落ちこぼれを作らない最強チームの作り方 第3回 

「礼節・コミュニケーション・団結」:強い組織を支える三本柱

創業時のタカマツハウスで、代表の藤原元彦が「湧き上がる組織」に不可欠な要素として掲げたのが、「礼節・コミュニケーション・団結」の三本柱です。この理念は創業以来、社員に向けて何度も繰り返し伝えられてきました。今回は湧き上がる組織に必要な3要素について、解説したいと思います。

第1回:「応援して囲い込む」~落ちこぼれを作らない組織マネジメントとは~
第2回:「家族のように寄り添うリーダーシップ」:インクルージョンと組織の一体感

目次

  1. 「礼節=緊張感」であると考える
  2. 礼節を実践する具体例
  3. なぜコロナ禍でもリモートワークを行わなかったのか?
  4. 創業以来続く「コミュニケーション重視」の文化
  5. なぜ朝礼で拍手の練習をするのか~本気でたたえあう文化~
  6. 拍手が生む一体感
  7. ビジネスにおける拍手の力
  8. 簡単なことを「やる」文化
  9. 社員同士の称賛が湧き上がる組織を作る

「礼節=緊張感」であると考える

タカマツハウスが創業間もない頃、藤原が「礼節・コミュニケーション・団結」と繰り返し語るのを聞いて、私はある違和感を覚えました。それは「礼節」という言葉への疑問です。「礼儀礼節は組織の規律を高めるためには必要だが、組織の活性化においては最優先ではない」と感じたのです。しかし、礼節の本質を深く理解していくにつれ、その重要性に納得しました。

コミュニケーションが取れて団結した組織は居心地が良いものですが、その反面、下手をすると“仲良しクラブ”になりかねません。藤原は「礼節」を重んじることで、常に組織に適度な緊張感を持たせています。

例えば、上長は普段は気さくに接することができても、業務に関する場面では常に真剣勝負であるべきだと考えています。部下が少し緊張感を持って上長に接するくらいが、ちょうど良いバランスなのです。

会社組織は、お客様や社員の幸せを追求するために戦う集団です。そのため、緊張感のない“仲良し集団”では、組織の本来の目的を達成することは困難です。

ここで重要なのは、緊張感は「恐怖」ではないということです。
昨今ではパワーハラスメントが与える個人や組織への悪影響が指摘されており、過度なパワハラ事例が社会から糾弾されるようになっています。私自身、若い頃に成績が上がらない社員や風紀を乱す社員を叱り飛ばした経験がありますが、恐怖は組織を萎縮させ、活性化にはつながりません。

礼節を実践する具体例

ここで言う「礼節」は特別なことを求めるものではありません。以下のような新入社員研修で学ぶ基本的な行動の徹底を指します。

● 挨拶をする
● 身だしなみを整える
● 遅刻をしない
● 会議の準備を怠らず、事前に資料に目を通す
● 報告・連絡・相談をきちんと行う

これらの基本的な行動を繰り返し実践することで、組織に適度な緊張感が生まれます。

私の前職(大和ハウス)では、当時CEOであった樋口武男氏が「凡事徹底」を説き続けていました。「礼節も凡事の一つである」とし、社員に「当たり前のことを当たり前にできる会社」であることを求めていたのです。

凡事徹底とは、本来「当たり前のことを他者が真似できないレベルで行う」ことを意味します。しかし、樋口氏も藤原も、そこまでの極端な徹底を求めているわけではありません。「普通のことがきちんとできる状態」――それこそが、組織に必要な緊張感を生むのです。

なぜコロナ禍でもリモートワークを行わなかったのか?

このようにコミュニケーションを重視するタカマツハウスは、コロナ禍においてもリモートワークを採用しませんでした。当時、多くの経済団体がリモートワークを推奨し、社会全体でもそれが主流となる中で、この方針は一部の社員やその家族から批判を受けることもありました。しかし、タカマツハウスはあくまで「リアルなコミュニケーション」の価値を重視しました。

藤原がリモートワークに反対した理由は、「コミュニケーションが圧倒的に不足する」という懸念からです。オフィスでは、すれ違いざまや仕事の合間にさりげなく行われる会話が、コミュニケーションを豊かにします。一方で、オンラインで意図的に時間を設定して行うコミュニケーションでは、その自然さが失われてしまいます。

現実的には、この方針により不満を抱いた社員もいました。家族から「あなたの会社はどうかしている」と言われた社員もいたかもしれません。それでも藤原は譲らず、この方針を貫きました。その結果、他社がコミュニケーション不足に陥る中で、タカマツハウスは社員間の結束力を維持し、組織の一体感を高めることができました。

創業以来続く「コミュニケーション重視」の文化

創業以来、タカマツハウスは「コミュニケーション」を最重要視する文化を築いてきました。この文化は、社員一人ひとりを孤立させず、互いに支え合う風土を作り上げています。リモートワークを選択せずリアルなコミュニケーションを優先したこの方針は、コロナ禍における試練を乗り越え、湧き上がる組織を実現する原動力となりました。

リアルな声掛けが生む効果は、オンラインでは得られません。タカマツハウスの成功例は、この理念を象徴しています。組織全体が一体となり、湧き上がる活力を生む文化の一端を担っています。

タカマツハウスでは、社員一人ひとりに対して経営陣から積極的に声を掛ける文化が根付いています。
例えば、新入社員が入社して2日目には「どう、慣れた?」という声掛けがあり、社員に安心感を与えます。ある43歳の人事部長は、入社早々に藤原から「笑顔がいいね~」と声を掛けられ、それを家族に嬉しそうに報告しました。このような小さなコミュニケーションが、社員のモチベーションを高めるのです。

日常の中では、次のような言葉が頻繁に飛び交います。

「今日、誕生日だよね。おめでとう!」
「●●良かったよ、ありがとうね!」
藤原を筆頭とした幹部による積極的なコミュニケーションにより、社員間の絆が深まり、組織の活性化につながっています。

なぜ朝礼で拍手の練習をするのか~本気でたたえあう文化~

タカマツハウスの朝礼では、成果を上げた社員に対して拍手で称賛を送る習慣があります。毎日のように繰り返されるこの拍手は、当社にとって日常的な当たり前の風景です。しかし、「当たり前の風景」が「代わり映えのしない風景」になってしまっては意味がありません。そのため、当社では心のこもった拍手をするための練習を朝礼で行っています。

例えば、リーダーや担当者が「よし、それでは心を込めて拍手してみましょう!」と声を掛けると、執務室は熱気に包まれます。そして、「もっと大きな拍手を!」という掛け声が加わると、さらに大きな拍手が響き渡ります。このような場面は、日常的な拍手とは異なる感動と一体感を生み出します。

拍手の力は絶大です。拍手による応援を受けた人は、不思議な力が沸き上がり、大きな目標に向かって進むことができます。たとえば、学校の運動会で、リレー中に転倒して後れを取った走者に、仲間や保護者から割れんばかりの拍手と声援が送られる場面を思い浮かべてください。その応援の力によって、走者は最後まで全力でゴールを目指します。拍手にはそれほどの力があります。

拍手が生む一体感

私自身、家族とアーティストのライブに行くことがあります。特にコロナ禍で声を出して応援することができなかったライブでは、拍手が一層重要な役割を果たしていました。「声に出せない分、心を拍手に込めてください」というアーティストの掛け声で始まる拍手の練習。繰り返すたびに大きくなるその拍手は、会場全体を一つにし、ファンとアーティストが一体となる感動的な時間を作り出しました。

拍手はたった二本の腕で行うシンプルな行動ですが、人の気持ちを動かし、一体感を生む力を持っています。

ビジネスにおける拍手の力

タカマツハウスでは、契約を達成した社員が朝礼でその経緯や協力してくれた上司・同僚への感謝を発表し、それに対して全社員が拍手を送ります。その拍手は、「良かったね」「おめでとう!」「次も頑張れよ」という気持ちを形にしたものです。このようにして、社員全員が感動を共有し、次に繋がるモチベーションを生み出しています。

拍手は単なる形式ではなく、社員同士のコミュニケーションを深めるきっかけにもなります。「協力してもらえてよかったね」「スピードが決め手だったね」といった具体的な声掛けが生まれることで、組織の中に活気が広がっていきます。

簡単なことを「やる」文化

拍手を大きく行うことは、誰でも「知っている」し「できる」ことです。しかし、それを実際に「やっている」企業は多くありません。世界的なメガネチェーン「オンデイズ」の田中修治社長が語った「知っている・できる・やっている」の違いの話が印象的です。

多くの人が「健康のために歩いた方が良い」と「知っている」し、「歩くことはできる」にもかかわらず、実際に「歩いている」人は少ないと彼は言います。ビジネスも同様に、「必要なことを知っているし、できるはずなのに、やっていない人が多い」と指摘します。

タカマツハウスの拍手も同じです。本気でたたえ合うことは簡単であり、「知っている」し「できる」ことです。しかし、これを本気で「やっている」企業は少ないのです。

社員同士の称賛が湧き上がる組織を作る

私が前職で営業社員の契約を「当然の結果」とみなしていた頃を振り返ると、称賛の言葉を伝える文化がいかに重要かを痛感します。拍手は、たった二本の腕で行えるシンプルな行動ですが、大きな力を発揮します。社員同士が本気でたたえ合う文化を築くことで、湧き上がる組織を作ることができます。拍手を通じて感動と一体感を生む――それこそがタカマツハウスの目指す組織作りです。

次回は「任せて任さず、見逃しの罪」:メンバーへの仕事の任せ方
メンバーへの仕事の任せ方に不安を抱くリーダーは多いと聞きます。任せきりにして仕事の質が低下したり、任せきれずチームのパフォーマンスが低下したなど、悩みは尽きません。次回はタカマツハウス流任せて任さずのリーダーシップについてお話します。

>>>第4回 任せて任さず~メンバーへの仕事の任せ方~

【編集部より】関連書籍紹介:『全員を稼ぐ社員にする、最強チームの作り方』

同書は、3年で売上高191億円を実現したチームマネジメントの秘訣を紹介。「全員が一人の仲間の〝応援部隊〟となることで、四方八方からサポートが入る仕組み」を徹底して行い、落ちこぼれをつくらない最強チームが起こした数々の奇跡を記している。書籍紹介記事はこちら

著 者 :タカマツハウス株式会社 取締役・専務執行役員 金田 健也
発行日 :2024年5月1日(水)
価 格 :1,650円(税込)
発行元 :株式会社ぱる出版
ISBN978-4-8272-1446-8 C0034

Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4827214468
ぱる出版:https://www.pal-pub.jp/book/b10083764.html

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