【解説コラム】経理業務の効率化を目指そう。会計ソフトの基礎知識から利用シーンまで紹介

会計ソフト導入の意義とは? 次世代のビジネス環境に適した会計ソフトを選ぼう

デジタル化とグローバル化が進んでいる現代のビジネスにおいて、経理業務の複雑性や求められる処理スピードが増しています。最近では、インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正対応があり、企業の経理業務に新たなプロセスが加わりました。普段の業務をこなしながら、こうした変化にも柔軟かつ迅速に対応するためは、業務の効率化が求められます。

会計ソフトは、データの正確性を保ちながら、業務効率を飛躍的に向上させるだけでなく、法令・ルールにも対応してくれます。しかし、会計ソフトには多くの選択肢があり、予備知識なしに、自社に適合するものを選択するのは容易ではありません。

この記事では、会計および会計ソフトの基礎知識から導入ステップ、状況・課題に合わせたおすすめサービスの紹介など関連情報をまとめています。経理担当者が次世代のビジネス環境に適したソフトウエアを選ぶのに役立ててください。

※この記事は、@人事編集部が企画・制作をした、2023年10月16日公開の@人事e-book「《2023年版》会計ソフトの基礎知識と選び方~ケース別おすすめサービス紹介付き~」の内容を編集して構成しています。

目次

  1. 企業における会計とは?
  2. 財務三表について
  3. 企業会計原則とは?
  4. 会計ソフトを導入するメリット
  5. 会計ソフトはインボイス制度や電子帳簿保存法にも有効
  6. 会計ソフトを導入する前に押さえておくべきこと
  7. 会計ソフトの利用シーン
  8. 会計ソフトの種類
  9. 会計ソフトを導入するステップ
  10. 【目的別】会計ソフトの選び方
  11. 会計ソフトを選ぶ際の注意点
  12. 【ケース別】おすすめの会計ソフトの特徴
    CASE 01:初心者でも簡単に会計業務を行いたい
    CASE 02:紙やエクセルでの管理から卒業したい
    CASE 03:手作業によるミスを減らしたい
    CASE 04:不備や不正行為の防止が必要
    CASE 05:リアルタイムで経営情報を把握したい
    CASE 06:バックオフィス業務を効率化したい
    CASE 07:複数拠点、複数人で管理を共有したい
    CASE 08:税理士との連携をスムーズにしたい
    CASE 09:税率変更に簡単に対応したい
    CASE 10:他社サービスのデータと連携したい
    CASE 11:充実したサポートがほしい
    CASE 12:内部統制やIPO準備が必要になった

企業における会計とは?

企業における会計とは、企業の経済活動を一定のルールに基づいて記録・測定し、その結果を利害関係者に報告する一連の手続きを指します。会計情報を活用することで、企業は経営状況を把握し、経営判断を下すことができます。また、会計情報は企業の外部にも開示されるため、投資家や取引先などからの信頼を得ることにもつながります。

会計の目的

会計の主な目的は、決算書を用いた報告にあります。その内容は以下の3つに分類されます。

01:外部への開示
外部への開示を目的とする会計は、財務会計とも呼ばれます。外部の利害関係者に対して決算情報を開示することです。これは法的な義務であり、企業は一定の期間ごとに報告書を作成し、それを公開しなければなりません。この報告書を一般に決算書と呼びます。
上場企業などには、金融商品取引法に基づいて財務諸表の作成が義務付けられています。それ以外の企業では、会社法に基づいて計算書類を作成します。企業の健康診断書のようなものであり、企業の健全性や安定性を外部に示す役割を果たします。

02:税金の処理
税金処理のための会計は、税務会計とも呼ばれます。正確な税金の計算と納付のためのものです。
法人税法に基づいて、課税所得を計算する際には、財務会計で算出された当期純利益を基に税務調整を行います。これにより、企業は法的義務を遵守し、適切な税金を納めることができます。

03:経営管理
経営管理のための会計は、管理会計とも呼ばれます。企業の経営上の意思決定を支援するもので、企業内での経営に役立つ情報を提供します。これは主に内部向けの資料であり、法的な義務はありません。企業はこれを活用して、経営の意思決定や戦略の策定に役立てます。
管理会計は、企業の健康診断書を自ら見て、生活改善するようなものです。企業の経営状況を把握し、改善すべき点を見つけることで、企業の経営を効率的に行うことができます。

財務三表について

財務三表とは、企業の財政状態や経営成績を示す主要な3つの書類を指します。投資家や債権者などの利害関係者は、財務三表を分析することで、企業の将来性やリスクを判断できます。

賃借対照表(B/S)

企業の財産状況を示す書類。資産、負債、純資産で構成されています。

● 資産:企業が保有する財産。現金、商品、固定資産など
● 負債:企業が負っている債務。借入金、買掛金など
● 純資産:企業の自己資本。出資者から出資されたお金や、利益剰余金など

賃借対照表で、企業がどれくらいの資産を保有し、どれくらいの負債を抱えているのか、自己資本がどれくらいあるのかを把握できます。

損益計算書(P/L)

企業の経営成績を示す書類。主に収益と費用から、利益を算出します。

● 収益:企業が得た利益。売上高、営業利益など
● 費用:企業が支払った費用。原価、販売費、一般管理費など
● 利益:収益から費用を引いたもの

損益計算書を見ると、企業がどれくらいの収益を上げ、どれくらいの費用を支払って、最終的にどれくらいの利益を上げているのかを把握できます。

キャッシュフロー計算書(C/F)

企業のキャッシュ(資金)の流れを詳細に示す書類。営業活動、投資活動、財務活動の3つの活動から、キャッシュの増減を算出します。企業の資金繰りを認知・評価する手段として役立ちます。

● 営業活動:企業の日常的な事業活動によるキャッシュの増減。売上金の回収や仕入代金の支払いなど
● 投資活動:企業の資産の取得や処分によるキャッシュの増減。設備の購入や有価証券の売却など
● 財務活動:企業の資金調達や返済によるキャッシュの増減。借入金の借入れや返済など

企業会計原則とは?

企業会計原則とは、会計情報の信頼性を確保するための基本的なルールです。企業会計は「一般原則」、「損益計算書原則」、「貸借対照表原則」、および重要性の原則などについて記された「企業会計原則注解」から構成されています。これらの原則を遵守することで、会計情報の信頼性が確保され、企業の経済活動の透明性が向上します。

会計ソフトを導入するメリット

会計ソフトを導入するメリットは、主に会計データの一元化による生産性の向上と、法令違反の防止の2点です。

メリット1:データの一元化による生産性の向上

会計・経理担当者の負担軽減
会計ソフトを導入することで、会計について詳しい知識を持っていなくても会計業務が可能になります。また、自動仕訳など、担当者の手間を削減する機能も多いため、担当者の負担が大幅に軽減されます。

経営の改善
データが一元的に管理されるため、いつでも会計情報を参照し、必要なデータを引き出すことができます。特に分析機能がついているものであれば自動的にデータを分析してくれるため、自社の課題や傾向を把握でき、経営の改善につなげられます。

メリット2:法令違反の防止

人為的ミスの回避
計算や集計をシステムが自動で行うため、計算ミスなどの人為的なミスにより、意図せず虚偽の会計報告となってしまうことを防げます。また、書類の紛失などのミスも起こらなくなります。

データ改ざんの防止
データの改ざんや不正を防止する機能が備わっているシステムも多くあります。不正な会計による法令違反を防止できます。

法改正への適応
法改正がされると会計ソフトも対応したものにアップデートされるため、最新版を使うようにすれば、法改正への対応が遅れて法令違反となるリスクを防げます。

会計ソフトはインボイス制度や電子帳簿保存法にも有効

2023年10月に始まる「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」と2024年1月から改正内容が施行される「電子帳簿保存法」は、経理業務に大きな影響を与えます。いずれにもスムーズに対応できるようにするためには、会計ソフトが有効です。

インボイス制度とは

インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」で、2023年10月1日から新しく開始する複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式を指します。

仕入税額控除とは、生産・仕入れ・物流などの過程で二重三重に消費税が累積しないように、仕入れにかかる消費税をあらかじめ控除しておく仕組みであり、インボイス制度導入後、仕入税額控除を受けるためには、一定の要件を満たした適格請求書(インボイス)の発行・保存が必要になります。

【経理担当者が対応しなければいけないこと】
● 適格請求書発⾏事業者の登録申請
● 取引先の分類・登録番号の確認
使用している会計ソフトの再確認
● 課税事業者への変更の検討
● 適格請求書の発⾏
● 受け取った請求書の要件確認
● 税率別・課税区分別の仕訳
発行時と受領時の請求書の保存

 

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、税金関係の帳簿や書類を電子的に保存する際の要件について定めた法律です。1998年に制定され、直近では2022年に改正されました。
電子帳簿保存法では、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つについて規定されています。2 0 2 2年の法改正によって、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」は希望者のみ対応、「電子取引データ保存」は全企業に義務付けられました。

【経理担当者が対応しなければいけないこと】
● 電子取引の状況を把握する
● 従業員に対応方法について周知する
会計ソフトを導入して電子データを保存する

 

インボイス制度も電子帳簿保存法も、会計ソフトがあればスムーズに対応できる!

会計ソフトを導入する前に押さえておくべきこと

会計ソフトの導入を検討する前に、把握するべきいくつかの前提があります。
会計ソフトの種類は非常に多岐にわたるため、これらを知っておくことで選択の負担を軽減できるでしょう。

前提 01:実は大きな差はない

会計ソフトは、会計業務を効率化するためのツールです。そのため、財務情報管理、仕訳入力、帳簿作成、税金計算など、必要な機能は基本的にどのサービスにも備わっています。機能の差に注目するのではなく、「自社のニーズや業務フローに合っているか」という観点でサービスを選定しましょう。

前提 02:規模ごとの差は大きい

小規模の事業場や個人事業主向けの会計ソフトと、中規模・大規模企業向けのものでは、提供される機能や価格帯が大きく異なります。例えば、小規模向けのものはシンプルで使いやすい一方、大規模向けのものは多機能で高価格帯が多いのです。企業規模に合ってない会計ソフトを選んでしまうと、機能が足りなかったり、余計なコストがかかってしまったりするという失敗を招きます。

前提 03:そもそも対応できない業態もある

特定の業態や業種に特化した取引が多い場合、一般的な会計ソフトでは対応が難しいことがあります。例えば、建設業や不動産業、病院・医療法人など、特有の取引や税制がある業態では、その業態専用の会計ソフトを選ぶことが望ましいでしょう。

前提 04:税理士と一緒に選ぶことも多い

顧問税理士が使い慣れている会計ソフトを選ぶことで、後々のやり取りをスムーズに進められます。選定に悩んでいる時は自社の状況やニーズを伝えた上で相談するのも手でしょう。例えば、部門の増設に伴い、部門ごとの売上管理をしたい場合、税理士の方からおすすめの会計ソフトを提案してくれるケースもあります。

会計ソフトの利用シーン

会計ソフトの利用シーン、最終的に何を目的とするかは、事業規模によって異なります。
また、取引の内容の特徴や事業によって、必要とされる機能が変動する場合もあります。

事業規模による目的の違い

01:副業・フリーランス(非課税対象の仕事)
副業・フリーランスで課税対象とならない範囲の仕事をしている人の会計管理などは、お金の出入りを管理するのが目的なので、家計簿アプリなど、出納帳の機能を持つもので十分なケースが多いでしょう。

02:個人事業主
個人事業主などの場合は、確定申告のために会計ソフトを利用します。青色申告か白色申告か、自分の申告方法に対応したソフトで、明細を読み込んで書類を自動作成するなどの省力化が図れます。

03:小規模企業用
小規模企業の場合は、決算書の作成のために会計ソフトを利用します。取引情報を集計し、決算書の作成までソフト上で行えます。

04:中規模企業用
中規模の企業では、給与管理システムや、小売業ならレジなど、使用している他のシステムと連携する機能が必要となってきます。自社が契約している顧問税理士が対応しているかも重要です。

05:大規模企業用
大規模企業では、子会社など関連会社との連結決算が必要になってくる場合が多いでしょう。上場企業であれば四半期決算を開示する必要があるため、会計ソフトもそれに対応している必要があります。

取引の内容による必要機能の違い

01:現金の取り扱いが必要
小売業などで、毎日の売上をまとめて銀行などに預けるケースや、現金で小口の精算を行っているケースでは、現金の移動が発生します。移動状況を記録するPOS(販売時点情報管理)を導入していれば、そのシステムと連携する必要があります。

02:仕入れ頻度が高い
小売業や問屋業など、毎日のように大量の仕入れが発生し、しかもその請求処理を仕入れごとに行っているような場合、処理が煩雑にならないよう、業態に対応したソフトを選ぶ必要があります。

03:特殊な売上計算が必要
売上の計算方法が特殊な場合、その計算方法に対応したソフトが必要です。たとえば病院の診療報酬の計算などがこれに当たります。

04:原価計算が必要
製造業などで、決算期をまたぐ棚卸資産(在庫)の管理を行う場合、その計算に対応したソフトが必要です。原価に人件費などが加わる場合は、その人件費などを管理しているシステムと連携する必要があります。

事業の特殊性による必要機能の違い

01:業界の会計基準がある
業界によっては特有の会計基準が設けられています。たとえば、建築業では工事進行基準があります。こうした業界では、基準にのっとった会計ができるソフトが必要です。また、会計基準は時に改正されるため、これらの変更に対応できることも重要です。

02:特殊な金銭の動きがある
銀行業では、預金は預かりものであるため、会計では「負債」と扱われるなど、一般事業会社とは財務諸表の科目が大きく異なります。
また、損害保険業では保険金などを十分に支払えるよう、各種準備金を積み立てなければなりません。このように特殊な取り扱いが必要な場合、それに対応できる会計ソフトが必要です。

03:外貨を使用する
外資系企業やグローバル展開している企業の場合、会計の一部に外貨が混入します。これを日本円に換算する必要があります。その際、為替レートの差によって生じる損害を回避するため、為替予約などの手段が広く用いられています。外貨を使用する場合、これらの計算や手続きに対応できる会計ソフトが必要です。

04:法人格による基準がある
同じ法人でも、営利団体である企業とNPO法人や宗教法人といった非営利団体では会計の目的が異なります。企業会計の主な目的は利益の計算と財産の計算ですが、非営利会計の主な目的は財産の計算であり、資金の収支を記録し報告することです。ただし、NPO法人や宗教法人の行う事業であっても、法人税法上の収益事業などの定義に当てはまれば課税されます。こうした場合は、事業の区分などの処理に対応できる会計ソフトが必要です。

【おわり】


e-bookでは、今回紹介しきれなかった、「会計ソフトの種類」、「会計ソフトを導入するステップ」、「【目的別】会計ソフトの選び方」、「会計ソフトを選ぶ際の注意点」、「【ケース別】おすすめの会計ソフトの特徴」を紹介しています。会計業務を効率化させるためには、自社に適した会計ソフトを選ぶことが大切です。ぜひ、このe-bookを活用して、ソフト選びの際の参考にしてください。

記事企画:@人事編集部

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今回コラムで紹介したe-bookはこちらよりダウンロードできます。
https://at-jinji.jp/library/589

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