特定技能雇用が変える日本の働き方【前編】

外国人材の増加による労働環境のグローバル化の推進

特定技能雇用を包括的に支援するBEENOS HR Link株式会社代表取締役社長の岡﨑陽介が特定技能制度の成り立ちから課題点、これからの展望などを実際の例を交えながら紹介する本連載。前回は特定技能雇用の基本について紹介しました。
今回は「特定技能雇用が変える日本の働き方」をテーマに前編として、外国人材雇用の増加による影響のいち側面としてグローバル化、ダイバーシティ化の流れについて解説します。

連載記事:https://at-jinji.jp/expert/column/104

目次

  1. 日本の人材不足の現状、人口動態の変化・ダイバーシティ化への動き
  2. 多文化共生と職場でのコミュニケーション・働き方の変化
  3. 相互理解のための言語習得の必要性
  4. 労働環境の国際化と待遇改善により進行するグローバル社会

日本の人材不足の現状、人口動態の変化・ダイバーシティ化への動き

特日本は近年、少子高齢化が進行し、深刻な人材不足に直面しています。日本の人口は2004年のピーク時の人口12784万人から2100年には4,771万人程度に減少すると見込まれており、特に介護、建設、飲食業などの業界では慢性的な人材不足が問題視されています。(※1)これに対し、政府は特定技能制度などを介した外国人材の受け入れの促進を行っています。

特定技能1号は特に人材不足が深刻な12の分野で外国人材の受け入れが実施されており、2024年3月には自動車運送、鉄道、林業、木材産業の4分野が新たに追加され、対応分野や業種は今後拡大していくと見られています。こうした直接的な人材獲得のための施策のほか、企業経営についての風土創りの一環として政府は性別、年齢、人種や国籍などの属性が多様な人材が活躍するダイバーシティ経営を推進しており、多くの企業が課題として取り組んでいます。

特定技能制度をはじめとした外国人雇用の推進は企業にとって競争力を高める手段のひとつであり、異なる文化背景を持つ働き手が増えることは多様化する市場のニーズやリスクへの対応力を高めることに寄与することが期待されています。

弊社が提供する特定技能雇用の支援業務管理システムの「Linkus(リンクス)」を導入しているある外食企業では、特定技能雇用の外国人を、ゆくゆくはその人の出身国の海外拠点に配置できるようにする、といった事も視野に入れ、2号取得を目指したい、在留期間が満了したら自国に帰りたいなど、働く方の希望に沿った教育支援を行っています。
外国人材をはじめとする外国人材が一時的な労働力としてではなく、日本社会の一員として日本へ定着していくことで、豊かな人材によって日本の産業の発展が期待できます。
(※1 総務省「市町村合併の推進状況について」https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

多文化共生と職場でのコミュニケーション・働き方の変化

前項でも紹介したように、外国人材の雇用の増加は、日本の職場文化に多文化共生の概念を取り入れる契機の一つとなっています。ただし、外国人材は国籍や言語、所属する生活圏、文化や宗教など異なる背景を持つため、受け入れ企業は円滑な業務の遂行のために適切なコミュニケーションを図る必要があります。例えば、宗教的な配慮が必要な休憩時間の調整や、食事に関する配慮など、異文化理解が不可欠です。

具体的な例としてインドネシア人は、宗教上決まった時間に礼拝する必要があり、人によっては仕事を抜けて礼拝する必要があるため、礼拝時間の確保や礼拝のための場所を用意するなどの配慮を行うケースがあります。
そのほかインドネシア人女性の場合はヒジャブという布を頭に被る必要がある人もいるので、採用時には衣類の規定やヒジャブ着用の可否についてのすり合わせなどを行って双方が納得した形で就労が行えるようにするといった事例もあります。

受け入れ企業による異文化への理解のための研修や勉強会の実施や適切な配慮など、互いの文化を尊重し合う環境を作ることで、職場のチームワークや生産性の向上につながると言えます。Linkusを導入している企業においても外国人材の受け入れ前に日本人スタッフに対して新たに入社する外国人材の出身国の文化などに関する研修を実施して理解を促す例があります。 

相互理解のための言語習得の必要性

一方で、日本で働く外国人材も、日本の文化や商習慣や雇用制度などを理解するための場を設け、相互に理解を深めていくことが重要です。

業務上での支持を理解することや国籍や文化背景が多様な外国人材と受け入れ企業が相互に理解しあうためにも特定技能1号では外国人材は日本語の習得が必要とされていますが、定められている日本語能力は簡単な読み書きが行えるレベルに設定されており、職場での実際の指示で行われる多様な言い回しや語彙に対応しきれていないのが現状です。

受け入れ企業や登録支援機関には日本語学習機会の支援が義務付けられており、継続的な支援によって日本語能力の向上が期待されています。現場では日本語での指導が中心ですが、外国人材が学ぶ日本語はです・ます調の丁寧語を基本とした画一的な言い回しが多く、実際の現場で日本語ネイティブが話す「あれをやっておいて」というような曖昧な表現やその職場独特の単語や言い回しに当初は対応しきれないことがあります。

こうした事態を考慮して外国人材と働く現場ではわかりやすい日本語での指示を心掛けるなどの配慮が大切です。多様な背景を持つ外国人材の個々の言語レベルを考慮した指示や指導を行うなどの細やかな対応が求められています。外国人材の言語レベルによっては日々の業務や生活上の相談において言語の壁により伝達がうまくいかないことも想定されるため、時には受け入れ企業や登録支援機関によって通訳を雇用するなどの柔軟な対応も時には必要とされます。

労働環境の国際化と待遇改善により進行するグローバル社会

外国人材をはじめとする外国人材の受け入れの推進により、これまで以上に、より多様な属性の人材が増加することによって日本の労働環境は柔軟な働き方へのシフトが求められつつあります。労働時間や労働条件の調整が必要となり、企業はフレキシブルな働き方を導入する動きが加速しています。家庭や宗教的な理由で特定の時間に働けないケースや、一定期間の帰国を必要とする場合に対応するための柔軟なシフト制度やリモートワークの導入などは今後も増加していくと考えられます。

こうした文化背景などを考慮した働き方の変革により、労働者のワークライフバランスの向上が見込まれ、結果として定着率の改善や生産性の向上にもつながっていくと考えられます。労働環境の国際化による柔軟性を持った働き方は、外国人材に限らず、日本全体の働き方改革にも良い影響をもたらすことが期待されます。

外国人材を雇用し、日本人、外国人関係なく活躍できる環境を整えていくことは、日本の労働力不足を補うだけでなく、多文化共生を進め、職場環境や労働条件の改善が促進されていく可能性があります。過渡期である現在は、まだまだ企業側にも知見が少なく、戸惑うことも多いかもしれません。しかし、今後さらに外国人材の数が増えることが予想される中、企業は安定した定着を目指すためにも、まずは文化的な理解を深める取り組みが重要です。

>>>後編「特定技能雇用の増加で起こる労働意識改革と生産性の向上」へ続く

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