Z世代社員たちとともに良い未来をつくる方法 第3回

「ゆるく」×「ひろく」の3つの事例

「Z世代社員たちとともに良い未来をつくる方法」を研究してきたリクルートマネジメントソリューションズが、そのエッセンスを4回にわたってお伝えする連載。第1回は「新入社員意識調査2024」の結果を通して、Z世代新入社員の特徴を、第2回ではZ世代の人材育成を成功させる秘訣と取り組みのポイントを紹介しました。

第3回は、人事や上司、育成担当者などがZ世代の初動を「ゆるく」×「ひろく」フォローした結果、Z世代の新人・若手社員が「ひとりの味方」をいち早く見つけ、はじめの一歩をスムーズに踏み出した3つの事例について解説します。

これまでの連載:https://at-jinji.jp/expert/column/101

目次

  1. 事例1:小さな自律行動からの機会獲得(若手研修「X-SHIP」)
  2. 事例2:職場ぐるみの育成の組織浸透(ヤクルト本社様)
  3. 事例3:世代間の共創を目指す取り組み(阪神阪急不動産様)
  4. 「ゆるく」×「ひろく」が新人・若手社員のスムーズな1歩に

事例1:小さな自律行動からの機会獲得(若手研修「X-SHIP」)

1つ目は、当社の若手研修「X-SHIP」受講者の事例です。
X-SHIPでは、新人・若手社員の受講者がセルフリーダーシップを発揮し、よりよい状況を自分でつくっていく方法を学びます。その事前ワークの1つに、周囲から自分へのフィードバックをもらい、「自分を客観視するワーク」があります。

研修前に自分の「らしさ」を周囲にヒアリングし、研修当日はその感想をグループ内で共有してもらいます。そうやって、自分から行動を起こすことの重要性に気づいてもらうワークです。受講生からは、「自分からヒアリングしてみたら、予想以上に良いことが聞けた」という声をよく耳にします。

ある企業の入社2年目・Aさんは、この事前ワークの際、チャットを活用して、約30人もの仕事関係者に自分へのフィードバックを依頼しました。そうしたら、思いがけず厳しいお客様がトライに賛同してくれたのです。このお客様はホンネの丁寧なフィードバックをしてくれただけでなく、やりとりのなかで信頼関係を深めることもでき、次の仕事にもつながったそうです。
Aさんは、このお客様だけでなく、社内外のさまざまな人からフィードバックを得ました。その結果、Aさんは「仕事が楽しくなってきた」と話していました。
Aさんは、こうして何となくでも「ゆるく」依頼を出してみて、いろんな人に「ひろく」相談するなかで、協力者をいち早く見つけることができたのです。

当社の「新人・若手の早期離職に関する実態調査」(2023)【上図】によれば、過去3年に自己都合退職したことがない人で離職を想起した理由1位は、「仕事にやりがい・意義を感じない」(27.0%)でした。

ところが、Aさんのようなはじめの一歩を踏み出せば、新人・若手でも仕事のやりがいを自ら創出できる可能性があるのです。その際のコツは、これまで話してきたように、新人・若手が主体的に「ゆるく」×「ひろく」行動を起こし、ひとりの味方を見つけることから始めることです。

事例2:職場ぐるみの育成の組織浸透(ヤクルト本社様)

2つ目は、ヤクルト本社様の事例を紹介します。
ヤクルト本社様では、人財開発センターが中心となって、新人を育成担当者任せにするのではなく、「職場ぐるみで育てる取り組み」を行っています(図表1)。

▼図表1:職場ぐるみの育成

上司や育成担当者はもちろんのこと、同僚、他の新入社員、社内プロフェッショナル、メンターやロールモデルなどと「つなぐ」「学び合う」機会を設けて、職場全体でともに育てる共創型の育成体制を採用しているのです。また、新入社員も自発的に学び、新人同士でともに成長していく姿勢で関わるスタンスを大事にしています。

さらに、人財開発センターの皆さんが、職場ぐるみの育成に積極的に取り組んでいる部門をいち早く見つけ、その成功事例をフォロー研修や社内報で横展開しています。結果的に、職場ぐるみで新人の成長を見守る好事例が多数生まれ、人財開発センターの皆さんは確かな手ごたえを感じています。

人財開発センターの皆さんは、OJT研修・フォロー研修などをトップダウンで実施するだけでは、職場ぐるみの育成を浸透させるのは難しいと考えていました。そこでできることから始めてみたのです。
例えば、上司や育成担当者に日ごろの取り組みへのお礼やねぎらいをしたり、新人育成に関わるノウハウ情報共有をしたりし始めました。そうした小さな試みが、結果的に社内の賛同者や成功事例を見つけることにつながりました。

また、上司・育成担当者にアンケートを取って、進捗確認やうまくいっていること・困りごとを把握する施策も行っています。さらに、上司・育成担当者には、定期的なレポートを通じて、新人の成長を言語化・共有してもらうようにしています。
一方で、新人に対しては「状態確認メール」を定期的に発信し、仕事に前向きに取り組めているときは「晴れ」、少し迷いなどがあるようなときは「曇り」のように、天気図を用いて本人の状態を示してもらっています。さらに、社内報には、ヤクルト本社が目指すOJTのあり方を、図や絵を使って分かりやすく紹介したり、職場ぐるみの育成に積極的に取り組んで成果を出している部門に、成功の秘訣を教えてもらったインタビュー記事を掲載したりしています。

ヤクルト本社様では、こうしてできそうなことから「ゆるく」やってみながら、他者の強みを「ひろく」借りた結果、職場ぐるみの育成が全社に浸透してきています。当社は、このような職場ぐるみの育成に大きな可能性を感じており、広くお勧めしています。

事例3:世代間の共創を目指す取り組み(阪神阪急不動産様)

3つ目は、阪神阪急不動産様の「世代間での共創的関係」を目指す取り組み事例を紹介します。
なお、この事例は、部署横断プロジェクト「ハシゴ計画」のなかの「Z世代の思考をとらえたプロモーションを考えようチーム」が人事部と協力し、実行した施策です。

具体的には、
STEP1:世代間相互理解プログラム
STEP2:上司向けのZ世代を知るプログラム
STEP3:Z世代向け施策

の3ステップで、職場において世代問わず「お互いが学びながら生かし合う共創的な関係」を築くことを目指しました。

阪神阪急不動産様は、こうしてZ世代が持つ独自の視点と、ベテランが持つスキル知識や経験を組み合わせることで、組織として新しい価値を生み出すことにチャレンジしたのです。

STEP1では「Z世代と上司世代の相互理解セッション」を実施しました。これは、X世代(1965年頃~1979年頃生まれ)、Y世代(1980年頃~1995年頃生まれ)、Z世代(1995年頃~2012年頃生まれ)の3世代が、お互いの世代の「いいね」と「もやもや」の両方を率直に共有しあう場でした(図表2)。

▼図表2:Z世代と上司世代の相互理解セッション

このセッションでは、上世代がZ世代の「もやもや」を言語化するだけでなく、Z世代も上世代の「もやもや」を遠慮なく言語化しました。

例えば、Z世代から見たX世代は、「情熱的で熱血で経験値がすごい」のは良いのですが、「口調がキツイときがある」「パソコン、スマホに弱め」「昔話が多すぎる」点がモヤモヤするのだそうです。
また、Z世代から見たY世代は、「上下関係の構築スキル」や「遅くまで飲んだあとも元気」なところや「人生の悩みを聞いてくれる」姿勢はすばらしいけれど、「紙資料が多い」点がモヤモヤするということです。
このように、各世代がお互いのことを遠慮なく話し合った結果、お互いの見えていなかった強みが分かり、共創の可能性が広がりました。セッションは、終了の時間が来ても話が終わらないほど盛り上がったそうです。

この相互理解セッションは、何となくでも「ゆるく」意見を出しあって、異なる価値観を「ひろく」取り入れることに成功した事例です。このような取り組みが多くの企業に広まれば、Z世代の人材育成は格段にスムーズになるはずです。

「ゆるく」×「ひろく」が新人・若手社員のスムーズな1歩に

上司、育成担当者などによるZ世代の「ゆるく」×「ひろく」というアプローチでフォローした結果、新人・若手社員がスムーズに立ち上がる3つの事例をご紹介しました。「ゆるく」×「ひろく」の考え方を取り入れることの効果を感じていただけたのではないでしょうか。

では、「ゆるく」×「ひろく」の意識のうえで具体的に新人・若手社員へどんな接し方をするのがよいのでしょうか。それは第4回に「Z世代との日常的な関わり方のヒント」として紹介します。

>>>第4回 Z世代との日常的な関わり方のヒント

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