ITを活用して企業業績を上げられる人材を作る!
第1回 ITコーディネータ資格制度とは?
1.はじめに
企業の成長、業務の改善、業績の拡大など、課題解決のために、いまやITの活用は欠かせないものとなっています。
最近では、様々なIT機器やソフトウエアの利用についても、スマホやクラウドサービスの急速な普及・浸透により、数年前と比べても格段に安価でかつ手軽に導入できる環境が整ってきました。
ただ、そうは言っても、職場によってはITに詳しい人材が不足していたり、いたとしても、個別の業務課題をどのようにIT化で解決するかというプロセスを、関係する部署と連携してリーダーとなって進めていくのは至難の業です。
こうしたとき、外部のニュートラルなIT専門家にコンサルやアドバイス依頼する方法もありますが、できれば、社内で才能のある人をITの活用ができる人材に育てて、自社で安心して継続的にITを活用できるようにしたいものです。
2. “ユーザーの立場でIT活用を推進する人材”を育てる資格
かつて、“失われた10年”といわれた時代がありました。わが国においては、バブル崩壊後の1993~2002年を指すともいわれていますが、 その時代の経済低迷の理由の一つにIT投資の失敗が挙げられています。
ITベンダーはITユーザーの 経営や業務に関する知識が乏しく、ITユーザーはITベンダーの製品やシステム開発についての知識が乏しいため、IT化の現場では極めて非効率なIT投資が行なわれていました。こうした状況を打破するため、 通商産業省(現、経済産業省)産業構造審議会が、ITユーザー、ITベンダー双方の事情と役割を理解し、経営者(ユーザー企業)の立場に立って経営とITを橋渡し、真に経営に役立つIT化を支援できる人材が必要であるの提言を打ち出し、“ITコーディネータ”という資格制度が誕生しました。
3.ITコーディネータ(ITC)は経済産業省推進資格
ITコーディネータ制度は、2001年2月に通商産業省(現、経済産業省)が推進する国家プロジェクトの一環として、我が国産業の国際競争力を高めるため、経営に役立つIT投資を支援できる人材を育成する目的で創設されました。
2017年4月時点で、経済産業省の推進資格として、約6,200名のITコーディネータ資格者(ITC)が全国各地で活動しています。
4.どんな人が資格を取得しているか?
ITコーディネータ資格者には、様々な立場の方がおられます。それぞれが、資格取得を通じて学んだ知識やスキルを自分のビジネスのブラッシュアップに活かしており、以下はその一部をご紹介いたします。
◇ “経営”に詳しい方(経営者、中小企業診断士、税理士、経営コンサルタントなど)
企業の経営戦略の実現にはITの有効活用が不可欠となっている現在、経営者自身がITコーディネータとなり、自社の改革・イノベーションを実現すればまさに鬼に金棒です。
また、外部の専門家としての役割を担う、中小企業診断士や税理士、公認会計士などの経営アドバイザーも、ITコーディネータ資格を取得しています。中堅中小企業の支援を行うにあたり、経営の専門領域に加え、自らのIT活用の実践力を向上させ、経営戦略策定の中に、顧問先企業の実情に合ったITを適切に組込む提案を行うことで仕事の幅を拡げています。
“IT”に詳しい方(ITコンサルタント、IT技術者、情報システム部門担当者 など)
昨今のITの急速な進歩やイノベーションの進展は、まさに、第4次産業革命を思わせる出来事が満載です。しかし、“ITありき”のIT化では、かならずしも企業経営課題の解決にはなりません。
本当に経営に役立つIT化(投資)とは、経営戦略の実現を描いたシナリオと一貫したプロセスの中に、社員のレベルに合った必要なIT活用を織り込んでいくことにほかなりません。多数のITの専門家の方々がITコーディネータ資格を取得する理由はそこにあります。
資格取得の過程で学ぶ知識体系や一貫したプロセスを極めることで、導入成果を明確に示せるIT化・ソリューションの提案・提供が可能となり、経営者と真正面から経営の会話のできるIT専門家として顧客や所属企業の期待に応えることができるのです。
これから伸びていこうとする方(若手システム企画担当、人事・人材開発、営業など)
最近の傾向としては、30代の若手や女性の取得者が増えてきており、企業においてITの活用ニーズが急速に高まってきていることを示しています。
この中には、将来のCIO(最高情報責任者)候補として会社から指名された方、また、自らスキルを磨いて現在の業務のレベルを上げるため取得を目指した方など、ITコーディネータ資格者の約7割~8割は企業に勤務する方が取得されています。
具体的には、社内システム部門の企画担当者や、業務改革を推進する人事総務部門、人材開発を担当する人事部門、また、ITソリューション営業の方や、コンサルタント、SE、経営企画部門、など、業種に関わらず幅広い職種の方が取得されています。
5.資格の取得方法は?
ITコーディネータ資格を取得するためには、「ITコーディネータ試験」に合格し、且つ、「ケース研修」を受講修了したのちに、ITC資格認定登録を行うことが必要です。
※ITC試験受験とケース研修受講は、どちらが先でも結構です。
ITコーディネータ試験(試験内容と勉強の仕方など)
<試験内容>
試験には、どなたでも受験できる「ITコーディネータ試験」と、協会が指定した専門的な資格を保有している方が受験できる「専門スキル特別認定試験」の2種類があります。
試験の実施は、年間2回(8~9月、2~3月)、コンピュータで実施するCBT方式(Computer Based Testing)で行っており、受験申込時に、試験日時、会場(全国140か所)を自由に選択することができ、合否判定もその場で判明します。
<勉強の仕方>
試験問題は、ITコーディネータ協会発行のテキスト「IT経営推進プロセスガイドライン Ver.3.0」および、「ITコーディネータ実践力ガイドライン Ver.2.1」 に基づいて出題されます。
勉強の仕方(例)としては、当協会ホームページに掲載されているサンプル問題(20問)を解いてみたり、受験対策講座(eラーニングもあります)の受講、以下にご説明する「ケース研修」を先に受講するなどの方法があります。
詳細は、当協会ホームページ「ITC試験」をご覧ください。
ケース研修(研修内容と特長)
<研修内容>
ケース研修は、ITコーディネータを目指す方が、ITコーディネータ制度のバックボーンである「IT経営推進プロセスガイドライン」の内容を学び、現場で活躍するための実践力を習得する、ケース・スタディ、演習形式の集合研修(6日間)とeラーニングです。
研修は、年間2回(6~9月、11~2月)、全国主要都市において当協会の指定する研修実施機関が開催します。各地域で、複数のコースが開催される場合がありますので、自分の希望する6日間の日程に合わせて選択することができます。
<研修の特長>
ケース研修は、「IT経営推進プロセスガイドライン」で示す「IT経営認識領域(A)」と「IT経営実現領域(B)」におけるITコーディネータの実践活動について、モデル企業の事例(ケース)を題材として、「グループ討議」や「ロールプレイ」を行いながら模擬体験していただくものです。
プロセスを進めるにあたって有用な方法論や、ツール類(バランスド・スコアカード、経営成熟度モデルなど)をリファレンスとして使って課題に取り組むことにより、一貫した問題解決能力を体系的に習得できます。
6.資格取得後の学習・実践と資格更新について
ITコーディネータ資格の特徴は、資格を取得した後も、ITコーディネータとして必要な知識とスキルを維持・向上するために、継続学習や実務活動を行い、毎年資格更新をすること義務付けていることです。
そのために、当協会では、様々なITコーディネータ資格者のニーズに合わせた、実践型研修や、セミナー、eラーニングなどを開発しご提供しています。また、ITコーディネータ資格者が全国各地で活動する200以上の組織を立ち上げており、中でも法人格(NPO法人、一般社団法人、協同組合など)を有する70以上の組織では、地元自治体や民間企業に対するIT関連の支援活動や普及啓発のための研修・セミナーなども行っています。
資格を取得されましたら、是非、地元のITコーディネータ組織に加入して様々な業種や職種の先輩の方々と共に、知識や人脈を広げ、“自分磨き”の糧にしていただくことをお勧めいたします。
7.次回以降の予定
最後までお読みいただきありがとうございます。今回はITコーディネータ制度のご紹介をさせて頂きました。
本連載は4回の予定で、次回以降は以下のような内容を計画しております。
◇第2回:「ITコーディネータ資格の活用事例について」(資格取得のきっかけ、活用方法など)
◇第3回:人事部門(管理部門)の生産性を向上させるIT活用
◇第4回:サイバーセキュリティの脅威に対応するための、基本中の基本と、人材育成のお話しなど
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