落ちこぼれを作らない最強チームの作り方 第4回
任せて任さず~メンバーへの仕事の任せ方のポイントと注意点~
メンバーへの仕事の任せ方に不安を抱くリーダーは多いと聞きます。任せきりにして仕事の質が低下したり、任せきれずチームのパフォーマンスが低下したなど、悩みは尽きません。今回はタカマツハウス流”任せて任さず“のリーダーシップについてお話します
第1回:「応援して囲い込む」~落ちこぼれを作らない組織マネジメントとは~
第2回:「家族のように寄り添うリーダーシップ」:インクルージョンと組織の一体感
第3回:「礼節・コミュニケーション・団結」:強い組織を支える三本柱
目次
-
- 「任せて、任さず」とは?
- 「任せて、任さず」のポイントと注意点
【1】リーダーは、仕事を配る人ではない。
【2】リーダーの、自分でやった方が早い病 - 子育て四訓に見る、ステップごとの「任して、任さず」
- 任さずポイントの見極めは「コミュニケーション」をおいて他にない
- リーダーが心がけるべき2つの「任さず」術
【1】ディテールに入り込む「任さず術」
【2】リーダーが設けるべき「余裕術」 - おわりに
「任せて、任さず」とは?
マネージャーは「仕事の任せ方」に悩むことがあります。
例えば、任せきりにして、仕事の質・スピードが低下した。任せきれず、あれこれ手を出してしまい、チームとしてのパフォーマンスが発揮できなかった、などがあります。
タカマツハウスは、短期間で好業績を上げましたが、実はメンバーもリーダーも異種・異文化・異業種から集まった雑草集団です。しかしながら、チームのパフォーマンスを最大にする「任せ方」により、人材が短期間で大きく成長し、大きな結果を残すことができました。
タカマツハウスの藤原元彦社長はメンバーへの仕事の任せ方を「任せて、任さず」と表現します。
これは短期間で業績を上げるために、重要な仕事を思い切って任せる、かつ適度な頻度と深さで点検確認を行うことにより、人材育成や業務の質を高めるマネジメント方法のことです。「任せて、任さず」は担当者への任せ方はもちろん、チームを持つリーダーに対してでも同様です。
そしてこのマネジメントには次の三つの狙いがあります。
- 人材育成
- 業務の質向上
- モチベーション向上
タカマツハウスが短期間で業績を上げることができたのはこの狙いを実践してきたからです。
「任せて、任さず」のマネジメントによって短期間で人が育ち、質の高い業務を行い、応援されることで心が湧き上がり、個々の持つ力が最大限に発揮され、そしてチームとして最高のパフォーマンスを発揮できたのです。
「任せて、任さず」のポイントと注意点
「任せて、任さず」には次のようなポイントと注意点がありますので、お伝えしましょう。
【1】リーダーは、仕事を配る人ではない。
まず、任せ方の良くある失敗は「任せきり」です。リーダーが自分のチームの業務をメンバーに配ってしまうのです。途中のチェックもアドバイスもせず、上がってきた結果のみ叱るリーダー。つまりは、任せっぱなしで結果を怒るリーダーです。
リーダーが何もアドバイスせず、ほったらかしにして、リーダーの納得するアウトプットが出せるはずがありません。少なくともリーダーはそのチームの中で最も仕事ができるからリーダーなのですから当然です。藤原はこのようなリーダーにはいつもこう言います「『自分と同じ人間なのだから、同じようにやれ』では人は育たない」と。
リーダーはメンバーに対しその仕事に意味を与えて、動機付けし、メンバーが全力で仕事に取組めるマインドセットをしなければなりません。
その仕事を頑張ればチームのまたは会社のどんな成果につながるのか、メンバーにどんな風に活躍してくれて成長してもらいたいのかを腹落ちさせなければなりません。ただ単に業務分担をするのが、リーダーの役割ではないのです。
【2】リーダーの、自分でやった方が早い病
優秀なプレイヤーであった人ほど、メンバーに任せず自分でやってしまいます。その業務だけ見ればその方が良いアウトプットができるし、スピードも速いのは当然です。
何を隠そうこの私もリーダーになって数年は「自分でやった方が早い病」の末期症状患者でした。営業時代はチームの成績から販促企画、お客様のお申し出まで。本社でマーケティング部門在籍時は、企画立案から推進まで、自分でやると面白いように成果が出るので「自作自演だ~」などと言いながら、ひとり奮闘していました。
そんな私に転機が訪れたのはオーバーワークのストレスから十二指腸潰瘍になり、本当の病人になってしまった時です。そんな時に後輩からもらったメールが私を二つの病気から救ってくれたのです。
とにかく、お一人でオリンピックに出るのではなく、他のメンバーも連れて国体ぐらいに出場するぐらいの感じで、部下をもう少し育成して楽になってください。体の事もありますし。多分、金田さんにはもっと大きな仕事が待っていると思います。私も部は違いますが金田さんの後ろからいろいろ勉強させていただいております。これからもみんなで知恵を絞って頑張りましょう!
私にはこんな素晴らしい助言をくれる後輩がいたので、このメールをきっかけに、メンバーに任すマネジメントを実践し始めました。タカマツハウスに入社してからは藤原のもと、任せて任さないマネジメントを勉強し、実践しています。
子育て四訓に見る、ステップごとの「任して、任さず」
藤原は「任せて、任さず」を社員に説明する際に「子育て四訓」と呼ばれるアメリカ先住民の言い伝えを引用します。子育てを経験したお父さん・お母さんなら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
《乳児はしっかり肌を離すな
幼児は肌を離せ、手を離すな
少年は手を離せ、目を離すな
青年は目を離せ、心を離すな》
言い伝えにあるステップごとの距離の取り方は、藤原の言う「任せて、任さず」と共通点があります。
乳児は肌を離さず、しっかりと寄り添わなければなりません。入社したての社員も同様、最初は右も左もわからないはずですからしっかり寄り添う必要があります。タカマツハウスにおいても住宅営業の経験のない社員を大量に採用しましたので、入社直後はリーダーのみならず会社全員で寄り添って未経験社員を育てました。
少し大きくなると、自分の意志で動けるように肌を離しますが手は離しません。まだ、どんな行動を取るかわからず、危険が一杯だからです。
ビジネスも少し覚えたら、自分でやってみさせることが大事ですが、大きな失敗につながらないように手をつないで社員の毎日の行動を把握できる状態にしておかなければなりません。
少年になれば親元を離れ、自分の足で自由に行動できるようになりますが、おかしな道に進んだりしないよう目は離してはいけません。
営業社員に例えると、日々の営業活動やお客様への提案書すべてにリーダーが関与することはなく、やりたいようにやらせますが、致命的な失敗や遠回りにならないよう見てあげる必要があります。
青年期になり一人前の一歩前までくれば、物理的に離れていても心を通わせるコミュニケーションが重要です。
社員が独り立ちする寸前であっても、仕事とは違う悩みを抱えていたりするものです。会社や本人がより大きく成長するためにも目標設定や仕事に対する向き合い方など、助言が必要なこともたくさんあります。心のつながりはいつになっても離してはならないのです。
任さずポイントの見極めは「コミュニケーション」をおいて他にない
ステップごとの「任せて、任さず」を紹介しましたが、大切なのはメンバーがどのステップにいるのかを知ることです。
子育ては、入園・入学・就職などステップが明確ですが、社員はそんなに簡単ではありません。年齢を重ねていても思考やスキルが幼い社員や、若くても自立した社員が存在します。そんな社員達の任さずのポイントの見極めは、コミュニケーションです。
リーダーが心がけるべき2つの「任さず」術
前回の寄稿でもご説明したとおり、タカマツハウスでは「礼節・コミュニケーション・団結」が湧き上がる組織づくりの基本であると考えてコミュニケーションを重視しています。
日々のコミュニケーションにより、メンバーやリーダーがどの状態か把握することで、ひとり一人にあった「任せて、任さず」のマネジメントが実現できるのです。
では一方で、「任さず」とは具体的に何を任さないことなのでしょうか?
【1】ディテールに入り込む「任さず術」
タカマツハウスのリーダーの任さず術は「ディテールに入り込むこと」です。
もちろんすべてのディテールに入り込むのは物理的にも時間的にも不可能ですので、ここぞというポイントを見極め、その仕事の細かなディテールに入り込みます。
そもそも藤原を始め、タカマツハウスのリーダーはその道のプロフェッショナルとして研鑽を積んでいますので、仕事のディテールから全体像や課題を把握し、手を打つ実力があります。
例えば仕入営業社員が「この物件は目の前が公園で、見晴らしも日当たりも風通しも良いです。タカマツハウスで購入すべき物件です」と上申があった時のことです。
藤原は普段のコミュニケーションから、担当営業は成績が振るわず、焦る気持ちから仕事が空回りしている状況を把握していました。そこで「よし、じゃあ俺が観てくるヨ」と即現場に向かいました。
担当営業が言うように確かに公園の前なのですが、公園の公衆トイレが近くにあり、道路にも余裕があるため、タクシー運転手が使いやすいトイレになっていました。風向きや湿度の高い時はにおいも心配ですし、たくさんのタクシーがひっきりなしにやってくる環境は景観や、幼いお子さんたち安全面からも、タカマツハウスが厳選した住宅地とは言えないものでした。
結果、担当者には現地での物件確認の押さえどころを教育し、次に頑張るように伝えました。担当者は自分の実力のなさを反省するとともに、万が一、タカマツハウスが購入して販売に苦戦するような失敗物件にならず安堵しました。
このようにディテールに入り込むには、普段のコミュニケーションによるメンバーの状態把握と、プロフェッショナルとしての現場力が必要なのです。
【2】リーダーが設けるべき「余裕術」
もうひとつ、「任せて、任さず」を実践するときに必要なことがあります。
それはリーダーが余裕を持つことです。そうすることでメンバーからの相談の時間を取ることができ、タイムリーにディテールに入り込み、相談を受けることができます。
タカマツハウスではリーダーが必要以上に忙しそうに振る舞い、「仕事がパンパンです」などと自分が一杯仕事をしていることをアピールするのは厳禁です。世の中には「元旦以外休まない。年間364日働きます」と言ったリーダーもいますが、それは社員に自慢するようなことではありません。
藤原は「リーダーは少し時間に余裕を持たせるべき、目いっぱい仕事を詰め込まない。リーダーのところに来る要件は『重要で緊急』なのだから」と言います。
リーダーに余裕がないと、メンバーも相談しにくいことは想像に難くありません。いつどんな時でもメンバーの報告相談を受入れる余裕がリーダーには必要なのです。
おわりに
このように任して任さずのマネジメントにおいては、重要な仕事を思い切って任せつつも、コミュニケーションを大切に、時にはディテールに入り込むマネジメントにより、結果的に全社員が孤立せずパフォーマンスを上げ続けるようになるのです。
次回は「リーダーの見逃しの罪」~家族だったらと考える~
リーダーが日常の些細な問題を「小うるさい上司」と思われることを避けたり、「この程度なら」と見逃すことはよくあります。しかし、私たちはこれを「見逃しの罪」と呼び、見逃しを許しません。この言葉を使うことで、些細な問題でも見過ごすことの重大さを認識し、強く戒めるためです。次回は、私たちが実践する「見逃さない経営」について紹介します。
>>>第5回に続く
【編集部より】関連書籍紹介:『全員を稼ぐ社員にする、最強チームの作り方』
同書は、3年で売上高191億円を実現したチームマネジメントの秘訣を紹介。「全員が一人の仲間の〝応援部隊〟となることで、四方八方からサポートが入る仕組み」を徹底して行い、落ちこぼれをつくらない最強チームが起こした数々の奇跡を記している。書籍紹介記事はこちら
著 者 :タカマツハウス株式会社 取締役・専務執行役員 金田 健也
発行日 :2024年5月1日(水)
価 格 :1,650円(税込)
発行元 :株式会社ぱる出版
ISBN978-4-8272-1446-8 C0034
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4827214468
ぱる出版:https://www.pal-pub.jp/book/b10083764.html
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料