第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社

ITを活用して企業業績を上げられる人材を作る!

第3回 人事部門(管理部門)の生産性を向上させるIT活用

第3回では、社会保険労務士でITコーディネータの太田綾子さんより「人事部門(管理部門)の生産性を向上させるIT活用」についてご紹介します。

>>第2回はこちら 「ITコーディネータ資格の活用事例について」
>>第1回はこちら 「ITコーディネータ資格制度とは?」

1.人事部門の役割、目指すところとは?

人事部門の役割(機能)とは、企業の経営戦略の実現に向けて、経営資源の1つである「ヒト」の能力を最大限に引き出し、活用をすることでしょう。そのために、人の採用から部門への配属、給料の金額決定や仕事の成果の評価、働きやすい職場にするなど、「ヒト」に関する様々な業務を行います(図1)。

図1 人事部門の役割(人事部の機能)図1 人事部門の役割(人事部の機能)

企業の経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」の中でも、「ヒト」は重要です。「モノ」や「カネ」があっても、それらを有効に活用できる「ヒト」がいなければ、経営戦略は達成できないからです。

また、人事部門以外の管理部門では、総務(モノ)、経理(カネ)、経営企画・法務・知的財産・情報システム(チエ)等、多種にわたるの業務で企業経営をサポートしています。これらの管理部門は、日々の業務が滞りなく進むことが求められます。また、最終的に企業のすべての情報が集まる部門であり、企業経営にとって重要な役割を担っています。

今回は、人事部門そして、“管理部門全体の生産性の向上とIT活用”について、ITコーディネータを目指す方やIT経営を推進する方の教科書である「IT経営推進プロセスガイドライン」(ITコーディネータ協会発行)の内容も踏まえて、考えてみたいと思います。

2.管理部門の生産性向上のポイントは?

管理部門の生産性向上のポイントは、「経営判断に必要な情報が正確かつタイムリーに提供されること」「内部統制やコンプライアンスが遵守されること」ではないでしょうか?

すでに、多くの企業では、定型業務を外部に委託したり、契約社員や派遣社員等に割り当てたりすることで、コストの削減をはかっています。また、業務に応じて、会計システムや人事給与システムなどを導入することで効率化(省力化)も図っています。

このように、経理や人事担当者の定型業務のウェートが減った分、これからは、より戦略的に、経営判断に必要な情報を正確かつタイムリーに提供し、内部統制やコンプライアンスが遵守されるための取組が重要だと考えています。そのためには、正確な情報を早く収集し、分析するためのIT化は必須であるといえます。

3.生産性向上のための課題と解決策は何か?

多くの企業では、部門ごとに、生産管理システム(生産現場における納期、数量、場所、工数などの計画・管理活動を効率化するシステム)や販売管理システム(商品の発注から納品までの、販売の一連の流れを一元的に管理するシステム)、会計システム(財務会計ソフト、管理会計ソフトなど)や人事システム(給与計算ソフトなど)を導入しています。

しかし、これらのシステムや部門間の連携が十分でない企業もあるように見受けられます。

例えば、販売管理システムと経理部門の連携がとられていないと、営業部門等で請求書発行のための入力処理を行い、経理部門で売り上げ計上の入力処理を行うという手間がかかります。また、給与計算ソフトと社会保険の手続きなどが連携されていないと、基本情報の入力が重複したり、データを連動させたりする作業が生じています。

このように、実際には多くの企業で、管理部門の生産性向上が思ったほど図れていないという課題を抱えています。これらを解決するためには、他部門との情報連携を行うための業務プロセスの整流化(業務のムリ・ムダ・ムラをなくし、業務を標準化し・改善工夫を行う)と、その実現に適したITの活用が重要だといえます。

4.ITを導入する上での3つの壁と解決策は何か?

しかし、管理部門がITを導入する際には、一般的に3つの壁があります。まず、コストです。大規模なシステムを入れることになると、コストも大きくなります。管理部門は企業の利益を直接に生み出す部門ではないと見られて、IT投資の優先順位が低くなるという傾向があります。

2つ目の壁は、管理部門のIT活用についての認識不足です。「これまでの方法でなんとかなってきたわけだしとかこれまでの方法を変えることが面倒だ」という気持ちだと、課題を発見することすらできません。また、部門間の連携を行うためには、全社横断的な業務プロセスの見直しが必要になるため、経営者自らがコミットメントをしなければ、実現は難しいでしょう。

3つ目の壁は、知識・スキル不足です。ITに関する知識やスキルが不足しているため、課題解決への方法が限定的になってしまう場合があります。

ITに関する知識やスキルは一朝一夕に身につくものではありませんが、セミナーを積極的に受講したり、ITコーディネータなどの外部の専門家に国や自治体・支援機関などの無料専門家派遣制度(※1)等を利用したりして相談するなど、信頼できる協力者を見つけることも良いでしょう。また、会社の中にIT活用を推進できる専門知識を持ったリーダーを育てることが、IT導入によって成果を出すためには最も早道であるといえます。

※1.国や自治体・支援機関などの無料専門家派遣制度「ミラサポ」https://www.mirasapo.jp/

5.ITを導入した後の課題と解決策は何か?

IT導入後は、ITの運用教育を行い、マニュアルを整備することが重要です。ただし、しっかりしたマニュアルを用意しても、読まない社員もいます。そこで、マニュアルはできるだけシンプルにし、マニュアルがなくても社員が感覚的に使えるシステム設計にしておくことがベストです。パッケージソフトの場合には、そのような自由度は少ないと思いますが、自社システムを構築するときやソフトを購入するときに、実際に使う社員のことを意識することも大切です。

また、導入したITによって、業務の効率化がどれくらい進んだか、例えば、ミスの発生割合がどれくらい減少したのかをモニタリング(観察・測定)し、その後の改善につなげることも重要です。導入した効果が数字で示されれば、メンバーのやる気や経営者の評価も更に高まるに違いありません。ITは導入したら終わりではなく、生産性を向上させるための道具であることを常に意識すれば、正のスパイラル(好循環)が生まれるはずです。

6.おわりに

ITは導入することが目的ではなく、経営目標実現のための道具でなければなりません。管理部門の生産性向上も、経営目標の実現が最終的なゴールであることを意識することがポイントだといえます。是非、管理部門内に留まることなく、全社的な視点で、会社全体の課題解決に繋がる生産性向上に取り組んでいただきたいと思います。

なお、ご参考まで、ITコーディネータを目指す方やIT経営を推進する方の教科書である「IT経営推進プロセスガイドライン」(ITコーディネータ協会発行)のプロセスに沿って、これまでご説明した内容を以下のとおりご紹介いたします。

興味を持っていただいた方や、管理部門として会社全体のIT活用のリーダーを目指す方は、この機会にITコーディネータ資格取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。

【参考】「IT経営推進プロセスガイドライン」と管理部門のIT化

本当に経営に役立つIT化(投資)とは、経営戦略の実現を描いたシナリオと一貫したプロセスの中に、社員のレベルに合った必要なIT活用を織り込んでいくことです。「I T経営推進プロセスガイドライン」(図2)では、そのためのプロセス(流れ)を次の図で示しています。

図2:IT経営プロセス(IT経営推進プロセスガイドラインVer.3.0より)図2:IT経営プロセス(IT経営推進プロセスガイドラインVer.3.0より)

IT経営認識領域(A)は、「ITを活用した経営改革の必要性を認識する」プロセスです。 
IT経営実現領域(B)は、「ITを活用した経営改革を実行する」プロセスです。IT経営実現領域(B)では、4つのプロセス(B1~B4)が示されています。

経営戦略プロセス(B1)で策定された経営戦略をもとに、業務改革プロセス(B2)で業務改革が実行されます。例えば、人事部門で、経営戦略にもとづいて、「働き方改革(労働時間制度の変更)」を行うことになった場合を考えてみましょう。フレックスタイム制を導入するにあたり具体的な制度の検討や労働時間管理方法(タイムカードや遅刻早退時の届出)の変更などは、経営戦略プロセス(B1)~業務改革プロセス(B2)で行われることになります。

IT戦略プロセス(B3)では、「経営戦略・業務改革の中でITにより解決すべき課題について検討し、全体的なIT戦略を策定する」プロセスです。IT利活用プロセス(B4)では、「IT戦略にもとづいたITの導入と活用を実行」します。

今回ご説明した人事部門の例でいうと、フレックスタイム制の導入に伴って、IT導入(変更)の必要性や方法を検討し、実際にITを導入し、活用するプロセスとなります。

この記事の執筆者

太田 綾子 ITコーディネータ、社会保険労務士
生保会会社人事部にて、人材育成等を担当。退社後、社会保険労務士資格を取得し、コンサルティング会社で人事・企業年金、人事労務管理分野のコンサルティングを行う。現在は、太田社会保険労務士事務所・所長として、専門家コンサルタントとのネットワークにより、総合コンサルティング(人事・IT経営・法務、財務分野等)を行っている。2013年にITコーディネータを取得し、そのネットワークを利用して、ITを活用したIT分野の業務改善支援も行う。

太田社会保険労務士事務所
http://www.sr-ota.com/

 

 

次回以降の予定

最後までお読みいただきありがとうございます。今回は社会保険労務士でITコーディネータの太田綾子さんより「人事部門(管理部門)の生産性を向上させるIT活用」についてご紹介させていただきました。

本連載は全4回の予定で、次回以降は以下のような内容を計画しております。

◇第1回:ITコーディネータ資格制度とは?
◇第2回:ITコーディネータ資格の活用事例について(資格取得のきっかけ、活用方法など)
◇第3回:人事部門(管理部門)の生産性を向上させるIT活用(社会保険労務士のITコーディネータが成功のポイントを解説)
◇第4回:サイバーセキュリティの脅威等に対応するための取り組み事例や今年度から官民一体でスタートしたセキュリティの新制度「SECURITY ACTION」のご紹介など(予定)

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