変化の時代の人材育成

若手社員が画期的な成果を出す3ステップのチャレンジ目標(ハイブリッドワークネイティブ/AIリーダー/ラーニング達人)

これまで人材育成担当者からよく耳にしたのは、「3年間で社員を一人前に育てる」という若手社員育成の目標です。それ自体は悪くありませんが、最近の生産性向上の波、環境変化のスピード、テクノロジーの進化を考慮すると、今や3年間も待ってはいられないと強く感じます。企業の競争力を保つためには、もっと早いタイミングで若手社員を積極的に成長させ、画期的な成果を出させることが必要です。
今回は、そのために必要な人材育成プランをお伝えします。

目次

  1. 今後も必要なニーズの確認と必要な研修のキープ
  2. 新たに出てきたニーズの背景と新しい研修チャレンジ3ステップ
    ・1年目社員:ハイブリッドワークネイティブ 多様なワークスタイルに適応する人
    ・2年目社員:AIリーダー 新しいことを先頭に立って始める人
    ・3年目社員:ラーニング達人とは「できる」まで「やる」人
  3. まとめ

1. 今後も必要なニーズの確認:必要な研修はキープ

ニーズ 育成対策
新入社員
新入社員が受身で、職場で自ら積極的に行動を起こさない 導入研修:主体性向上、仕事の進め方などの基礎研修と、その前提となるコミュニケーション研修
研修形態:受講者主体の演習中心の研修にする(受身的にさせない)
職場で何をすれば良いか分からないのに、遠慮して上司に聞かない 配属直前研修:ビジネスマインド(応用編)
配属後に上司とのコミュニケーションが少ないのでOJTがうまく機能しない 配属後:上司とメンターがしっかりした成長支援を提供できるようなサポートの仕組み
入社後半年経っても明確な成長が見られない
他の新入社員とのつながりが弱くて、人間関係が構築されない
秋に実施するフォロー研修:振り返り・目標設定・動機付け、個別フォロー
1年間の成長と成果が自分でもよく分からないし、周囲から見ても同様
2年目に向けての目標が曖昧で、モチベーションが低い
成果発表:プレゼンスキル、成果と成長の振り返りと比較、2年目に向けてのビジョンと実行計画
 
2年目社員
基本的なビジネススキルがまだまだ弱い(特にリモートワークの多い社員) 社会人基礎力の診断:改善が必要な分野に関して既存の育成施策でフォローする(例:eラーニング、OJT)
こなしている仕事の量が少ない
スピードが遅い
言われたことをやるが、+αの仕事をしない
実行力強化研修:仕事のスピードを上げ、量をこなすテクニック
モチベーションが低い、またはムラがある モチベーション向上研修:自分の強みを特定して、内向的なモチベーションを発揮させるテクニック
 
3年目社員
ヒューマンスキルが弱い(特に接点のない人や違う組織の人を動かすこと) 影響力強化研修:幅広いメンバーを無理なく巻き込んで動かすテクニック
今後の自分のキャリアが見えなくてモチベーションが下がる キャリアデザイン研修:自分の状況を的確に把握した上に自分のビジョンを描いて、キャリアプランを作る

新しいチャレンジの前に重要なことは、昔から必要であり今後も重要である若手社員のニーズと人材育成施策を再確認することです。実施に当たっては、新しい武器であるリモートと対面の良さをミックスさせて効果的に実施することが重要です。

上記のニーズと育成施策は基本的に変わりません。

2. 新たに出てきたニーズの背景と新しい研修チャレンジ3ステップ

さらに、最近新たに出現したニーズとその背景は次の3つです。

  • ハイブリッドワークの生産性向上
    さまざまなワークスタイルの混合であるハイブリッドワークでも高い生産性と強いチームワーク、さらには成長とイノベーションを実現する。
  • テクノロジー進化への追従
    AIをはじめとする新しいテクノロジーをタイムリーにマスターし、実務に活用する。
  • 環境変化のスピードに負けない
    速やかで激しいビジネス環境の変化に過剰なストレスを感じず、臨機応変に対応する。

入社直後からこの3つの目標に向けて取り組むと、若手社員は職場に潜んでいる悪い癖を覚えず、問題に真っすぐ向き合うようになるため、立ち上がりが非常にスムーズになります。さらに重要なことは、人数の多い若手社員が職場でこれらを実践し、多くの社員がそれを目撃することで、この好ましい新しい意識が組織全体に広まるという波及効果も期待できます。
年次ごとの育成施策にまとめると、以下のようになります。

目標 育成ポイント
新入社員
目指す:ハイブリッドワークネイティブ
キーワード:習得
・1年間で一人前にする
・ハイブリッドワークネイティブをつくる
2年目社員
目指す:AI リーダー
キーワード:定着
・実力診断と個別学習プラン
・AI リーダーにする
3年目社員
目指す:ラーニング達人
キーワード:展開
・レジリエンス強化、リスキル・アップスキル実現
・リバースメンター(*1)

*1:リバースメンターとは、若手社員がメンターとなって先輩社員や上司をサポートする役割を果たすという意味で、技術改革や環境変化が激しい時に役立った実例があります。代表的な例は1990年代のPCスキルや、2000年代前半のインターネットスキルです。

それでは、この新しいチャレンジを具体的に一つずつ見てみましょう。

1年目社員:ハイブリッドワークネイティブ 多様なワークスタイルに適応する人

ハイブリッドワークは元来、オフィスワークと在宅勤務の組み合わせを意味しますが、ここではより幅広く、多様なワークスタイルの混合という意味で使っています。

例えば
・アナログ、ヒューマン、ウェットなワークスタイルとデジタル、AI、ドライなワークスタイルの混合
・個人プレイとチームワークの混合
・正確性が求められる改善志向とスピード重視でイノベーション志向の混合

現時点では、このような多様なハイブリッドワークスタイルへの最適解やベストプラクティスは確立されていません。例えば、一部のベテラン社員はオフィスワーク以外を認めない一方で、在宅勤務に慣れてワークライフバランスを重視する社員はリモートワークを好んでいます。

しかし、幸いなことに新入社員は今までの経験が無い真っ白な状態です。ぜひその状態から効果的にハイブリッドネイティブを目指しましょう。

ポイント
<研修内容>
リモートツール(スラック、チームズ、オフィス365など)の利用テクニックおよびライティング
メールや文章だけでなく、各種ツールに合わせた最適なコミュニケーションのコツとツールを効果的に組み合わせるテクニック

<研修形態>
多様なスタイルに慣れるため、あえてハイブリッド研修を実施します。対面研修、リモート研修、少人数のグループでのリモート研修、およびその組み合わせなど。
多様なスタイルを経験することで、受講者はハイブリッドワークに慣れ、技能も自然と向上する

 

2年目社員:AI リーダー 先頭に立って新しいことを始める人

以前からAIというキーワードが注目されていましたが、ChatGPTのリリースにより多くの人がAIの実用性に加えこれまでの常識をひっくり返してしまう凄さを実感し始めました。
先日の広島サミットG7でも重要なテーマとなり、首脳たちが生成AIという用語を連発する様子は大きなインパクトを与え、もはや専門用語の域を脱したことを感じさせました。
しかし、ハイブリッドワークと同様に、企業レベルでもAIの利用方法はほとんどの企業でまだ定まっていません。この状態では、社内での普及は進みません。誰かが先に動いてリードする必要があります。
AIリーダーに適している人は、デジタルネイティブで、仕事の効率を本気で高めようとし、さまざまな実験をする時間と余裕を持っている人です。そう考えると、仕事をようやく覚えたばかりだが、そこで感じた従来のやり方の非効率性にまだ染まっていない2年目社員は最適です。ぜひ2年目社員をAIリーダーに育てましょう。

育成施策として注意すべき点は、教科書に沿った従来のスタイルでの研修はうまくいかないことです。AIは急速に進化しており、マニュアルや教科書が完成した時点で、既に内容が古くなっています。波打ち際でボードを抱えて波を眺めているスタイルではなく、波をかき分けて沖に進み、一息に波に飛び乗って岸に向かってゆくサーフィンスタイルのような、具体的には最新情報がリアルタイムに提供される柔軟な育成施策が適切です。以下のような要素を入れることをおすすめします。

ポイント
  1. セミナー:AIの基本をインプットする
  2. AIハイライト:受講者は関心のあるAI関連記事やブログを要約し、それが自社のビジネスにどうつながるかを簡潔にまとめて共有する
  3. AIプチ実験:受講者は自分の関心のあるAIツールを2週間程度使ってみて、業務での利用可能性やその理由などをわかりやすく報告して共有する
  4. ベストプラクティスの共有:受講者から得られた有益なノウハウを社内に広く展開する
  5. 成果発表:上記のプロセスを数回経た後、受講者は得られた結果や取り組んだこと、学んだことを上層部に発表する

このような取り組みの繰り返しにより受講者の能力も当然向上しますが、それ以上に組織全体に展開できる貴重なノウハウを獲得できます。

3年目社員:ラーニング達人とは「できる」まで「やる」人

3年目社員にとってのよくある課題は、自分の今後のキャリアが見えず、将来どうなるかが不明で、その結果としてモチベーションが低下することです。キャリアパスを頭で理解して自分のキャリアビジョンを描くという従来の研修だけでなく、激しい環境変化に対応できるようにレジリエンス(*2)を強化し、アップスキル・リスキルの能力を高めることが重要です。一言で言えば、ラーニングの達人を目指しましょうということです。

*2 :レジリエンスとは、心の回復力(精神的な強さの指標の一つ)を意味します。レジリエンスが強い人は、困難な問題や危機的な状況、ストレスに直面してもすぐに立ち直ることができます。

ラーニングのテクニックは大きく分けて4+1種類あります。それぞれのコツを実践しながら学ぶことで、成功体験と高い能力が得られます。

マインド育成 習慣化 知識取得 スキル定着 +プレゼンスキル
新しいことに積極的に取り組む姿勢と意欲をグロースマインドセットと呼ぶ。全てがここからスタートする。 意識的に頻繁に行い、継続することで習慣として身に付く。早期にマスターするとその後は楽になる。 知識習得のポイントはインプットした内容を忘れる前に長期記憶に移すこと。汎用的な知識は自分の仕事のどの部分で応用するかを決める。 取得したスキルを実ビジネスで使えるレベルにまで習得するために、実際に職場で繰り返し使用する。定着と行動変容を合わせて、わかりやすく一言で定着と呼ぶ。 プレゼンテーションのような頻度は高くないが重要なスキルを身に付けるためには、上司を巻き込んで練習する機会を作り、客観的なフィードバックを受け取る仕組みを作ることが要点。

ラーニング達人とは…「できる」まで「やる」人

  • 新しい知識を効率良く習得し、忘れないようにフォローアップして職場で応用する
  • 新しいスキルと習慣を身に付け、実際のビジネス場面で通用するレベルまで定着させる
  • 勇気を持って新しいことに挑戦し、小さな成功体験を積み重ねて自分のマインドセットを変える

繰り返し「やる」ことで「できる」ようになります。そのようなラーニング達人になるためには、以下のようなステップで行うことがおすすめです。

1カ月目
マインド育成
2カ月目
習慣化
3カ月目
知識取得
4カ月目
スキル定着
5カ月目
成果発表

内容:グロースマインドセット

ポイント:リスクを恐れない、挑戦し続ける、失敗を学びにする

成果確認:報告

内容:業務で役立つ習慣

ポイント:繰り返し反復練習、継続

成果確認:研修でのロールプレイと報告

内容:業務で役立つ知識

ポイント:内容の習得、暗記と理解、応用

成果確認:
知識テスト

内容:プレゼン、ティーチング

ポイント:練習の機会づくり、試す、フィードバック

成果確認:成果発表

内容:研修で得られた成果と自分の成長を簡潔明瞭に発表する

ポイント:プレゼンスキルによる研修全体の最終まとめ

成果確認:上司と上層部からの評価

3. まとめ

急激な変化を続けるビジネス環境を考えると、若手社員をより早く活躍できるようにすることが必須です。例えば、1年目でハイブリッドビジネスのネイティブに、2年目にはAIリーダーに、3年目にはラーニング達人になるような高い目標を設定しませんか?
高い目標を達成することで、人材育成は社員の成長、会社の競争力、ビジネス成果に直接貢献できます。そのために、ぜひこの3ステップにチャレンジしましょう。

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