変化の時代に求められるリスキリング。企業はいかに取り組み、人事は何をすべきか【第1回】
『リスキリングとは何か?なぜ必要と言われているのか?』
本連載は、「変化の時代に求められるリスキリング。企業はいかに取り組み、人事は何をすべきか」というタイトルの通り、経営者や人事の方に向けてお届けするものです。
昨今話題になっている「リスキリング」という言葉は、人事の方にとって身近なワードになり始めているのではないでしょうか? 連載の第1回は、リスキリングに対し、人事がどういったことに取り組めば良いのかをお伝えいたします。
【第1回】 『リスキリングとは何か?なぜ必要と言われているのか?』
【第2回】 『リスキリングをどう進めるか?①まず経営・人事が進めることは?』
【第3回】 『リスキリングをどう進めるか?②現場をどのように巻き込むか?』
【第4回】 『リスキリングはいつまで続く?流行で止めないためには?』
目次
リスキリングが世界的なテーマになっている
2018年に世界経済フォーラムにおいて2022年に全労働者の54%以上が大幅なリスキリングを必要とするという調査結果が発表されました。また、日本においても、岸田首相が個人のリスキリングの支援に5年で1兆円を投じると言う宣言もあり、リスキリングというものが身近な話題になり始めています。
こういった世界的な変化が起き始めているなか、リスキリングについて皆さんの周りではどのような話題が出ているでしょうか? 人事の皆様からすると、ベテラン社員にもっとこうなってほしい、デジタル人材がもっと重要になってくる、そういったテーマが、身近な話題になっているかもしれません。
また、漠然と「うちの会社もリスキリングが必要だ」と話が出ているけれども、これらのテーマをどのように進めたら良いのか、そもそもリスキリングの施策をしろと言われても、何から手をつけていいのかわからない、そんな声も届いてきそうです。ではそもそもリスキリングとはなんでしょうか。見ていきたいと思います。
そもそもリスキリングとは
よく似た言葉として「学び直し」や「リカレント教育」という言葉もあります。これらは個人の意欲・興味を満たすことが目的となるものを指しているケースが多く、例えば「仕事には関係ないけど、将来の海外旅行に向けて英語を勉強しよう」というものがあげられます。一方、「リスキリング」は「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に対応するために、必要なスキルを獲得させる/すること」と言われています(※1)。
また、よく誤解されやすいのが「リスキリングってDX人材育成でしょ?」ということです。
確かに多くの企業でデジタルシフトが迫られているため、間違いではないのですが、必ずしもDXやITに限りません。
ポイントは、「今の仕事」から「未来の仕事」に向けて、自分自身のスキルを「大幅」に変更する必要がある、ということです。
これを聞いてみて、皆さん何を思い浮かべるでしょう?
もしかすると「あれ、うちの仕事ではリスキリングは必要ない?」「うちの会社は今すぐにでもリスキリングしないといけない」など、思い浮かべたかもしれません。この感覚はとても大事な感覚なので、この後を読む際に、忘れずに覚えておいていただければと思います。
※1
「経済産業省(2021). デジタル時代の人材政策に関する検討会 第2 回 資料2-2.リクルートワークス研究所.リスキリングとは-DX時代 の人材戦略と世界の潮流-」より
日本における環境変化とリスキリング
では少し視点を変えてみましょう。昨今、リスキリングと同じように、「Job型の人事制度」について、メディアや新聞などでも叫ばれていますが、そもそもなぜ日本ではこういった変化が必要なのでしょうか?
そこには大きく2つの理由があります。
1つは「テクノロジーの進化に伴う企業戦略の大きな変化(DX)」2つめは「人生100年時代と言われるような労働人口の変化」です。
デジタル化やAIの活用が進んだことで「〇〇の仕事がなくなる」などのメディアや記事を目にする人も増えたかもしれません。これは個人にとっては死活問題です。一方、企業の視点でみれば、必要となってくる人材が大きく変化してきている、そして変化ができない人は企業にとって、活かす先がない、という大きな問題に直面しています。
さらに、2つめの理由にもあるように人生100年時代において、就労期間は長くなるばかりで、若手の比率は企業の中で下がっていく構造になります。
こうなると、企業としては「事業や戦略を大きく変える必要がある」一方、「労働者を長く雇用しないといけない」という問題に直面します。ともすると、これらは二律背反することになり、2つを同時に実現するのは、企業体力がなければ難しくなってきます。
このような背景があるなかで、従来の日本型人事制度(新卒一括採用・終身雇用・年功序列)は従来の事業も戦略も右肩上がりの時代と比較すると、維持することが難しく、個人としてもそれを望まないケースが増えてきているのです。そういった背景がある中で、Job型制度の導入で必要なJobに対して適切な人を補充し評価するか、ともすると、適切な仕事がなくスキルアップをしない人は、賃金を含めた評価をしない、という制度の導入が検討されている訳です(だいぶ荒っぽい説明ですが)
このように、日本型人事制度が限界を迎えている中、新しい事業や戦略を推進するには、優秀な人材を採用するか、社内で育成(リスキリング)するか、が求められていると言えます。
皆さんの社員は、リスキリングしていますか?
ここまで読んでいただいた方の多くは、日本企業自体が生き残っていくには、社員1人1人がリスキリングに積極的に取り組んでいく必要があることを感じて頂けているのではないでしょうか? 特に欧米企業とは異なり、解雇における制度や基盤が整っていない日本においては、人材の入れ替えを積極的に行える訳でもないですし、そういった欧米企業ですら、リスキリングに積極的に投資しています(例えば、Amazonも10万人の社員に対して1人当たり約75万円を投資することを発表しています)
では、皆さんの会社の社員はリスキリングしているでしょうか?
「我が社の社員は全くリスキリングに積極的ではない」「教育機会を設けているが全然学ばない」という声が聞こえてきそうです。
ここで改めて、本文章の前半の質問を思い出してほしいです。
リスキリングの定義とは、「今の仕事」から「未来の仕事」に向けて、自分自身のスキルを「大幅」に変更する必要がある、ということです。これを聞いてみて、皆さん何を思い浮かべるでしょう?
という問いです。
改めて皆さんに伺ってみたいのは、皆さんの企業のお仕事は「未来の仕事」に向けて、本当にリスキリングが必要でしょうか?
「未来の仕事」が大きく変わらない場合、もしかするとその企業にとってリスキリング自体が必要ないかもしれませんし、リスキリングを推進したものの必要な仕事や経験が無いとすると、その人材が辞めてしまうということも充分あり得るのです。
もし本当にリスキリングが必要な場合、経営者や人事の皆さんが「企業の戦略はこれまでとこれからでどのように変わり、それは実際にどのような顧客価値になり、それを実現するにはどのような仕事の変化があり、その際にどのような組織と人材が必要で、その人材はどのようなスキルや知識を保有し、おおまかにどれくらいの人数が必要で、今どれくらい社内にいて、これからどの程度増やしていかなければならないのか」を答えられる必要があるのです。
これは非常に難しい質問かと思います。そうなのです、ただ単に学習していないという話ではなく、企業の未来を左右する難しいテーマなのです。
しかし、リスキリングが本当に必要な場合は、これらが一気通貫している必要があり、経営者や人事はこれらを語り続け、社員を啓蒙していく必要があります。そして何より難しいのが、もしこれらの質問にスラスラ答えられたとしても、実際に社員がそれを自覚し、行動できているか、リスキリングできるか、という点です。
人事の皆様に今回まずお伝えしたいのは、「リスキリングとは社員が学んでいるか学んでいないのか、という話ではなく、企業の未来を左右する難しいかつ、重要なテーマ」であるということです。
今回の記事で、改めてリスキリングが、単なる流行ではなく、産業や事業が大きく変化する企業が生き残っていくには避けられないテーマだとご理解いただけていれば幸いですし、第二回以降は、こういった難しいテーマであるリスキリングを進めていく際に、経営者や人事は何をしていくと良いのか? についてのヒントを具体的にご紹介していく予定です。
皆さんの企業で、リスキリングは本当に必要か?それはなぜか?ということを、考えて頂く一歩を踏み出して頂ければ幸いです。
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