マネジャー昇格3年目までに覚えたい“普段づかい”のマネジメント 第6回
同僚のマネジャーと話していますか?
この連載も最終回となりました。ここまでお読みいただきありがとうございます。
忙しいマネジャーの皆さんに向けて、客観的にご自身の状況を捉え、日常の中でちょっとしたことを変えてみることで、前進感を持っていただければという思いで連載をスタートしました。
何か1つでもヒントになることがあれば幸いです。
一方で、考えなければいけない、やらなければならないことが増えたな、とお感じになった方もいらっしゃるかと思います。
すでに多くの業務をこなしている中では、1つでも2つでもこの連載中にお示ししたヒントを試していただくことが、まず重要かと考えています。
ところで、マネジメントに向き合っていると「本当にこれでいいのか?」「もっといいやり方があるのではないか?」という疑心暗鬼にとらわれることもあるでしょう。
気づけば、一人で悶々と考えている‥という状況になっていないでしょうか? 今回は、「一人きりでマネジメントしない」をテーマに考えてみたいと思います。
参考:
第5回 1on1で何を話している?
第4回 年上の部下を持ったらどうする?
第3回 マネジャーとしていかに良いチームを作るか?
第2回 第2回 煩わしい目標設定をマネジメントに生かすには?
第1回 マネジャーになってからのこと、ふりかえってみませんか?
目次
対話の機会が不足している
実は、現代のマネジャーは「マネジメント」について、他者と対話する機会が圧倒的に欠如しているのではないかと考えています。
とあるマネジメント研修の場面を切り取ると、受講者の方がこんな発言をします。
「今まで自分だけの悩みだと思っていたけれど、みんな同じような場面に直面してそこで試行錯誤していることが分かった。多くのヒントが見つかった」
「これまで、業務内容の相談しかしてこなかったが、マネジメントについて一緒に考える仲間が増えたようで嬉しい」
など、「これからはお互いにもっと話したいと思った」という感想が出てくることが大半です。
これが何を意味しているかというと、日常的には、「今」「目の前の」課題解決のために「限られた時間で」議論するという場面が、マネジャー同士にとっては圧倒的に多いのです。
同僚のマネジャーを協力者に
時には、利害が一致しない場合もあり、同僚のマネジャーを「できるだけこちらの有利になるように調整をする相手」「仕事を押し付け合う相手」という、対立構造で見がちです。
しかし、そのようにとらえてしまうと、協力体制を築くことが難しくなり、ひいては自分のマネジメントで及ぼせる影響の範囲も狭まってしまいます。
同僚のマネジャーを交渉相手ではなく、協力者・支援者とみることができるか? お互いにいい意味でリソース(資源)としてみることができるか? ということは精神衛生上も非常に大事です。
いざという時に頼れる、マネジメント上の悩みを相談することができるという同僚のマネジャーと、どれだけ関係性を強固にできているか? ということは自分の仕事をしやすくするうえでも、自分のメンバーが動きやすくするうえでも、大変重要な点と言えるでしょう。
お互いのマネジャー同士の意思疎通ができているな、と感じるとメンバーとしては、関連部署と非常に仕事を進めやすいものです。
他のマネジャーとの接点
それでは、具体的にどんな場面で、他のマネジャーと接点を持っておけるといいでしょうか? いくつか例示したいと思います。
(1)関連する機能のマネジャーと「今後の課題やテーマになりそうなこと」について意見交換してみる
連載第一回目で触れたように、マネジャーの仕事はどんどん複雑化しています。
取り組むべき課題は日々刻々と変わる、2週間前と状況は一変している、といったことも起きるはずです。
その際に、自部署の情報や視点しか持ち合わせないと、変化に振り回されることになります。
そうならないために、自部署と機能的に関連のあるマネジャーと日常的に情報交換をしておけるといいでしょう。いわゆるバリューチェーンの前後を担う組織、などが分かりやすいかと思います。
「どうやら競合がこのように動いているので対策を打たなければならない」「経営層の考えをこちらの部署の視点から見ると・・・」など、多角的に現状をとらえるための情報が豊富になります。このように、同じ視界を持てるようになっておくと、いざ調整場面になった時にWin-Winに向けたコミュニケーションがとりやすくなります。
(2)同じ部門など比較的近いマネジャーとメンバー育成について意見交換する
次に、比較的近しいマネジャーとの接点のアイデアとして、お互いのメンバーをお互いに気を配り、育成しあうという協力体制を築くことが考えられます。
リモートワークやプロジェクト中心の仕事となり、マネジャーがメンバーの様子を詳細に把握できない場合も増えてきていますので、複数の目でもって育成を考えて関われる方が望ましいと言えます。
とはいえ、いきなりピンポイントで関わるというのは簡単ではありませんので、日ごろからお互いのメンバーの様子を共有しておくなどの下準備は必要でしょう。
例えば、評価のすり合わせ会議を行っている場合などは、評価結果のすり合わせに留まらず、お互いのメンバーを今後どのように育てていきたいか、現状感じている課題は何か? などの会話をひと手間加えてしておくと、より関わりやすい状況になるでしょう。
自分からのフィードバック(褒めるも含めて)よりも斜め上のマネジャーから言われた方が時には効果的な場面もあるはずです。
(3)自分の興味関心のある学習テーマでコミュニティをつくる
やや直接の業務から外れた例となりますが、自身がこれから学びたいことや探求したいテーマについて、同じような興味を持つ同僚マネジャーと勉強会を実施するなど、学びのコミュニティをつくっておくのも効果的です。
お互いインプットしつつ、何かの拍子に実務に生かすことができ「では、一緒に企画してみましょう」という流れになるかもしれません。
何より、緊急度が高くやらなければならないこと以外の時間となり、仕事における楽しみの創出に有効です。こうした、「構想を温める」機会や時間もマネジャーが疲弊しないためにはポイントになると考えています。
以上、3つお伝えしました。すぐに結果に直結するようには見えない動きだな、という感想もあるかと思います。
しかし、現状の働き方を変え、中長期的にマネジャーである皆さん自身も楽しく成果を上げるということに向けての種まきだと思いながら、試みていただければと思います。
上司とも協力関係を
ここまで同僚のマネジャーとの関係について考えてきましたが、1点付け加えるとすると、実は「上司」も含めて「マネジメントを行うチームである」という考え方をとることもできます。同僚のマネジャーと同列に上司もとらえてしまうのです。
指示や命令をしてくる相手ではなく(現実的な役割としてはそういう面が当然ありますが)、課題に一緒に取り組む仲間・チームであると考えられると、日々のコミュニケーションのあり方も変わってくるのではないかと思います。
上司も皆さんと同じように、組織からの要望を抱え、日々試行錯誤しているはずです。
その上司と同じ視界で協力体制を築けた方が、結果的に組織としてはうまくいくのではないでしょうか?
同僚のマネジャーと接するような気持ちで、上司の問題意識を聞いてみるなど、少し業務内容を超えたコミュニケーションを仕掛けてみても良いと思います。
おわりに
さて、いよいよ最後のメッセージとなります。
ちまたでは、マネジャーになりたくない、大変だという声が大きくなっているように感じます。そのような中で、マネジメントを担われている皆さんには最大限の敬意を払いつつ、ぜひマネジメントを楽しんでいただきたいと考えています。
ご自身のマネジメントを通じて実現したいことは何か? どんな場面でマネジャーとしての喜びを感じるか? などを折に触れてふりかえっていただき、自分にとっても心地の良いマネジメントの在り方を見出していただけばと思います。
長期間にわたり、お付き合いいただきありがとうございました。
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