特定技能雇用を行う企業側の課題(体制・意識)と今後の外国人雇用動向予想【前編】
外国人材雇用における企業の課題1

BEENOS HR Link株式会社代表取締役社長の岡﨑 陽介が特定技能制度の成り立ちから課題点、これからの展望などを実際の例を交えながら紹介する本連載。前回は外国人材の長期的なキャリア形成の意義やキャリア展望について紹介しました。今回は外国人材雇用における企業の課題として外国人材雇用に対する企業意識などについて解説します。
前回:外国人材のキャリア形成論
連載記事:https://at-jinji.jp/expert/column/104
目次
外国人材雇用の本質と誤解
外国人材は、日本人の雇用が難しい現代日本において、労働力不足という深刻な課題を解決するための重要な存在です。しかし、外国人労働者の雇用制度や雇用の本質への理解が十分でないことから、適切な運用や対応が課題となっているケースも見受けられます。
例えば、「外国人は安く雇える」といった誤った認識や、技能実習制度と特定技能制度との違いが曖昧なまま外国人材を受け入れている企業もあります。また、外国人材の出身国の文化や宗教的背景を十分に考慮せず、日本人と全く同じように対応しようとして雇用する特定技能外国人との間に認識の違いが生まれることがあります。これらの状況が続くと、外国人材が定着しにくくなり、結果として企業にとっても長期的な課題となる可能性があります。
また、企業のなかには外国人材を一時的な労働力と考えることもありますが、特定技能1号から特定技能2号への転換を目指し、長期的なキャリア形成を望む外国人材も増えている状況の中ではミスマッチを生む要因になります。外国人材は、即戦力となる経験や知識を持った重要な人材であり、単なる労働力にとどまらず、企業を支え、成長をともにする重要な存在です。
これからの企業には、外国人材を「共に成長する仲間」として受け入れ、長期的な視点で雇用に取り組むことが求められます。文化的背景や個々の特性を尊重し、キャリアアップの機会を提供することで、外国人材と企業の双方が発展できる環境を築くことが重要です。
雇用体制の整備状況と直面する労務管理の複雑さ
外国人材を雇用する企業にとって、労務管理は日本人雇用と比べて複雑な側面が多々あります。法的要件の遵守はもちろん、外国人材特有の対応が必要とされ、企業には多くの時間と労力が求められます。
例えば、特定技能制度を介して雇用する外国人材には3カ月に1度の面談が義務付けられており、その結果を報告書としてまとめる必要があります。この面談は、外国人本人だけでなく、業務を指導する監督者とも同時に実施されるため、両者の認識のズレがないか確認することが求められます。さらに、給与や勤務日数に関する届け出も3カ月ごとに提出する義務があり、煩雑な手続きが企業に負担を与えています。
また、労務管理における帳簿の保管義務も大きな課題です。勤務記録や給与記録、名簿、雇用条件書、雇用契約書の原本など、多岐にわたる書類を適切に管理する必要があります。これらの帳簿は監査の際に重要な証拠となるため、漏れなく保管することが企業に求められています。
さらに、「24時間相談対応」を求められる点も、日本人雇用との大きな違いです。企業は業務時間外であっても、外国人従業員からの相談に対応できる体制を整えなければなりません。対面、メール、LINEなど、対応方法は企業ごとに異なりますが、迅速かつ柔軟な対応が必要とされています。これらの煩雑な書類の管理や外国人材への広範な支援業務について外部サービスや登録支援機関を利用する企業も多く、BEENOS HR Linkでは特定技能雇用の支援業務管理システム「Linkus(リンクス)」の提供によって業務負担の軽減を支援しています。
外部サービスや登録支援機関の利用の検討を含め、企業ごとに適した労務管理の仕組みを整備するとともに、関係者間でのスムーズな連携が必要です。
外国人材を活かすマネジメント意識の改革と研修の必要性
外国人材の活躍を最大限に引き出すためには、企業側のマネジメント意識を改革し、適切な研修を実施することが不可欠です。文化や価値観の違いがある中で、相互理解を深め、外国人材のスキルや特性を活かせる職場環境を整えることが求められます。
Linkusを導入いただいている企業の中には、外国人材に対する理解の促進のために外国人材の出身国の文化や傾向などを共有する研修を実施し、理解の促進を行っている事例があります。外国人材を雇用するうえで、日本人とは異なる配慮や支援が必要であるということがまだ十分には理解されておらず、日本人従業員が外国人材の待遇に不満を感じてしまう事例もあることから、こうした誤解を防ぐ意味合いを含めて定期的な研修の実施は良好な関係を築くためにも有効です。
外国人材に対する理解を日本人従業員に求めるだけでなく、外国人材にも日本の文化や慣習を理解してもらうための働きかけは都度必要になります。外国人材の雇用においては日本語学習などを含む支援が義務付けられていますが、日本で働くうえで理解して欲しいことを、研修を通じて伝えることも有効です。こうした取り組みによって双方のコミュニケーションの円滑化を図り、生産性の向上とともに離職率の低下も期待できます。
日本的な評価制度と外国人材の期待のギャップ
外国人材を雇用する際、日本的な評価制度と外国人材の間にはいくつかのギャップが存在します。
日本の評価制度では、スキルや業績だけでなく、勤務態度や協調性といった曖昧な要素も重視されがちです。しかし、外国人材は具体的で透明性のある評価基準を求める傾向があり、曖昧さが不満や誤解を招くことがあります。また、年功序列的な評価制度では、即戦力として雇用される外国人材の成果が正当に評価されにくいことも課題です。
さらに、日本の職場ではコミュニケーション能力が高く評価されますが、外国人材は日本語能力に差があるため、本来評価されるべき技術や業績が軽視される場合があります。また、日本的な文化では謙虚さや「空気を読む」能力が重要視される一方、自己アピールが一般的な文化圏出身の外国人材は「協調性に欠ける」と誤解されることもあります。
これらのギャップを解消するためには、評価基準を明確化し、スキルや成果に基づく公平な評価を導入することが必要です。外国人材の文化的背景や日本語能力を考慮した柔軟な制度設計も重要です。また、企業側が相互理解を深めるための研修を実施することで、外国人材が安心して働ける職場環境を築くことができます。これらの企業努力に加えて、外国人材も雇用される国の文化や慣習を理解する歩み寄りの姿勢を持つことが企業と外国人材双方のギャップを埋めることにつながります。
>>>後編「外国人材雇用における企業の課題2」に続く
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