました。
このイベントを通して私は痛感したのが、潜在的にビジネスセンスのある学生は間違いなく存在していて、彼ら、彼女らは、一般的な会社説明会で聞かされている耳障りの良い採用情報だけでは物足りないということ。更には、そういった就活生たちにワンランク上の企業情報を提供すると、私たちが想像している以上のスピードでそれを理解しようとする柔軟性や向上心というモノを兼ね備えているということです。
もうひとつ印象的だったのは、プレゼンテーションの最後に自社の経営課題やリスクといった、通常の会社説明会ではほとんど耳にしない情報をポジティブに捉えているということです。終了後に参加学生が発した「『課題やリスク』を想定している経営の方が、場当たり的な経営よりもはるかに健全だと感じました」というひと言を聞き、大きな衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。こういった就活生を多く輩出したい!そういう思いで私たちは「SR(Student Relations)支援事業」を推進していこうと決意するに至ったのです。
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