新入社員主体性向上/若手キャリアデザイン/ミドル・シニア仕事マインド再設計

“復活したマインド強化研修”の3分野でよくある問題と解決ヒント

この数カ月で「マインド系の研修」の問い合わせと相談が急に増えてきました。代表的なニーズは新入社員向けの主体性向上、若手社員向けのキャリアデザイン、そしてミドル・シニア社員向けの仕事マインド再設計の3つの分野です。
これらは昔から多くの研修が実施されていましたが、残念ながら効果につながらないものが多かったのが実情です。それが、なぜ再び注目を集めているのでしょうか。中でもミドル・シニア社員向けのマインド強化研修には個別事情以外に、社会の変革へ立ち向かう企業の姿勢が推測できるように思います。

目次

  1. 新入社員向けの主体性向上研修
  2. 若手社員向けのキャリアデザイン研修
  3. ミドル・シニア社員向けの仕事マインド再設計研修
  4. クロージング

1.新入社員向けの主体性向上研修

ニーズ:新入社員は主体性を発揮しません、自ら考えて積極的に動きません。

新入社員向け主体性向上研修のよくある問題

解決のヒント

・主体性がないというよりアピールが弱いと考え直す

何千人の新入社員と接してわかったことは新入社員の問題は主体性がないことではなく、主体性を見せるのが苦手だということです。その微妙な違いが研修内容に直接影響して効果が出ていないのです。主体性はあるが、伝え方やアピールが弱いと考えると、研修内容は主体性を発揮する、周りにアピールする、上司にちゃんと伝わるテクニック中心になります。そうすると自然と上から目線の押し付け研修ではなくなり、受講者の利点も明確になります。

・主体性の重要性を客観的に伝える

受講者が主体性の大切さについて納得してもらうためにはデータが重要です。受講者にとても良く響くデータとして、昨年の新入社員の配属後の上司やメンターのアンケート結果、一年上の先輩に対しての周りからの評価、職場から人事への新入社員に対するクレームなどがお勧めです。

・実践的なテクニックも内容に入れる

「主体性」や「マインド」とはとても抽象的な概念で、新入社員にとって行動に落としにくい。そのため、ちょっとしたコツが必要です。例えば、最初の一歩を小さな目標にしてすぐスタートを切る、早いタイミングでゴールイメージを明確にする、加速PDCAで仕事の質を高める、などがあります。

・研修そのものをより主体的にする

言うまでもありませんが、研修そのものをより受講者中心にしないといけません。例えば、講義は3割にとどめて演習の割合を7割にする、ポイントごとに必ず演習を入れる、一部の講義内容は受講者に任せる、演習の順番や内容について受講者に決めてもらう、などです。

・しっかりとフォローする

主体性を発揮し続けるためにフォローが必要です。研修期間中に定着演習を始めることで良い効果が出ます。配属後に職場で丁寧なフォロー(チェックイン、日報、週報、毎月の1on1)もお勧めです。時間が経った時点では、個別コーチング、フォロー研修、年度末の成果発表なども効果的な施策です。

フォローの詳細についての参考コラム:「2022年だからこそ改善、実施したい新入社員研修の3つのポイント」

2.若手社員向けのキャリアデザイン研修

ニーズ:若手社員は自分のキャリアが見通せないので、モチベーションが低くなります。

若手社員向けのキャリアデザイン研修のよくある問題:

解決のヒント:

・振り返り機会を与える

多くの若手社員は日頃立ち止まって自分のキャリアについて考えることが少ないので、時間を取ってその機会を与えるだけでも意味があります。当社では今までさまざまなキャリアデザイン研修のパターンを実施してきました。例えば、事前課題あり/なし、90分/半日/終日、社内/外部講師、大人数/少人数、対面/リモート研修などです。いろいろ試した中で一番スムーズだったパターンは事前課題のない1日対面研修です。具体的には、午前中に入社から今日までの振り返りのような現状把握をして、午後に今後のビジョンや理想構築をするのが最適です。

・受講者の成長と成果を認める

キャリアデザイン研修の最終目的はモチベーション向上と職場での行動変容です。そのためには受講者の勢いが必要で、最初のきっかけは自分の成長の実感です。入社時と比較して自分がどこまで変わったか、ここまでどんな成果を出してきたかを気づかせましょう。成長の実感が少しでも感じられれば余裕が出てきて、自分の改善ポイントや今後変えるべきことを考えられるようになります。

・会社の視点も入れて、現実的なビジョンにする

ビジョンが仕事と離れた夢物語にまで広がらないためには、会社の視点を少し入れましょう。受講者にとても役立つ切り口は、現状把握に上司や先輩からの評価コメントを入れる(180度評価)、ビジョンには尊敬できる先輩のベンチマーキングや分析、キャリア参考のための先輩とのインタビューなどを取り入れてみましょう。

・発想法を使ってより新鮮なビジョンを考えさせる

たくさん見てきたキャリアデザイン研修の一番よくある欠点は受講者から新鮮なビジョンがなかなか出ないことです。長年の発想力研修の経験から言えることは、新しいことを考えるためには受講者にとっての刺激が必要です。また、人によって考えやすい、考えにくいことがあるのでさまざまな切り口から考えさせることが必要です。例えばよくある切り口は下記の図のとおりです。

・実行のコツとスキルも触れて、行動につなげる

振り返りとビジョン構築がうまくいくと次のステップはモチベーションを高めて行動につなげることです。多くの若手社員はビジョンを実現できる自信がないので、モチベーションを上げる第一歩として「安心させる」ことが重要です。具体的な実行計画を立てて、簡単なスキルやコツを教えましょう。例えば、時間管理、周りを巻き込むコミュニケーションのコツ、実行力を高めるコツなどです。このようなキャリアデザイン研修には2日間かけるケースが多いです。

1日目午前中:現状把握
1日目午後 :ビジョン構築
2日目 :スキル、コツ、実行計画

 

・研修後に定期的な報告と1on1でフォローする

研修がうまくいくと受講者は高いモチベーションでビジョンに向けて動き出します。しかし、その勢いが長続きしないケースが多いです。脱落しないためにフォローが必要です。お勧めするフォローイメージは簡単な進捗報告と定期的な1on1です。1on1はもちろん上司と行っても良いのですが細かい業務話と説教タイムになってしまう可能性が高いので、実業務と離れたキャリアについて話すためにメンター、人事、外部コーチのほうが良い効果が得られます。

3. ミドル・シニア社員向けの仕事マインド再設計研修

ニーズ:いわゆるベテラン社員と呼ばれる人たちは、長年の仕事の習慣が定着していて、新しいことに挑戦しない人が多いです

再び注目を集めている背景
転職業界では35歳から54歳をミドルエイジ人材、55歳以上をシニア人材と呼んでおり、いずれも職種の専門性スキルだけでなく「業種や職種が変わっても通用する」ポータブルスキルが求められています。ポータブルスキルとは例えば、新しい環境に溶け込むスキル、自らの経験を異なる分野や仕事に転用するスキル、挑戦的な目標を設定するスキル、限界を突破する発想で実現可能なアイディアを生み出すスキルなどを意味します。

よく考えると40歳の社員が70歳まで雇用継続を保障されたとしても、同一企業で30年間も同じように仕事を継続できるはずはありません。経験に縛られた心理的限界を超えて新しいやり方、新しい仕事に挑戦するために、ポータブル的なスキルを身につけパワーアップすることが重要になってくるでしょう。

ミドル・シニア社員向け仕事マインド再設計研修のよくある問題

解決ヒント:

・研修の出発点として大切なポイント

もし自分が「仕事マインド再設定研修」と明記された研修への受講が決まった場合、なぜ参加対象になったのかを説明してもらいたくなります。まず研修の名称に気を遣いましょう。次に、一定の年齢になったら一律で参加させるという年齢条件も再検討が必要です。「エイジレス」の考え方から受講年齢の一元化は望ましくありません。異なる年齢の受講者が混在している方が実際の職場の現状に近く、先輩と後輩の交流、相互の学び、気づきが増え、やらされ感も軽減できるでしょう。

・内的動機を引き出す

本人でも気づかない自分の内的動機やワクワクスイッチを特定するために、診断ツールがとても便利です。キャリパー※のような個人のモチベーションや潜在的な能力を抽出するものや、汎用的なストレングスファインダーなどが自分のワクワクのツボを見つけるために役立ちます。どのツールを使っても成功条件は本人が納得し、自分で自分のモチベーションを高める方法が具体的にわかり、第一歩を踏み出すことです。

※参考:http://www.caliper.co.jp/solution/

・新しいことに挑戦する勇気を出させる

長年同じ仕事をしてきたベテラン社員は新しいことに対して関心がないわけではありませんが、失敗するリスクを過剰に恐れています。新しい挑戦は疲れる上に慣れているコア業務に比べて圧倒的に自信がありません。そこでイノベーション研修のように元気をつけ、挑戦したい気持ちを引き出し、行動につなげる支援が重要です。

・実現可能な具体的なアイディアを提供する

何より大切なことは今まで考えてことのない、本人は「できそう」「試してみたい」と思えるアイディアを研修中に出すことです。その時にこのような発想法が役立ちます。

・丁寧なサポート体制とフォロー

ベテラン社員にとって、単発研修で何十年間の仕事の習慣とリズムを変えることは非常に難しいためフォローが必要です。特に、ネガティブ思考の強い受講者には高いコーチングスキルが求められるのでプロコーチによる個別フォローをお勧めします。時間が短くても、プロコーチによる定期的な個別コーチングセッションを数回(例:1回@30分 x 月1回 x 半年)行うことで、モチベーション維持と中長期的な行動変容が期待できます。
ポイントは研修前の習慣に戻らないための安心、頭の整理、計画立案、動機付けです。

4. クロージング

マインド系の研修は知識やスキル研修より大変ですが、うまくできるとインパクトも大きいです。細かい工夫とフォローが必要ですが、このコラムで紹介したような工夫をすればうまくいくはずです。
ぜひ参考にしてみてください。良い成果を楽しみにしています。

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