いま人材育成担当者・研修講師に求められる5つの専門性とは?

人材育成チームの仕事は従業員の知識・スキル・能力を高めることです。しかし、不思議なことに自分達のスキルアップは意外と後回しにされるケースが少なくありません。
例えば、次の5つの問いにあなたは(人材育成担当者・研修講師の立場で)自信をもって答えられますか?

1. 研修を企画する段階でインパクトマップはどのように役立ちますか。
2. どのような研修形態があって、それぞれの研修設計がどのような特徴を持ちますか。
3. リモート研修を成功するためにどのような講師スキルが必要ですか。
4. 定着フォローの5つの基本とは何ですか。
5. 代表的な研修効果測定メソッドは何ですか?どれが実践的ですか?

あなたが自信を持って答えられたら素晴らしいです。そうではない場合には、今回の記事で回答内容を確認しましょう。こうした問いを、学びによって答えられるようになった人材育成担当者の声もあわせて紹介します。

目次

  1. はじめに
  2. 人材育成担当者・研修講師に求められる5つの人材育成分野のポイント
    1)研修の企画(Planning)
    2)研修設計(Design)
    3)研修実施(Delivery)
    4)定着フォロー(Transfer)
    5)研修効果測定(Evaluation)
  3. クロージング

1.はじめに

5つの問について、回答および押さえておくべきポイントを1) 研修の企画(Planning)、2) 研修設計(Design)、3) 研修実施、(Delivery)、4) 定着フォロー(Transfer)、5) 研修効果測定(Evaluation)のパートで解説していきます。

あわせて、学びを通じてこれらの問いを答えられるにようになった、他社の人材育成担当者のコメントも紹介します。

彼らは、2023年の9月に開講した人材育成担当者のスキルアップ支援を目指すオンデマンド研修の受講者で、最初からすべての問いに自信をもって答えられたわけではありません。学びを通じてどのように点に気づきを得たのか、またはどのような課題感を持っているのかといった情報は、参考になるでしょう。
(参考:オンデマンド研修について「今すぐ改善したい人材育成の分野と段階別アドバイス」

それでは次章で詳しく解説します。

2. 人材育成担当者・研修講師に求められる5つの人材育成分野のポイント

1)研修の企画(Planning)

質問:研修を企画する段階でインパクトマップはどのように役立ちますか。
回答:インパクトマップは職場で求める成果・職場で必要な行動・研修を通じて強化するスキル・研修内容のベクターを合わせるために便利なツールです。ニーズ把握、研修設計、研修効果測定の段階で役立ちます。


下記の図はインパクトマップのイメージです。

インパクトマップのイメージ|@人事

研修企画に関して受講者が具体的にどのような点が「ためになった、参考になった」のかをコメントで確認してみましょう。

■Uさん:研修目的の設定
「何より目的=得たい成果を見定めることが重要だと再確認しました。現場と経営層とのコミュニケーションを取る必要があります」

■Nさん:ニーズ把握のわかりやすい質問
「どのような状態になってほしいか
   └今はどうなのか →   何がそうさせているのか
何がそうさせているのかは、これまで無かった視点。確かにここを深堀すると研修ではないソリューションが必要な場合も出てくる」

■Hさん:研修の企画段階から目指すこと
「インパクトマップを参考に、研修企画の段階から、研修成果や受講者に求められる行動、そのために必要な能力、研修内容の順に考えていきたいと考えました」

参考情報:
研修の企画、ニーズ把握、プラニングについてもっと知りたい場合には以下のコラムをぜひ参考にしてください。
・研修目標と経営方針のベクトル合わせ https://at-jinji.jp/expertcolumn/440
・研修のポートフォリオ https://at-jinji.jp/expertcolumn/410 

2)研修設計(Design)

質問:どのような研修形態があって、それぞれの研修設計にどのような特徴がありますか。
回答:代表的な研修形態は対面研修、リモート研修、ブレンドラーニング、オンデマンド研修、個別ラーニングジャーニーです。


下記の表はそれぞれの設計ポイントです。

研修設計について受講者に響いていた内容を紹介します。

■Hさん:研修目的設定から始める
「研修設計をより強化するために、目的を明確にして随時、受講者と一緒に立ち返ることが重要と考えます」

■Tさん:設計をより広く考える
「改めて研修設計を見直しする必要があると感じました。研修実施だけではなく、定着フォローとして、職場で実践できるような仕組みづくりも考えて研修設計をしたいと思います」

■Uさん:設計のバリエーション
「講義時間中の内容の構成はもちろん重要ですが、研修全体の構成として、反転学習で、事前に研修に対する意識づけと、ある程度の予習をしてきてもらい、研修ではアウトプットに重点を置くのが一番効果的なのかなと思いました」

■Kさん:点から線へ
「ここ3年ほどいろいろ経験をして、対面でもリモートでも、研修を点で終らせるのではなく、線でできるように考えることの方が大事だと気付きました」

参考情報:
・対面研修 https://at-jinji.jp/expertcolumn/423
・ブレンド研修 https://at-jinji.jp/expertcolumn/274
・個別ラーニングジャーニー https://at-jinji.jp/expertcolumn/448

3)研修実施(Delivery)

質問:リモート研修を成功するためにどのような講師スキルが必要ですか。
回答:
・簡潔かつロジカルな解説とメリハリのある声のトーン
・受講者をスムーズに巻き込んで、プラットフォーム機能(投票、チャット、絵描き)を使うマルチタスクの力
・極めてわかりやすい、明確な演習指示
・ブレイクアウトルームを回る時に雰囲気を数秒でつかんで適切なフォローをする力


下記は、リモート以外の研修で求められる講師スキルです。

講師スキルについてのコメントです。

■Tさん:研修スタイル共通の講師スキル
「対面、リモート、ハイブリッドにおいて。研修生を巻き込めるような仕掛けを考えたいですね」

■Nさん:研修スタイル別の工夫
「それぞれの実施スタイルによって気をつけるポイントがあることが分かりました。また、いずれのスタイルでも主役は受講者であるということが大切なのだと感じました」

■Kさん:社内講師のオンデマンド研修コンテンツ作成は難しい
「オンデマンド研修のメイン担当は毎月の製品研修担当者(複数)であり、在宅で作成していることが多く、今のやり方を変えるようにするのはそう簡単ではないと感じています。まずは、『これイイネ‼』と思わせるものを作成して、『これ、簡単にできるよ やってみる?』と投げかけるのが早道なのだろうと思います」

参考情報:
・対面研修の気を付けるポイント https://at-jinji.jp/expertcolumn/378
・リモート研修の講師ヒント https://at-jinji.jp/expertcolumn/285
・ハイブリッド研修のマニュアル https://at-jinji.jp/expertcolumn/373

4)定着フォロー(Transfer)

質問:定着フォローの5つの基本は何ですか。
回答:
・成果=研修 x 定着
・インプット<プロセス(点から線へ)
・ビジネスニーズから逆算する
・受講者の上司を巻き込む
・忘却曲線に負けない


各ポイントの簡単なイメージと一言説明はこちらです。

受講者からは、「定着フォロー」が一番ためになったという声が多いです。その中で注目度の高いコメントを紹介します。

■Nさん:定着の重要性
「社員が限られた勤務時間を割いて参加した研修が無駄になることほど会社にとってロスになることはないので、受講者・実施者いずれの立場になっても実施後の定着フォローを意識したいと思います」

■Oさん:細かい定着のコツ
「定着がいかに重要なのかがよく理解できました。研修のスタイルによって効果的な定着方法が違うというのも興味深かったです」

■Oさん:簡単なところからの定着強化
「ラーニングトランスファーがいかに重要なポイントであるのかを認識する事ができた。特に事前アンケートの重要性、上司への巻き込み、受講者自身の事前の準備が現状できていないので今後は検討していきたい。研修後のフォローも考えたい」

■Yさん:定着から成果へ
「ラーニングトランスファーは、受講者の行動変容を促し、職場で成果を出すために必要なことだと、あらためて思いました」

参考情報:
全体的に日本の定着に対するレベルは高くありませんが、ちゃんとフォローをすると驚くほどうまくいきます。その背景を説明するコラムはこちらです。
・日本と定着の良い相性 https://at-jinji.jp/expertcolumn/419

5)研修効果測定(Evaluation)

質問:代表的な研修効果測定メソッドは何ですか?どれが実践的ですか?
回答:代表的なメソッドは
・カークパトリックの4段階モデル(評価、習得、行動、成果)
・フィリップスの5段階モデル(カークパトリックの4つの上に費用対効果がある)
・LTEMという習得度を細かく測るモデル
・ブリンカホフのサクセスケースメソード(SCM)で成果の高い受講者の細かいヒアリングをして、成果を出すメカニズムを明確にする。これは簡単、わかりやすい、説得力のある、今後の研修の改善につながるために一番実践的


サクセスケースメソッドのコンセプトはこちらです。

定着フォローの次に人気のコーナーは研修効果測定です。これは「知っているけどやっていない」分野の最たるものであることがうかがい知れます。受講者のコメントです。

■Mさん:現状
「自社での効果測定は、職場の負担もあり研修直後に理解度と満足度を測定することしかできていません」

■Oさん:思い込みが強い
「効果測定では今まで悩むことが多かった」

■Tさん:目指そう
「個人的には学ぶ意欲が高く、学ぶ行動を起こし、職場で実践したことを評価できるようにしたいと思う」

■Gさん:やはりブリンカホフ
「たくさんの効果測定モデルがある事を学習しましたが、やはりSCMが一番私自身の描いていたイメージにマッチするし、実現性が高いと感じました」

■Yさん:簡単な第一歩を踏む
「最初にSCMを試すときには、効果の出やすい研修プログラムで、真剣に取り組み、成果をしっかり出せそうな人にヒアリングをする。まさに、成功事例を創っていくアプローチが大切だと感じました」

参考情報:
・研修効果測定の基本 https://at-jinji.jp/expertcolumn/359
・人材育成の年間レビューを強化するためのヒント https://at-jinji.jp/expertcolumn/427

3.クロージング

繰り返しになりますが、人材育成チームの仕事は従業員の知識・スキル・能力を高めることです。自分達のスキルアップを後回しせず、秋の研修実施が本格的に始まる前にぜひ少し時間をとって自分の人材育成知識とスキルを高めるようにしましょう。
そうすると自分だけではなく、全従業員のより良い人材育成につながるためインパクトが大きいです。頑張ってください。

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