組織能力向上エンジンとしての人財部門へ

上意下達の「戦略→組織」に偏り過ぎていませんか?

たとえ同業種であっても、「戦略」に「唯一絶対解」はないため、私たちには、「自社にとって適切な戦略」を立案し、実行することが求められます。 例えば、「自社は、現在、高い収益が見込める産業に進出しているのか?」「寡占状態を生み出すための手が打てるか?」といった『製品やサービスの市場構造に関する視点』から戦略を検討することが有効な場合もあれば、「自社の持続的な競争優位性を実現するには、どういった人財を獲得・育成し、どういった技術力やブランド力を高めていくことが大切なのか?」といった『他社が模倣困難な、独自の組織能力に関する視点』から戦略を検討することが有効な場合があるなど、市場や自社の状況に応じて「適切な戦略」は異なりますし、変わっていきます

「戦略と組織(特定の考え方に賛同する人財の集合体)」に関して大きく分けると、『組織は戦略に従う』と『戦略は組織に従う』という、2つの考え方があります。 

『組織は戦略に従う』という表現で知られる、経営史研究者のアルフレッド・D・チャンドラーJr.さんは、「目的や戦略、中長期の業績目標などを定めてから、それらを達成するために必要な人財などの経営資源を計画的に配備することが重要である」という考え方を提唱され、

『戦略は組織に従う』という表現で知られる、戦略経営論創始者のイゴール・アンゾフさんは、「実現可能な戦略は、組織能力に規定される。他社との差別化を図るには、組織の特性を活かした戦略立案が重要である」という考え方を提唱されました。

これらについては、「真逆の対立する考え方である。どちらか一方だけが正しい。」と捉えるのではなく、市場や自社の状況に応じて、「戦略→組織」の取り組みに軸足を置く場合と「組織→戦略」の取り組みに軸足を置く場合を「柔軟に切り替えていく」ことが大切だと、弊社では考えています。

この辺りの考え方について、5つの永世称号を獲得された将棋棋士の大山康晴さんは、『勝負のこころ』という著書の中で、次のように述べておられます。

「私の場合、受けといっても、単なる守勢を意味するものではない。相手に踏みこまれてから、やむなく受けに廻るというのは、ほんとうの受けではない。それは、後退と同じことで、正しい意味での防御という役を果たしていない。相手が踏みこんできたとき、いつでも反撃できる態勢を整えておく。十分な準備のうえに立って、あくまでも攻めを前提として守りを固めるのが、ほんとうの『受け』である。

ただし、「戦略→組織」と「組織→戦略」の取り組みを状況に応じて切り替えたり組み合わせたりするのが大切とは言っても、大まかな傾向としては、コンビニエンス・ストアがドリップ・コーヒー(カフェ市場)やドーナツ(おやつ時間市場)、スムージー(健康・美容市場)の取り扱いを始めた例などで見られるように、産業間の境界線は曖昧となって、伝統的な産業構造を適用して戦略を考えること(「戦略→組織」のアプローチ)は難しくなってきているため、「組織→戦略」のアプローチ(表の右側の「創発的なアプローチ」)に意識を向ける企業が増えてきています。

一方、最近盛んな「戦略的人財マネジメント」の話では、「戦略→組織」を前提とした、「戦略が実現できる人財の獲得・育成」といった表現が非常に多く、「インベンション(発明)」や「イノベーション(創新普及)」の促進に重要な、「組織→戦略」を前提とする表現に出会う機会が少ないように感じています。 環境変化に応じて『攻めつつ守り、守りつつ攻める』という『懐の深い、複眼的な戦略活動』の実現という切り口があることも踏まえ、あなたは「戦略」についてどのように考え、どういった取り組みをしていくのが良さそうでしょうか?

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