サーベイ起点の組織改革 第3回
サーベイの活用方法・事例
主に人事が組織の状況把握や組織課題改善の足掛かりとして実施する従業員向け「サーベイ」。第1回は、「サーベイ疲れ」をテーマに、従業員がサーベイ疲れを感じるポイントやその理由を、第2回は「サーベイの概要と選び方のポイント」をテーマに、サーベイの目的の置き方や選ぶ際のポイントを中心に解説をしました。
第3回は「サーベイの活用方法・事例」を解説します。
・第1回 従業員向けサーベイを取り巻く現状
・第2回 サーベイの概要と選び方のポイント
目次
“仮説立て”から始まるサーベイ活用のサイクル
これまでもお伝えしてきたように、サーベイは選んで導入すれば終わりではなく、実際に使ってみて効果を実感できることが望ましいです。効果を実感するためには、サーベイ結果から課題を特定したうえで、打ち手を検討し、実践していくことが大切ですが、何もないところから課題を特定するのは難しいため、その起点となる「仮説立て(仮説設定)」から始めることをおすすめします。
仮説立てとは、「日頃なんとなく感じている会社や組織への問題意識を可視化すること」とも言い換えられ、サーベイのフレームや中身に照らした問題意識の整理から始めることができます。一般的なサーベイのフレームを見ると、仕事/職場/マネジメント/会社や仕組みといった企業を構成する要素で組み立てられていることが多いため、その要素の内容(定義等)に照らして自分たちの組織や会社はどうか?と想像してみるイメージです。
弊社のエンゲージメントサーベイで例えると、“仕事”に関する要素は、「一人ひとりが仕事や自分の特徴を理解して仕事場面で生かせているか」という観点、“職場”に関する要素は、「メンバー同士の関係性が良く、業務のPDS(Plan-Do-See)がきちんと回っているか」という観点で見ており、「メンバー同士の仲は良いけれど、業務のPDSがきちんと回っているか?と問われるとそうとも言えないな……」と言った具合に、それぞれの要素を診断していきます。
そうすることで仮説立てができ、その仮説に対してサーベイ結果をもって検証し、課題設定や打ち手の検討・実践につなげると、望ましいサイクル(図表1)を回すことができます。
▼図表1:サーベイ活用の理想的なサイクル
検証~課題設定~施策の検討・実施の流れ
前述のようにサーベイ実施前に仮説を立てておくと、実施後の動きや改善のための活動もデザインしやすくなります。
例えば、経営層と仮説について話し合い、「結果が仮説どおりであれば、このような手を打ちましょう」と目線合わせしておくことも可能となり、結果を見てから慌てて準備するよりも予算や体制面も合意や準備がしやすくなります。
事前準備をした後の仮説検証からの流れも非常に重要です。仮説が検証できることで、「なんとなく」ではなく定量的な根拠に基づいてあまたある課題や打ち手を絞ることが可能となり、関係者との合意もスムーズになります。
検証ができれば、「想定どおりだったこと」「想定外だったこと」の区分けができ、そこに組織の実態を表すサーベイ結果の得点(高・低)が加わることで、組織の状態を立体的に捉えることができます(図表2)。
▼図表2:課題を整理するフレーム例
例えば、「想定どおり×得点が低いもの」「想定外×得点が低いもの」を見ながら実感値とも照らして課題として取り組むものを検討もできます。
施策(打ち手)の検討・実施にあたっては、
1. 部署や職場が取り組むもの
2. 会社や人事が取り組むもの
に分かれますが、1.は「業務プロセスの改善」や「コミュニケーションの改善」、2.は「HRM(仕組み)やHRD(人材開発)」「経営層の行動変革」などがそれにあたります。
ただし、会社や人事が取り組むものについても、あくまで現場組織が利益や価値を生み出すために必要な仕組みづくりや人材開発かどうかという観点でチェックすることが大事です。施策を実施した後は、その結果について、またサーベイを使ってモニタリング~振り返りを行い、新たな仮説設定につなげましょう。
意識的にサーベイの活用サイクルを回した企業の事例
最後に、仮説立てを起点にうまくサーベイを活用した企業の事例を紹介したいと思います。
ポイントは、前述したように仮説立てをしてからサーベイ結果を使って検証をしたことと、「なんとなく」であった問題意識が定量的に可視化されたことにあります。
おそらくサーベイを実施せずに似たようなことをしても個人の感想交換のような空中戦が繰り広げられ、具体性を欠いたまま終わっていたと思われます。また、今回の事例では各部門の部門長という上位層のキーパーソンを中心にした活動でしたが、現場のマネジャーも部門長と同じく組織の長として、自分の職場をより良くしていく使命を担っているので、同じようなサイクルを現場でも回せるとより良いでしょう。
組織長として普段の問題意識を仮説立てしてサーベイで検証し、施策を打つという流れは変わりません。さらに、マネジャーが独りでサイクルを回すのではなく、職場のメンバーをうまく巻き込めると、メンバーの職場に対するエンゲージメントや組織としての成果も高まりやすくなると思います。
おわりに
これまで3回にわたり、サーベイを取り巻く現状から選定のポイント、実際の活用事例にいたるまで、サーベイを実施・活用するためのポイントをご紹介してきました。
特に今回ご紹介したような「仮説を立てる」「サイクルを回す」と聞くと少し難しい印象を持ってしまうかもしれませんが、必ず仮説を立てないとうまくいかないというわけではなく、「なんとなく従業員の元気がない」といった漠然とした問題意識をもってサーベイをとった場合でも見えてくることはあります。その“なんとなく”が項目ごとの得点結果となって随所に表れているはずなので、「自社の状態を定量的に可視化した時に何が見えてくるのだろう?」そんな関心や好奇心を持ってサーベイを見てみてください。ここでご紹介したことが、皆さまのサーベイ選定や活用の一助になれば幸いです。
連載 サーベイ起点の組織改革
https://at-jinji.jp/expert/column/103
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