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これから求められる 個を生かすオンボーディング vol.7

モチベーションが高い状態を保つポイントとは~(後編)「やる気スイッチ」に注目した企業の取り組み事例~

前回は、モチベーションが高い状態を保つポイントについて、1人ひとりの異なる「やる気スイッチ」の捉え方についてお話してきた。

やる気を高めるメカニズムについて提示されている数ある理論の中でも、ニーズ理論にあたる「Will(志向・価値観)」に注目し、弊社のフレームワークである「5側面・10要素」の捉え方を使い、個々の「やる気スイッチ」の違いがどのように現れるのか、その具体例をお伝えした。
今回は企業の取り組みの具体例をご紹介したい。
個々の違いを踏まえた人材開発や組織開発の取り組み方が、「多様な人材を活かす」ための取り組みのヒントになるだろう。

参考:
第6回 モチベーションが高い状態を保つポイントとは~(前編)1人ひとり異なる「やる気スイッチ」を捉える方法~

目次

  1. サービス業β社と背景
  2. やる気スイッチをどう捉えたか?
  3. やる気スイッチの入れ方
  4. 活用場面の具体例「人材開発会議」
  5. どのような効果があるのか
  6. 明日への一歩

サービス業β社と背景

今回ご紹介したい事例は、サービス業β社の取り組みである。
β社は競合との厳しい競争環境に置かれていて、営業体制の強化を急速に図る必要があり、中途採用の人数を増やしていた。社内から経験豊富な人材を異動させることも難しく、かなりの人数増強を図る必要があったため、結果、経験の少ない若年層が中心となる組織を急速に立ち上げていく事が求められていた。

メンバーも経験が浅いが、それを引っ張るリーダーも、経験豊富な人材に担わせることが難しく、どのようにすれば組織として効果的に厳しい競争に向かっていける強い人と組織をつくることができるのか。その点が、マネジメント陣の喫緊の課題だった。
そこで注目したのが、今回テーマになっている「やる気スイッチ」に注目した人材開発と組織開発だった。

やる気スイッチをどう捉えたか?

本人のやる気(モチベーション)を維持・向上させるために、どのように目の前にある仕事に取り組むのか。まずはその視界を合わせるところから始めた。

その全体図が下図である。図によって、以下の8点をポイントとして共有した点が大きい。
  1. 本人のエネルギー(モチベーション)を高める
  2. その素となるのがやる気スイッチ(Will)である
  3. 本人が持つ目指したい未来像も踏まえて、目の前の仕事を位置づける
  4. その上で、目の前にある仕事に対して、やる気スイッチを入れられるようにする
  5. もちろん、本人の得意不得意(Can)も踏まえる
  6. これらは他者との協働の中でなされるものであることを忘れない
  7. 他者からの協力も必要であるし、他者のWillも影響する
  8. 上司やリーダーは、それらを踏まえ、適切に本人に働きかける
これらを、「本人の何に対してどのように働きかけるのか」の指針とし、
組織として本人のやる気(モチベーション)を意図的に高められるようにするのがねらいである。

やる気スイッチの入れ方

では、β社ではやる気スイッチを入れるためにどのように取り組んだか。
前回お伝えした弊社のフレームワーク「5側面10要素」でお伝えしたい。
 
下図は前回ご紹介した筆者の特徴を可視化した例だが、3つの問いである【A】【B】【C】に注目して取り組みを進めた。これはやる気スイッチの3つの分類を表している。
 
【A】はポジティブなスイッチであり、積極的に強く押したいスイッチである。また【B】【C】はネガティブなスイッチである。【B】はスイッチが入らないとネガティブになるもので、【C】はスイッチが入るとネガティブになるものである。
 
【A】に対しては、ポジティブスイッチとして、より強く感じられるように自ら取り組む仕事・役割を意味づけ、その強さをどんどん大きくしてやる気を高める。例えば、筆者なら挑戦的で創造的なテーマに取り組めるようにすることが効果的である。
 
また、【B】に対しては、全く感じられない状況に陥らないように、取り組む仕事・役割の中に感じられる部分を見つけたりすることで、強いストレスを抱え込まないようにする。筆者であれば挑戦が感じられないとか、貢献感がない状況に陥るとモチベーションが下がってしまうので注意が必要である。
 
【C】は、感じるとストレスになりやすいため、もし避けられないならその部分は受け入れつつ、【A】のポジティブスイッチをより意識して両立するようにする。そうすることで強いストレスにならないようコントロールすることができ、筆者の場合は安定がないと嫌だがそこばかりになるとそれはそれでシンドイという複雑さを持っているので、【A】によってモチベートするのが効果的である。
 
このように考え、上記の8つのポイントを押さえた関わりや働きかけを行い、効果的に「やる気スイッチ」を入れることに取り組んだのがβ社の事例である。

(出所:リクルートマネジメントソリューションズ作成)

活用場面の具体例「人材開発会議」

β社では、「人材開発会議」をコアに据え、かなりのパワーを投下して取り組んでいる。人材開発会議とは、よくある評価会議とは一線を画し、能力開発に主眼を置いた、社員の能力開発課題を明確化し人材を継続的に育成するための会議体のことである。

そこで、「やる気スイッチ」を共有した能力開発の取り組みについてご紹介したい。下図のようなメンバーが参加する会議体である。なお、やる気スイッチについては、当社が提供するSPI3for Employeesなど、働きがいを可視化するアセスメントツールを入れると有効な可視化ができる部長を中心に、HRBPが支援をしながら、各グループのマネジャー(GM)が参加してメンバー一人ひとりの能力開発について、やる気スイッチ情報を共有しながら検討する。
 
具体的には以下のイメージである。

○○さんの「やる気スイッチ」情報を先に確認する。
そのうえで、今の彼の「課題の見立て」はどうなっているのか?を確認。
そのやりとりの中で、「挑戦する」がスイッチだよね、などが共通で認識できる。
更にもう一段進めて、「何にどうやって」挑戦していくといいんだっけ?をすり合わせる。
「どれぐらいのレベル」で挑戦できると嬉しいのかな?・・・
そんなストレッチをさせて本当にそんなに頑張れるのかな?・・・と検討していく。

部長とマネジャーの共通理解のためのツールであり、その後のメンバーとのコミュニケーションに生かすためのツールとしても活かせる。

どのような効果があるのか

人材開発会議の議長にあたるある部長のコメントを紹介したい。
「今までは、できるかどうかのスキルに偏る場面が多かった。しかし、この会議体はメンバー一人ひとりをどう成長させるかのミーティング。直接見ていないメンバーも含めて、どう生かすかどう動機づけるか。同じものを見ながら検討するため、短時間で濃密な検討ができる」
やる気スイッチのデータを参加者で共有できているからこそ、効率的で効果的な場づくりが可能になる。

一方、メンバーを直接見ているグループマネジャー(マネジャー)側のコメントも紹介したい。
「元気がないメンバーについて、皆で同じものをみて考える。彼女のスイッチは『道を究めること』。『何事も突き詰めていくこと』と考えると、こんな関わり方が良いのでは。これを他のマネジャーや部長と複眼で見て育成プランを立てる。これが検討の厚みをつくるし、マネジャーとして心強い」
これは能力開発の中身の質を高めることだけでなく、マネジャーの安心にもつながっているという点でとても興味深い。

また、別のコメントも紹介する。
「他のマネジャーが担当するメンバーに対して、直接接する機会は多くないが、なぜそのメンバーがそのように考え、そのような行動をとるのか。自分のメンバーも照らしながら紐解き理解していくと、人材開発の議論がとてもやりやすい。これまでは自分のメンバーのことをそれぞれのマネジャーが話してばかりだったが、そこが一番変化した」
これも興味深い。育成に関するマネジャーたちのコミュニケーションや関わり方の質が大きく向上したと言えるだろう。

明日への一歩

ここまで、モチベーションが高い状態を保つために、1人ひとりの異なる「やる気スイッチ」に注目して取り組みを進める具体例をサービス業β社の事例を通じてお伝えしてきた。
「やる気スイッチ」に注目し、ツールとして活用することで、人材開発や組織開発に応用できる非常に実践的で効果的なアプローチであることが伝わったのではないだろうか。
是非、皆さんのお手元でも活かしていただき、人材力・組織力の強化につなげていただければと思う。

次回は、今回のシリーズ「これから求められる 個を生かすオンボーディング」の最終回として、今最も注目度が高い観点の一つである「人的資本経営・開示」を踏まえながら、「個を生かすオンボーディング」を考えこれまでのお話を総括したい。

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