「エンゲージメント不要論」は本当か?~国内No.1 企業が語る“本質論”~第2回

エンゲージメントを高めるうえでの大原則~人とは?組織とは?を理解する~

前回は、エンゲージメントが重視される一方で、「エンゲージメント不要論」がささやかれる理由についてお伝えしました。エンゲージメント向上に取り組んだものの効果に結びつかず、「本当にこれをやり続ける意味はあるのだろうか」と疑問を持つことは少なくありません。ですが、企業が持続的に競争力を発揮していくために、エンゲージメントが不可欠な要素であることは前回お伝えした通りです。

今回は、エンゲージメント向上を図るすべての企業が押さえておくべき「大原則」についてお伝えしていきます。

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目次

  1. 従業員の要望に応えることが正解ではない
  2. エンゲージメント向上を図るうえで基盤になる考え方
  3. おわりに

従業員の要望に応えることが正解ではない

「エンゲージメントは不要だ」と思う理由の一つとして「従業員は楽しく働けるようになって良いだろうけど、企業からすれば業績にヒットせず意味がない」ということが挙げられると思います。必ずしもそうではないことは前回の内容からお分かりいただけるかと思いますが、「どうも納得できない」「ピンとこない」という方もいらっしゃるでしょう。

もしかすると、エンゲージメントを向上させるには「従業員の要望に応えなくてはいけない」、もっといえば「従業員のワガママを受け入れなくてはいけない」と考えてはいないでしょうか。

もちろん、従業員の声に耳を傾け、要望に応えることは大切です。しかし、従業員の要望は際限のないものであり、全従業員のすべての要望に応えることは不可能という前提に立つべきです。要望がかなった従業員のエンゲージメントは一時的に上がるかもしれませんが、次々に湧いてくる要望に応え続けていたら、会社が傾くのは時間の問題です。

たとえば、エンゲージメント向上を目的とした施策を検討するとき、以下のような判断をする企業もあるでしょう。

  • 給料に不満を持っている従業員が多いから、賃上げをしよう。
  • オフィス環境に関する不満を持っている従業員が多いから、ハード面を刷新しよう。
  • コミュニケーションを求めている従業員が多いから、会社負担で飲み会をしよう。

いずれも施策自体は間違っていませんが、エンゲージメント向上を考える際に重要な、「One for All, All for One」の考え方に立脚していません。このフレーズは一般的に、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という意味で使われますが、ここでいう「One for All, All for One」は一般的な意味とは異なります。当社では「All」と「One」をそれぞれ以下のように定義しています。

  • All:組織の成果創出(=事業成果の最大化)
  • One:個人の欲求充足(=モチベーションの最大化)

上述の施策は、それだけでは企業における事業成果(All)につながりにくいものです。施策を検討するときは、個人のモチベーション(One)に寄り添うことも重要ですが、同時に「果たして、その施策は将来の事業成果につながるのか?」という視点を持つことが大切です。

エンゲージメント向上を図るうえで基盤になる考え方

当社では、以下の「人間観」と「組織観」を提唱しています。いずれも、エンゲージメント向上を図るすべての企業が認識しておくべき大原則だといえます。それぞれ簡単にご説明しましょう。

人間観「人間は、限定合理的な感情人である」

行動経済学の世界では、「人は勘定ではなく、感情で動く」といわれることがあります。現実世界における人間の判断や行動は、経済的利得だけではなく、感情的な側面が与える影響が大きいため、人間を「完全合理的な経済人」ではなく「限定合理的な感情人」(基本的には感情をもとに行動し、部分的に合理的な判断をする生き物)であると定義しています。

この人間観に立脚すると、エンゲージメントを高めるためには従業員の感情を考慮することが重要だと分かります。どれだけ合理的に事業戦略を伝えても、どれだけ職場環境や評価制度を整えても、従業員が感情的に受け入れられるものでなければ、エンゲージメントは上がりません。

従業員が感情的に受け入れることができない例としては、以下のようなシーンが考えられます。

  • A課長に言われても、A課長自身ができていないのだから、説得力がない。
  • 給料は上がって嬉しいけど、結局仕事のやりがいは変わらないから会社への満足度は大きく変わらない。
  • 理屈は分かるけど、自分の成長につながりそうにないから、やる気が出ない。

組織観「組織は、要素還元できない協働システムである」

当社では、組織を「要素還元できない協働システムである」と定義しています。これは、たとえば5人のチームがあったとき、「5人の人がいる組織」ではなく「10本の関係性がある組織」という視点で捉える組織観です。

この組織観に立脚すると、「問題は“人”ではなく“間”にある」という視点が得られます。たとえば、10人の組織を100人に増やしても、必ずしもパフォーマンスが10倍になるわけではありません。組織をコミュニケーションの束として捉えると、10人の場合は「45本」((10×9)÷2)の関係性がありますが、100人になると「4,950本」((100×99)÷2)の関係性になります。この場合、人が10倍になったことで、関係性の数は約110倍になっており、複雑性が増すほど組織に問題が生じやすくなるのは当然です。

このメカニズムを理解すると、コミュニケーションをつなぐ管理職の重要性が分かります。管理職は組織の「結節点」として組織の複雑性を縮減させ、経営の意図や想いを現場の従業員に伝えたり、逆に従業員の意見を経営に伝えたりしていかなければいけません。管理職が「結節点」として機能していないと、経営が「10」を伝えても、現場が「1」しか理解していないという状況に陥ります。このような組織では、従業員が常に不満・不信感を抱えています。エンゲージメントの向上が期待できないのは、言うまでもありません。

おわりに

今回は、エンゲージメント向上を図るために大前提となる考え方をお伝えしました。エンゲージメント向上においては、単に従業員の要望に応えるのではなく、企業経営の宿命ともいえる「事業成果」につながる施策を打てるかどうかがポイントになってきます。

次回以降は、エンゲージメントを高める具体的な方法について解説していきたいと思います。

>>>第3回 企業の成長ステージ別に見る「あるある」な組織課題

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