人事課題の核心に迫る!MVVが鍵を握る理由

企業が成長するにつれ、かつては特に問題とされていなかった「組織の一体感の希薄化」や「採用基準のブレ」が、なぜ今になって多くの企業で課題として顕在化しているのでしょうか。本記事では、そのような課題解決の鍵としてMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の見直しが不可欠な理由と、その効果について解説します。
目次
これまでの成功体験が今、通用しなくなっている
外部環境の変化
近年、働く価値観やキャリア観が大きく変化しています。特に若年層の就職・転職活動では、給与や安定性だけでなく、企業のミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)への共感が重要視されるようになりました。また、副業・フリーランスの増加やリモートワークの普及により、企業と従業員の関係性も多様化しています。
これまでは「給与や待遇が良ければ人が集まる」「成長機会があれば優秀な人材が定着する」といった考え方が通用していました。しかし、個々の働き方や価値観が多様化したことで、単純な条件だけでは採用・定着が難しくなってきています。特に、働く目的や企業に求めるものが異なる世代が共存する中で、採用や組織運営の考え方をアップデートしないと、これまでの方法が通用しなくなっているのです。
内部環境の変化
企業の成長にともない、組織の規模が拡大すると、経営層と現場の認識ギャップが生まれがちです。創業時にうまくいっていた企業文化や価値観が、組織の拡大とともに曖昧になり、共通言語が失われていくケースが少なくありません。
例えば、創業当初は、経営者が直接採用面接を行い、会社の価値観や文化を自然に伝えることができていました。しかし、組織の規模が大きくなると採用の体制が変わり、採用の判断が現場のマネジャーや人事担当者に委ねられるようになります。その結果、採用基準にブレが生じ、「求める人物像が部署ごとに異なる」「どんな人が会社に合うのかわからない」といった問題が発生しやすくなります。
また、社員数が50名、100名と増えてくると、以前なら暗黙の了解で済んでいたことも、新たに入社した社員には伝わらず、「何を大切にすれば良いのか」「評価基準が分からない」といった不満につながることがあります。
「成功体験」の強みとリスク
多くの企業は、過去の成功体験に基づいた価値観を保持し続ける傾向があります。成功体験によって周囲への説得力が増し、素早い判断ができるのは強みです。しかし、時代や市場環境が変化する中で、柔軟な思考が妨げられたりリスク評価を誤ったりすれば、組織成長の障害になりかねません。
例えば、かつては「スピード重視で即戦力を採用すればよい」と考えていた企業も、現在では価値観のズレから早期離職が増え、結果的に採用コストがかさむケースが見られます。また、「営業力が強い人材が成果を出す」として採用基準を設けていた企業が、事業の多角化やデジタル化の進展により、これまでの基準では適した人材を確保できなくなっていることもあります。
環境が変われば求められる組織の在り方も変わるため、定期的にMVVを見直し、今の企業に合った形へとアップデートする必要があります。
MVVを見直すべきタイミングとは?
MVVの見直しが必要になるタイミングには、次のような企業の成長フェーズが関係しています。
50名・100名の壁を迎えたとき
企業が50名、100名規模に成長すると、創業時のメンバーと後から加わった社員の間で会社の方向性や価値観のズレが生じ、組織のまとまりが失われがちです。
「どんな行動が評価されるのか」「何を大切にして働くべきなのか」といった共通認識をMVVとして明文化し、全社員に共有することで組織の一体感を取り戻すことができます。
採用活動が活発になったとき
成長フェーズでは新規採用の増加にともない、「どんな人材を採用すべきか」の基準が曖昧になりやすくなります。経営層や現場の面接官が各々異なる価値観で採用判断をしてしまうと、組織の方向性がブレる原因になります。
MVVを明確にすることで、採用の基準を統一し、定着率の向上につなげることが可能です。
経営戦略の転換期
新規事業の立ち上げや市場環境の変化など、企業の目指す方向性が変わる際には、MVVを見直す絶好の機会です。MVVが現在の戦略に即したものでなければ、社員が「今の会社の目的は何か?」を見失ってしまうリスクがあります。
創業時に掲げていたMVVが抽象的すぎる場合は、より具体性をもったビジョンや行動指針を追加することが有効でしょう。
MVVを見直すことで得られる効果
組織の共通言語が生まれる
MVVを明確にすることで、社員全員が同じ価値観を持ちやすくなります。特に、経営層と現場の間で「大切にする価値観」がずれている場合、MVVを策定することで共通の指針が生まれます。
意思決定の基準が明確になる
企業が成長するにつれ、新規事業の立ち上げ、採用基準の策定、プロジェクトの優先順位付けなど、多くの経営判断が求められます。「この事業は我々のミッションに合致しているか」と問い直すことで、一貫した意思決定を行うことができます。
従業員のエンゲージメント向上
MVVに共感する社員が増えると、仕事のやりがいやモチベーションが向上します。特に、MVVが評価制度や日常の業務の中で活用されると、社員が主体的に行動するようになります。
MVV見直しの具体的な進め方
MVVを見直す際には、以下の3つのステップが有効です。
企業の本質を掘り下げる
- ミッション(使命):「なぜこの会社が存在するのか?」
- ビジョン(未来像):「将来的にどのような企業になりたいのか?」
- バリュー(行動指針):「どのような価値観を持って行動すべきか?」
この過程では、経営者以外にも、現場の社員や創業メンバナーの声を聞くことが重要です。特に、企業の原点となる「創業時の想い」や「これまでの意思決定の背景」を振り返ることで、会社の本質を言語化しやすくなります。
また、社員へのインタビューやワークショップを実施し、現場の価値観と経営層の考えをすり合わせることも有効です。こうすることで従業員の納得感の醸成にもつながります。
例えば、ある企業では「日々の業務の中で大事にしている価値観」を社員から集め、それをもとにバリューを策定しました。
言葉をシンプルにまとめる
- 抽象的すぎず、具体的で分かりやすい表現にする?」
- 社員が日常の業務で活用できるフレーズを採用する
社員が覚えられないMVVは実際の業務で活用されることはありません。できるだけシンプルで覚えやすい言葉を選んだり、より行動につながりやすい言葉を意識しましょう。例えば「挑戦を大切にする」よりも「失敗を恐れず、新しいことに取り組む」など具体的なアクションが想像できる表現が効果的です。
日常業務に組み込む
- 経営層が日常の会話の中で積極的に発信する
- 評価制度にMVVを組み込む
- 社内ツールでMVVを活用する(オンラインチャットで支えるスタンプ作成やMVVに沿った表彰制度の設置など)
MVVは策定するだけでは意味がありません。上記のような施策を取り入れることで、組織に根付かせていくことが重要です。
見直しが失敗しやすいパターン
MVVを見直す際には、いくつかの落とし穴があります。せっかく見直したMVVが形骸化せず、組織の成長に寄与するためには、次の失敗しやすいパターンを避けることが重要です。
失敗のパターン | 対策のポイント |
トップダウンで押し付ける | ボトムアップ式で社員の意見も取り入れる |
形骸化する | シンプルで誰もが理解しやすい表現にする |
浸透施策を怠る(運用されない) | 日常のコミュニケーションや評価に組み込む |
MVVは経営層が決めるものと思われがちですが、現場の意見を反映することでより実態に即したものになります。ワークショップや社員アンケートを活用し、MVV策定に社員が関与できる仕組みを作れればより共感度の高いものになるでしょう。
形骸化を避けるためには、長すぎたり抽象的な表現は避け、誰もが理解できるシンプルな言葉を選ぶこと、そして組織に根付かせるための浸透策まで設計することがポイントです。
例えば、社内の定例ミーティングや社内報などでMVVを体現した社員を賞賛するコーナーを設けるなど、具体的な行動と結びつけることで、組織文化として定着しやすくなります。
まとめ
MVVは一度決めたら終わりではありません。企業の成長に合わせてアップデートさせていくこと、そして組織に根付かせていくための継続的な取り組みが大切です。
また、採用活動の強化や経営戦略の転換期において、MVVは意思決定の軸として活用されるべきものです。採用基準や評価制度とも連携することで企業文化が強化され、組織の一体感や社員のエンゲージメントが向上します。
変化する市場環境に対応し、経営と現場が一体となって組織の未来を形作るためにも、今こそMVVを見直し、実際に活用できる形へと整えていきましょう。
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