第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社

これから求められる 個を生かすオンボーディング vol.8

オンボーディングは「人的資本経営」の重要アジェンダである

こまで7回にわたり「これから求められる 個を生かすオンボ―ディング」について、効果を高めるキーファクターや本人の心理面のメカニズム、その中で生じる壁とそれらを乗り越えるためのポイントと言った切り口で、データによる分析結果や企業の具体例についてお伝えしてきた。

今回は最終回として、今最も注目度が高いテーマの一つである「人的資本経営・開示」を踏まえながら、「個を生かすオンボーディング」を考え、これまでのお話を総括したい。

参考:これから求められる 個を生かすオンボーディング(第1~7回)

目次

  1. 人的資本経営にとってのオンボーディングの意味
  2. 人的資本開示とオンボーディング
  3. 開示内容とそれを向上させる実際のオンボーディングへの取り組み
  4. 人的資本を一貫して向上させる好例
  5. オンボーディングを重視する文化
  6. 最後に

人的資本経営にとってのオンボーディングの意味

オンボーディングは、人的資本の源泉である個々人がスムーズに新しい環境に適応し、持っているポテンシャルをいかんなく発揮するように「立ち上がる」ためのプロセスである。つまり、人的資本経営の根幹を成すものと言える。

それゆえ、もしオンボーディングがうまくいっていないのだとしたら、直近の業績の達成が危ぶまれるだけではない。未来の成長も期待できなくなってしまう。とても重要かつ緊急度の高い、経営上の要注意テーマと言える。

そうであれば自社自組織のこの問題の現在地はどこなのか。いつ、どの地点まで持っていこうとしているのか。そのために何を取り組んでいるのか。これらのことを定量的客観的に捉え、KPIを定め、その達成に向けて着実にPDCAを回す。これは人的資本経営の最重要テーマの一つと言っても過言ではない。
そのような中で、人的資本の開示が求められている。では、どのように「オンボーディング」について開示を行っていけば良いのだろうか。

人的資本開示とオンボーディング

非財務情報可視化研究会から提示されている「人的資本可視化指針」の推奨開示項目と照らして見てみたい。図にあるように、「6つの領域と19項目」で示されているが、ストレートにオンボーディングという表現では示されていない。

出所:「人的資本可視化指針(非財務情報可視化研究会)」をもとにリクルートマネジメントソリューションズが作成

これは、オンボーディングが複合的なプロセスであることを示しているわけだが、これらの領域と項目を踏まえるとどうなるか。オンボーディングは、「人材の多様さはどうか➡その人材の心身は健全か➡自社とのエンゲージメントを高めているか➡定着しているか➡スキル・経験を活かし高めているか➡それらが複合的に組み合わさりスムーズに立ち上がっているか」、そのような全体像で表現できる。

 改めて思うことだが、やはり「オンボーディングに取り組むこと」は、人的資本を「一貫して向上させる」ために効果的であり、重要な取り組みになる。

その意味で、優先度と緊急度が高いテーマと言えるのではないだろうか。

開示内容とそれを向上させる実際のオンボーディングへの取り組み

例えば、サービス業Z社では開示とオンボーディングの実態がしっかり連動している。

ダイバーシティ、ワークスタイル、エンゲージメント、ラーニングなどを自社の人材マネジメント方針に沿って一貫してメッセージすると同時に、その現在地を開示することで、継続的に取り組みを進めていることを示している。さらに今後の事業を更に強くするために、女性や外国人を今まで以上に生かしていくことを公言しており、それに伴って、オンボーディングのプロセスは継続的に質を高めていく必要があること、そしてその重要性は今後もより高まっていくことを示していることがよくわかる。

では、そのような企業の現場では、どのようなオンボーディングが行われているのか。
まさに「人的資本を一貫して向上させる」取り組みを行っているので、次でご紹介したい。

人的資本を一貫して向上させる好例

象徴的な場の共有を通じて、好例の具体をお伝えしたい。
ある組織では、異動者と転職者が1年のオンボーディング期間を終えると振り返りを行う場がある。上司や同僚全員が参加し、組織全体でシェアを行う。

100名弱のその組織では、10名弱の発表者がおり、会社都合の異動者、自身で手を挙げた異動者、他社からの転職者が含まれていたが、組織ぐるみでオンボーディングを行っている。

この組織では背景として、プロジェクト単位で動くことが多い環境にあり、そのため、組織で育成する意識がなかなか強まらない期間が過去続いた。結果、定着が悪化。その立て直しが必要になり若手を増強。そして早期戦力化と定着が組織の持続成長に欠かせない喫緊の課題となった。

この振り返りの場では、1人ひとりが20分程度で1年を総括。その後、協働し経験する中から何を学んだかについて質疑応答があり、同時に受け入れ側も自身の当時を思い出しコメントをしていく。そんな場に対して発表者側と受け入れ側のコメントが以下の表である。

皆さんは何を感じられるだろうか。

オンボーディングを重視する文化

私は、温かさを感じる場だと捉えている。
それが受入側から本人側へと伝わり、それを通じて受入側にも戻ってくる。温かさを伝え合うことができていると感じる。まさに、心理的安全性の具体はこういう場があることなのだろう。

これは、Z社の中のある組織の例であり、Z社全体ではオンボーディングは各事業、さらには部ごとに創意工夫が行われているのが前提である。しかし、全社的にオンボーディングは重要な経営アジェンダであり、それを重視する文化が根付いている。
この繰り返しと積み重ねが、育成の風土をつくり、強い組織づくりにつながっていくのだろう。

最後に

今回を含め、8回にわたってお伝えきたが、いかがだっただろうか。
離職率の高さを何とかするためのオンボーディング。これも重要な課題ではあるが、それ以上に、人的資本を継続的に強くする「人的資本経営」の重要アジェンダであることが共有できたのではないだろうか。

改めて全8回をまとめると以下だ。(OB:オンボーディング)

【1】OBは難しくなっている
【2】OBの効果を高めるキーファクターWhy・What・Howに注目する
【3】本人の心理メカニズムを構造的に捉えて意図的にスイッチを押す
【4】メカニズムから見えてくる「あるある問題」。企業のデータ分析から見えたこと
【5】メカニズムから見えてくる「あるある問題」。若手のぶつかりやすい壁
【6】本人がもつ個性にも注目する
【7】個性に注目して手を打った具体例が興味深い
【8】OBは「人的資本経営」の重要アジェンダである


正解がなく、様々な要素が複雑に絡みあうテーマがオンボーディングである。
それを少しずつでも科学し、客観的に捉え、効率も重視しながら取り組んでいきたい。

以上

これから求められる 個を生かすオンボーディング(全8回)
https://at-jinji.jp/expert/column/77

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