日本の従業員エクスペリエンス〜2025年に注目すべき5つの課題〜
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クアルトリクスは、顧客や従業員の体験(エクスペリエンス)を一元管理し、データを収集・分析することで、体験の改善を導き出す調査・分析プラットフォームを提供しています。当社では、「望ましいエクスペリエンス管理」の参考となる従業員体験に関する情報を提供するため、毎年トレンド調査を行っています。
今回の記事では2024年11月に発表した「2025年従業員エクスペリエンス・トレンド・レポート」※の結果から、2025年の課題を洗い出し、従業員体験を向上させるためにリーダーや人事部が検討すべきポイントを紹介します。
目次
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- 従業員エクスペリエンスに注目すべき理由
- 調査概要
- 2025年に向けての従業員エクスペリエンスの課題
【1】効果的な顧客対応の実現【2】前向きな若手従業員の定着【3】採用体験と退職体験に改善余地【4】経営陣に対する信頼感の向上【5】組織全体でAI活用を推進
- 検討すべき主なアクションの例
従業員エクスペリエンスに注目すべき理由
コロナ禍を一つのきっかけとして、企業は職場に関わるさまざまな課題に対応してきました。一方で、従業員に対する業務上の要求は厳しさを増し、疲弊感や閉塞感を抱える従業員も少なくありません。
従業員の声を収集・分析して彼らの体験(エクスペリエンス)から職場の課題を認識し、対策を講じることでエンゲージメントの向上、人材の流出の予防、顧客サービスの改善、企業・組織の成長などを実現させる一歩を踏み出すことができます。
調査概要
当社の「2025年従業員エクスペリエンス・トレンド・レポート」は、2024年7月に、日本を含む22の国と地域(韓国、香港、シンガポール、オーストラリア、米国、英国、ドイツ、フランスなど)における約35,000人を対象に実施しました。
調査には日本の回答者2,077人が含まれ、自動車、建設、教育、金融、ヘルスケア、IT、小売、運輸など、広範な業種から回答を得ており、従業員エクスペリエンスに関する大規模な分析結果を示しています。
2025年に向けての従業員エクスペリエンスの課題
今回の調査結果から「効果的な顧客対応を実現できる環境」「前向きな若手従業員の定着」「AIの組織的な導入」などを含む、5点の課題が浮き彫りになりました。それぞれを詳しく見ていきましょう。
【1】効果的な顧客対応の実現
顧客に対して効果的に対応できる職場環境は、従業員エンゲージメントとの関係からも重要な要素です。日本では人的資本経営が注目される中、特に従業員エンゲージメントが経営指標として重視されています。
従業員エンゲージメントは過去数年でどのように変化したのでしょうか。コロナ元年であった2020年、エンゲージメントスコアは高水準でした。当時、緊急事態宣言発令の中で多くの企業が従業員の安全に配慮し、リモートワークの導入や金銭的な支援などの施策を打ったことも奏功したと考えられます。
現在はコロナ禍が収束してから1年以上が経過し、従業員が仕事に集中できる環境が戻ってきました。また、従業員に配慮する経営が広がり、エンゲージメントは日本のみならず世界全体でも上昇しています。
▼エンゲージメントスコアの推移(肯定的回答率%)
エンゲージメントとの相関が高くドライバー(推進要因)となる項目のトップ5には、「より良い顧客サービス提案の奨励」や「顧客ニーズに応えられる業務プロセス」が含まれています。顧客を重視する環境で仕事に取り組めることが、従業員のエンゲージメントを左右することを示唆しています。
このほか、自分の会社が世の中に対して貢献しているという実感が、従業員のやる気を刺激することが示されています。このように、顧客や社会に向けて価値のあるビジネスを行える職場環境が、定番ドライバーといえる「成長の機会」に加えてエンゲージメントを維持・向上させる重要な要因になっているわけです。
▼業員エンゲージメントのキードライバー(推進要因)トップ5
【2】 前向きな若手従業員の定着
今回の調査では、18歳から24歳の若手従業員は、エンゲージメントをはじめとするほぼ全ての設問項目に対して他の年齢層の平均よりも高い肯定的回答率を示し、総じて前向きな姿勢で働いていることがわかりました。しかしながら、彼らの3年以上の継続勤務意向は他の年代と比較して低水準です。
▼若手従業員の継続勤務意向と前向きな姿勢
若手従業員の継続勤務意向と相関が強い項目として、「自社でのキャリア目標達成の見込み」「上司とのキャリア開発に関する議論」や「自社のバリューに沿った上司の行動」「自社のバリューに対する共感」などが抽出されました。
社内のキャリア開発のチャンスと上司によるサポート、自社のバリューに納得しそれを実践するような環境が、若手従業員を職場に定着させる鍵になり得ることを示唆しています。
前向きな姿勢で仕事に取り組んでいる若手従業員を自社の将来の担い手としてしっかり定着させるため、リーダーはこうしたテーマをしっかり意識したアクションを取る必要があります。
▼若手従業員の継続勤務意向のキードライバー(推進要因)トップ5
【3】 採用体験と退職体験に改善余地
「従業員ジャーニー」(採用・入社から退職に至るまでの体験の流れ)において、応募体験と退職体験に関する回答を日本に絞って集計すると、「期待を下回る」体験であったとした人が、「期待を上回る」とした人よりも多くなっています。
また、現在の勤務先での在職期間が6カ月以上の従業員のうち、今後3年以上勤続する意向を示した回答者は7割弱を占めたのに対し、在職期間6カ月未満の回答者の同比率は48%にすぎませんでした。オンボーディング体験にはさほど深刻な問題が見られないにもかかわらず、入社から比較的短期間でも転職する可能性を感じさせる結果といえます。
▼応募時や退職時の体験の実態
最近は一度退職した人が復帰しやすくしたり、退職後に得られた知識・人脈を活用した協働の機会を探る手段として「アルムナイ」コミュニティの活用が注目されています。
しかし、退職の際に不快な体験をした元従業員が多ければ、アルムナイ活動もうまく機能しないでしょう。応募時や退職時におけるネガティブな体験が、在職中はもちろん退職後にも会社にとってマイナスな影響を与えるリスクに留意し、有意義な採用・退職体験を戦略的に提供してブランド・イメージを高めていく必要があります。
【4】 経営陣に対する信頼感の向上
日本では、「経営陣が目先の利益よりも従業員の幸福(ウェルビーイング)を優先する」と考える従業員29%にとどまりました。これは世界平均(56%)のほぼ半分であり、日本の従業員が経営陣を十分信頼していないことを示唆しています。仮に、経営陣が目先の利益を追求しすぎれば、従業員の長期的な信頼喪失につながります。
急速に変化し続ける世界情勢、マクロ経済、国内外の政治、消費者ニーズ、テクノロジー、社内の戦略・方針、仕事の仕方などさまざまな要因で、企業を取り巻く先行きの不透明感が高まる中、リーダーの経営のかじ取りに対する従業員の期待は高まるばかりです。経営陣に対する信頼感は、エンゲージメントやウェルビーイングをはじめとする重要指標(KPI)との極めて高い相関を示しています。経営陣が信頼感を獲得・維持することは従来以上に容易ではありませんが、従業員との十分な対話や働きやすい職場環境の整備などに注力することで実現できるはずです。
▼経営陣への信頼感の重要性と主要なドライバー
【5】 組織全体でAI活用を推進
AIは生産性を向上させるソリューションであると認識されているにもかかわらず、業務においてAIを「毎日」または「毎週」活用しているとした日本の従業員は24%にとどまりました。世界平均の45%と比較すると、かなり低水準であるといえます。
▼会社・組織による業務上のAI活用・サポート状況
AIの導入や活用が進んでいないのは、従業員がその変化を十分受け入れていないからだけではありません。会社・組織として、従業員向けのトレーニングやサポートが遅れていることもその背景にあります。「会社がAIを活用するためのトレーニングとサポートを提供している」とした回答者は、世界平均では約半数(52%)を占めたのに対して、日本では約25%のみです。また、会社が提供したAIツールではなく、個人で見つけたツールを活用している従業員が少なくないという調査結果も見られました。
業績向上への貢献や従業員の業務負荷の軽減など、AIの影響力は今後無関心でいられるものではありません。企業はAIの戦略的な活用を重要な優先事項として位置付け、従業員をサポートする必要があるといえます。
検討すべき主なアクションの例
以上の課題を踏まえ、企業が検討すべき主なアクションの例を以下に3点挙げておきます。
- 仕事を見直して顧客にしっかり向き合うための環境を整える
顧客ニーズに的確に対応することが可能なシンプルで効率的な仕事の仕方を改めて検討する必要があります。 - 会社の将来を担っていく若手従業員をしっかり定着させる
若手従業員のキャリア開発支援と会社のパーパス浸透が彼らの継続勤務意向を高めるためのカギです。 - 会社としてAIの導入・利用を促進させる
会社がAI利用の戦略や方針を明確し周知徹底するとともに、従業員がAIに関心を持ち、担当業務での試用を促すようなトレーニングも有効と考えられます。
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