内定者の期待と会社の企画のギャップを埋める
内定者研修のよくある問題と3ステップの解決ヒント
人材育成業界にとって10月の大切なイベントの一つは内定式です。この数年で内定者向けの研修を実施している企業や検討している企業が増えてきました。実施するのは大賛成ですが、人材育成担当者と受ける内定者の期待との間にはギャップがあるように感じます。
このギャップをそのままにしておくと、せっかく内定者向けの研修を実施しても、入社に対する不安解消や入社に向けて必要なマインドセットなど狙っている目的の達成につながらない可能性が高いです。
今回は、ギャップを正しく認識し、改善につなげるためのヒントとして、「入社意識が高まるキックオフイベント」「内定者同士のコミュニティ作り」「重くない入社前研修」の3ステップを紹介します。
目次
人材育成担当者と内定者との間にある期待のギャップ
人材育成担当者と研修を受ける内定者の期待との間にあるギャップを具体的に知りましょう。実際、2023年卒の内定者からの調査結果として以下のような報告がありました(抜粋)。
出典:DISCO社:調査データで⾒る「入社に向けた内定者フォロー」-2023年卒
・内定者懇談会について
× 顔の見える懇談会、内定後の質問会が欲しかった
△ リモートは便利だが同期の人とは直接会ってみたかった
○ 対面の懇親会があってよかった
・課題について
× 修士の学生は就職活動後に研究が本格化する(学校は配慮してくれている)
× たくさん課題を出されると研究に集中できなくなる(特に理系)
△ 課題があるのはいろいろな機会が持てて良いが強制にしないで欲しい
○ e-ラーニングの課題の内容が良かった
○ 課題の期限が3月末なのは良かった
・その他
× 資格取得のサポートが欲しい
△ 入社後スケジュールや引っ越し準備に係る連絡が早めにわかるとありがたい
(凡例 ○:よかった、△:改善してほしい、×:困った)
このような内定者の期待と“会社の企画の残念なギャップ”を埋めるための具体的な対策を、「入社意識が高まるキックオフイベント」「内定者同士のコミュニティ作り」「重くない入社前研修」の3つカテゴリーに分けて紹介します。
効果的な内定者研修を実施するための情報整理とスケジュール立案
まず、事前の準備として、効果的な内定者研修を企画するためには、ギャップを考慮しつつ企業側と内定者側の目的および注意点を整理しておきましょう。
上記の目的を達成するためにこのような流れをお勧めします
それぞれの要素を詳しく見てみましょう。
入社意識の高まるキックオフイベント
昔から内定式を実施している会社は多いですが、最近は内定式以外に内定者向けの研修や懇親会を実施している企業が増えてきました。冒頭で紹介した「調査データで⾒る『入社に向けた内定者フォロー』-2023年卒」によると内定者向けの代表的なフォロー施策はこちらです。
(1)実施率の高い(多くの会社が実施している)施策は
- 内定式(オンライン含む) 72.4%
- 人事からの定期連絡 55.7%
- オンライン内定者懇親会 53.8%
(2)これに対し内定者に響き、刺さる(入社意識が高まる)施策は
- 内定者懇親会(対面) 62.9%
- 社員を交えた懇親会(対面)57.4%
- 社内や施設などの見学会 51.1%
(3)この結果から強くお勧めするキックオフイベントの実践例は以下の通りです。
- 目的:内定者同士の交流、不安に対するアドバイス、若手の先輩との交流・懇親
- 実施形態:対面(半日研修と懇親会)
- 参加者:内定者、人事、複数若手社員
- 実施場所:可能なら会社のきれいな施設(研究所、ショールーム、本社大会議室、工場)
- 内容:自社の経験に基づいて言うと以下のような内容が内定者に受けが良いです。
ポイント:
- 対面が極めて重要です。目的は交流、人間関係構築、不安を取り除くことですからオンラインより対面の良さが大きいです。
- 内容を内定者同士の交流、ネットワーキング、コミュニティ作りに重点を置きましょう(大量の情報インプットや重いスキル研修を目的にしないこと)。
- 成功するイベントのトーンや雰囲気はポジティブ、軽い、モチベーションが上がる、です(真面目、重い雰囲気だと内定者のモチベーションが上がりません)。
- 会社の色を出すために情報発信をするより社員を巻き込んで交流させる、会社の施設で開催するなどのほうが効果的です。
- 午後開催だと前泊の内定者は少なくて負担とトラブルが少ないです。
- 何より、社会人に慣れるための新入社員研修と一緒にしないでください。
内定者同士のコミュニティ作り
多くの内定者にとって特にこの時期は、業務内容と会社の細かい知識より他の内定者との人間関係が大事と思っています(少なくても内定式直後)。
そのため、内定式から入社までの内定者同士のコミュニティ作りがとても大切です。よくある取り組みとそれぞれの長所短所をまとめてみました。
ポイント
こちらについて、正解はありません。各企業の考え方があり、内定者によって好みが変わります。内定者の数も影響するでしょう。
ただ、キックオフイベントの際に、内定者同士の交流やネットワーキング、コミュニティ作りをどの程度やったのか、対面だったのかといった点は考慮する必要はあります。イベントでしっかりと内定者同士が顔と名前を見知って仲が深まっていれば、定期的な面談は不要になるかもしれませんし、イベントがオンライン開催だったのであれば、リアルで面談する機会を作ることにも意味があります。
重くない入社前研修
学業が落ち着き始めると内定者は少しずつ入社に向けて真剣に考えるので、このタイミングで入社してから必要な知識とスキルを学ぶモチベーションが上がります。
ただし、切り替えのタイミングは内定者によって異なります。特に理系の内定者は卒業直前まで忙しいケースが多いです。そのため集合研修より自由度の高いオンデマンド研修や自己学習が適切です。さらに研修を選択式の自由参加にすると内定者とのトラブルが少ないです。下記の表にお勧めする研修内容とコメントをまとめてみました。
ポイント
- 内定者の都合にあうタイミングでできる提供方法にする(オンライン自己学習)
- 内定者の負担を必要以上に重くしない(強制的な課題提出を少なくする、提出期限を柔軟に設定する、必要な受講するコンテンツを必要最低限にする、一つのコンテンツを細分化したマイクロラーニングにする)
- 入社前の自己学習にふさわしいコンテンツに重点を置く(マインドやビジネス英語より実践的なテクニカルスキル)
クロージング
内定者教育(イベント・研修)をこの3つのステップで企画してみてください。内定者教育と入社後教育との役割が明確になり、新入社員研修がスムーズになるはずです。
さらに新入社員研修を成功させるために、ぜひ、このよくある失敗パターンがないかを確認してください。
参考資料:新入社員研修の失敗につながる代表的なフレーズと対策
またこの時代に合う成果の高い新入社員研修企画のヒントとしてこのコラムも参考にしてください。
参考資料:若手社員が画期的な成果を出す3ステップのチャレンジ目標(ハイブリッドワークネイティブ/AIリーダー/ラーニング達人)
内定から入社そして配属へ、人材育成担当者の皆さんは内定者の伴走者としてすでに走り始めています。ご安全に!という気持ちを込めて今回お届けしました!
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