【解説コラム】健康管理システムの基礎知識から、状況・課題別でのシステムの選定方法まで。従業員の効果的な健康管理を実現しよう
企業の健康経営とは? 健康管理システム導入の意義
企業が従業員に対して適切な健康管理を行うことで、生産性向上や医療費の削減につながります。そのため、人事・総務担当者や労務担当者が多忙な業務を抱える中で、効率的・効果的な健康管理を実現するために、健康管理システムの導入・活用が有効な手段になっています。
また近年、「健康経営」が注目されるようになり、従業員の健康管理に積極的に取り組む企業が多くなりました。その動きを加速させているのが「健康管理システム」です。
健康管理システムの導入は、企業の健康経営を推進し、従業員一人ひとりの健康をサポートする強力なツールとなり得ます。しかし、多くの選択肢があり、適切な選択は困難です。
この記事では、健康管理システムの基礎知識だけでなく、状況・課題に合わせたおすすめのサービスを紹介します。企業が健康経営の一環として最適なシステムを選び、従業員の健康と企業の発展に寄与する知識を得ることができるでしょう。
※この記事は、@人事編集部が企画・制作をした、2023年10月10日公開の@人事e-book「健康管理システムの基礎知識と選び方~コストシミュレーションとケース別おすすめサービス紹介付き〜」の内容を編集して構成しています。
目次
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- 人的資本経営で注目される健康経営
- 健康経営と健康管理の関係性
- 健康管理システムの導入で健康経営の第一歩を
- 健康管理システムを導入するメリット
- 健康管理システムの種類
- 健康管理システムの費用
- 健康管理システムのコストシミュレーション
- 健康管理を導入するステップ
- 【CHECK!】健康管理システムのタイプ・系統
- 健康管理システムの選び方
- 健康管理や健康管理システム導入・運用時のよくあるトラブル
- システム導入に失敗しないための4つのポイント
- 【ケース別】おすすめの健康管理システムの特徴
CASE 01:従業員が50人を超えた
CASE 02:新しい事業所を増やした
CASE 03:テレワーク・在宅勤務制度を始めた
CASE 04:健康診断の受診率を上げたい
CASE 05:紙ベースでの管理をやめたい
CASE 06:人事データと健康情報を紐づけて一元管理したい
CASE 07:メンタル不調のリスク管理をしたい
CASE 08:産業保健スタッフを変えたい
CASE 09:人事労務担当者のリソースがひっ迫している
人的資本経営で注目される健康経営
日本社会全体の労働力や生産性向上につながるとの考え方から、日本政府は健康経営の推進に取り組んできました。最近では「人的資本経営」の文脈から、健康経営の重要性が再認識されています。
人的資本経営とは?
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に活用しようとする経営手法です。
従来の経営では、人材は「コスト」と考えられていましたが、変革の激しい現在、企業の競争力や持続的な価値向上の源泉は「有形資産」から「無形資産」に移行したと言われています。その無形資産の中核をなすのが、「人的資本」です。
人的資本経営では、この人的資本に対し積極的に投資を行い、人材のスキルや能力、エンゲージメントの向上など人材戦略の成果を上げることで、中長期的な企業の価値向上が果たされると考えます。
こうした人的資本経営の考えに基づき、企業がいかに経営戦略と人材戦略を連動させるべきかという課題感のもと、2020年9月に経済産業省から「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の報告書、通称「人材版伊藤レポート」が公表されました。この中で、人材戦略の3つの視点と5つの共通要素が述べられています。
3つの視点
- 経営戦略と連動しているか
- 目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップを把握できているか
- 人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行動
5つの共通要素
- 目指すべきビジネスモデルや経営戦略の実現に向けて、多様な個人が活躍する人材ポートフォリオを構築できているかという要素(動的な人材ポートフォリオ)
- 個々人の多様性が、対話やイノベーション、事業のアウトプット・アウトカムにつながる環境にあるのかという要素(知・経験のダイバーシティ&インクルージョン)
- 目指すべき将来と現在との間のスキルギャップを埋めていく要素(リスキル・学び直し)
- 多様な個人が主体的、意欲的に取りくめているかという要素(従業員エンゲージメント)
- 時間や場所にとらわれない働き方の要素
健康経営と健康管理の関係性
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを指す言葉です。
こうした考え方に基づいた具体的な取り組みは健康投資と呼ばれ、注目されています。
健康経営の重要性
健康経営は、従業員の健康と幸福を保ち、その結果として生産性と満足度を向上させることを目的とする経営手法です。
人的資本経営の観点から見ると、主に「5つの共通要素」にある「従業員エンゲージメント」(P2参照)に属する分野を課題とするものです。人材の価値を最大限に発揮させるという目的において両者は一致しており、かつ人的資本の価値を保つために健康の維持は不可欠でもあります。
企業が従業員の健康を保つために必要な対策を行うことで、従業員の健康が損なわれることによるリスクを回避でき、生産性やエンゲージメントの向上につながります。
日本では2017年から、経済産業省が「健康経営優良法人認定制度」を設け、健康経営に取り組む企業を顕彰しています。認定が企業イメージの向上に寄与するだけでなく、人的資本経営の側面からも、比較的情報のそろっている健康経営への取り組みについて開示することが、企業にとって実行しやすい第一歩になるとして注目されています。
健康管理システム導入による効果
健康経営を実施する上で、健康管理システムの導入は大きな助けになります。
法律で定められている健康管理をスムーズに行えるだけでなく、+αとして健康経営の推進に貢献する機能を備えたサービスもあります。
例えば、ヘルスリテラシーを向上させるための学習機能や交流機能がついているものや、睡眠の質を記録しサポートするもの、専門家にチャットで相談ができる「健康相談窓口」がついているものなどもあります。
健康管理システムの導入で健康経営の第一歩を
人的資本経営の実施で企業価値を上げるには、自社の非財務情報を可視化・開示することが重要なポイントになります。
企業にとって収集しやすく、分析や開示によるメリットのある健康指標は以下の通りです。
人的資本経営に活用できる8つの健康指標
健康管理システムを導入するメリット
健康管理システムの導入によって企業は主に4つのメリットを得られます。
メリット1:健康データの一元化による生産性向上
最も大きなメリットは、健康データを一元化できることです。紙での管理には限界があるため、システム上で全従業員の健康データを蓄積しておけば収集、管理、活用に余計な手間がかかりません。
健診のデータ入力
健康診断の結果用紙は病院によってフォーマットが異なることが多いため、内容を揃えようとするとそれだけで時間がかかってしまいます。あらゆるフォーマットの健診データを簡単に取り込めるサービスを活用すれば、手間を大幅に削減できます。
労基署への報告書作成
労働基準監督署に提出する報告書の作成も容易です。管理している健診データから必要な内容を抽出し、報告書のフォーマットに沿って自動的にレポートを作成してくれるため、作業のスピードアップに効果があります。
メリット2:労働環境の最適化
従業員の健康状態や労働環境が可視化され、適切なフォローアップや職場改善につなげられます。
可視化による健康リスクへのフォロー
従業員の健康データを可視化することで、健康リスクを早期に発見し、必要な対策を講じることができます。例えば、ダッシュボード機能を活用することで、従業員のストレスレベルを一目で確認でき、迅速な対応やケア、産業医への連携が可能です。
離職、求職の予防
健康状態の改善やストレスの低減は、従業員の休職や離職のリスクも減らします。特に、健康状態に不安がある従業員をアラートで教えてくれる機能は健康管理システムならでは。健診データやストレスチェックと対応しているため、システム上で原因の掘り下げや対策の検討を行えます。リスクの察知に長けている点が健康管理システムの特徴だと言えます。
メリット3:従業員の健康意識の向上
従業員が自身の健康状態をいつでも参照できるだけでなく、健康増進をサポートする機能があるサービスを活用することで、企業内における健康意識向上が期待できます。
パフォーマンス向上
従業員の健康状態が良好であれば仕事のパフォーマンスも向上します。健康管理システム内での目標設定や健康スコアの表示などを利用することで、従業員の健康への取り組みが活性化し、企業の生産性アップにもつながります。
健康障害のリスク軽減
運動・睡眠不足や食事の偏り、数値の悪化などに対するアドバイス機能を備えたサービスもあります。ヘルスリテラシーを向上させるための取り組みとかけ合わせれば、従業員の意識変革につなげられるでしょう。生活習慣の改善といった健康障害のリスク軽減が実現できます。
メリット4:企業価値の向上
健康管理システムは単に健康管理を効率化するだけでなく、法改正への対応や、健康経営の取り組み強化にも成果を発揮します。
法改正への対応
健康管理システムは関連法律を遵守するために開発されているため、導入しておくだけで義務の履行につながります。専門的な知識がなくても必要な健康管理を行える点は大きなメリットです。ただし、法改正に応じて定期的にサービス内容がアップデートされるかどうか、事前によく確認しましょう。
健康経営の実現
健康管理システムを導入することで、従業員の健康を促進する取り組みが具体的かつ体系的に行われるようになります。これは、健康経営優良法人の認定基準を満たす重要なステップとなるため、システムの導入は認定取得の大きな後押しとなります。認定を受けることで、企業の社会的信頼性が向上し、採用やビジネスチャンスの拡大にも寄与します。
健康管理システムの種類
健康管理システムには、最終的な目標やサービス提供者の事業範囲、方向性などにより、さまざまな種類があります。
ここでは、システムの特徴に着目した分類を紹介します。
健康管理システムの費用
健康管理システムの種類としてさまざまな特徴があることを見てきましたが、導入に当たっては費用の検討も重要になります。
健康管理システムの費用を左右するのが、クラウド型かオンプレミス型かという、サービスの提供方式の違いです。
クラウド型
クラウド型とは、クラウド上のソフトをインターネットを通じて利用するもので、インターネット環境があればどこからでも使用できるため、初期費用を抑えられる傾向にあります。
初期費用の目安は6〜60万円と言われています。ただし、従業員の数によって変動する場合もありますので、従業員数によってはこの範囲内に収まるとは限りません。それに加えて、従業員の人数に応じたランニングコストがかかります。
費用は目安であり、オプションによっても変動しますので、導入の前に見積もりで確認しましょう。
オンプレミス型
オンプレミス(パッケージ)型とは、サーバーなどを自社内に設置し、自社で管理・運用するもので、導入の初期費用が大きい代わりに自社に合わせたカスタマイズなどができやすいという特徴があります。
初期費用の目安は100~300万円とされます。また、ランニングコストとして、サポートやアップデートのための固定料金がかかる場合が多く、さらに自社で保守・メンテナンスが必要であるため、エンジニアの人件費がかかります。
【おわり】
e-bookでは、今回紹介しきれなかった、「健康管理システムのコストシミュレーション」、「健康管理システムを導入するステップ」、「【【CHECK!】健康管理システムのタイプ・系統」、「健康管理システムの選び方」、「健康管理や健康管理システム導入・運用時のよくあるトラブル」、「システム導入に失敗しないための4つのポイント」、「【ケース別】おすすめの健康管理システムの特徴」を紹介しています。健康経営を成功させるためには、自社に適した健康管理システムを選ぶことが大切です。ぜひ、このe-bookを活用して、システム選びの際の参考にしてください。
記事企画:@人事編集部
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今回コラムで紹介したe-bookはこちらよりダウンロードできます。
⇒https://at-jinji.jp/library/587
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