サーベイ起点の組織改革 第2回
サーベイの概要と選び方のポイント
主に人事が組織の状況把握や組織課題改善の足掛かりとして実施する従業員向け「サーベイ」。前回は、「サーベイ疲れ」をテーマに、従業員がサーベイ疲れを感じるポイントやその理由を中心に解説をしました。
第2回は「サーベイの概要と選び方のポイント」をテーマに、サーベイの目的の置き方や選ぶ際のポイントを分かりやすく解説します。
目次
何を目的にサーベイを導入するのか
第1回でも「目的に応じて選ばれるサーベイの種類」について言及しましたが、サーベイの実施は、「そもそも何の目的でサーベイを導入するのか?」について考えるところから始まります。まずはテーマを決めた上で、この後ご紹介する「サーベイを選ぶ際のポイント」に沿って、自社に合うものを選んでもらうと選定がスムーズに進むと思います。
まず、昨今一番よく耳にするテーマは「エンゲージメント向上」です。経済産業省が発表した「伊藤レポート」がエンゲージメントを取り上げてから久しいですが、人的資本開示の文脈からエンゲージメント状態の把握に至るまで、さまざまな理由でエンゲージメントをテーマにしたサーベイの導入を始める企業が増えています。
実際に弊社が行った直近の調査「エンゲージメント調査2024」(注:ダウンロード資料)でも、約70%の企業がエンゲージメント向上に「取り組んでいる」、もしくは「取り組みを検討している」と回答しており(図表1)、取り組みを実施していると回答した企業の中でも、約70%の企業がエンゲージメントサーベイを実施していると回答しています(図表2)。
▼図表1:エンゲージメント向上のための取り組み
Q.エンゲージメント向上のための取り組みについて、お勤めの会社の状況に最もあてはまるものを選択してください。
▼図表2:実施している取り組み/実施を検討している取り組み
Q.すでに実施している取り組みを、当てはまるものからお選びください。また、これから実施を検討している取り組みをお選びください。
一言にエンゲージメント向上といっても、実際にエンゲージメントサーベイの導入を検討されている企業の担当者に話を聴くと、その背景には、「若手の離職が増えており、少しでも離職を減らしたい」「業績向上のために、もっと前向きに仕事ができる風土にしたい」といった、離職防止や風土改革などさまざまな課題があり、その出口としてのエンゲージメントサーベイを実施している企業が多いようです。
少し前には、エンゲージメント以外にも従業員満足度やコンプライアンス意識を測りたいというニーズがありましたが、「従業員満足度」についてはエンゲージメントの概念が主流になってからほとんど聞かなくなりました。また、「コンプライアンス意識」のような特定テーマの調査は、現在はエンゲージメントサーベイに項目を追加して合わせて調査されることが多いようです。
サーベイを選ぶ際のポイント
社外サービスを利用するか内製するか
サーベイ導入にあたっては「社外のサービスを使って実施する」「社内で専用のものを作成して実施する」という選択肢があります。内製すると、測りたいテーマや社内の状況に応じて柔軟に設計でき、自社に合った内容のものにできるというメリットがあるため、実際、内製している企業は多くあります。
一方で、内製にはサーベイの設計に必要な専門的なスキルを有する人材が社内に必要だったり、サーベイ活用の壁にぶつかったり、完全に社内用に項目を作成すると他社や世の中の平均値と比較できなかったりするというデメリットもあります。
社外のサービスを選定する際のポイント
社外のサービスを使う場合はどうでしょうか。これだけたくさんのサービスがあると、「何を基準に選べば良いのか」が分からなくなることがあります。サーベイは導入して終わりではなく、実際に使ってみて効果を実感できることが望ましく、そういった点でも選ぶサービスには細心の注意を払いたいところです。それでは、実際に社外のサービスを選ぶ際のポイントをいくつかご紹介したいと思います(図表3)。
▼図表3:サーベイを選ぶための4つのポイント
1.測りたいテーマを測れるか
冒頭でお伝えしたように、自社が測りたいテーマや目的に沿ってサーベイを選定する必要があります。その際に、「自社が測りたいテーマを本当に測れるか?」をしっかりと確認することをお勧めします。実施して結果を見てみたら思っていたような内容ではなかった、結果を活用しようとしたがうまく使えなかったという声を聞くこともよくあります。
フレームや要素、項目、実際のアウトプットなどを事前に確認し、不安であればベンダーの担当者に相談して実施後の活用イメージを持てる状態にしましょう。その際には、何となく「エンゲージメントを測りたい」ではなく、「自社で定義している・測りたいエンゲージメントは○○と△△の要素であるから、それらを測れるものにしよう」といった具合に、具体に落として確認することが大事です。
また、サーベイは全社単位で実施されることが多く、結果を経営層に返却・報告することも少なくありません。必要に応じて、事前に経営トップ層が測りたいと考えているテーマや意向を確認しておくと導入もスムーズに進むでしょう。
2.サーベイの品質は確かか
社外のサービスを導入するメリットの1つが品質であると言えます。社外のサービスは、その道の専門家や大学教授などの有識者が設計・監修していたり、専門的な方法を用いて妥当性や信頼性の検証を行っていたりすることが多いため、一定の品質が担保できる可能性が高いと言えます。
サーベイは思っている以上に繊細で、1つの項目の表現が異なるだけで結果に大きな影響を与えることがあります。選定の際には、サーベイのフレームの妥当性や信頼性の高さ、サーベイの結果指標と業績などの成果指標の関係性が立証されているといった、品質が担保されているものを優先的に選ぶと良いでしょう。
3.実施のイメージが湧くか
サーベイの実施には数多くのタスクが発生します。具体的には、回答属性の設定や回答者情報の登録、回答開始のアナウンスや回答のリマインドなどがあります。特に全従業員もしくは特定の組織を対象に、小規模かつ高頻度に組織や個人の状態を測るパルスサーベイの場合は、実施頻度が上がることにより回答案内やリマインドの頻度も上がり、タスクも増えます。
日常の業務で忙しい中で実施するとなると、導入するサービスの特徴を捉えるだけでなく、発生するタスクや遅れのない遂行のイメージが湧くかどうかは大事なポイントと言えます。ベンダーによっては実施のサポートをサービスとして提供していることもあるため、もし、初回の導入で不安がある場合は利用してみることをお勧めします。
また、過去に似たような施策を導入したことがある場合は、その際の成功・失敗事例などを確認しておくと良いでしょう。
4.結果活用の用途に沿うか
サーベイは実施して終わりではなく、実施後に結果を活用することで初めて価値を発揮できるといっても過言ではありません。したがって、自社でどのように結果を活用したいのか?を明らかにしたうえで、その活用用途に沿ったサービスを選ぶことがサーベイ活用の第一歩です。
結果の活用にあたっては、全社(人事や経営層)と現場(部署や職場)で、活用用途を分けると考えやすいです。例えば、全社では会社全体及び各部門や各機能横断でのコンディションを把握する、特にコンディションが悪い部門や機能については現場レベルで結果を活用してもらう......といった考え方になります。繰り返しになりますが、活用用途を先に考え、それに沿った機能を有するサービスを選定することが大事です。
導入前に具体的な運用イメージをもとに細かい部分までしっかりと検討しておく
前述したように、サーベイは全社単位で実施することが多く、ほぼすべての従業員を対象に行うことが想定されるため、人事が関わる施策の中でも比較的規模の大きいものと言えます。
特に社外のサービスを導入する際には、経営層などの意思決定者の意向も確認した上で、あらかじめ実施や活用のイメージができる、自社に合ったサーベイを選ぶことが望ましいです。イメージを持っておくことで、実際に実施準備を始めてからも慌てることなく対応できたり、必要に応じてベンダーの担当者や意思決定者にも相談しやすくなったりします。導入前に細かい部分までしっかりと検討しておくことが、後々の運用のしやすさにつながるでしょう。
では、上記のポイントを踏まえてサーベイを実施した後は、何に気をつけて、どのように結果を活用すれば良いのでしょうか。第3回ではその活用のポイントをお伝えします。
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