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見えてきた2024年新入社員の傾向と今後の対策
多くの人材育成担当者の方は、配属の準備とそれまでの研修・個別フォローを通じて、新入社員研修が最終コーナーを回っているころだと思います。
今年の新入社員は、昨年5月の新型コロナ感染症の5類移行によりパンデミックが落ち着いてから最終学年を迎えました。彼らは入学後初めて自由なコミュニュケーションを経験し、就職活動を経て入社し、新入社員研修を体験することができています。
私は4月9日〜4月26日までの期間に講師として約2,000人の新入社員研修を担当してきました。
その経験から見えてきた今年の新入社員の傾向と、現時点でフォローまたは強化が必要と思われる分野についてお伝えします。
目次
1.2024年の新入社員研修の概要
2024年4月に行った新入社員研修の概要です。研修の狙いとして短時間の講義と多くの演習を組み合わせることで、新入社員の特性と習得度を把握できました。また、複数の講師による研修によって、短期間で数多くの新入社員と接することができました。
・担当した研修1回あたりの受講数は、最低65名、最高370名、平均220人でした。
・時間配分は演習70%、講義30%でした。
・細かくフォローするために、受講者30人に対してサブ講師1人を配置しました。
・私は全体の進行の担当でしたが、今回のやり方により、リモートでも対面でも全受講者の進捗と習得の様子を確認しながら進めることができました。
2.研修の実施形態
今年の新入社員研修は去年と同じように対面研修、リモート研修、ハイブリッド研修の3パターンで行いました。
・対面研修 :3回、275名
・リモート研修 :2回、475名
・ハイブリッド研修:4回、1230名
バンデミックの4年間を過ごした去年の新入社員に比べて対面研修は極めてスムーズでした。リモートは今までどおり受講者も慣れていて問題はありませんでしたが、呼びかけてもPCのカメラをつけたがらないのは特徴的でした。
ハイブリッドについてこの数年で運営側が安定してきており、大人数で高い質の研修を提供するために効果的でした。
参考:「新入社員研修から見えた今年の傾向と今後の対策 (2023年4月)
3.研修内容
研修内容として主にこの3つを実施しました。
1) マインド研修 :4回 510名
2) ロジカルコミュニケーション研修:4回 1230名
3) イノベーション研修 :1回 240名
【マインド研修】
中には主体性向上という研修と配属直前対策として回復力やレジリエンスを高める研修を含みます。
【ロジカルコミュニケーション研修】
名前のとおり論理思考の基本ロジックを学び、実践により分かりやすく伝えるコミュニケーションスキルを身につけるという内容です。
【イノベーション研修】
デザインシンキングの手法を学び、演習により新しいビジネスチャンスを見つけたり、新鮮なアイディアを出して実行に結びつけるスキルを身につけるという内容です。
4.受講態度
受講態度はとても良く、どの研修でも受講者は素直で積極的でした。バンデミック中の過去3年に比べて受講者は心の余裕があるように感じました。「態度は前向き、活発に話し、集中力は全体的に良い、ストレスがあまりない」ように感じました。
5.習得度
受講態度は良かったのですが、研修内容の習得度は全体的に普通で、受講態度ほど良くありませんでした。研修内容や能力別に細かく見てゆくと興味深い傾向が見えてきました。
その能力分野別の印象とコメントを表にまとめました。
強化ポイント | 印象 | コメント |
主体性向上 | 前向き、現時点では良い | この数年より明るくて前向きで心理的な安全性があるように見える |
伝達力 | 積極的だがスキルは高くない | コミュニケーションに対してとても積極的で発言は多いが、分かりやすく話すテクニックに欠けている |
論理的思考 | パンデミック前より弱い | この1~2年ぐらいロジカルシンキングが課題になってきているが、今年もその傾向がある |
回復力 | 柔軟に考える、現時点では良い | 職場で起こり得る問題について柔軟に考えることができて良い(でも配属後に問題に直面してみないとわからない |
個々のコメントの詳細を以下にお伝えします。
主体性向上
パンデミック前から新入社員の最大の課題は主体性でした。今年の新入社員は前向きにコミュニケーションをしますし、主体性発揮が重要というメッセージに対しての違和感も抵抗感もありません。その意味ではマインド的には良く、パンデミック中の新入社員より不安はないのですが、具体的な演習でのできは特に良くも悪くもなく、極めて普通でした。そのせいか例年より「極めて良い・少し心配」という目立つ人が少ない気がしました。
ただ、配属後にどこまで主体性を発揮できるかについては様子を見ないとわからないというのが正直なところです。
参考:“復活したマインド強化研修”の3分野でよくある問題と解決ヒント
伝達力
コミュニケーションについてはとても積極的な新入社員が多かったです。ディスカッションにすぐに入るし、場が温まるまで時間がかからないし、演習中に楽しみながら話すし、休憩時に明るい雰囲気で交流します。これはここ数年の受講者との大きい違いです。 一方、コミュニケーション能力やテクニック(分かりやすく話す、ロジカルに伝える、複雑な資料を簡潔明瞭に説明するなど)はあまり強くありません。
配属後に配属先からよく聞いていたコミュニケション(報・連・相)に対するクレームの重点が量(頻度が低い)から質(話が長い、まとまっていない、ロジカルじゃない)に変わる可能性があります。
論理思考力
コミュニケーションの積極性と違って、論理思考力は結構低い印象です。情報整理が遅くて時間があっても正解に至らない新入社員が今年は多かったです。シンキングができても話す時にその内容を分かりやすく伝えられない人も多かったです。
この1-2年に論理思考力と問題解決力に課題があると聞くことが多かったのですが、今年もそうでした。
そこでお勧めすることは苦手なロジカルシンキングを徹底させることではなく、新入社員の好きなコミュニケーションを強化することが先決です。まず分かりやすくロジカルに話せるようにして、その自信と力を身につけてからシンキングに移ったほうがスムーズです。
回復力
10年前ぐらいから配属直前対策の研修をやらせていただいています。その背景には新入社員導入研修中に積極的に頑張って立派に育つ人は多いが、配属後にちょっとしたトラブルや問題に直面すると過剰なストレスを感じる、必要以上に落ち込む、大きいダメージを受ける新入社員が多くなったという問題があったからです。
この研修では、職場でどのような問題がよく起きるのか、その原因は何か、どのように解決すれば良いかについて、複数の典型的なケースでディスカッションをします。
そしてそのケースごとに対処する具体的なやり方と心構えを養うということが目的です。
今年の新入社員の特徴は配属後のトラブルについて、とても興味はあるが怖がっていないし、原因と解決策について柔軟に考えられていました。
これに対して過去の新入社員には、問題を考えるだけでストレスを感じて、固まって冷静に原因分析と解決案を考える余裕のない人が多かったです。
そう考えると今年の新入社員はある程度の心理的な安全性があるように見えますが、最終的に配属されて職場で問題に直面しないとどのぐらいうまく対応できるかはわかりません。
6.今後の新入社員研修企画へのアドバイス
狭い範囲で考えると、今年の新入社員はこの数年のパンデミック中に入社した新入社員と比較すると少し余裕があり、コミュニケーションが積極的で、マインドも前向きです。
しかしもう少し広く考えるとデジタルネイティヴの世代的な特徴はもちろんあります。
今年もそうですが、今後の新入社員研修を企画する時の気を付けるポイントとちょっとしたアドバイスは以下のとおりです。
ポイント | コメント |
環境によって 集中力が切れる |
集中力が低下するリスクが高いのは、朝の時間帯、月曜日、昼食直後、雨の日、部屋が暗い・暖かいなど特定の場合に集中している →これを分かった上で環境のセッティングと研修設計をする |
理解度の低い時がある | ディスカッションで積極的に話すが学ぶポイントからずれている場合がある →アウトプットさせて個人別に理解度が確認できるように工夫をする |
すぐ飽きる | 常に刺激と変化を求めて、それがないとすぐ飽きる、集中力が低下する、研修効果が低くなる →演習中心にする:講義1に対して演習3の割合を目指して、一つの講義時間を15分未満にする →演習のバリエーションを増やす:個人ワーク、ディスカッション、ロールプレイ、グループワーク、共同作業、など できるだけ多くの演習を組み合わせて常にフレッシュな気分にさせる →休憩を多く入れる:1時間ごとに10分がお勧めだが、場合によっては45分間に対して7分も良い。 何があっても休憩なしで90分以上やることはNG(人間であることを忘れない) |
7.新入社員についての今後のウオッチポイント
今年の新入社員について評価はおおむね高くて、特別な心配はありません。パンデミック中に入社した新入社員よりは環境的に恵まれていて、そのために立ち上げは比較的にスムーズだと予想しています。その中で気になることや今後見た方が良いことをあえてリストアップするとこのような内容になります。
ポイント | コメント |
個人のスキル不足 | 一部の新入社員はグループワークに積極的に参加するが、スキル未熟の人がいる →個人にアウトプットのわかる資料提出、ロールプレイ、プレゼンなどをさせる |
自分のわからないことに気づかない | 当たり前だが、過去に当たり前だった基本知識の抜けているケースがある →堅苦しくない形式で知識と理解を確認する。例:クイズ番組、小テスト、ロールプレイ、情報収集ゲーム、コンテストなど |
職場の厳しさに直面してショックを受ける | 配属後にならないとわからないが厳しい職場で落ち込む、非常に苦労することがある →メンターと上司を巻き込んで成長支援できるようにする。定期的に新入社員に個別ヒアリングやコーチングを行う。新入社員同士のコミュニティーを作る。フォロー研修でサポートする |
8.まとめ
新入社員研修の大切な役割の一つは自由度の高いマイペースの学生をしっかりした社会人にさせることです。そのために厳しい新入社員研修は昔から多くありました。さすがに昭和時代のパワハラ的で異常な新入社員研修は少なくなりましたが、新入社員研修のあり方についての考えも企業の置かれた立場を反映してさまざまです。
結果、堅苦しい、緊張する、厳しい研修をやっている企業もあれば、逆にもう少し柔らかい雰囲気の研修をやっている企業もあります。
正解はありませんが、今年新入社員研修を講師としてお邪魔した経験に絞って言うと、少しリラックスした雰囲気の中で安心して交流できるスタイルの企業の新入社員の態度、集中力、習得度は明らかに良かったです。
逆に厳しい新入社員研修を実施している企業だと受講者は怒られないように黙る、言われたことしかやらない、正解がわからないとやってみないのように守りに入って、結局習得度が低くて成長が止まります。
効果的な新入社員研修のスタイルは何か
今後の効果的な新入社員研修スタイルはおそらく安心できる雰囲気で職場の厳しさについていけるための研修内容と心の準備をさせるスタイルになると思います。
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