ITエンジニアが足りない。「海外エンジニア」と「外部人材」によるエンジニア採用とは。

こんにちは、株式会社コーナー 代表取締役の門馬(もんま)です。
前回は、より成果につながる外部人事活用方法について市況感も踏まえて解説しました。当社は、「人事・採用領域に特化したパラレルワーカーのシェアリング事業」を展開する中で、ITエンジニア採用に関するご相談も日々多く寄せられています。そこで今回は「海外エンジニア」に視野を広げて採用成功につなげた企業事例についてご紹介したいと思います。

前回:増える外部人事活用(複業・フリーランス)。失敗しない企業活用とは。

目次

  1. 「エンジニア不足」の現状と背景
  2. エンジニア不足解消の一手「海外エンジニア採用」
  3. 海外エンジニア採用を「外部人材活用」で実現した事例
  4. まとめ

「エンジニア不足」の現状と背景

人材不足による採用難が叫ばれる中でも、特に難しいとされているのが「ITエンジニア」採用です。経済産業省の発表によると、2030年には最大で79万人ものIT人材が不足するとの試算結果が出ているほど人材不足が顕著な領域です。

出所:IT人材需給に関する調査(概要)/経済産業省

転職サービスdodaが発表したデータにもその難しさが表れています。2024年3月時点におけるITエンジニアの転職求人倍率は12.27倍。全体平均の2.77倍と比較しても群を抜いて高く、他職種を圧倒している状況です。コロナ禍でやや落ち着いたものの、その後は右肩上がりで転職求人倍率が上がっている様子も見て取れます。

出所:転職求人倍率レポート(2024年3月)/doda

こうしたITエンジニア採用難の背景には、少子高齢化による労働人口減少(75歳以上の人口が全人口の約18%、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となる予測)の影響も大きいですが、主だった要因としては「IT市場の急激な拡大」があります。(※以下市場拡大しているIT市場のデータの一部)

出所:情報通信白書(令和5年版)/総務省

国や自治体が対策に乗り出す

前述した労働人口の減少を受け、DX活用による生産性向上はどの業界・企業においても避けて通ることができない領域であることは間違いありません。実際にICT市場の動向も軒並み前年比を超える成長を見せており、国としてもICT政策として多用な取り組みを行っています。

<総務省におけるICT政策の主な取り組み状況>

  • デジタル⽥園都市国家構想の推進
  • 2030年頃を⾒据えた情報通信政策の在り⽅に関する検討
  • デジタルインフラの整備・維持、安⼼性・信頼性の確保
  • 安⼼・安全な利⽤環境の整備
  • 5Gの普及・展開
  • 放送の将来像と放送制度の在り⽅の検討
  • 放送ネットワークの強靱化、耐災害性の強化
  • 情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保
  • サイバーセキュリティ⼈材の育成
  • 社会・経済的課題の解決につながるICT利活⽤の推進
  • 誰もがICTによる利便性を享受できる環境の整備
  • Beyond 5Gに向けた研究開発と実装、国際標準化
  • 我が国のICT分野における国際競争⼒強化と世界の社会課題解決への貢献
  • デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り⽅の検討

参照:情報通信白書(令和5年版)/総務省

他にも、一般財団法人GovTech東京(東京都100%出資)が2023年9月1日に立ち上がり、東京都や都内区市町村の自治体・民間企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を開始しています。提供サービスとしては大きく6つで、どれも東京都との協働体制が組まれています。

出所:GovTech東京 Webサイト

エンジニア不足解消の一手「海外エンジニア採用」

前述したような市況感のため、ITエンジニア採用においては「数少ないエンジニアを各社が取り合っている」状況が続いています。従来の採用手法(人材紹介・求人広告など)はもちろん、ダイレクトソーシング(企業が求職者へ直接アプローチする採用手法)や採用を目的としたオウンドメディアの運営など、ありとあらゆる採用手法で事業に必要なエンジニアを確保しようと激しい競争が繰り広げられている形です。

それだけではありません。自社採用力の強化を目的に人事制度の改定に乗り出す企業も多くあります。具体的には、報酬水準の見直し、リモートワークなどの働く環境整備、リスキリング機会の提供などが該当します。各社のDX推進によって、ITエンジニアに今までとは異なるスキル要件が求められるようになり、従来の報酬制度だけではカバーできなくなったこともこうした動きを後押ししているように感じます。

ただ、こうした取り組みも「国内の数少ないエンジニアを取り合う構図」を変えるほどではありません。そんな中で新たな採用手法検討の必要性に迫られた結果、注目度が高まっているのが「海外エンジニア採用」です。

日本が円安傾向の中でいかに海外人材を採用し、定着できるかが課題

日本は残念ながらIT分野では先進国に遅れを取っていると言われており、先端技術に関する論文も海外研究者によるものが多いなど、最新トレンド情報は海外から取得することが大半です。また、賃金面でも大きな差があります。
OECD(経済協力開発機構)の2021年統計によると、ITエンジニアの平均年収は米国が7万ドル台後半、ドイツが約6万ドルなのに対して、日本は4万ドル台前半と大きな差がありました。

しかし、近年は日本でも賃上げの動きも活発であることから、この差が徐々に埋まりつつあります。加えて、アニメーションなどの文化観点、治安・安全面などの生活環境の良さなどを理由に日本で働くことを希望するエンジニアも増えていると聞きます。労働人口が減り続ける国内市場だけで考えるのではなく、世界市場に目を向けることがこのITエンジニア採用領域においては今特に求められていると言えるでしょう。ただし、近年の円安傾向もあるので採用先の国の範囲はより広げていく必要があると考えています。

出出出所:海外 IT 人材採用・定着ハンドブック/厚生労働省

なお、海外エンジニア採用を実現する上では言語や文化の壁、雇用に関する各種手続きなど、クリアしなければならないことも少なくありません。海外エンジニア採用・定着を進めていく上では、上図のような取り組みが必要になってきます。

海外エンジニア採用を「外部人材活用」で実現した事例

「海外エンジニア採用が有効だ」ということは理解できても、どう実現したらよいかをすぐにイメージして行動に移せる企業は多くないはず。なぜなら、採用担当者自身に海外人材の採用経験がないことが大半だからです。

こうした課題を「外部人材活用」で解決した企業があります。静岡県浜松市で創業した株式会社SPLYZA(スプライザ)です。アマチュアスポーツ領域のIT活用を事業テーマに、選手自ら課題発見・解決までできる映像分析ツール「SPLYZA Teams」、手軽にできるAIマーカーレス動作分析アプリ「SPLYZA Motion」などを提供しています。

同社が拠点を構えたのが地方だったこともあり、創業当初からエンジニア採用には相当苦戦します。初めての社員採用をWantedly上で行った際にはなんと応募ゼロ。採用なくして事業拡大もできない状況を受けて新たな採用手法を検討した結果、早くから「海外エンジニア採用」に舵を切り、母集団形成と採用力向上に成功しました。この成功要因は大きく2つあります。

(1)応募条件に「日本語力」を含めなかったこと

創業メンバー3名のうち、1名はアメリカ人エンジニアの方でした。そのため、新たに入社いただく海外エンジニアが仮に日本語が話せない方であっても問題はなく、「日本語ができなくてもOK」の条件で求人を掛けられたことが大きなアドバンテージになった形です。実際にLinkedInやStack Overflowなどの採用サービスを使用することで、世界中の優秀なエンジニアから短期間で何十人も応募してもらうことができました。

(2)海外エンジニア採用に長けた「外部人材活用」を実施したこと

創業メンバーの中には人事経験者がおらず、ましてや海外エンジニア採用については未知の領域でした。加えて、少人数のスタートアップ企業だったこともあり、専任の人事担当者を配置するほどの余裕もありません。海外エンジニア採用の知見も採用に割く時間もない──そんな窮地に立たされた結果、行きついたのが「外部人材活用」でした。結果的にアメリカの企業で人事を手広く手伝っていた方にジョインいただき、海外エンジニア採用・定着を進める上で必要なポイントを押さえた上で採用活動を進めることができました。
今では静岡県浜松市に本社を構えながらも、大分県や和歌山県、中にはインドに住みながらフルリモートで働いている海外エンジニアの方も在籍するような幅広い地域での組織体制となりました。

まとめ

従来の手法だけでは解決が難しいことでも、「海外エンジニア採用」のような新しい方法であれば活路を見出せることが多くあります。
今回ご紹介したポイントや事例を参考にしながら、自社にあった採用の方法を見つけてみてください。その際、「社内にノウハウがあるメンバーがいない」「リソースを割くことがどうしてもできない」などのお悩みがあれば、ぜひコーナーにご相談ください。課題に合わせた適時適量な業務支援をお届けします。

次回は、多くの企業が陥りがちな人事データ活用の「落とし穴」と「活用パターン・事例についてご紹介します。

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