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世界最大の国際大会 ATD ICE 2023の超ハイライト

「重要で実用的で日本にも合う」既存の問題への新しい工夫【テクノロジー/研修設計/効果測定】

世界最大の人材育成団体であるATD (Association for Talent Development *1 )の年次国際大会ICE(International Conference and Exhibition)が5月下旬に米国のサンディエゴで開催されました。詳細は*2参照。

パンデミック前の雰囲気と規模に戻って、参加者は1万人、展示会の出展社が345社、並行して開催された勉強会が300以上でしたが、今年のトレンドは「研修コンテンツを効率的に作成するチャットGPTの使い方ヒント」「研修の効果を高める最先端のラーニングジャーニーITプラットフォームの使い方」などの『従来の人材育成テーマに対する新しい工夫』でした。

今回も「重要で実用的で日本にも合う」という原則でハイライトをご紹介しますが、そのトレンドを3つの切り口でまとめると
(1)NEW ラーニングテクノロジー(2)GOOD 研修設計(3)MORE 研修効果測定 でした。

*1 ATD ICEとは
ATDは1944年設立の非営利団体で、40,000人以上の会員(企業や組織の代表が半数)を持つ世界最大の人材育成会員制組織です。そしてICEは、ATDがアメリカで毎年開催する国際大会で、100以上の多彩なセッション、数百社の展示会という業界最大級の規模のイベントに、世界中から数千人の人材育成の関係者が集まることで知られています。グローバルの人材育成トレンドと最先端の成功事例を一気に得られる貴重な機会です。

*2 今年の概要について
下記のサイトをアクセスし、「プログラム」をタップするとセッションやスピーカーや発表要旨などが検索できます(会員登録は不要です) https://atdconference.td.org/

関連記事:
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目次

  1. NEW ラーニングテクノロジー
  2. GOOD 研修設計
  3. MORE 研修効果測定
  4. クロージング

1.NEW ラーニングテクノロジー

政治の分野ではG7広島サミットで先進国首脳がこのテーマで議論し、国際ルール作りへの着手が決まりました。また、米国経済の分野では「AI自動生成は金を掘るツルハシに相当する。新たなゴールドラッシュの始まりだ」と唱える専門家も出て、すでに半導体・IT業界そして株式市場に大きなブームを巻き起こし、ゴールドラッシュ関連企業という呼び方が始まっています。

今回の展示会でも話題性の高かったツールは間違いなくAI、チャットGPT、VRでした。
展示会のほとんどの出展店社は自社のAIやチャット機能について自慢していましたし、VRのデモとアピールも強烈でした。その中で売り込みの色が薄い勉強会の関連セッションの内容からピックアップするとこのような内容になります。

AIとチャットGPT

従来の想像をはるかに超えた可能性が広く認識されてきたチャットGPTのセッションに参加すると、周りの参加者から色々な意見が聞こえてきました。「チャットGPTのせいで人材育成業界が消滅する。育成メンバーは全員職を失う」のような消極的な意見もあれば、逆に「コンテンツ作成は瞬間でできる! 限られたリソースでも素晴らしい育成施策が提供できそう!」という前向きな考えもありました。
一方で「チャットGPTが普及すると真実を見抜く力、編集力、洗練する力が大切になってくるだろう」のような冷静な意見もありましたが、その中でセッションを見るとアバター動画作成ツールで日本でも有名になっているColossyan社の発表が目を引きました。

セッション:AI ビデオの時代にようこそ(Welcome to the Age of AI Video!)
スピーカー:Dominik Mate Kovacs (創立者兼CEO Colossyan社)
1:人材育成に関するGPTの利点は3つ
パーソナライズ:各受講者の個別ニーズに合わせられる。
プランニング :短時間で効率よく情報収集し、効果的な研修開発を支援できる
コンテンツ作り:作成期間を短縮、内容のリバイスと更新を早く楽にできる
2:実演
職場でのアプリケーションの例として、テキストからビデオへの変換を使用
ビデオコンテンツの作成、編集、翻訳に必要な時間を数週間から数分に短縮できる
ことを示していました。

出所:セッション「Welcome to the Age of AI Video!」より

具体的なヒントとして、チャットGTPを使ってeラーニングコンテンツを作成する時によくある課題と解決ヒントも紹介されました。その例としてビジネスアニメを作るツールで人気の高いビヨンド社(Vyond)のセッションを紹介します。

セッション:企業向け応用 AI: 関連性があるブランドに準拠した安全なコンテンツ作成
(Applied AI For the Enterprise- Relevance, Brand Compliance, and Safety)
スピーカー:Gary Lipkowitz (CEO ビヨンド社) 

説明内容:ビジネス現場のアプリケーションをAIで作成する上での課題と対策

ポイント:・ビデオ作成プロセスでの生成AIツールの役割と必要な機能は?
・個別に生成するコンテンツ間の関連性(情報の整合性)は?
・ブランドポリシーへ合っているか?
・情報セキュリティの確保がなされているか?
・従って生成されたコンテンツには十分なレビューとフォローが必要です

例えば

<原本>

出所:セッション「Applied AI For the Enterprise- Relevance, Brand Compliance, and Safety」より

VR

VRは数年前から話題になっていましたがいつまで経ってもなかなかブレイクスルーしていないのが実情です。今年のVR関連のセッション内容もVRテクノロジーの可能性ではなく、実施済みの成功事例の紹介が中心でした。

これらは技術的な研修テーマですが、最近はVRがヒューマンスキルにも使われています。例えば、入社オリエンテーション、コミュニケーション、リーダーシップなどです。特にダイバーシティ研修との相性が良いと言われています。

アクセンチュアのセッションではVRの効果的な使い方として、やりたいときにすぐ受講できる/高価な機器を必要としない/うまくゆかない時のリスクが無いというのがポイントでした。

セッション:VR ソフトスキル トレーニングの戦術と学び
VR Soft-Skills Training Tactics and Lessons Learned
スピーカー:Marek Hyla(プリンシパルディレクター アクセンチュア)

出所:セッション「VR Soft-Skills Training Tactics and Lessons Learned」より

2. GOOD 研修設計

従来の課題を解決するためのアプローチも色々ありました。集合研修の代表的な課題はリソースが必要、柔軟性が欠けている、一度に大人数が難しいということです。一方、eラーニングの課題はインプットで終わってしまう、スキルを身につけるための演習とアウトプットが少ない、内容を変えられないなどです。
ブレンドラーニングでそれぞれの良いとこ取りをしようと言う試みはありましたが、実現はなかなか難しかったのが実情です。
しかし今年は、素晴らしいブレンドラーニングジャーニーの事例がいくつかあり、その中で一番本格的なServiceNow社の事例を紹介します。同社はクラウドを活用した企業向けサービスマネジメント(SaaS)プロバイダとして全米で広く知られておりますが、最近はチャットGPTを大々的に活用して発展している企業の一つとしても注目されています。

セッション :大規模な共同学習プログラムの設計
Designing Collaborative Learning Programs at Scale
スピーカー :Shellie Grieve(ダイレクター サービスナウ)
研修テーマ :マスターアーキテクト認定講座( Master Architect Program )
研修期間 :6ヶ月
研修の目的 :一度に多くの社員のリスキル&アップスキル
アクティビティ:
1.キックオフ:対面研修で研修の重要性を強調して、受講者のモチベーションを高める
2.インプット:オンデマンド映像と読み物を中心にしたマイクロラーニング
3.研修 :週1回程度のリモート研修
4.模擬試験 :定期的にテストをさせて、自分の実力を把握して改善ポイントを特定する
5.メンター :専門家と先輩を使ったメンター制度。それにより受講者の理解が深まり進捗を促進する
6.ケーススタディと職場実践:実践的なスキルを身につけ研修内容を職場で活かす
7.中間イベント:受講者の動機付けと進捗を加速するための集合イベント
利用ITプラットフォーム:研修専用の使いやすいラーニングジャーニープラットフォーム
評価 :結果的に各受講者の個別ニーズに合ったラーニングジャーニー、職場巻き込みと実践、受講者同士の積極的な情報共有、わかりやすい効率的な運営ができて大成功です。

下図は研修の全体像です。

出所:セッション「Designing Collaborative Learning Programs at Scale」より

研修プログラムが非常に細かくなっていますが、前年に比較して
・300% 受講者数増加(リソースは前年同様)
・30%向上 受講者の資格試験合格率
・23%向上 NPS評価(ネット・プロモーター・スコア)
企業が激しい競争に生き残るために大規模なリスキルとアップスキルが必須な時代には、このような効果的な研修設計がとても大切です。同社は新しいテクノロジーの導入と併せてそこに挑戦していることがよく理解できました。

3. MORE 研修効果測定

人材育成の永遠のテーマの一つは研修効果の向上と測定です。研修効果を高めるための新鮮なセッションとして「行動経済学のひじで小突く(nudge)を使っての行動変容の促進」とか「コーチングをチャットボットで行う」が目を引きました。個人的に興味深かったポイントの一つは受講者のコーチと接する頻度と時間はプロコーチよりチャットボットのほうが多いということでした。
研修効果測定については定番のカークパトリックとフィリップスの段階モデルが中心でしたが、ちょっと変わった実践的な工夫と応用の例がいくつかありました。その中からエミレーツ航空の例を簡潔に紹介します。

セッション:影響力の高い評価(High Impact Evaluation)
スピーカー:Louise Cosgrove(エミレーツ航空 学習体験標準および分析責任者)
目的 :研修効果測定しながら研修効果を高める一石二鳥アプローチのトライ
ステップ :
1. 目標設定(Measure) 目指す職場実践とビジネス成果を具体化する
2. 予測(Predict)定着と職場実践の障害となるリスクを考える
3. 診断(Diagnose)早いタイミングで進捗状況を確認して、障害の影響を把握する
4. 強化(Maximize)診断結果に合わせて研修期間中に適切なフォローをする

出所:セッション「High Impact Evaluation」より

ステップ3の診断が特に興味深いです。研修の3分の1が終わった時点で全受講者にアンケートを取ります。内容は研修内容の習得度、理解に対する自信、職場で活かせる課題、自分のモチベーション、実行計画、研修の役立ち度についてです。各項目に対して受講者は3段階の信号評価をします。
緑:大変良い、良い
黄:普通
赤:あんまりよくない、よくない

下記の図は2つの異なる研修の診断結果です。

評価:
このように早めに定着と職場実践の障害と可能性について測ると軌道修正が可能ですし、研修効果測定は簡単です。特に面白い点は、図の棒グラフが示しているのは研修の途中の診断結果でありながら、最終的な成果も変わらなかったことです。研修後にフィリップスモデルの研修効果測定(5段階評価の費用対効果の計算)をおこなったところ次のような答えを出しています。

左側の研修:費用対効果427%(大成功)
右の研修:費用対効果-100%(大失敗)
早いタイミングで診断をすれば誰でも右側の赤と黄色が多くて危険とわかるし、左側は緑と黄色中心で順調だとわかります。
このように工夫しながら研修効果測定を使って研修効果を高めるようにしたいですね。

4. クロージング

今年のATD ICE人材育成国際大会で色々な話はありましたが、今年のトレンドを一言でいうと既存の問題を新しい工夫で解決することです。今回紹介した、ラーニングテクノロジー、研修設計、研修効果測定の工夫は、実用的で日本の人材育成の現場でも比較的取り入れやすいものだと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

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アイディア社
IDEA DEVELOPMENT株式会社
https://ide-development.com/

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