【新卒採用】内定承諾後辞退を防止するためのフォローと実践ポイント

近年、新卒採用における内定承諾後の辞退が企業にとって大きな課題となっています。企業が多額のコストと時間をかけて採用活動を行ったにもかかわらず、内定承諾後に辞退されることで、採用計画の見直しや追加募集の必要が生じる事態を招いています。
リクルート社が3月25日に発表した2025年卒学生を対象とした最新調査*によると、内定辞退率は60%を超えており、さらに弊社で行ったヒアリング調査より、内定承諾後の辞退も平均27.2%**に達していることがわかりました。このような状況において、企業が持続的に優秀な人材を確保するためには、内定承諾後のフォローを強化し、辞退を防ぐ施策を講じることが不可欠です。
本記事では、内定承諾後辞退が起きる背景や要因を整理し、効果的な内定者フォロー施策と具体的な実践ポイントについて詳しく解説します。
*参考:「就職プロセス調査(2025年卒)『2025年3月度(卒業時点) 内定状況』」リクルート
**参考:自社で行った利用企業のヒアリング調査の回答平均
目次
内定者承諾後辞退が起きる背景
内定承諾後辞退率の現状
内閣府の最新のデータ【下図】によると、新卒採用において内定辞退は一般的な現象となっており、内定承諾後の辞退率も約4人に1人が辞退する状況になっています。企業が採用目標を達成するためには、この高い辞退率を考慮し、内定者フォローを強化する必要があります。
出所:「令和6年度 学生の就活時期等に関する調査結果 報告書」内閣府
要因1:就活の長期化とオンライン選考の増加
2024年の調査(上図の中の一番下の棒グラフ)では、48.3%の学生が9カ月以上にわたり就職活動を行っています。就活の早期化にともない、学生が多くの企業と接触する機会が増え、比較対象が増えることで、最適な選択をするために内定承諾後も活動を継続する傾向が強まっています。
また、オンライン選考が一般化したことで、企業の雰囲気や文化を十分に理解しないまま内定を受けるケースが増えています。一度内定を受けたものの「自分の選択がこれで良かったのか」と不安になる気持ちがだんだんと大きくなってしまい、内定辞退に至る可能性が高まります。
要因2:一人当たりの内定取得数の増加
内定取得数の増加も、辞退率が高まる要因の一つです。企業の採用競争が激化し、多くの企業が採用目標を引き上げる中、学生は複数の選択肢を持つことが当たり前になっています。そのため、自分に合った企業を慎重に選ぶようになり、結果として辞退が増加しています。
その他の考えられる要因
- 企業の採用目標数の増加による競争の激化
- 内定後も就職活動を続ける学生の増加
- 親の影響による意思決定の変化
慢性的な人材不足により、多くの企業が前年よりも採用枠を拡大していることは、学生にとって選択肢や内定を獲得する機会が広がるメリットがある一方で、企業間の競争激化を招いています。その結果、学生はより慎重に企業を比較し、最適な選択をしようとするため、内定承諾後に他の企業へ流れるケースも増えています。
コロナ禍以降はオンライン選考が定着し、全国どこでも効率的に接触ができるようになった一方で、対面での接触と比較すると、入社後のイメージが湧きづらく、後にミスマッチを感じやすい状況を生んでしまっています。内定後もより条件の良い企業を求めて就活を続ける学生も珍しくありません。
また、保護者が子どもに対してより安定した企業やブランド力のある企業への就職を勧める傾向も意思決定に大きな影響を与えています。企業が親に対しても適切な情報提供を行わなければ、内定辞退のリスクが高まる可能性があるのです。
内定辞退を防ぐための内定者フォロー施策と強化ポイント
内定者フォローの考え方と優先順位
内定者フォローは、「内定承諾前」と「内定承諾後」の二つのフェーズに分けて考えることが重要です。
内定承諾前のフォロー(選考段階)
選考から次の連絡・ステップまでの時間が空いてしまうと、応募者の熱量が下がり、その分だけ他社に流れるリスクや辞退につながる可能性が高まってしまいます。できるだけ迅速な対応を心掛けましょう。より丁寧な情報提供を行い、応募者の不安を軽減できるよう配慮することも大切です。
また、内定受諾の意思決定には、求人情報や面接では得られない、企業のリアルな雰囲気を感じられる機会があるかどうかが大きな影響をもたらします。入社後の働き方を具体的に想像できるような機会を提供することが重要です。
1.スムーズなコミュニケーション
- 面接結果のフィードバックや選考の進捗状況を可能な限り速かに、細めに伝えることで応募者のモチベーションを保ち、企業への信頼感を高める
- 内定までのプロセス(面接回数・内容・合否連絡のタイミングなど)や面接官の情報・重視するポイントなどを丁寧に伝えることで、応募者の準備を助け、不安を軽減する
2.企業文化や働き方のイメージ強化
- 現場社員との座談会や職場見学など、実際の職場環境や日々の仕事の進め方について直接触れられる機会を作る
- どんな社員がどんなキャリアステップを歩んできたのかや、入社後のギャップとその乗り越え方など、先輩社員の体験談を共有し、自分の働くイメージを具体化する
内定承諾後のフォロー(入社前オンボーディング)
内定承諾後から入社までの内定者の心理は、単に不安や迷いにとどまりません。実際には、多くの内定者が複数の内定を保有した状態で、自分にとって最適な企業を慎重に見極めるフェーズにあり、各企業の優先順位をつけていきます。
そのため、企業としては「内定を承諾されたからといって安心できる状態ではない」という認識を強く持つ必要があります。継続的に自社の魅力を伝え続けることで内定者からの評価を高めるほか、人間関係を強化する取り組みも効果的です。
1.人間関係の強化
- 内定者同士自由に交流したり、顔を合わせる機会を増やす(Slackコミュニティ、内定者アルバイトなど)
- 先輩社員とのメンター制度を導入し
2.懸念の払拭
- 実際の業務に触れたり、社内文化を知る機会を作ることで企業理解を深める施策を行う(1Day職場体験、現場社員との座談会など)
- 企業のビジョンや成長機会などの情報提供で不安を解消(キャリア相談会、親向け説明会など)
パーソル総合研究所の調査***では、社内イベントの実施や社員との個人的な関係構築が入社意欲を高める施策に挙げられているものの、企業の実施率は低いままとなっています。人事部門のリソース・運営コストの問題や、学生の参加ハードルの調整など、さまざまな理由が考えられます。
上述の内定辞退の要因を踏まえ、自社における内定辞退の要因をきちんと分析しながら、施策の優先順位を今一度検討する必要性があるかもしれません。例えば、学生との接触がオンラインのみであったのを、ハイブリッドの運営方法も取り入れるというものです。より直接的なコミュニケーション機会を持てることが、学生にとって職場の雰囲気をリアルに感じられ、入社後のイメージを明確にします。
***パーソル総合研究所「新卒者の内定辞退に関する定量調査」
企業の成功事例
事例【1】新卒採用業務の外部委託で学生フォロー時間を確保
ある金融保証サービス企業では、新卒採用業務を外部の専門家に委託することで、人事が学生フォローに専念できる環境を整えました。
課題従来の新卒採用目標を大幅に上回る50名以上の採用が求められる中、人事部門のリソース不足から1.5名の担当者のみで採用業務を遂行しなければならない状況。採用業務の負担増により、学生のフォローに十分な時間を割くことができていなかった。 |
施策新卒採用の母集団形成から選考プロセスの一部を外部の採用専門家に委託することで人事担当者が学生のフォローに注力できる体制を構築。具体的には、日程調整や選考を離脱した学生へのアプローチなどを外部に委託し、自社の人事担当者は週次の進捗確認や選考後のフォローに専念。 |
結果
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事例【2】内定者の親向け施策を導入し内定承諾率35%向上
ある食品メーカーでは、親の影響が大きいことに着目し、内定通知とともに社長からの親向け手紙や会社紹介資料を送付する施策を実施しました。
課題交代制のある勤務形態が、学生にとって内定承諾する際の不安要素になっていた。特に、学生の親が企業の働き方や福利厚生について懸念を持ち、内定辞退を促すケースが多く発生し、結果的に内定承諾率が10%程度と低迷。採用活動が長期化していた。 |
施策親の影響の大きさを考慮し、内定通知の際に社長からの親に対しても手紙を発行。合わせて詳細な会社紹介資料(働き方、福利厚生、キャリアパスなど)を同封。他に、親が直接企業の考えを知る機会として、親向けの説明会をオンラインで開催。 |
結果
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まとめ
本記事では、学生の内定承諾後辞退の背景として「就活の長期化」「内定取得数の増加」「オンライン選考による企業理解の不足」などを挙げました。こうした状況の中で、企業に必要な対策は、従前のような一方的・画一的な内定者フォローにとどまらず、学生の心理・ニーズを踏まえたより本質的なアプローチです。オンライン時代だからこそ、学生の心理的安全性の確保を忘れず、コミュニケーション・アプローチの設計を意識しましょう。
【実践のポイント】
- 選考段階での信頼構築
選考プロセスを明確化し、応募者とのスムーズなコミュニケーションで信頼形成。先輩社員の体験談の共有や座談会を実施するなど、 企業文化や働き方のイメージにつながるようコミュニケーションを工夫 - 内定承諾後の多面的なアプローチ
個別のフォローや、内定者同士・内定者と先輩社員などのオン・オフの交流など、内定者ごとに最適なコミュニケーション機会を設計し、「この企業で働きたい」と確信できる状態を作り出す
事例にあるように、親世代への情報提供も学生が安心して意思決定するために有効な場合があります。
企業が内定者フォローの本質を理解し、一人ひとりに寄り添う取り組みを強化することで、入社後の定着率向上やエンゲージメントの強化にもつながります。仮に内定承諾後に辞退になったとしても企業イメージの認知・信頼関係に良い影響をもたらせば、将来的なリファラル・アルムナイ採用の可能性も広がります。
ぜひ柔軟な視点で内定者フォロー施策を検討し、より良い採用を実現していきましょう。
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